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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1212106
審判番号 不服2008-2652  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-07 
確定日 2010-02-15 
事件の表示 特願2003-388491「配線基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日出願公開、特開2005-150552〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成15年11月18日の出願であって、平成19年9月6日付けで拒絶理由通知がなされ、同年11月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年2月7日に拒絶査定を不服として審判請求がなされるとともに、同年3月7日に手続補正書が提出されたものである。

[2]平成20年3月7日付け手続補正の適否について
平成20年3月7日付け手続補正は、特許請求の範囲の請求項1を削除するとともに、請求項3を請求項1に繰り上げたものであり、請求項の削除を目的とするものに該当する。

[3]本願発明
したがって、本願請求項1、2に係る発明は、平成20年3月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「平均粒径が1.0μm以上で且つ10.0μm以下のSiO_(2) からなる無機フィラを30wt%以上で50wt%以下含むエポキシ樹脂を主成分とする樹脂絶縁層の表面、かかる表面に開口するビアホール、および少なくとも上記樹脂絶縁層を貫通するスルーホールを同時に粗化する粗化工程を含み、
上記粗化工程は、ジエチレングリコール-n-ブチル、アニオン系界面活性剤、および水酸化ナトリウムを含む溶液中に浸漬する膨潤処理と、その後において、70℃以上で且つ85℃以下において過マンガン酸液に20分以上浸漬する粗化処理と、を含む、ことを特徴とする配線基板の製造方法。」

[4]引用刊行物の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2003-258436号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a)「【発明の実施の形態】次に、本発明の配線基板およびその製造方法を添付の図面に基づいて詳細に説明する。……
本発明の配線基板は、…コア基板4の主面に、エポキシ樹脂からなる絶縁樹脂層5と金属層から成る配線導体2bとを交互に積層して成る。」(【0021】【0022】)

(b)「さらに、コア基板の主面には、絶縁樹脂層5が被着形成されている。絶縁樹脂層5は、銅めっきから成る配線導体2bの支持体としての機能を有し、…エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と平均粒径が0.01?2μmで含有量が10?50重量%のシリカや…等の無機絶縁フィラーとから成る。無機絶縁フィラーは、…絶縁樹脂層5の表面に適度な凹凸を形成し、配線導体2bと絶縁樹脂層1b(「5」の誤記)との密着性を良好となす機能を有する。」(【0039】)

(c)「絶縁樹脂層5には、レーザ加工により貫通孔が形成されている。さらに、絶縁樹脂層5上に後述する方法で銅めっきから成る配線導体2bを、貫通孔の内部に銅めっきから成る貫通導体3bを形成した後、同様にして次の絶縁樹脂層5を順次積み重ねることによって積層されて図3(c)に断面図で示す配線基板が製造される。」(【0063】)

(d)「このような銅めっきから成る配線導体2bおよび貫通導体3bは、次に述べる方法により形成される。まず、絶縁樹脂層5の表面および貫通孔の内壁を過マンガン酸塩類水溶液等の粗化液に浸漬し表面を粗化した後、…無電解銅めっき層を析出させる。」(【0065】)

(e)図3(c)には、絶縁樹脂層に「貫通孔」として該樹脂層表面に開口する「ビアホール」を設けたものが示されている。

また、同様に原査定において拒絶の理由に引用された、特開平8-186351号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(f)「基板10を構成する絶縁材としては、例えば、エポキシ樹脂…等が挙げられる。」(【0010】

(g)「過マンガン酸処理においては、回路板を過マンガン酸による処理の前に回路板を膨潤剤に浸漬することが望ましい。膨潤剤は、絶縁材の表面を膨潤させ、以後の工程においえる酸化処理において、樹脂表層部の除去の有効となる。…膨潤剤としては、例えば、ジエチレングリコール-n-ブチル、アニオン系界面活性剤、および水酸化ナトリウムからなるものが好適に使用される。」

上記記載事項(a)-(e)によれば、引用例1には、
「平均粒径が0.01?2μmのシリカからなる無機絶縁フィラーを10?50重量%含むエポキシ樹脂を主成分とする絶縁樹脂層の表面、およびかかる表面に開口を有するビアホールを同時に粗化する粗化工程を含み、
上記粗化工程は、過マンガン酸塩類水溶液に浸漬する粗化処理、を含む、ことを特徴とする配線基板の製造方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

[5]対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明における 「シリカからなる無機絶縁フィラー」、「過マンガン酸塩類水溶液」、「絶縁樹脂層」は、本願発明における「SiO_(2) からなる無機フィラ」、「過マンガン酸液」、「樹脂絶縁層」に相当する。

