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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1212117
審判番号 不服2009-1532  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-19 
確定日 2010-02-15 
事件の表示 平成11年特許願第250843号「車両の盗難防止方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月21日出願公開、特開2001- 71868号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年 9月 3日の出願であって、平成20年 9月 8日付けの拒絶の理由により同年12月17日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として平成21年 1月19日付けで本件審判請求がなされるとともに、同年 2月18日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。

2.平成21年 2月18日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年 2月18日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成21年 2月18日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。
「【請求項1】
車体に取付けたキーシリンダおよびコントローラと、前記キーシリンダに差込まれメインスイッチをオンするための1つのマスターキーおよび複数のサブキーと、前記マスターキーおよびサブキーに内蔵されこれらのキーを前記キーシリンダに差込んだ時に前記キーの識別コードを確認するためのトランスポンダと、を備え、前記トランスポンダから検出した識別コードが前記コントローラに予め登録した識別コードと一致する時にエンジンの始動を許容するようにした車両の盗難防止方法において、
前記コントローラに登録した識別コードを有するマスターキーを使って、前記メインスイッチをオン・オフした後に一定時間内に差し込んだ未登録キーを用いて前記メインスイッチをオンすることによってこの未登録キーをサブキーとして登録することを特徴とする車両の盗難防止方法。」
(以下、「本願補正発明」という。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載された「前記コントローラに登録した識別コードを有するキー」について「前記コントローラに登録した識別コードを有するマスターキー」に限定するものであるから、発明の構成を更に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、上記の本願補正発明が、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する独立特許要件を備えているかどうかについて、以下に検討する。

(2)引用例とその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件特許出願の出願日前である平成 8年 2月20日に頒布された刊行物である、特開平 8- 48214号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両の盗難防止装置に関するものである。」
(イ)「【0007】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明の車両の盗難防止装置は以下の構成を備える。即ち、送信機側からの第1のコードを受信すると共に、該第1のコードと受信機側に記憶した第2のコードとを比較し、該第1と第2のコードとが一致した場合にエンジン始動を許可し、不一致の場合にエンジン始動を禁止するコード判定部と、前記コード判定手段の判定結果に基づいて前記エンジン始動を実行するエンジン制御部とを備える車両の盗難防止装置であって、・・・(後略)」
(ウ)「【0010】
【実施例】以下に本発明の実施例につき、添付の図面を参照して詳細に説明する。・・・(中略)・・・図1に示すように、本実施例に用いる車両の盗難防止装置は、トランスポンダー1と、トランスポンダーからの信号を受信するアンテナ2と、アンテナ2により取り込まれた信号を増幅するアンプ3と、アンプからの信号により制御されるイモビユニット4と、エンジン制御を行うEGIユニット9とを備えるシステムである。具体的に説明すると、トランスポンダー1は、自動車のイグニッションスイッチのオン、オフを運転者側において行うキーである。・・・(後略)」
(エ)「【0014】<IDコードの判定>図2において、トランスポンダー1をキー穴に差し込み、イグニッションスイッチをオンする位置に回転させると、・・・(中略)・・・この後、イモビユニット内のEEPROM5に登録されているIDコードとトランスポンダー1から送信されたIDコードとをCPU8において照合する。・・・(後略)」
(オ)「【0031】<追加書き込み手順>次に、登録されたIDコードの書き換え手順について説明する。これは、例えば、異なるIDコードを有するトランスポンダー1、2、3、4(具体的には、ID1、ID2、ID3、ID4を夫々有するキー1、2、3、4)のなかで、キー2、3、4を盗難又は紛失し、第3者に、これらの紛失したキーを利用して、自動車を盗まれないようにするために、新たなキー5、6、7を用意して、イモビユニット及びEGIユニットに登録されているIDコードを変更する場合に利用する機能である。図11は、すでに登録されたIDコードを書き換えるときの手順を説明する図である。図11を参照して、仮にIDコードとしてID1、ID2、ID3、ID4が登録されていたものをID1、ID5、ID6、ID7に変更する場合を説明する。図11において、キー1は、コード変更前に登録されていたIDコードが有効であるので、最初にキー1を用いる。先ず、キー1をキー穴に差し込んでエンジン始動し、イモビ機能を解除した後に、イグニッションスイッチを5回オン、オフさせる。この操作によって、イモビユニットは追加書き込みモードに切り換わり、イモビユニット、EGIユニットの各々に内蔵されたEEPROMに登録されたコードID1?ID4のなかでキー1以外のIDコードをクリアする。その後、キー1を抜き、所定時間以内(4秒程度)にID5のキー5を挿入すると、イモビユニットからトランスポンダー5、EGIユニットからイモビユニットに夫々ID要求が出されているので、トランスポンダー5は、それ自身のID5をイモビユニットに送信する。イモビユニットでは、ID5のコードを受信して、内蔵されたEEPROMに登録する。その後、イモビユニットは、EGIユニットからのID要求にしたがって、ID1とID5とをEGIユニット側に送信する。EGIユニットでは、ID1とID5のコードを受信して、内蔵されたEEPROMに登録する。その後、イモビユニットにID返答し、再びID要求を出す。この時点では、イモビユニット及びEGIユニットに登録されているIDコードは、ID1とID5の2つである。」
(カ)「【0034】<イモビユニットでの追加書き込み手順>・・・(中略)・・・ステップS98では、所定時間(例えば、4秒程度)以内に5回オン、オフさせたキーが抜かれ、別のIDを有するキーが挿入され、イグニッションスイッチをオンされたか否かを判定する。ステップS98で、イグニッションスイッチをオンされた場合(ステップS98での判断がYES)、ステップS100に進み、イグニッションスイッチをオンされない場合(ステップS98での判断がNO)、IDの追加書き込み処理は行われず、ステップS80にリターンする。・・・(後略)」

