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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E01F |
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管理番号 | 1210528 |
審判番号 | 不服2008-10180 |
総通号数 | 123 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-04-23 |
確定日 | 2010-01-20 |
事件の表示 | 特願2000-389681「自発光式視線誘導標」拒絶査定不服審判事件〔平成14年7月5日出願公開,特開2002-188125〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成12年12月22日の出願であって,平成20年3月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成20年4月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。 その後,当審において,平成21年4月27日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年6月10日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成20年4月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成20年4月23日付けの手続補正を却下する。 [理由] 【1】補正後の本願発明 平成20年4月23日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりに補正された。 「標示部に矢印形状に形成された再帰反射面と、当該矢印形状の外周縁から少なくとも離れた外側に、前記矢印形状の輪郭の全周に沿って取付けられた点滅する発光体による矢印形状とが形成され、該発光体は全体が同時に点滅することで、発光体の消灯時には、ヘッドライトの光を受けて反射した再帰反射面の矢印形状を表出させ、発光体の点灯時には、再帰反射面の矢印形状とこの矢印形状から離れた外側に当該矢印形状の輪郭の全周に沿って取付けられた発光体による矢印形状とを同時に表出させて、標示部の矢印が発光体の点滅に同調して交互に大きさを変えて見えるようになされていることを特徴とする自発光式視線誘導標。」 上記補正は,本件補正前(平成20年1月7日付けの手続補正書を参照。)の請求項1に係る発明の「発光体」の取付位置を,「矢印形状の輪郭に沿って」取付けるものから,「矢印形状の輪郭の全周に沿って取付け」るものに限定するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで,本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。 【2】刊行物及びその記載内容 刊行物:特開平5-106211号公報 原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された上記刊行物には,「警告用表示装置」に関し,図面とともに,次のことが記載されている。 (1)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は反射板と発光源とを併用した警告用表示装置に関するものであって、主に道路に一時的に設置して交通規制のための警告を行なう表示装置として利用される。」 (2)「【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、光の反射により警告効果を増大可能な反射板と遠方から認識容易な発光源とを併用し、発光源を反射板の表面に配置した従来の警告用の表示装置では、夜間に自動車が接近してその前照灯が反射板を照射したとき発光源の出射光が消失して表示が変更されたように思わせやすく、交通安全の面で問題がある、という点である。」 (3)「【0009】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明は所定の表示像を形成した反射板をパネルの表面に重ねて固定するとともに、この反射板を囲んでその周縁に沿う溝をパネルに設け、多数個の発光源を溝内にパネル表面から突出させることなく配置する、という構成とし、反射板に光が照射しても発光源の出射光を消失させることなく認識させ正確な警告を行なう、という目的を達成させるようにした。」 (4)「【0010】 【作用】パネルを道路面に直角に立てて電源を接続し発光源を所定のパターンで点滅させ警告を行なう。