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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1212698 |
審判番号 | 不服2008-30036 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-11-26 |
確定日 | 2010-03-01 |
事件の表示 | 特願2003-141560「タバコの吸殻回収装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-344212〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯等 本願は、平成15年5月20日の出願であって、平成20年7月31日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成20年10月3日付けで手続補正がされ、平成20年10月24日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成20年11月26日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成20年12月22日付けで手続補正がされたものである。 第2.平成20年12月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年12月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正内容 本件補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、請求項数は6としたままで、請求項1の記載のみを次のように補正するものである。 「皿底に小孔が形成された複数のタバコの灰皿を所定間隔おいて直線状に配置し、同灰皿の下方に長い回収路を灰皿の配置方向に沿って設け、同回収路内に灰皿の小孔から落下した吸殻を受け止めて搬送する無端の搬送部材を設け、同搬送部材の終端部に搬送された吸殻を下方へ落下させて回収する回収箱を設けたタバコの吸殻回収装置であって、前記搬送部材を金属製の同一搬送方向の近接した2条の無端チェーンで構成し、しかも2条の無端チェーンは同軸に取付けられた駆動スプロケットで駆動させ、搬送部材の伸びを抑制して円滑に回動させて吸殻を搬送でき、且つ消火水を特段に必要とせずに無端チェーンによる熱伝導で早期に消火させるようにしたことを特徴とするタバコの吸殻回収装置。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。 2.補正目的 本件補正のうち、補正前の請求項1の「吸殻回収装置において」を「吸殻回収装置であって」と補正すること(補正事項1)は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものではないと認められるが、実質的に発明を補正するものではないので不問に付す。 本件補正のうち、補正前の請求項1の「吸殻を搬送する」との記載を「吸殻を受け止めて搬送する」と限定すること(補正事項2)、同「2条の無端チェーン」について「同軸に取付けられた駆動スプロケットで駆動させ」と限定を付すこと(補正事項3)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 本件補正のうち、補正前の請求項1に「且つ消火水を特段に必要とせずに無端チェーンによる熱伝導で早期に消火させるようにした」なる記載を加入すること(補正事項4)は、発明特定事項を限定するものでなく、特許請求の範囲の減縮に該当せず、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明を目的とするものでない。 そうすると、補正事項4を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項1号、2号、3号、4号のいずれにも該当せず、上記改正前の特許法17条の2第4項の規定に違反している したがって、本件補正は、上記改正前の特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 3.独立特許要件違反 2.で示したとおり、本件補正は補正目的違反で却下されなければならないが、本件補正は、請求項に記載する事項のみを形式的に見るのであれば、請求項に記載の事項を増加しているということもできるので、ここではさらに、形式的に限定的減縮を目的とするものであるとすると、本件補正は却下を免れるのか否かについても、付加的な検討を行う。 すなわち、ここでは付加的に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)の独立特許要件についても検討する。 (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-47428号公報(公開日:平成11年2月23日)(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 ・記載事項1 「【請求項1】 複数配置されたタバコの灰皿の下方に横長で且つ吸殻の投入口を上面に有する回収筒を設け、前記灰皿の底と前記回収筒の投入口とを連通させ、前記回収筒内に消火水を溜め、回収筒内の底面に無端索体又は無端チェーンの往路部分を配装し、前記回収筒の一方の端壁を越えるように前記無端索体又は無端チェーンの往路部分を外へ引き出し、回収筒の外に引き出してから前記無端索体又は無端チェーンを下側へターンさせて復路に継ぎ、無端索体又は無端チェーンのターン部分の下方に吸殻の回収箱を設け、灰皿から回収筒内へ投入される吸殻を無端索体又は無端チェーンに乗せて外に運び出し、無端索体又は無端チェーンのターン部分で吸殻を落下させて回収箱内へ回収することを特徴とする吸殻回収装置。」