引用例においては、「車両の盗難防止装置」と記載されているけれども、上記記載事項からみてその手順が詳細に記載されており、車両の盗難防止方法の技術思想が記載されていることは明らかである。
上記記載事項(ウ)の「トランスポンダー1は、自動車のイグニッションスイッチのオン、オフを運転者側において行うキーである」、及び上記記載事項(エ)の「トランスポンダー1をキー穴に差し込み、イグニッションスイッチをオンする位置に回転させる」なる記載並びに車両の技術常識を鑑みると、キーは、車体に取付けたキーシリンダに差し込まれイグニッションスイッチをオンしていることは明らかである。
また、上記記載事項(オ)の「その後、キー1を抜き、所定時間以内(4秒程度)にID5のキー5を挿入すると、イモビユニットからトランスポンダー5、EGIユニットからイモビユニットに夫々ID要求が出されているので、トランスポンダー5は、それ自身のID5をイモビユニットに送信する。」、及び上記記載事項(カ)の「所定時間(例えば、4秒程度)以内に5回オン、オフさせたキーが抜かれ、別のIDを有するキーが挿入され、イグニッションスイッチをオンされたか否かを判定する。」なる記載からみて、別のIDを有するキー5を差し込んでイグニッションスイッチをオンすることによって別のIDを有するキー5の登録を行っていることは明らかである。
してみると、上記記載事項から引用例には、
「車体に取付けたキーシリンダおよびコード判定部と、前記キーシリンダに差込まれイグニッションスイッチをオンするためのキー1、2、3、4と、前記キー1、2、3、4に内蔵されこれらのキーを前記キーシリンダに差込んだ時に前記キーの第1のコードを確認するためのトランスポンダーと、を備え、前記トランスポンダーから検出した第1のコードが前記コード判定部に予め登録した第2のコードと一致する時にエンジンの始動を許容するようにした車両の盗難防止方法において、
前記コード判定部に登録した第2のコードを有するキー1を使って、前記イグニッションスイッチを5回オン、オフした後に所定時間内に差し込んだ別のIDを有するキー5を用いて前記イグニッションスイッチをオンすることによってこの別のIDを有するキー5を登録する車両の盗難防止方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(3)本願補正発明と引用発明の対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「コード判定部」は、本願補正発明における「コントローラ」に相当し、以下同様に「キーの第1のコード」は「キーの識別コード」に、「トランスポンダー」は「トランスポンダ」に、「予め登録した第2のコード」は「予め登録した識別コード」に、「5回オン、オフした後に」は「オン・オフした後に」に、「所定時間」は「一定時間」に、「別のIDを有するキー5」は「未登録キー」にそれぞれ相当する。
ここで、イグニッションスイッチとメインスイッチは、本来的には異なる機能であるけれども、車両の盗難防止方法における機能としては、キー操作がなされ電気的にオンされるスイッチにすぎないから、引用発明における「イグニッションスイッチ」は、本件補正発明の「メインスイッチ」に相当するものである。
また、引用発明のキー1、2、3、4は、識別コードを有しキーシリンダに差込まれメインスイッチをオンするためのトランスポンダ付きキーである限りにおいて、本願補正発明のマスターキーと複数のサブキーを総合した複数のキーに相当する。
よって、本願補正発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおり認定できる。

<一致点>
「車体に取付けたキーシリンダおよびコントローラと、前記キーシリンダに差込まれメインスイッチをオンするための複数のキーと、前記複数のキーに内蔵されこれらのキーを前記キーシリンダに差込んだ時に前記キーの識別コードを確認するためのトランスポンダと、を備え、前記トランスポンダから検出した識別コードが前記コントローラに予め登録した識別コードと一致する時にエンジンの始動を許容するようにした車両の盗難防止方法において、
前記コントローラに登録した識別コードを有するキーを使って、前記メインスイッチをオン・オフした後に一定時間内に差し込んだ未登録キーを用いて前記メインスイッチをオンすることによってこの未登録キーを登録することを特徴とする車両の盗難防止方法。」