夜間に自動車が接近して前照灯が反射板を照射すると反射板全体が反射光を発し、その周囲の発光源からの出射光は消失することなく認識される。」 (5)「【0011】 【実施例】図1、2、3を参照して本発明の実施例を説明すると、中空板状のパネル1の表面板11に所定の表示像、即ち自動車を誘導する矢印の形状に形成された光輝アルミニウム合金からなる反射板2が重ねられ、その外側周縁部に重ねた押え枠21を表面板11にねじ止めまたは接着することによって固定されている。 【0012】反射板2が形成する矢の尾端と矢尻の後端とを除いて反射板2を囲みその周縁に沿って延びる溝12がパネル1に形成されており、細長い光源部材3がパネル1の裏面側から溝12に嵌込まれている。 【0013】即ち、光源部材3は表面に低い反射性を有する基板31の表面にレンズで覆った発光ダイオードからなる発光源32の多数個を小さい間隔で一列に点状に配置するとともに、裏面に発光ダイオードを点灯させる配線を設けた配線板33を重ね合せた構成であり、基板31と発光源32とを溝12に嵌込んで配線板33をパネル1の裏面板13にねじ止めにより取外し可能に固定した。・・・」 (6)「【0014】矢印形状の反射板2を囲んだ溝12は四個であり、それぞれに嵌込まれた四個の光源部材3は裏面板13に固定した定電圧・定電流回路34と点滅制御回路35とによって点滅する。即ち、6Vまたは12Vの電池或いは交流100Vの電源を定電圧・定電流回路34に導電線36によって供給し、定格の電圧・電流に調整した電力を点滅制御回路35に送って予め設定したパターンで点滅するように制御した信号を信号線37により各光源部材3に供給するものであり、例えば反射板2が形成する矢の両側二個ずつの光源部材3の発光源32が矢の尾端から先端へ向かって順に点灯して発光する動作を繰返させることにより、矢印の方向へ自動車を走行させることを示唆する。」 (7)「【0016】このような構成の本実施例は、道路工事のため走行路線を変更させるため道路面に一時的に直立状態で設置するか、または山岳地帯における道路の路肩に恒久的に直立状態で設置して使用するものであって、電源を接続して発光源32を所定のパターンで点滅させることにより遠方からも認識させる。夜間に自動車が接近してその前照灯が反射板2を照射するとその全面が高光度の反射光を発し矢印の形状を明瞭に現出させる。このとき、反射板2の周囲で点滅する発光源32からの出射光は反射光と重ならないため消失することがなく、従って反射光が走行路線変更個所或いは急カーブ地点に接近したことを知らせるとともに、出射光が表示に変更のないことを理解させ、自動車の運転を誤らせない。」 (8)「【0020】 【発明の効果】本発明によると、反射板の外側に沿って発光源を配置したことにより、自動車の前照灯が反射板を照射しても発光源からの出射光は反射板の反射光によって消失することがなく、このため出射光による警告を継続したまま反射光によって走行路線変更個所などに接近したことを認識させ、誤解により自動車の運転を誤らせる不都合をなくして交通安全に寄与するものである。・・・」 上記(1)?(8)の記載及び当業者の技術常識によれば,刊行物には,次の発明(以下,「刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「パネル1の表面板11に,自動車を誘導する矢印形状に形成された光輝アルミニウム合金からなる反射板2が重ねられ,その外側周縁部に重ねた押え枠21を前記表面板11にねじ止めまたは接着することによって,前記反射板2が前記表面板11に固定され, 前記パネル1に前記反射板2が形成する矢印形状の矢の尾端と矢尻の後端とを除いて反射板2を囲みその周縁に沿って延びる四個の溝12が形成され,それぞれの溝12内に,基板31の表面に発光ダイオードからなる発光源32の多数個を小さい間隔で一列に点状に配置するとともに裏面に前記発光源32を点灯させる配線を設けた配線板33を重ね合せて構成した細長い光源部材3が配置され, 前記発光源32は,前記パネル1の裏面板13に固定された定電圧・定電流回路34と点滅制御回路35とによって予め設定された所定のパターンで点滅するようになされており, 前記発光源32は反射板2の周囲で点滅する際に,自動車の前照灯が前記反射板2を照射すると当該反射板2の全面が高光度の反射光を発してその矢印形状を明りょうに現出させるとともに,前記反射板2の周囲で点滅する発光源32からの出射光が,前記反射板2からの矢印形状の反射光により消失することがないよう当該反射光と重ならない周囲に現出させて,運転者に,前記反射板2からの矢印形状の反射光が急カーブ地点に接近したことを知らせるとともに,前記発光源32からの出射光が表示に変更のないことを理解させ,自動車の運転を誤らせないようになされている警告用表示装置。」 【3】対比・判断 〔1〕補正発明と刊行物記載の発明との対比 (1)刊行物記載の発明の「パネル1の表面板11」は,補正発明の「標示部」に相当する。 (2)刊行物記載の発明の「自動車を誘導する矢印形状に形成された光輝アルミニウム合金からなる反射板2」は,パネル1の表面板11に固定されるものであるから,当該反射板2により,表面板11に矢印形状の反射面が形成されるものである。 (3)刊行物記載の発明の「発光ダイオードからなる発光源32」は,パネル1の裏面板13に固定された定電圧・定電流回路34と点滅制御回路35とによって予め設定された所定のパターンで,かつ,反射板2の周囲で点滅するようになされているから,補正発明の「(点滅する)発光体」に相当する。 (4)刊行物記載の発明の「反射板2が形成する矢印形状の矢の尾端と矢尻の後端とを除いて反射板2を囲みその周縁に沿って延びる四個の溝12」は,図1,3を参照すると,反射板2の外側周縁部に重ねた押え枠21と表面板11とのねじ止めまたは接着部分の外側において,反射板2を囲みその周縁に沿って延びるようにパネル1に形成されるものであるから,反射板2の矢印形状の外周縁から少なくとも離れた外側に,当該矢印形状の輪郭に沿って形成されているものである。 そうすると,前記「四個の溝12」内にそれぞれ配置される「基板31の表面に発光ダイオードからなる発光源32の多数個を小さい間隔で一列に点状に配置するとともに裏面に発光源32を点灯させる配線を設けた配線板33を重ね合せて構成した細長い光源部材3」の組み合わせにより,発光源32による点滅する矢印形状が形成されるものである。 (5)刊行物記載の発明の「警告用表示装置」は,運転者に,反射板2が形成する矢印形状の反射光が急カーブ地点に接近したことを知らせるとともに発光源32からの出射光が表示に変更のないことを理解させ,自動車の運転を誤らせないようになされているものであるから,補正発明の「自発光式視線誘導標」に相当する。 (6)刊行物記載の発明の「発光源32は,パネル1の裏面板13に固定した定電圧・定電流回路34と点滅制御回路35とによって予め設定された所定のパターンで点滅する」と,補正発明の「発光体は全体が同時に点滅する」とは,「発光体は全体が予め設定された所定のパターンで点滅する」で共通する。 そうすると,両者は, 「標示部に矢印形状に形成された反射面と,当該矢印形状の外周縁から少なくとも離れた外側に、前記矢印形状の輪郭に沿って取付けられた点滅する発光体による矢印形状とが形成され,該発光体は全体が予め設定された所定のパターンで点滅するようになされている自発光式視線誘導標。」の点で一致し,次の点で相違する。 <相違点1> 矢印形状の反射面について, 補正発明では,矢印形状の反射面が「再帰反射面」であるのに対し, 刊行物記載の発明では,矢印形状の反射面が光輝アルミニウム合金からなる反射板2により形成されているものの,それが再帰反射面であるのか定かでない点。 <相違点2> 矢印形状を形成する発光体の取付けについて, 補正発明では,発光体が(再帰)反射面の「矢印形状の輪郭の全周に沿って取付けられ」ているのに対し, 刊行物記載の発明では,反射板2が形成する矢印形状の矢の尾端と矢尻の後端とを除いて反射板2を囲みその周縁に沿って延びる四個の溝12内にそれぞれ(多数個の発光源32を小さい間隔で一列に点状に配置した)細長い光源部材3が配置されるものであって,発光体(発光源32)が,反射面(反射板2)の矢印形状の外周縁から少なくとも離れた外側に当該矢印形状の輪郭の全周に沿って取付けられていない点。 <相違点3> 発光体の点滅並びに(再帰)反射面の矢印形状及び発光体による矢印形状の表出について, 補正発明では,「発光体は全体が同時に点滅することで、発光体の消灯時には、ヘッドライトの光を受けて反射した再帰反射面の矢印形状を表出させ、発光体の点灯時には、再帰反射面の矢印形状とこの矢印形状から離れた外側に当該矢印形状の輪郭の全周に沿って取付けられた発光体による矢印形状とを同時に表出させて、標示部の矢印が発光体の点滅に同調して交互に大きさを変えて見える」ようになされているのに対し, 刊行物記載の発明では,発光源32が反射板2の周囲で点滅する際に,自動車の前照灯が反射板2を照射すると当該反射板2の全面が高光度の反射光を発してその矢印形状を明りょうに現出させるとともに,反射板2の周囲で点滅する発光源32からの出射光が,前記反射板2からの矢印形状の反射光により消失することがないよう当該反射光と重ならない周囲から離れた外側に現出させるものであって,発光体は全体が点滅することで,ヘッドライトの光を受けて反射した反射面の矢印形状を表出させるとともに,反射面の矢印形状とこの矢印形状から離れた外側に当該矢印形状の輪郭に沿って取付けられた発光体による矢印形状を表出させることができるものの,発光体の全体が同時に点滅するのか定かでなく,したがって,発光体の消灯時と点灯時とにおいて,反射面の矢印形状及び発光体による矢印形状の表出が,上記のようになされるのか定かでない点。 