よって、両者は、
「平均粒径が1.0μm以上で且つ2.0μm以下のSiO_(2) からなる無機フィラを30wt%以上で且つ50wt%以下含むエポキシ樹脂を主成分とする樹脂絶縁層の表面、かかる表面に開口するビアホールを同時に粗化する粗化工程を含み、
上記粗化工程は、過マンガン酸液に浸漬する粗化処理と、を含む、ことを特徴とする配線基板の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:
本願発明では、「少なくとも上記樹脂絶縁層を貫通するスルーホール」を有し、「樹脂絶縁層の表面、かかる表面に開口するビアホール」と同時に粗化を行うのに対し、引用発明では、それが明らかでないこと。

・相違点2:
上記粗化工程が、本願発明では、「ジエチレングリコール-n-ブチル、アニオン系界面活性剤、および水酸化ナトリウムを含む溶液中に浸漬する膨潤処理」した後に粗化処理を行うのに対し、引用発明では、それが明らかでないこと。

・相違点3:
上記過マンガン液に浸漬する粗化処理が、本願発明では、「70℃以上で且つ85℃以下において20分以上」行われるのに対し、引用発明では、それが明らかでないこと。

そこで、上記相違点について検討すると、
・相違点1について
配線基板において、少なくとも上記樹脂絶縁層を貫通するスルーホールを設け、該樹脂絶縁層表面、かかる表面に開口するビアホールと同時にその粗化を行うことは慣用手段であり(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-85841号公報:「層間樹脂絶縁層2に、直径80μmのバイアホール用開口6を形成した。さらに。この層間樹脂絶縁層2の形成された基板をドリル削孔し、貫通孔18を形成した。…バイアホール用開口6、および貫通孔18を形成した基板を、60g/lの過マンガン酸を含む80℃の溶液に10分間浸漬し、…層間樹脂絶縁層2の表面を粗面とした」(【0096】-【0097】)、同じく、特開2001-85837号公報:「バイアホール用開口の内壁を含む層間樹脂絶縁層の表面と上記工程で貫通孔と(「を」)を形成した場合には貫通孔の内壁とに、…粗化面を形成する。」(【0063】))、引用発明において、少なくとも上記樹脂絶縁層を貫通するスルーホールを設け、樹脂絶縁層表面、かかる表面に開口するビアホールと同時にその粗化処理を行うことは当業者が適宜なしえたことにすぎない。

・相違点2について
上記記載事項(f)、(g)には、エポキシ樹脂表面を過マンガン酸液によりエッチングする際に、前処理として、「ジエチレングリコール-n-ブチル、アニオン系界面活性剤、および水酸化ナトリウムを含む溶液中に浸漬」する膨潤処理を行うことが記載されており、また、後述の「・相違点3について」にもあるように、配線基板の製造において、樹脂絶縁層表面、該表面に開口するビアホールを同時に過マンガン酸液によって粗化処理する場合、前処理として膨潤処理を行うこと自体は周知であるから、引用発明における過マンガン酸液による処理を効果的に行うために、該「ジエチレングリコール-n-ブチル、アニオン系界面活性剤、および水酸化ナトリウムを含む溶液中に浸漬」する膨潤処理を前処理として適用することに格別の困難性は認められない。

・相違点3について
配線基板の製造において、樹脂絶縁層表面、該表面に開口するビアホールを同時に過マンガン酸液によって粗化処理する場合、通常、過マンガン酸液に60?90℃で5?30分間浸漬して行なわれており(例えば、特開2000-188474号公報:「この絶縁樹脂層に非貫通式スルーホールを形成した後、絶縁樹脂層の表面に膨潤処理及び過マンガン酸処理を施し、スミア除去及び絶縁樹脂層の粗面化を行う。」(【0005】)、「絶縁樹脂層2を、液温60?90℃で5?30分間…浸漬することにより、過マンガン酸処理を行い、…絶縁樹脂層2表面の膨潤部分を除去することによる絶縁樹脂層2の粗面化を行う。」(【0020】))、「70℃以上で且つ85℃以下において20分以上浸漬」とすることは、所望の粗度に応じて決定すべき設計的事項にすぎない。

そして、本願発明が引用例1、2の記載及び周知、慣用技術からは予想しえない効果を奏するものとも認められない。

よって、本願発明は、引用例1、2の記載及び周知、慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。

[6]むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-02 
結審通知日 2009-12-08 
審決日 2009-12-22 
出願番号 特願2003-388491(P2003-388491)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 一雄  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 鈴木 正紀
川真田 秀男
発明の名称 配線基板の製造方法  
代理人 鈴木 学  

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