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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D05B
管理番号 1209775
審判番号 不服2008-3830  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-18 
確定日 2010-01-06 
事件の表示 特願2003-111673「ボタン穴ミシン」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 5日出願公開、特開2003-311057〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年4月16日(パリ条約による優先権主張2002年4月16日、ドイツ)の出願であって、平成19年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成20年2月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
本願発明は審査段階において平成19年10月15日に補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明は次のとおりのものと認める(以下「本願発明」という)。
「【請求項1】アーム軸(4)を介し駆動可能な針(7)と、
x駆動部(9)によりx方向に且つy駆動部(10)によりy方向に変位可能なx-yテーブル(8)とを備えて成るボタン穴ミシンにして、
前記x-yテーブルは互いに変位可能に取り付けられた第一と第二の加工品クランプ(13a,13b)を支持し、且つ前記x-yテーブルは前記加工品クランプ(13a,13b)を広がり幅の初期位置から広がり幅の長さ(d)だけ広がり幅の最終位置へ互いに対して変位させるための空気圧作動式変位駆動部(44,73)を有するボタン穴ミシンにおいて、
少なくとも第一の加工品クランプ(13b)が加工品(35)の収容のための支持板(11b)と、該支持板(11b)上に取り付けられたクランプ板(15b)とを備えて成り、
クランプ板(15b)の作動のためのクランプ駆動部(28b)が支持板(11b)に支承されていることを特徴とするボタン穴ミシン。」

2.引用刊行物記載の発明
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成9年11月28日に頒布された特許第2722777号公報(以下「引用例」という)には、次の事項が記載されている。
(a)「本発明は、前後方向に延びるカッターの左右両側に位置し得るように送り台に設けられた一対の布受け板と、各布受け板に設けられた布押えとを備え、前記両布受け板に載せられた加工布に前記カッターにより前後に延びる切込みを形成し、この切込みの両側を前記各布押えにより押えた状態で、前記両布受け板を相互に離れる方向に移動させることにより前記切込みを開くようにした穴かがりミシンの布開き装置」(第2頁右欄第11?18行)
(b)「前記アーム部23の先端部下部には、縫い針26を備えた針棒27が設けられ、この縫い針26は、図示はしないが、前記主軸の回転に基づいて作動するカム機構等により左右に揺動しながら上下駆動されるようになっている。」(第2頁右欄第46?49行)
(c)「また、ベッド部22には、第1図に示すように、前記ルーパー土台28およびカッター29逃げ用の切欠部32aを有する送り台32が移動可能に設けられており、この送り台32は図示しない駆動機構によって、鳩目穴かがりのための所定動作パターンに従って作動されるようになっている。この送り台32には、前記カッター29の左右両側に位置して一対の布受け板33,33が配置され、さらにこの布受け板33,33の外側に位置して送り台カバー34,34が固定されている。上記布受け板33,33のうち右側の布受け板33の上面には、左側の布受け板33上面をも覆うプレートカバー35が固着されており、このプレートカバー35は右側の布受け板33と一体的に動くものであり、左側の布受け板33に対しては摺動可能である。また、前記左右の布受け板33には、それぞれ布押え36,36が後述する軸55aおよびアーム部55を介して上下方向に回動可能に設けられている。」(第3頁左欄第8?23行)
(d)「そして、前記第1のリンク39のアーム部44は、送り台32に前後方向に向けて配設されたエアシリンダからなる布開き用駆動体51のロッド51aにジョイント52を介して連結されている。」(第3頁右欄第10?13行)
(e)「一方、押え機構38についてこの場合左側の押え機構38を代表して述べる。第3図に示すように、布押え36を先端に備えた前記アーム部55は軸55aを介して前記布受け板33に回動可能に軸支されており、その基端部には、前記布受け板33に形成された孔33aを通して該布受け板33裏側に延出する⊂状の受けアーム部56が形成されている。そして、送り台32には、リンク57が左右の延びる軸58を介して回動自在に設けられており、その一方の端部に取着されたピン59が前記受けアーム部56と連結されている。この場合、受けアーム部56はピン59に対して左右方向に摺動可能である。また、リンク57の他方の端部に取着されたピン60は、送り台32に設けられたエアシリンダからなる押え用駆動体61のロッド61aにジョイント62を介して連結されている。
上記構成において、加工布63(第6図にその一部を示す)に対し鳩目穴かがりを行うに当たっては、後端部に丸穴部を有する切込みの形成、布開きが実行されるものであり、これらについて述べる。
まず、加工布63を一対の布受け板33,33に載せた後、」(第3頁右欄第23?41行)