(【特許請求の範囲】) ・記載事項2 「本発明の無端索体又は無端チェーンとしては、ゴム製の丸ロープが付着物の除去が容易であり、且つ錆の発生もなく好ましい。」(段落【0009】) ・記載事項3 「実施例1(図1?8参照) 図中1は長さ約10m・高さ約4.4cm・横巾約8cmで且つ上面を開口したアルミ製の回収筒、1aは巾が約2.3cmで深さが約3cmで消火水23を貯める通常の水深は1cm程となる回収筒1の回収路、2は回収筒1の一方の端壁を超えた個所に形成された吸殻落下部、・・・4は同樋体3の底壁、5は回収筒1の底壁に設けた無端ロープ7を挿入するくぼみ部、6は回収筒1の両側壁部分に設けた無端ロープ7の復路部分を挿入する挿入溝、7は回収筒1の底面のくぼみ部5に往路部分を挿入すると共に回収筒1の挿入溝6内に復路部分を配置したゴム製で直径が6mm程の無端ロープ、8は回収筒1から外へ引き出した無端ロープ7の往路部分を下方へターンさせて無端ロープ7の復路部分に継ぎ且つ駆動プーリー9を介して上昇する復路部分を従動プーリー10に向けて水平に折曲させる揺動プーリー、9は揺動プーリー8の下方に配置した駆動プーリー、10は従動プーリー、10aは回収筒1の吸殻落下部2と反対側の回収筒1内に設けたリターンプーリー、・・・21は灰皿、22は灰皿21の底孔、23は水を用いた消火水、24はタイミングベルト、25は回収箱、26はレバー12の係止部、27はパチンコ台、28はケーシング、29は回収路1aの路底から30mm程の高さ位置で回収路1a内へ突出する突起、Tはタバコの吸殻である。」(段落【0011】) ・記載事項4 「パチンコ台27の下方の灰皿21の底孔22を介して回収筒1内に投入された吸殻Tは消火水23に浸かり、完全に火が消火される。又吸殻Tは回収筒1内に配装した無端ロープ7の上に乗った状態となり、無端ロープ7に乗せたまま無端ロープ7と共に吸殻落下部2まで移動していく。吸殻Tは消火水23を吸収して重くなって沈み込むので、水面に浮いた状態とならず無端ロープ7の上に吸殻Tの自重で十分に乗った状態に出来る。又、沈み込んだ吸殻Tが上に乗るように回収筒1の底面に無端ロープ7を配装しているので、吸殻Tは1対の無端ロープ7に乗った状態となるか、回収筒1の側壁内面に接触して一方の無端ロープ7の上だけに乗った状態となる。いずれの状態であっても消火水23を吸収して重くなった吸殻Tは、無端ロープ7の移動と共に吸殻落下部2側まで移動していく。」(段落【0012】) ・記載事項5 「吸殻落下部2では、無端ロープ7が揺動プーリー8によって下方へターンするように案内されており、吸殻Tが無端ロープ7のターン部分の位置に到達すれば、消火水23を吸収して重くなった自重で確実に落下し、下方の回収箱25内に回収される。」(段落【0013】) ・記載事項6 図1には、パチンコ台27下方のテーブルに所定間隔をおいて直線状に複数の灰皿21を配置することが図示されている。 ・記載事項7 図3、図6には、回収筒1底面のくぼみ部5に挿入された1対の無端ロープ7上にタバコの吸殻Tが乗った状態が図示されている。 ・記載事項8 図2、図3には、くぼみ部5に挿入された無端ロープ7が、揺動プーリー8により下側へターンされ、次に駆動プーリー9により上方へターンされ、続いて揺動プーリー8により水平方向へターンされ、更に従動プーリー10で逆方向へターンされた後、挿入溝6に挿入されることが図示されている。 ・記載事項9 図7には、挿入溝6に挿入された無端ロープ7が、リターンプーリー10aでターンされた後、くぼみ部5に挿入されることが図示されている。 上記記載事項7?9によれば、くぼみ部5に挿入された1対の無端ロープであって、図3において上部に図示された無端ロープ7と下部に図示された無端ロープ7は、各プーリーのターンを経る過程において、互いに交わることなく、独立したものであるから、「2条の無端ロープ」となっているということができる。 以上を含む全記載及び図示によれば、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。 「底孔22を設けた複数のタバコの灰皿21を所定間隔をおいて直線状に配置し、灰皿21の下方に横長で且つ吸殻の投入口を上面に有する回収筒1を設け、前記灰皿21の底と前記回収筒1の投入口とを連通させ、灰皿21の底孔22を介して回収筒1内に投入された吸殻Tを乗せて外に運び出す無端ロープ7を設け、無端ロープ7のターン部分で吸殻を落下させて回収する回収箱25を設けたタバコの吸殻回収装置であって、 前記無端ロープ7は、回収筒1の底面のくぼみ部5において吸殻Tを1対の無端ロープ7に乗った状態とする2条の無端ロープ7であり、2条の無端ロープ7は駆動プーリー9で駆動させ、 回収筒1内の消火水により消火させるようにしたタバコの吸殻回収装置。」(以下、「引用発明」という。) (2)対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「底孔22を設けた」は本願補正発明の「皿底に小孔が形成された」に相当し、以下同様に、「横長で且つ吸殻の投入口を上面に有する回収筒1を設け、前記灰皿21の底と前記回収筒1の投入口とを連通させ」は「長い回収路を灰皿の配置方向に沿って設け」に、「灰皿21の底孔22を介して回収筒1内に投入された吸殻T」は「回収路内に灰皿の小孔から落下した吸殻」に、「回収箱25」は「回収箱」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明の「無端ロープ7」は、タバコの吸殻Tを搬送するものであるから、「搬送部材」ということができ、引用発明の「吸殻Tを乗せて外に運び出す無端ロープ7」は本願補正発明の「吸殻を受け止めて搬送する無端の搬送部材」に相当し、引用発明の「無端ロープ7のターン部分で吸殻を落下させて」は本願補正発明の「搬送部材の終端部に搬送された吸殻を下方へ落下させて」に相当する。 