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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04H
管理番号 1210256
審判番号 不服2008-1245  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-17 
確定日 2010-01-12 
事件の表示 特願2003-166652「内部空間を陰圧又は陽圧にできるテント」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月 6日出願公開、特開2005- 2645〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年6月11日に特許出願したものであって、平成19年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月18日受付けの手続補正がなされた。
これに対して、当審において、平成21年8月20日付けで、拒絶理由を通知したところ、同年10月23日受付けの意見書及び手続補正書が提出された。

2.本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成21年10月23日受付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】エアチューブからなる骨格の外側に外側天幕、内側に内側天幕、床面を形成する床敷きシートを有し、床敷きシートと外側天幕、または/および床敷きシートと内側天幕が、床敷きシートの全周にわたって固定具により接合されるテントであり、
前記テントの一側面に出入り口を有し、前記出入り口は、2枚のターポリンの側端部が重なるように吊り下げられて構成され、
前記テントの長さ方向の一端面または一端面部に吸気口、他端面または他端部に排気口を有し、
少なくとも排気口にフィルターを有する空気清浄機を取り付け、排気口以外からの排気を抑制して、内部空間を陰圧にするか、又は、
少なくとも吸気口にフィルターを有する空気清浄機を取り付け、吸気口以外からの吸気を抑制して、内部空間を陽圧にすることを特徴とする、
内部空間を陰圧又は陽圧にできるテント。」

3.刊行物の記載事項
(1)当審における拒絶理由で引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-333781号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(1a)「【0007】
【実施例】 図1および図2は、この発明のエアテント医療施設の概要を示した構成図である。たとえばこの図1および図2の平面図および側面図に例示したように、この発明の医療施設においては、送風機(1)および空気浄化装置としてのHEPAフィルター等のフィルター(2)を介して供給された空気によってエアテント(3)内を陽圧に保つ。・・・こうすることにより、エアテント(3)周囲からの外部汚染空気の侵入はないようにする。」、
(1b)「【0008】このようなエアテント(3)には、適宜な位置に出入口(10)を設け、この出入口にエアカーテン等によって外部空気との遮断を行うこともできる。エアテント(3)の設置部には、コンクリート基礎を打ち、エアテント(3)を支持固定する。エアテント(3)の大きさは適宜とすることができ、また、通常使用されている構造および材質が採用できる。
【0009】 たとえば、断熱効果、無発塵性等を考慮して、その材質を選択し、また、二重構造膜等とすることができる。その強度は、耐風性として最大40m/秒とし、・・・」、
(1c)「【0010】エアテント(3)内のエアーフローを説明すると、たとえば図3のように、送風機(1)には空調機(11)を設けてもよく、たとえばHEPA、あるいはULPA等のフィルター(2)等の浄化手段を介して外部の空気をエアテント(3)内に供給する。・・・」、
(1d)「【0011】給排気はダクト(15)によって直接エアテント(3)の外部と各々独立に、または切換ダンパを介するなどして行うこともできる。」。
(1e)図1には、エアテントの一側面に出入口(10)を設けたことが記載されている。
(1f)図3には、空調機11を設けた送風機1によりフィルター2等の浄化手段を介して外部の空気を、エアテント3の長さ方向の一端面から供給しており、エアテント3の長さ方向の他端部のダクト15により、エアテント3の外部に排気していることが記載されている。

上記(1a)の「エアテント(3)周囲からの外部汚染空気の侵入はないようにする。」との記載を参照すると、エアテント(3)は、吸気口以外からの吸気を抑制して、内部空間を陽圧にしているといえるから、これら(1a)?(1f)の記載事項を含む刊行物1全体の記載及び当業者の技術常識によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「二重構造膜のエアテントの長さ方向の一端面に吸気口、他端面に排気口を有し、
前記テントの一側面に出入口を有し、
少なくとも吸気口にフィルターを有する空調機を取り付け、吸気口以外からの吸気を抑制して、内部空間を陽圧にする、内部空間を陽圧にできるエアテント。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

(2)同じく、特開2003-64906号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(2a)「【請求項1】テントの頂部よりグランド部方向へ放射状に配設され、かつ中間にくの字状曲折部を有する複数の同形状縦気柱と、隣接する縦気柱の曲折部間それぞれに、水平に渡設された複数の横支柱部材と、前記縦気柱と横支柱部材の外側全周に着脱自在に装着された水密性シートを主要構成要素とすることを特徴とする多角形エアーハウス。」、
(2b)「【0008】・・・本発明の多角形エアーハウスにおいては、前述の各縦気柱と横支柱部材(横気柱)の外側全周に、着脱自在に水密性シートが装着されるが、その装着方法としては特に制限はなく、様々な方法を用いることができる。例えば、図1に示すように、床布3が敷設される場合には、該床布3に天幕裾固定用ジッパー5を取付けることにより、該水密性シート(天幕布)を着脱自在に装着することができる。・・・また、本発明の多角形エアーハウスにおいては、所望により、各縦気柱及び横支柱部材(横気柱)の内側に、内張り用シートを着脱自在に装着し、二重張りにすることができる。・・・該内張り用シートを着脱自在に装着する方法としては特に制限はないが、例えば縦気柱に取付けられた内布取付けジッパー6により、着脱自在に装着する方法を用いることができる。・・・」、
(2c)「【0010】各縦気柱1の底部が接合された床布3としては、ナイロン66繊維からなる基布の片面に、熱可塑性ポリウレン樹脂をコーティングした厚さ0.50mmのシートを用いた。・・・このような構造の骨格に、床布3に取付けた天幕裾固定用ジッパーと、空気集中袋4の上面に取付けた天幕固縛紐及び天幕布の頂部に取付けた固縛紐により、ナイロン66繊維からなる基布の両面に熱可塑性ポリウレタン樹脂をコーティングした厚さ0.15mmの水密性シート(天幕布)が着脱自在に装着されている。また、ナイロン66繊維からなる基布の片面に、熱可塑性ポリウレタン樹脂をコーティングした厚さ0.18mmの内張りシートが、内布取付けジッパー6により、着脱自在に装着されている。・・・」

