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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1210525
審判番号 不服2008-6746  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-19 
確定日 2010-01-20 
事件の表示 特願2002-378782「容器体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月29日出願公開、特開2004-210296〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年12月27日の出願であって、平成20年2月12日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年3月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月31日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年3月31日付け手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成20年3月31日付け手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

【理由】
2-1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項1に、
「使用に伴って減少する内容物が容器本体に収容されてなる容器体において、
前記内容物を着色する一方、
前記容器本体を透明性を有した部材で構成し、該容器本体に、前記内容物と共同して当該内容物と異なる色を形成する着色部及び前記内容物と同系色の同系着色部を設けるとともに、
前記着色部が形成する着色部単体形状と前記同系着色部が形成する同系着色部単体形状とが一体となって組合せ意匠を成立するように前記着色部と前記同系着色部とを配置したことを特徴とする容器体。」
とあるのを、
「使用時に蒸散して減少する液状薬剤が容器本体に収容されてなる容器体において、
前記液状薬剤を着色する一方、
前記容器本体を透明性を有した部材で構成し、該容器本体に、前記液状薬剤と共同して当該液状薬剤と異なる色を形成する着色部及び前記液状薬剤と同系色の同系着色部を設けるとともに、
前記着色部が形成する着色部単体形状と前記同系着色部が形成する同系着色部単体形状とが一体となって組合せ形状の意匠を成立するように前記着色部と前記同系着色部とを配置したことを特徴とする容器体。」
とする補正を含むものである。(なお、下線は補正箇所を示す。)

補正後の請求項1は、補正前の請求項1に「使用に伴って減少する内容物」及び「組合せ意匠」とあるのを、それぞれ「使用時に蒸散して減少する液状薬剤」及び「組合せ形状の意匠」と限定するものである。また、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されたとおりのものと認める。

2-3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭60-114348号(実開昭62-22930号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という)及び実公昭43-15357号公報(以下、「引用例2」という)には、以下の各事項及び各引用発明が記載されている。

【引用例1について】
(1)「液体を収容すべき透光性容器1の外周面に貼り付けられるラベル2に、前記容器1の縦方向に沿って有色半透明の表示ライン3を形成したことを特徴とする液量表示装置。」(【実用新案登録請求の範囲】参照)

(2)「この容器1内のオレンジジュースはオレンジ色をしているため、この色が表示ライン3の各色に重なって、液が存在している部分の表示ライン3は赤+オレンジ=赤味の増したオレンジ、黄+オレンジ=濃黄色、青+オレンジ=深緑、となり、空の部分の表示ライン3の色が赤、黄、青のままであるのと異なるため、その境界が明示され、液量が表示される。」(第3頁16行?第4頁3行参照)

(3)「本考案によれば、表示ラインを介して液面の陰影が映し出され、液体の量を一目で確認でき、便利である。また、容器内の液体が有色であるときは、表示ラインの半透明色に液体の色が重なって、表示ラインの色が変化するため、さらに液量の表示が確実となり、また、色の変化も楽しめ、意匠的にもおもしろい。」(第4頁16行?第5頁2行参照)

以上の記載によると、引用例1には、
「液体を収容すべき透光性容器1の外周面に貼り付けられるラベル2に、前記容器1の縦方向に沿って有色半透明の表示ライン3を形成し、
表示ラインの半透明色に液体の色が重なって、表示ラインの色が変化するため、さらに液量の表示が確実となり、また、色の変化も楽しめ、意匠的にもおもしろい液量表示装置。」の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。

【引用例2について】
(4)「図面に示すように洋酒等のビン1の表面に洋酒等内容液と同じ色の塗装で希望する絵を描き、内容液3の増減によつて希望する絵を見せることを特徴とした、洋酒等のビン。」(【実用新案登録請求の範囲】参照)及び第1-3図。

以上の記載によると、引用例2には、
「洋酒等のビン1の表面に洋酒等内容液と同じ色の塗装で希望する絵2を描き、内容液3の増減によって希望する絵2を見せる洋酒等のビン。」の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されていると認められる。