また、引用発明の1対の無端ロープ7は、吸殻Tを回収箱25に搬送する方向で移動するものであるから「同一搬送方向」のものということができ、また、「吸殻Tは1対の無端ロープ7に乗った状態」(上記記載事項4)となることから、「近接した」ものということができる。 そうすると、本願補正発明と引用発明は、 「皿底に小孔が形成された複数のタバコの灰皿を所定間隔をおいて直線状に配置し、同灰皿の下方に長い回収路を灰皿の配置方向に沿って設け、回収路内に灰皿の小孔から落下した吸殻を受け止めて搬送する無端の搬送部材を設け、搬送部材の終端部に搬送された吸殻を下方へ落下させて回収する回収箱を設けたタバコの吸殻回収装置であって、 搬送部材を同一搬送方向の近接した2条のもので構成したタバコの吸殻回収装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 同一搬送方向の近接した2条のものからなる搬送部材を、本願補正発明では金属製の無端チェーンで構成し、同軸に取付けられた駆動スプロケットで駆動させるのに対し、引用発明ではそのような構成でない点。 <相違点2> 本願補正発明では搬送部材の伸びを抑制して円滑に回動させて吸殻を搬送できるのに対し、引用発明では不明である点。 <相違点3> 本願補正発明では消火水を特段に必要とせずに無端チェーンによる熱伝導で早期に消火させるようにしたのに対し、引用発明では消火水により消火させるようにした点。 (3)判断 上記各相違点について検討する。 <相違点1、2>について 相違点1、2は関連しているので、あわせて検討する。 引用文献の「本発明の無端索体又は無端チェーンとしては、ゴム製の丸ロープが付着物の除去が容易であり、且つ錆の発生もなく好ましい。」との記載(上記記載事項2)によれば、引用発明では、「無端索体又は無端チェーン」として、錆の発生を考慮するとゴム製の丸ロープが好ましいが、金属製のものが使用できないとされているものではない。一方、「無端チェーン」といえばまず金属製のものを想起することが普通であり、また、吸殻回収装置においても金属製の搬送部材を用いることは下記の周知例1、2に示されるように従来周知である。更に、無端チェーンを駆動する場合に「駆動スプロケット」で駆動することは常套手段であり(必要ならば、下記の周知例3を参照)、無端チェーンが2条であれば同軸の「駆動スプロケット」で駆動させることも常套手段である。 (周知例1)特開平10-323451号公報(段落0021) (周知例2)特開平8-116953号公報(段落0013) (周知例3)特開平7-148341号公報 そうすると、引用発明において、無端ロープ7に代えて、金属製の無端チェーンを採用し、同軸に取付けられた駆動スプロケットで駆動させることにより、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば想到容易である。 そして、金属製の無端チェーンは伸びがほとんど無いことは技術常識であるから、相違点2は、相違点1に係る本願補正発明の構成を採ることに伴い、当然生ずる効果に過ぎない。 <相違点3>について 金属等の熱伝導性のよい物体によりタバコの着火部の温度を下げると消火するということは、下記の周知例4?6に示されるように従来周知である。 (周知例4)特開平10-84937号公報 (周知例5)実開昭51-44592号のマイクロフィルム (周知例6)実開平2-137895号のマイクロフィルム そうすると、相違点1について検討したように引用発明において金属製の無端チェーンを採用すれば、その上に乗るタバコの吸殻は吸熱されて消火されることは容易に想起されることであるから、引用発明において金属製の無端チェーンを採用する際に消火水を用いないようにすることは当業者にとって想到容易である。 そして、本願補正発明の効果は、引用発明、上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明の認定 平成20年12月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年10月3日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「皿底に小孔が形成された複数のタバコの灰皿を所定間隔おいて直線状に配置し、同灰皿の下方に長い回収路を灰皿の配置方向に沿って設け、同回収路内に灰皿の小孔から落下した吸殻を搬送する無端の搬送部材を設け、同搬送部材の終端部に搬送された吸殻を下方へ落下させて回収する回収箱を設けたタバコの吸殻回収装置において、前記搬送部材を金属製の同一搬送方向の近接した2条の無端チェーンで構成し、搬送部材の伸びを抑制して円滑に回動させて吸殻を搬送できるようにしたことを特徴とするタバコの吸殻回収装置。」 2.本願発明の進歩性の判断 (1)引用文献 拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]3.(1)に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「吸殻を受け止めて搬送する」との限定(補正事項2)、「同軸に取付けられた駆動スプロケットで駆動させ」との限定(補正事項3)を元に戻し、「且つ消火水を特段に必要とせずに無端チェーンによる熱伝導で早期に消火させるようにした」なる記載を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の[理由]3.(3)に記載したとおり、引用発明、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-28 |
結審通知日 | 2010-01-05 |
審決日 | 2010-01-18 |
出願番号 | 特願2003-141560(P2003-141560) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石塚 良一、酒井 保 |
特許庁審判長 |
伊藤 陽 |
特許庁審判官 |
森 雅之 井上 昌宏 |
発明の名称 | タバコの吸殻回収装置 |
代理人 | 戸島 省四郎 |