(3)同じく、特開平9-287319号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(3a)「【0011】本発明は、風雨に対して安定して起立し、グランドシ-トと支柱との取付け取外しが容易且つ迅速にでき、更に、空気漏れの要因箇所を可及的に少なくし、加えて折り畳み格納時の小型化を実現すると共に加工コストを低減した膨脹型簡易ハウスを提供するものである。」、
(3b)「【0015】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明の膨脹型簡易ハウスの出入口面を一部切除して示す正面図で、本発明に係る膨脹型簡易ハウスは骨格を構成する支柱、梁、棟、桟が膨脹気室になり、天蓋が骨格と一体に設けられ、支柱1の底部をグランドシ-ト2の上に着脱自在に設置されている。」、
(3c)「【0024】支柱1に支えられる天蓋29は骨格に一体に設置され、天蓋29の裾30に設けた有鈎ファスナ-31とグランドシ-ト2に設けた有鈎ファスナ-32とでグランドシ-ト2に着脱自在に取り付けてある。」。

4.対比・判断
請求項1に係る発明と、上記刊行物1記載の発明を比較すると、刊行物1記載の発明の「フィルターを有する空調機」、「エアテント」、「出入口」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「フィルターを有する空気清浄機」、「テント」、「出入り口」に相当し、また、刊行物1記載の発明の「二重構造膜」と、請求項1に係る発明の「外側天幕及び内側天幕」とは、「二重膜」で共通するから、
両者は、
「二重膜を有するテントであり、テントの長さ方向の一端面に吸気口、他端面に排気口を有し、
前記テントの一側面に出入り口を有し、
少なくとも吸気口にフィルターを有する空気清浄機を取り付け、吸気口以外からの吸気を抑制して、内部空間を陽圧にする、内部空間を陽圧にできるテント。」
の点で一致し、下記の点で相違している。
<相違点1>
テントが、請求項1に係る発明では、エアチューブからなる骨格の外側に外側天幕、内側に内側天幕、床面を形成する床敷きシートを有し、床敷きシートと外側天幕、または/および床敷きシートと内側天幕が、床敷きシートの全周にわたって固定具により接合されるのに対して、刊行物1記載の発明では、二重膜を有しているが、二重膜の具体的構成、床敷シートの有無は不明な点。
<相違点2>
出入り口が、請求項1に係る発明では、2枚のターポリンの側端部が重なるように吊り下げられて構成されているのに対し、刊行物1記載の発明では、出入り口の構成は限定されていない点。

上記相違点1について検討すると、エアテントとして、エアチューブからなる骨格の内外に天幕を有し、床敷きシートと外側天幕が、固定具により接合されるテントは、刊行物2、3に記載されているように本願出願前から知られている(記載事項(2b)(2c)(3c)参照)。
そして、刊行物1記載の発明のテントは、容易に設置できるものであることが望ましいことは明らかであり、また、内部空間を陽圧にしようとするものであり、気密性の高いことが望ましいことも明らかであるから、刊行物1記載の発明のテントの構造として、これら刊行物2、3記載の発明を構造を採用し、エアチューブからなる骨格を有するものとし、床敷シートを設けると共に、外側天幕と床敷シートとを固定具で固定することは、当業者が容易に想到しうることである。
さらに、より気密性を高めるために、床敷きシートを外側天幕だけでなく、内側天幕とも固定具により固定すること、あるいは、内側天幕とのみ固定具により固定することも適宜なしうることである。

次に、上記相違点2について検討すると、刊行物1にはテントの膜の材料は適宜選択できることが記載されているところ、ターポリンは気密性、防水性がありテントの膜材として周知であり、また、テントの出入り口を、2枚の膜材の側端部が重なるように吊り下げて構成することも、本願出願前周知の技術であるから(例えば、実願昭60-159741号(実開昭62-67060号)のマイクロフイルム、特開昭61-158580号公報参照)、刊行物1記載の発明において、出入り口を、2枚のターポリンの側端部が重なるように吊り下げられたものとすることは、上記周知技術に基いて当業者が容易になしうることである。

そして、請求項1に係る発明の効果は、刊行物1記載ないし3記載の発明並びに上記周知技術から予測できる程度のものである。
したがって、請求項1に係る発明は、刊行物1記載ないし3記載の発明並びに上記周知技術を適用して当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、刊行物1ないし刊行物3記載の発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-10 
結審通知日 2009-11-12 
審決日 2009-11-26 
出願番号 特願2003-166652(P2003-166652)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 住田 秀弘江成 克己  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 神 悦彦
関根 裕
発明の名称 内部空間を陰圧又は陽圧にできるテント  

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