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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D05B
管理番号 1210211
審判番号 不服2008-23040  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-08 
確定日 2010-01-13 
事件の表示 特願2003-199162号「目穴型ボタン穴用ミシン」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月19日出願公開、特開2004- 49917号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年7月18日(パリ条約による優先権主張2002年7月20日、ドイツ)の出願であって、平成20年6月2日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成20年9月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明は、平成20年5月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は以下のとおり記載されている。
「上下に往復運動するように駆動可能な針(8)と;
x方向のみの移動のためミシンに取り付けられたx往復台(19)とy方向のみの移動のため前記x往復台に取り付けられたy往復台(20)とを有するx-yテーブル(13)と;
ミシンに取り付けられた電動機であるxモータ(28)であって、回転運動を直線運動に変換するドライブを介して前記x往復台(19)と連結されているxモータ(28)と;
ミシンに取り付けられた電動機であるyモータ(36)であって、x方向に延在する摺動継手(42)とスピンドルナット(41)とねじスピンドル(39)を介して前記y往復台(20)に連結されているyモータ(36)と; を備えて成る目穴型ボタン穴用ミシンにおいて、
前記ドライブがカムドライブ(35)であり、このカムドライブは前記xモータ(28)の従動軸(29)と接合されているカム(31)を備え、当該カムは前記xモータ(28)の軸(30)に対して螺旋を描く案内溝(32)を有すると共に、前記x往復台(19)に直結し前記案内溝(32)と係合するドライバ(33)を有すること、前記カム(31)が前記xモータ(18)に直接取り付けられていること、前記摺動継手(42)が、前記スピンドルナット(41)に取り付けられ且つ前記y往復台(20)に設けられた駆動アーム(46、47)の案内孔(45)と係合する少なくとも1つのピン(43、44)を備えて成ること、前記x往復台(19)がフレームであって、ミシン上を案内されると共に前記y往復台(20)を支持するy案内棒(25、26)を有することを特徴とする、目穴型ボタン穴用ミシン。」(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)


3.引用発明
(1)これに対して、原審の拒絶査定に引用された特開平11-276737号公報(以下「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「【請求項1】2つのモータ(60、80)によって2つの方向(x、y)に駆動され、縫製物(36)を収容するテーブル(9)と、縫製工具(4、6、11)と、縫製物(36)中に、縫製の前又は後に形成される切れ目(32)を取り囲むボタン孔トップ(28)のジグザグステッチによって区画されている、切れ目(32)を備えたボタン孔の形成のための切断装置(34)とを備えたミシンであって、その際縫製工具(4、6、11)は昇降するように駆動されかつ水平方向に揺動する針棒(4)と、針棒(4)の下端に設けられいて、基板(12)に支承された外がま(11)と協働する針(6)とを包括し、かつ第3モータ(13)によって回転可能に駆動可能であり、そして記憶された種々のボタン孔形状を呼び出し可能な制御装置(90)を備えている、前記ボタン孔かがりミシンにおいて、
後切断モードに切り換えるための装置(97)と、
第4モータ(50)によって駆動され、ジグザグステッチを形成する針揺動装置(40)とを有し、その際ボタン孔トップ(28)における後切断モードに必要な中間材料(b)の形成のために、針棒(4)の揺動運動が、第4モータ(50)によって影響可能であることを特徴とする前記ボタン孔かがりミシン。」

(b)「【0022】テーブル9は、図1(a)に示すように、互いに垂直に位置する方向x、yに両ステップモータ60、80によって駆動される。x方向の駆動は、ステップモータ60によって行われ、y方向の駆動は、ステップモータ80を介して行われる。テーブル9は、軸受41を備え、軸受はロッド61、62をx方向に移動可能に把持する。ロッド61、62は、その自由端にリンク65、66を固着して備え、リンクはその自由端にロッド63、64を結合している。ロッド63、64は、基板12の軸受61、62に回転可能に収容されている。前記ロッド61、62、63及び64は、互いに平行に配設されている。記載の配列によって、平行リンク機構が形成されており、平行リンク機構はy方向におけるテーブル9の移動を行わせる。それにりかかわらずx方向へのロッド61、62上のテーブル9の移動が可能である。
【0023】モータ60は、スピンドル68と駆動連結しており、スピンドルは基板12の軸受に回転可能に支承されている。スピンドル68上にはナット69が収容され、ナットは連行体69 'を有する。連行体は、ナット70に係合し、ナットはロッド61上に収容された軸受41に形成されている。
【0024】ステップモータ60に対して平行に配設されているステップモータ80は、ロッド64上に固定された歯セグメント82と噛み合う歯車81を駆動する。歯車81の回転運動は、リンク65の旋回運動従ってテーブル9のy方向の運動に繋がる。テーブル9の運動は、円弧状の軌道上を経過する。しかしボタン孔トップ28に対して横の運動は、僅か(振り幅a)であるので、針6の方向におけるテーブル9の運動は無視される。スピンドル68の回転運動は、ナット69が回転方向に依存してx方向に移動されかつその連行体69 '及び溝70を介してロッド61、62上のテーブルもx方向に移動させる。」