2-4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明2とを比較すると、
引用発明2の「ビン1」、「絵2」及び「同じ色」は、それぞれ本願補正発明の「容器体」、「着色部」及び「同系色」に相当し、
また、引用発明2の「洋酒等内容液3」及び本願補正発明「蒸散する液状薬剤」は、いずれも容器本体に収容される「内容物」であることより、両者は、
「使用時に減少する内用物が容器本体に収容されてなる容器体において、
前記容器本体を透明性を有した部材で構成し、該容器本体に、着色部を設けた容器体。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;内容物が、本願補正発明では、蒸散する液状薬剤であり、着色しているのに対し、引用発明2では、洋酒等内容液である点。

相違点2;容器本体に設けられた着色部が、本願補正発明では、内容物と共同して当該内容物と異なる色を形成する着色部及び前記内容物と同系色の同系着色部であるとともに、前記着色部が形成する着色部単体形状と前記同系着色部が形成する同系着色部単体形状とが一体となって組合せ形状の意匠を成立するように前記着色部と前記同系着色部とを配置したものであるのに対し、引用発明2では、内容物と同じ色の絵2である点。

2-5.判断
そこで、上記各相違点を検討すると、
・相違点1について
引用発明2において、洋酒等内容液も、蒸散する液状芳香剤等と同様に、使用に伴って減少し、色を有するものである。
また、蒸散する液状芳香剤等を収容する容器において、その表面に絵や字などのデザインを設けることは、本願出願前に周知の技術であり(例えば、特開2002-2830号公報の段落【0011】参照)、さらに、該液状芳香剤等を着色することについても、例を挙げるまでもなく本願出願前に周知の技術である。
よって、引用発明2において、上記内容物の類似性及び上記周知の技術を考慮すれば、該内容物を洋酒等内容液に換えて着色された蒸散する液状薬剤とすることは、当業者なら容易になし得たものである。

・相違点2について
引用発明1は、液体を収容すべき透光性容器1の外周面に貼り付けられるラベル2に、前記容器1の縦方向に沿って有色半透明の表示ライン3を形成し、表示ラインの半透明色の液体の色が重なって、表示ラインの色が変化するもの、すなわち、容器本体に内容物と共同して当該内容物と異なる色を形成する着色部を設けるものである。また、引用発明1は、色の変化も楽しめ、意匠的にもおもしろいものでもある。
よって、引用発明2において、意匠的な効果を付加するために、引用発明1を適用して、ビン1の表面に描かれた内容液と同じ色の絵2を、該同じ色に該内容液と異なる色を組み合わせたものとすること、すなわち、容器本体に設けられた着色部が、内容物と共同して当該内容物と異なる色を形成する着色部及び前記内容物と同系色の同系着色部であるとともに、前記着色部が形成する着色部単体形状と前記同系着色部が形成する同系着色部単体形状とが一体となって組合せ形状の意匠を成立するように前記着色部と前記同系着色部とを配置したものとすることは、当業者なら容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明1及び2から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容
易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、透明容器に内容物と異なる色の絵や図形を設けることについては、例えば、特開平6-124064号公報の段落【0002】及び実願昭62-118824号(実開昭64-23448号)のマイクロフィルムにも記載されているように本願出願前に周知の技術である。

2-6.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成20年3月31日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成19年8月31日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正前の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。

4.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項及び引用発明は、前記「2-3.引用発明」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2-2.本願補正発明」で検討した本願補正発明の「使用時に蒸散して減少する液状薬剤」及び「組合せ形状の意匠」から、それぞれ「使用に伴って減少する内容物」及び「組合せ意匠」と、限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の特定するための事項を包含し、さらにより限定された本願補正発明が、前記「2-4.対比」及び「2-5.判断」に記載したとおり引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-09 
結審通知日 2009-11-17 
審決日 2009-11-30 
出願番号 特願2002-378782(P2002-378782)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武内 大志  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 谷治 和文
熊倉 強
発明の名称 容器体  
代理人 三好 千明  

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