<相違点>
複数のキーに関して、本願補正発明では「1つのマスターキーおよび複数のサブキー」とし、「マスターキー」を使って未登録キーの登録を行うと共に、未登録キーは「サブキー」として登録されるのに対して、引用発明では「キー1、2、3、4、5」について「マスターキー」、「サブキー」の区別はされておらず、未登録キーの登録を「マスターキー」を使って行うとも、未登録キーが「サブキー」として登録されるとも明記されていない点。

そこで、上記各相違点について以下に検討する。
本願補正発明の「マスターキー」、「サブキー」については、本願の請求項1においては、マスターキーを使って未登録キーの登録を行うこと以外のマスターキー独自の機能は記載されておらず、サブキー独自の機能についても記載されていない。
さらに、本願の明細書を参照すると、マスターキーでもサブキーでも未登録キーの登録ができるという記載があり、一方でマスターキーは、最初に入力されたキーをマスターとして登録するものと記載され、単にコントローラーの登録順で筆頭にあること以外、マスターキーとサブキーでの機能の違いについては記載されていない。
以上を考慮すると、本願補正発明においては、登録順の筆頭にあるキーをマスターキーと称するものであって、筆頭に登録されたキーを使って未登録キーの登録を行い、この未登録キーは筆頭以外に登録されてサブキーと称されるものであって、マスターキーとサブキーの名称以外の機能的な差は、登録順と未登録キーの登録機能以外にないといわざるを得ない。

一方で、引用発明は、上記記載事項(オ)及び第11図を参照すると、筆頭に登録されたキー1を使って未登録キー5の登録を行い、この未登録キー5は筆頭以外に登録されるものであり、機能的にみて本願補正発明と何らかわるところがなく、単なる呼称の違いにとどまっている。
そして、筆頭を「マスター」、それ以外を「サブ」と称呼することはごく一般的なことであるし、特に車両のキーにおいては、日常用いるキーをマスターキー、予備のキーをサブキーと称呼することは慣用的に用いられることである。
してみると、引用発明において、登録順で筆頭に登録されたキー1をマスターキー、それ以外に登録されたキーをサブキーと称呼することは、単なる名称の設定にすぎず、当業者が適宜なし得るものであるから、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。

また、本願補正発明が奏する作用効果も、引用発明から予測される程度以上のものでもない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[審判請求人の主張:キー1について]
審判請求人は、引用発明におけるキー1について「この段落0031の説明に用いる『登録済みのキー1』は前記『所定の操作』によって再設定したもので足ります。従って本件発明のように『マスターキー』を用いることを前提とするものではありません。」(審判請求書第3頁第3-5行)と主張している。
しかしながら、上記記載事項(オ)にあるように引用例には「例えば、異なるIDコードを有するトランスポンダー1、2、3、4(具体的には、ID1、ID2、ID3、ID4を夫々有するキー1、2、3、4)のなかで、キー2、3、4を盗難又は紛失し、」と記載されているのだから、キー1を紛失していないことは明らかであるし、さらに「図11において、キー1は、コード変更前に登録されていたIDコードが有効であるので、最初にキー1を用いる。」とも記載されているのだから、キー1は、紛失していない登録済みのものであって、再設定されたものでないことが明らかであり、審判請求人が主張するような、キー1が再設定されたものであることを示唆する記載はない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。

[審判請求人の主張:所定の操作について]
審判請求人は、引用発明について「すなわち本願発明は、他人が不正にサブキーの登録をしてエンジン起動するのを防止するものであるのに対して、引用文献のものは、キーの送信機がこわれたり全てのキーを紛失した時にも『所定の操作』によりエンジン起動ができるようにし新しいキーを登録するものです。従って、両者は明らかに目的と構成が異なります。」(審判請求書第3頁第17-20行)と主張している。
しかしながら、本願補正発明は、全てのキーを紛失したときの所定の操作によるエンジン起動の構成を排除していないうえ、引用発明の特に上記記載事項(オ)に記載された<追加書き込み手順>は、本願補正発明の手順と同様のものであるし、引用発明は、本願補正発明と同様の<追加書き込み手順>の他に、もし全てのキーを紛失してもエンジン起動ができるという、別の構成を有しているにすぎない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件手続補正による補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