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「針と;テーブル9と;
ミシンに取り付けられた電動機であるステップモータ80であって、回転運動を直線運動に変換するドライブを介してロッド61,62と連結されているステップモータ80と;
ミシンに取り付けられた電動機であるステップモータ60であって、スピンドル68,連行体69’を有するナット69及び、溝70を有しロッド61上の収容された軸受を介してテーブル9に連結されているステップモータ60と;を備えたボタン孔かがりミシン。」


4.対比
本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「針」及び「ボタン孔かがりミシン」は、本願発明の「上下に往復運動するように駆動可能な針」及び「目穴型ボタン穴用ミシン」にそれぞれ相当する。
さらに、引用文献の段落【0022】の記載及び図1を参酌すると、引用発明と本願発明では「x方向」及び「y方向」の定義が逆であることから、引用発明の「x方向」「テーブル9」及び「ステップモータ60」は、本願発明の「y方向」「y往復台」及び「yモータ」にそれぞれ相当し、同様の理由で、引用発明の「y方向」「ロッド61,62」及び「ステップモータ80」は、本願発明の「x方向」「x往復台」及び「xモータ」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「ナット69」及び「スピンドル68」は、本願発明の「スピンドルナット」及び「ねじスピンドル」にそれぞれ相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「上下に往復運動するように駆動可能な針と;
x-yテーブルと;
ミシンに取り付けられた電動機であるxモータであって、回転運動を直線運動に変換するドライブを介してx往復台と連結されているxモータと;
ミシンに取り付けられた電動機であるyモータであって、x方向に延在する摺動継手とスピンドルナットとねじスピンドルを介してy往復台に連結されているyモータと;を備えた目穴型ボタン穴用ミシン。」


<相違点>
・相違点1 本願発明はx方向の移動機構として、「ドライブがカムドライブ(35)であり、このカムドライブは前記xモータ(28)の従動軸(29)と接合されているカム(31)を備え、当該カムは前記xモータ(28)の軸(30)に対して螺旋を描く案内溝(32)を有すると共に、前記x往復台(19)に直結し前記案内溝(32)と係合するドライバ(33)」を有し、カムがxモータに直接取り付けられているのに対して、引用発明のドライブは、歯車81と、セグメント82及びリンク65によりドライブを構成している点。

・相違点2 x方向に延在する摺動継手が、本願発明は「スピンドルナット(41)に取り付けられ且つ前記y往復台(20)に設けられた駆動アーム(46、47)の案内孔(45)と係合する少なくとも1つのピン(43、44)を備えて成る」のに対し、引用発明の摺動継手は、ナット69の一部分である連行体69’と溝70からなる点。

・相違点3 x-yテーブルが、本願発明は「x方向のみの移動のためミシンに取り付けられたx往復台とy方向のみの移動のため前記x往復台に取り付けられたy往復台とを有」し、「x往復台がフレームであって、ミシン上を案内されると共に前記y往復台を支持するy案内棒を有する」構成であるのに対して、引用発明はそのようになっていない点。

5.検討
上記相違点について検討する。
・相違点1について
ドライバを本願発明のようなカムドライバによる駆動機構とすることは、ミシンのテーブルの駆動機構の技術分野において、従来周知の技術手段である(特開平9-299652号公報、特開平9-140963号公報(図6)、特開平8-117464号公報参照)。また、カム溝の形状についても、所望の運動を得るためにカム溝の形状を設計すること、及びモータにカムを直接取り付けることは、いずれも当業者が必要に応じて適宜選択する設計的事項に過ぎない。
よって、この周知技術を引用発明に適用して、本願発明の相違点1に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

・相違点2について
本願発明の摺動継手は、テーブルのx方向運動とy方向運動を独立して運動させることができるようにするためのものであり、本願当初明細書及び図面にも、それ以上の技術的意義は記載されていないから、テーブルのx方向運動とy方向運動を独立して運動させるという点において、本願発明の摺動継手は引用発明の摺動継手と同様である。
よって相違点2は実質的な相違点ではない。

・相違点3について
出願人は、平成19年9月18日付け意見書において、引用発明のテーブル9がy方向移動時にz方向にわずかに移動する旨主張しているが、z方向に移動せず水平方向「のみ」に移動する駆動機構は、ミシンのx-yテーブルの駆動機構の技術分野において、従来周知の技術手段である(例えば特開2000-300880号公報、特公昭62-25901号公報、特公昭62-54033号公報参照)。
そして、これら周知の駆動機構のどれを選択するかは、当業者が必要に応じて適宜選択する設計的事項に過ぎない。
また、ミシンのx-yテーブルの適所をフレームにより構成する点も、従来周知の技術手段である(例えば特開2000-300880号公報、特公昭62-25901号公報、参照)。
よって、これら周知技術を引用発明に適用して、本願発明の相違点3に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、本願発明が奏する効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できたものであり、格別顕著なものとはいえない。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-17 
結審通知日 2009-08-18 
審決日 2009-09-02 
出願番号 特願2003-199162(P2003-199162)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 熊倉 強
村山 禎恒
発明の名称 目穴型ボタン穴用ミシン  
代理人 藤田 アキラ  

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