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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1208947
審判番号 不服2008-7337  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-26 
確定日 2009-12-10 
事件の表示 特願2003- 36775「目的地設定方法およびナビゲーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月25日出願公開,特開2003-269986〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成15年2月14日(パリ条約による優先権主張2002年2月19日,米国)の出願であって,平成20年3月6日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年3月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「ナビゲーション装置における目的地設定方法において,
ユーザーの好みにより,あるいはユーザーのPOI使用頻度に基づいて自動的に,カテゴリーを示す興味のある場所(POI)を所定数リストしたユーザーの「お好みPOI」リストを形成するステップ,
目的地入力方法を特定するメニューリストを表示するステップ,
該リストよりPOIを用いて目的地を入力するPOIメニューが選択されたとき,前記「お好みPOI」リストを表示するステップ,
該「お好みPOI」リストの中から一つのPOIが選択されたとき,該選択されたPOIのカテゴリーを用いて目的地を設定するステップ,
を備えたことを特徴とする目的地設定方法。」
と補正された。

なお,補正後の請求項1には,「該「お好みPOI]リスト」と記載されているが,これは「該「お好みPOI」リスト」の明らかな誤記と解されるため,請求項1の補正内容を上記のように認定した。

上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「カテゴリーを示す興味のある場所(POI)を所定数リスト」する際の「所定の基準」について「ユーザーのPOI使用頻度」と限定し,同じく「「お好みPOI」リスト」について「ユーザーの」との限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-194176号公報(以下「引用例」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,ドライバが必要としている施設情報を迅速かつ容易に検索できるようにした車載用ナビゲーション装置に関するものである。」

・「【0015】図3は,この発明の実施の形態1による車載用ナビゲーション装置の施設検索操作時の処理の手順を示すフローチャートである。図4は,この発明の実施の形態1による車載用ナビゲーション装置の登録施設情報テーブルを示す図であり,登録施設情報記憶部16の記憶内容を示し,過去に遡って検索された各施設の名称,施設の位置,最後に検索された年,月,日,時刻などの最終検索日時,春夏秋冬別の選択回数が記憶されている。」

・「【0021】以下,図4?図7を用い,図3のフローチャートに沿って,実施の形態1による車載用ナビゲーション装置の施設検索動作について説明する。なお,図3は,特に断らない限り,制御部13の処理を示している。まず,ユーザは神戸北ICを検索して目的地として設定したい場合,検索したい旨を操作部12より指示する(ステップS1)。これにより,登録施設情報記憶部16より登録施設情報が取得され(ステップS2),施設情報記憶部11の施設情報と共に表示部14に表示される(ステップS3)。このとき登録施設情報は,ユーザにより予め設定されているソート条件(50音順や現在位置に近い順など)によってソートされて表示される。ソート条件に最終検索日時が選択されている場合,過去に選択された項目のうち,最後に選択された時間が記憶されている項目順にソートされて表示される(図5)。ソート条件に季節別選択回数の降順が選択されている場合で,例えば現在日付が夏の場合,現在までの夏(昨夏など過去の夏を含む)に選択された回数の降順にソートされて表示される(図6)。また,ソート条件に季節別選択回数の降順が選択されている場合で,現在日付が冬の場合,現在までの冬に選択された回数の降順にソートされて表示される(図7)。
【0022】また,同様に,現在の時刻が,朝か昼か夜か深夜かによって,各々の回数が多い順にソートして表示してもよい。このように,時間状況によって使用者が選択する可能性が高いものを,リストの最初の方に表示させることができ,使用者の選択作業を迅速に且つ容易にすることができる。神戸北ICは過去に検索されており,登録施設情報記憶部16に記憶されているため,検索リストに神戸北ICが表示部14に表示される。そこでユーザは,神戸北ICを選択する(ステップS4,S5)。次いで,現在日付の季節によって春夏秋冬別に神戸北ICの選択回数に1を加算した数値を,登録施設情報記憶部16に記憶する(ステップS6)。また,表示部14には施設位置に対する地図データが表示される(ステップS9)。ユーザは,表示されている神戸北ICを,操作部12を用いて目的地として設定する(ステップS10)。
【0023】ユーザが,今度は大阪駅を検索したい場合,大阪駅は登録施設情報に記載されていないため,ユーザは表示部14に表示されている施設情報の中から「駅」を選択する操作を操作部12より行う(ステップS4,S5)。制御部13は施設情報記憶部11より地域名リストを取得し,表示部14に表示する。ユーザは地域名リストより「近畿」を操作部12により指示する。制御部13は施設情報記憶部11より都道府県名リストを取得し,表示部14に表示する。ユーザは都道府県名リストより「大阪」を選択する操作を操作部12より行う。制御部13は,施設情報記憶部11より大阪の駅名リストを取得し,表示部14に表示する。ユーザは大阪の駅リストより「大阪駅」を選択する操作を操作部12より行う(ステップS7)。大阪駅の施設名称,位置,現在時刻,春夏秋冬別の選択回数(検索回数),例えば現在日付が夏の場合は,「夏選択回数」を1とし,他の季節の選択回数を0として,登録施設情報記憶部16に記憶する(ステップS8)。また,表示部14には施設位置に対する地図データが表示される(ステップS9)。ユーザは,表示されている大阪駅を目的地として設定する(ステップS10)。このようにして,施設検索を行い,目的地として設定することができる。」