ここで、布受け板は、送り台32に設けられたエアシリンダにより、広がり幅の初期位置から広がり幅の長さだけ最終位置まで変位されるものと認められ、また、上記(e)の「布押え36を先端に備えた前記アーム部55は軸55aを介して前記布受け板33に回動可能に軸支され」、「受けアーム部56はピン59に対して左右方向に摺動可能である」ことより、布押さえ36は布受け板33と共に移動するものと認められるので、以上の記載及び図1?8によれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

「主軸の回転に基づいて駆動される縫い針26と、駆動機構によって鳩目穴かがりのための所定動作パターンに従って作動される送り台32とを備えているミシンであって、前記送り台32には、加工布63を受ける布受け板33と、各布受け板33に設けられた布押さえ36とからなる一対の押さえ機構38が設けられ、前記押さえ機構38は前記送り台32に設けられたエアシリンダにより、広がり幅の初期位置から広がり幅の長さだけ広がり幅の最終位置へ互いに対して変位される穴かがりミシン。」

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「主軸」は本願発明の「アーム軸」に相当し、以下同様に「縫い針」は「針」に、「送り台」は「x-yテーブル」に、「押さえ機構」は「加工品クランプ」に、「加工布」は「加工品」に、「布受け板」は「支持板」に、「布押さえ」は「クランプ板」に、「エアシリンダ」は「空気圧作動式変位駆動部」にそれぞれ相当する。
また、「鳩目穴」はボタン穴であり、「鳩目穴かがりのための所定動作パターンに従って作動される送り台」は、一般に、x駆動部、y駆動部を有してx及びy方向に変位可能である。
したがって、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「アーム軸を介し駆動可能な針と、x駆動部によりx方向に且つy駆動部によりy方向に変位可能なx-yテーブルとを備えて成るボタン穴ミシンにして、前記x-yテーブルは互いに変位可能に取り付けられた第一と第二の加工品クランプを支持し、且つ前記x-yテーブルは前記加工品クランプを広がり幅の初期位置から広がり幅の長さだけ広がり幅の最終位置へ互いに対して変位させるための空気圧作動式変位駆動部を有するボタン穴ミシンにおいて、加工品クランプが加工品の収容のための支持板と、該支持板上に取り付けられたクランプ板とを備えて成るボタン穴ミシン」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明では、クランプ板の作動のためのクランプ駆動部が支持板に支承されているのに対して、引用発明ではこのような構成を有していない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討すると、加工品を、移動可能な板体に載せ、これと一体的に移動する板体にて押さえるように構成されたクランプにおいて、加工品を押さえる板体を駆動するクランプ駆動部を、加工品を載せる(移動可能な)板体に支承させることは周知であって(例えば、特開平11-290562号公報第3頁右欄第7?9行を参照)、この点は当業者が適宜なしえた程度の事項にすぎない。
したがって、引用発明において、クランプ板の作動のためのクランプ駆動部を支持板に支承させることは当業者が容易になし得たものと認める。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-06 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-08-26 
出願番号 特願2003-111673(P2003-111673)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 熊倉 強
村山 禎恒
発明の名称 ボタン穴ミシン  
代理人 藤田 アキラ  
代理人 今井 秀樹  

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