3.本願発明について
(1)本願発明
平成21年 2月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成20年11月 7日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「【請求項1】
車体に取付けたキーシリンダおよびコントローラと、前記キーシリンダに差込まれメインスイッチをオンするための1つのマスターキーおよび複数のサブキーと、前記マスターキーおよびサブキーに内蔵されこれらのキーを前記キーシリンダに差込んだ時に前記キーの識別コードを確認するためのトランスポンダと、を備え、前記トランスポンダから検出した識別コードが前記コントローラに予め登録した識別コードと一致する時にエンジンの始動を許容するようにした車両の盗難防止方法において、
前記コントローラに登録した識別コードを有するキーを使って、前記メインスイッチをオン・オフした後に一定時間内に差し込んだ未登録キーを用いて前記メインスイッチをオンすることによってこの未登録キーをサブキーとして登録することを特徴とする車両の盗難防止方法。」
(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例とその記載事項
引用例及びその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)本願発明と引用発明の対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明から、その構成事項の一部である「前記コントローラに登録した識別コードを有するマスターキー」について、「マスター」という構成を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、更に構成を限定している本願補正発明が、上記2.に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を上位概念化した本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項2乃至4に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


付言
審判請求人は、平成21年 9月25日付け回答書において、以下に示す請求項1の補正案を提示している。
「〈請求項1(案)〉
車体に取付けたキーシリンダおよびコントローラと、前記キーシリンダに差込まれメインスイッチをオンするための1つのマスターキーおよび複数のサブキーと、前記マスターキーおよびサブキーに内蔵されこれらのキーを前記キーシリンダに差込んだ時に前記キーの識別コードを確認するためのトランスポンダと、を備え、前記トランスポンダから検出した識別コードが前記コントローラに予め登録した識別コードと一致する時にエンジンの始動を許容するようにした車両の盗難防止方法において、
前記コントローラにマスターキーとして登録した識別コードを有する前記1つのマスターキーを使って前記メインスイッチをオンすることによって、全ての登録済みの識別コードを消去し、前記メインスイッチをオン・オフした後に一定時間内に差し込んだ未登録キーを用いて前記メインスイッチをオンすることによってこの未登録キーを1件目のサブキーとして登録することを特徴とする車両の盗難防止方法。」

上記補正案における補正箇所について検討する。
「マスターキーとして登録した」点については、登録順の筆頭で登録したことを明記したにすぎず、「マスターキー」の機能として何ら変わるものではない。
「前記1つのマスターキー」は、マスターキーが1つしかないことを明確にしたにすぎず、「マスターキー」の機能として何ら変わるものではない。

「前記メインスイッチをオンすることによって、全ての登録済みの識別コードを消去し」、「この未登録キーを1件目のサブキーとして登録する」については、全ての登録済みの識別コードを消去するということが、マスターキーの識別コードをも消去してしまうものだとすると、その直後、新たに登録されるキーが登録順の筆頭で登録される、すなわちマスターキーとして登録されるはずであり、本願の明細書にもそのように記載されているが、補正案においては「この未登録キーを1件目のサブキーとして登録する」と記載されているので、この補正案は、明細書の記載と齟齬するものである。
したがって、補正案は、全ての登録済みの識別コードを消去し、未登録キーをマスターキーとして登録するものであるか、マスターキー以外の登録済みの識別コードを消去し、未登録キーを1件目のサブキーとして登録するもののいずれかを意図しているものと解するしかない。

これに対して、引用例においては、上記記載事項(オ)及び第11図をみると、「イグニッションスイッチを5回オン、オフさせる。この操作によって、イモビユニットは追加書き込みモードに切り換わり、イモビユニット、EGIユニットの各々に内蔵されたEEPROMに登録されたコードID1?ID4のなかでキー1以外のIDコードをクリアする。」、「イモビユニットでは、ID5のコードを受信して、内蔵されたEEPROMに登録する。」、「この時点では、イモビユニット及びEGIユニットに登録されているIDコードは、ID1とID5の2つである。」と記載されているように、マスターキー以外の登録済みの識別コードを消去し、未登録キーを1件目のサブキーとして登録する構成が記載されているし、消去対象を全ての登録済みの識別コードに拡大したり、登録順の末尾だけにする等、消去対象の選択は、当業者が要求に応じて適宜選択し得るものであって格別の困難性はないし、消去対象が全ての登録済みの識別コードであれば、新たに登録されるキーは自然に筆頭に登録される、すなわちマスターキーとして登録されることとなる。

よって、審判請求人が示した補正案の請求項1に係る発明もまた、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
 
審理終結日 2009-12-14 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2010-01-05 
出願番号 特願平11-250843
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
P 1 8・ 575- Z (E05B)
P 1 8・ 575- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 裕治朗  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 藤井 昇
横溝 顕範
発明の名称 車両の盗難防止方法および装置  
代理人 山田 洋資  
代理人 山田 文雄  

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