・「【0029】また,検索により自動的に登録される登録地とは別に,使用者が登録画面で入力することにより,登録するものを別に設けてもよい。前者の施設リストから選択した時点(登録地に設定すること以外の目的で,例えば,ルート探索時の目的地の設定のために選択した場合など)で自動入力されるものを自動登録地とし,後者の設定登録するものを設定登録地として,区別してもよい。また,自動登録地と設定登録地のリストを共用して,設定でも自動でも,登録できるようにしてもよい。」

・図13(a)には,目的地として分類された項目を選択する画面33の「検索メニュー」で「登録地」の項目を選択すると,画面34に登録施設を複数リストアップした「登録地リスト」が表示されるようにした表示パターンが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「車載用ナビゲーション装置における目的地を設定する方法において,
使用者が登録画面で入力することにより,あるいは施設が季節別選択回数でソートされて自動的に,登録施設を複数リストアップした登録地リストを形成するステップ,
目的地として分類された項目を選択する検索メニューを表示するステップ,
該検索メニューより登録施設を用いて目的地を入力する登録地の項目が選択されたとき,前記登録地リストを表示するステップ,
該登録地リストの中から一つの登録施設が選択されたとき,該選択された登録施設を用いて目的地を設定するステップ,
を備えた目的地を設定する方法。」

なお,引用例には,次の事項も記載されている。
・「【0031】図13(b)のパターンBは,例えば,画面33で施設を選択し,画面35の施設リストを表示させ,画面35の中から駅を選択した場合に表示される画面36の駅リストの一番最初に,前回選択した駅または一番選択回数の多い駅を表示するようにしたものである。」
・また,図13(b)には,画面33の「検索メニュー」で「施設」の項目を選択すると,画面35の「施設リスト」に「駅」,「学校」及び「デパート」に分類された複数のカテゴリーが表示され,さらに,「駅」のカテゴリーを選択すると,画面36の「駅リスト」が表示されるようにした表示パターンが示されている。

(3)対比
そこで,本願補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「車載用ナビゲーション装置における目的地を設定する方法」は前者の「ナビゲーション装置における目的地設定方法」に相当している。

次に,後者の「使用者が登録画面で入力すること」による態様は,使用者の意思が反映されたものといえるから,前者の「ユーザーの好み」による態様に,後者の「施設が季節別選択回数でソートされて」いる態様は前者の「ユーザーのPOI使用頻度に基づいて」いる態様に,後者の「登録施設」は前者の「興味のある場所(POI)」に,後者の「複数リストアップした」態様は前者の「所定数リストした」態様に,後者の「登録地リスト」は前者の「ユーザーの「お好みPOI」リスト」に,それぞれ相当しているから,結局,後者の「使用者が登録画面で入力することにより,あるいは施設が季節別選択回数でソートされて自動的に,登録施設を複数リストアップした登録地リストを形成するステップ」と前者の「ユーザーの好みにより,あるいはユーザーのPOI使用頻度に基づいて自動的に,カテゴリーを示す興味のある場所(POI)を所定数リストしたユーザーの「お好みPOI」リストを形成するステップ」とは,「ユーザーの好みにより,あるいはユーザーのPOI使用頻度に基づいて自動的に,興味のある場所(POI)を所定数リストしたユーザーの「お好みPOI」リストを形成するステップ」との概念で共通する。

そして,後者の「目的地として分類された項目を選択する」態様は前者の「目的地入力方法を特定する」態様に,後者の「検索メニュー」は前者の「メニューリスト」に,それぞれ相当するから,結局,後者の「目的地として分類された項目を選択する検索メニューを表示するステップ」は前者の「目的地入力方法を特定するメニューリストを表示するステップ」に相当する。