〔2〕相違点の検討 <相違点1について> 先ず,「再帰反射」とは,一般的に,入射した方向と同じ方向に反射することであるところ,刊行物記載の発明において,「パネル1の表面板11」に固定された「自動車を誘導する矢印形状に形成された光輝アルミニウム合金からなる反射板2」は,「自動車の前照灯が反射板2を照射すると当該反射板2の全面が高光度の反射光を発してその矢印形状を明りょうに現出させ」ることにより,運転者に,急カーブ地点に接近したことを知らせるものであるから,前記反射板2により形成される矢印形状の反射面は再帰反射性能を有しているものと一応推測することができる。 ところで,反射面を再帰反射面にすることは,例えば,特開2000-265425号公報(拒絶査定時等に提示された文献。),特開平8-27737号公報,実願平1-16561号(実開平2-109821号)のマイクロフィルムに記載されているように,道路標識の技術分野において従来から周知の技術といえるものである。 してみると,上記各技術事項に照らせば,引用例記載の発明において,反射面を再帰反射面にするようにして,補正発明の相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到しえたものと認められる。 <相違点2について> 発光体を再帰反射面の輪郭の全周に沿って取付けることは,例えば,上記特開2000-265425号公報(但し,反射面の外周縁から少なくとも離れた外側に取付けられていない。),上記特開平8-27737号公報(図1,段落【0008】を参照。),上記実願平1-16561号(実開平2-109821号)のマイクロフィルムに記載されているように,道路標識の技術分野において従来から周知の技術といえるものである。 してみると,引用例記載の発明において,発光体を再帰反射面の輪郭の全周に沿って取付けるようにして,補正発明の相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到しえたものと認められる。 <相違点3について> 先ず,補正発明の相違点3に係る「発光体の消灯時には、ヘッドライトの光を受けて反射した再帰反射面の矢印形状を表出させ、発光体の点灯時には、再帰反射面の矢印形状とこの矢印形状から離れた外側に当該矢印形状の輪郭の全周に沿って取付けられた発光体による矢印形状とを同時に表出させて、標示部の矢印が発光体の点滅に同調して交互に大きさを変えて見えるようになされている」との構成については, 本願出願当初の明細書に,「・・・前記矢印などの再帰反射面の外周縁から少なくとも離れた外側に、前記再帰反射面の輪郭に沿って点滅する発光体が形成されると、前記発光体が消えたときには車のヘッドライトを再帰反射面に受けて再帰反射光が放たれ、発光体が点灯したときには、少なくとも前記再帰反射光とその再帰反射光の外周縁から発する発光体の自発光とが一体となって見えるようになるので、発光体の点滅に応じて標示部の矢印などが大小交互に見えるようになる。」(段落【0011】を参照。)と記載され, また,審判請求書においても,「『標示部に矢印形状に形成された再帰反射面と、当該矢印形状の外周縁から少なくとも離れた外側に、前記矢印形状の輪郭の全周に沿って取付けられた点滅する発光体による矢印形状とが形成され』たとの構成と、『該発光体は全体が同時に点滅する』との構成とにより、『発光体の消灯時には、ヘッドライトの光を受けて反射した再帰反射面の矢印形状を表出させ、発光体の点灯時には、再帰反射面の矢印形状とこの矢印形状から離れた外側に当該矢印形状の輪郭の全周に沿って形成された発光体による矢印形状とを同時に表出させて、標示部の矢印が発光体の点滅に同調して交互に大きさを変えて見えるようになされている』ものであります。」(請求書4頁11?19行を参照。)と記載されていることからすると, 「標示部に矢印形状に形成された再帰反射面と、当該矢印形状の外周縁から少なくとも離れた外側に、前記矢印形状の輪郭の全周に沿って取付けられた点滅する発光体による矢印形状とが形成され」たものにおいて,「発光体は全体が同時に点滅する」ものでありさえすれば,上記「発光体の消灯時には、ヘッドライトの光を受けて反射した再帰反射面の矢印形状を表出させ、発光体の点灯時には、再帰反射面の矢印形状とこの矢印形状から離れた外側に当該矢印形状の輪郭の全周に沿って取付けられた発光体による矢印形状とを同時に表出させて、標示部の矢印が発光体の点滅に同調して交互に大きさを変えて見えるようになされている」との構成は,結果的に備わることになるものと解される。 ところで,刊行物記載の発明において,反射面を再帰反射面とすること,及び,当該反射面の矢印形状の輪郭の全周に沿って取付けられた点滅する発光体による矢印形状を形成するようにすることについては,上記<相違点1について><相違点2について>で説示したとおりであるところ,当該発明においては,「発光源32は,パネル1の裏面板13に固定された定電圧・定電流回路34と点滅制御回路35とによって予め設定された所定のパターンで点滅するようになされ」ているものであり,これによれば,発光源32(発光体)の点滅パターンは任意に決定できるものと解されるから,当該発明は,発光源32を同時に点滅させる点滅パターンを除外していないものと思量される。(上記刊行物には,実施例についての記載の中で,「例えば反射板2が形成する矢の両側二個ずつの光源部材3の発光源32が矢の尾端から先端へ向かって順に点灯して発光する動作を繰返させることにより、矢印の方向へ自動車を走行させることを示唆する。」(段落【0014】を参照。)との記載がなされているものの,これは,「例えば」と記載されているように,上記「所定のパターンで点滅」の一態様とみることができる。) 因みに,発光体の全体を同時に点滅させることは,例えば,登録実用新案第3000044号公報(前置審査時に提示。),特開平9-88019号公報(前置審査時に提示。但し,複数の誘導標を同時点滅させるものである。),特開平10-203238号公報に記載されているように,道路標識の技術分野において従来から周知の技術といえるものである。 してみると,上記各技術事項に照らせば,引用例記載の発明において,発光体を全体が同時に点滅するようにして,補正発明の相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到しえたものと認められる。 〔3〕作用効果・判断 そして,補正発明の全体の構成により奏する「ドライバーは前方の状況判断がより明確に出来るようになり、効果的な安全走行がはかれるようになる。」等の作用効果は,刊行物記載の発明及び道路標識の技術分野における周知の技術から当業者が予測できる範囲内のものであって,格別なものということができない。 よって,補正発明は,刊行物記載の発明及び道路標識の技術分野における周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 【4】むすび 以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 平成20年4月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1,2に係る発明は,平成20年1月7日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 「【請求項1】標示部に矢印形状に形成された再帰反射面と、当該矢印形状の外周縁から少なくとも離れた外側に、前記矢印形状の輪郭に沿って、点滅する発光体による矢印形状とが形成され、該発光体は全体が同時に点滅することで、発光体の消灯時には、ヘッドライトの光を受けて反射した再帰反射面の矢印形状を表出させ、発光体の点灯時には、再帰反射面の矢印形状とこの矢印形状から離れた外側に当該矢印形状の輪郭に沿って形成された発光体による矢印形状とを同時に表出させて、標示部の矢印が発光体の点滅に同調して交互に大きさを変えて見えるようになされていることを特徴とする自発光式視線誘導標。 【請求項2】(記載を省略する。)」 【1】刊行物及びその記載内容 原査定に引用され本願出願前に頒布された刊行物及びその記載内容は,上記「第2.【2】」のとおりである。 【2】対比・判断 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2.」で検討した補正発明における「発光体」の取付位置について,「矢印形状の輪郭の全周に沿って取付け」るものから,「全周に」との限定を省略したものである。 そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が,上記「第2.【3】」で説示したとおり,刊行物記載の発明及び道路標識の技術分野における周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物記載の発明及び道路標識の技術分野における周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【3】むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物記載の発明及び道路標識の技術分野における周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-17 |
結審通知日 | 2009-11-24 |
審決日 | 2009-12-07 |
出願番号 | 特願2000-389681(P2000-389681) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E01F)
P 1 8・ 575- Z (E01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須永 聡、桐山 愛世 |
特許庁審判長 |
伊波 猛 |
特許庁審判官 |
関根 裕 宮崎 恭 |
発明の名称 | 自発光式視線誘導標 |