さらに,後者の「検索メニューより登録施設を用いて目的地を入力する登録地の項目」は前者の「リストよりPOIを用いて目的地を入力するPOIメニュー」に相当するから,後者の「検索メニューより登録施設を用いて目的地を入力する登録地の項目が選択されたとき,登録地リストを表示するステップ」は前者の「リストよりPOIを用いて目的地を入力するPOIメニューが選択されたとき,「お好みPOI」リストを表示するステップ」に相当する。

また,後者の「登録地リストの中から一つの登録施設が選択されたとき,該選択された登録施設を用いて目的地を設定するステップ」と前者の「「お好みPOI」リストの中から一つのPOIが選択されたとき,該選択されたPOIのカテゴリーを用いて目的地を設定するステップ」とは,「「お好みPOI」リストの中から一つのPOIが選択されたとき,該選択されたPOIを用いて目的地を設定するステップ」との概念で共通している。

したがって,両者は,
「ナビゲーション装置における目的地設定方法において,
ユーザーの好みにより,あるいはユーザーのPOI使用頻度に基づいて自動的に,興味のある場所(POI)を所定数リストしたユーザーの「お好みPOI」リストを形成するステップ,
目的地入力方法を特定するメニューリストを表示するステップ,
該リストよりPOIを用いて目的地を入力するPOIメニューが選択されたとき,前記「お好みPOI」リストを表示するステップ,
該「お好みPOI」リストの中から一つのPOIが選択されたとき,該選択されたPOIを用いて目的地を設定するステップ,
を備えた目的地設定方法。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
「興味のある場所(POI)を所定数リストしたユーザーの「お好みPOI」リスト」に関し,本願補正発明は,「カテゴリーを示す」ものであるのに対し,引用発明は,かかる特定がなされていない点。
[相違点2]
選択された「POIを用いて」目的地を設定するステップに関し,本願補正発明は,「POIのカテゴリーを用いて」いるのに対し,引用発明は,かかる特定がなされていない点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1及び2について
例えば,引用例の【0031】の記載及び図13(b)にも開示されているように,目的地となる施設を複数のカテゴリーに分類し,その選択されたカテゴリーを用いて目的地を設定することは,ナビゲーション装置における常套手段である(必要であれば,特開2001-41764号公報(以前に立ち寄った施設の種別に関する種別情報に基づき,複数の施設の中から一つの施設を選択する技術),特開2000-88597号公報(ユーザが「レストラン」を選択すると「和食」・「洋食」・「中華」が表示され,さらに「中華」を選択すると,「○○軒」・「△△軒」が表示されてその中の一つが選択される技術),特開2001-289661号公報(乗員の嗜好を考慮して行先の種別を提案し,乗員が肯定した種別の行先を施設情報あるいはイベント情報に基づいて検索し,該行先を目的地として設定する技術)等も参照。)。
そうすると,引用発明において,「お好みPOI」リスト(登録地リスト)を,上記常套手段に倣い,複数のカテゴリーに分類することにより,相違点1及び2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明及び上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明及び上記常套手段に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成20年2月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「ナビゲーション装置における目的地設定方法において,
ユーザーの好みにより,あるいは所定の基準に基づいて自動的に,カテゴリーを示す興味のある場所(POI)を所定数リストした「お好みPOI」リストを形成するステップ,
目的地入力方法を特定するメニューリストを表示するステップ,
該リストよりPOIを用いて目的地を入力するPOIメニューが選択されたとき,前記「お好みPOI」リストを表示するステップ,
該「お好みPOI」リストの中から一つのPOIが選択されたとき,該選択されたPOIのカテゴリーを用いて目的地を設定するステップ,
を備えたことを特徴とする目的地設定方法。」

なお,上記手続補正書の請求項1には,「該「お好みPOI]リスト」と記載されているが,これは「該「お好みPOI」リスト」の明らかな誤記と解されるため,本願発明を上記のように認定した。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「カテゴリーを示す興味のある場所(POI)を所定数リスト」する際の「所定の基準」について「ユーザーのPOI使用頻度」との限定を省き,「「お好みPOI」リスト」について「ユーザーの」との限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり,引用発明及び上記常套手段に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び上記常套手段に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び上記常套手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-07 
結審通知日 2009-10-13 
審決日 2009-10-28 
出願番号 特願2003-36775(P2003-36775)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
P 1 8・ 575- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 勝之  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 槙原 進
片岡 弘之
発明の名称 目的地設定方法およびナビゲーション装置  
代理人 斉藤 千幹  

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