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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部無効 2項進歩性  G01N
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
管理番号 1213513
審判番号 無効2009-800086  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-04-27 
確定日 2009-12-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第3804687号発明「X線異物検査装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許3804687号の請求項1に係る発明についての出願は,平成9年12月18日に出願された特願平9-349000号の一部を新たな出願として平成16年12月20日に出願された特願平2004-366932号の一部を新たな出願として平成18年3月8日に特許出願されたものであって,平成18年5月19日にその発明について特許権の設定登録がなされたものであり,これに対して,株式会社イシダ(以下「請求人」という。)から平成21年4月27日付けで請求項1に係る発明の特許を無効とすることを求める無効審判の請求がなされたところ,その後の手続の経緯は,以下のとおりである。

上申書(請求人): 平成21年 4月27日

答弁書: 平成21年 7月17日

弁駁書: 平成21年 9月 2日

口頭審理陳述要領書(請求人): 平成21年10月 5日

口頭審理陳述要領書(2)(請求人): 平成21年10月 5日

口頭審理陳述要領書(被請求人): 平成21年10月 5日

上申書(被請求人): 平成21年10月 5日

口頭審理: 平成21年10月 5日

上申書(請求人): 平成21年10月21日

上申書(被請求人): 平成21年10月21日

第2 本件発明

本件請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
X線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置において,一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として,少なくとも被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレームと,漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバーとを備え,前記カバーは前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備えるとともに,前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備えることを特徴とするX線異物検査装置。」

第3 請求人の主張と証拠方法

1 請求人の主張

請求人は,特許第3804687号を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,無効審判請求,口頭審理(口頭審理陳述要領書を含む)及び上申書において,証拠方法として,下記「2」に示した証拠を提出して,次に示す無効理由1及び2を主張している。無効理由1及び2について,これまでの主張を整理すると,次のとおりである。

(1)無効理由1

ア 本件発明は,本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第2号証に開示された発明に,甲第5?6号証に記載された発明,実施発明(製造元島津メクテム株式会社に係るX線異物検査装置「SLDX-1500S-WP」,甲第7?13号証にて立証)および甲第14?18号証に記載された周知技術を適用することによって当業者が容易に想到することができたものであり,特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであるから,本件特許は,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである,旨を主張し,また,
イ 本件発明は,本件出願前に公然実施された発明(アンリツ株式会社X線検出器「KD7000シリーズ」:甲第1号証,甲第2号証,甲第19号証,甲第20号証,甲第22号証,甲第23の1号証,甲第23の2号証及び甲第25?28号証にて立証)に,甲第5?6号証に記載された発明,実施発明(製造元島津メクテム株式会社に係るX線異物検査装置「SLDX-1500S-WP」,甲第7?13号証にて立証)および甲第14?18号証に記載された周知技術を適用することによって当業者が容易に想到することができたものであり,特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであるから,本件特許は,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである,旨を予備的に主張している。

(2)無効理由2
本件特許請求の範囲は,当業者が発明の課題を解決できることが認識できる程度に記載されているものとはいえず,本件特許請求の範囲において特定された発明は,発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
また,本件発明の詳細な説明は,搬送機構及びラインセンサを支持するフレームが片持ちフレームであるという請求項1の発明特定事項のみを前提として支持脚の干渉を防止できるという,発明の実施可能性の担保が不十分な記載不備の瑕疵を有するものであることは明らかである。
よって,本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に違反し,また,本件発明の詳細な説明の記載は同条第4項に違反するものであるから,本件特許は同法第123条第1項第2号の規定に基づき無効とされるべきである。

2 証拠方法
(1)甲第1号証 アンリツ株式会社製X線異物検出機「KD70
00」シジーズカタログ
(2)甲第2号証 配管と装置 平成9年6月1日号抄1
(3)甲第3号証 日新電子工業株式会社製「EX-1001」カ
タログ
(4)甲第4号証 冷食タイムス1996年5月21日号
(5)甲第5号証 特開平9-145343号公報
(6)甲第6号証 特開平9-250992号公報
(7)甲第7号証 1996年9月4日付食品用X線検査装置組立

(8)甲第8号証 弁護士神原浩作成の写真撮影報告書
(9)甲第9号証 工号 96/14005組立図
(10)甲第10号証 配管と装置 平成9年6月1日号抄2
(11)甲第11号証 弁理士藤岡宏樹作成の写真撮影報告書
(12)甲第12号証 請求人知的財産課橋本修作成の陳述言
(13)甲第13号証 食品用X線異物検出装置SLDX-1500-
PB/WP取扱説明書
(14)甲第14号証 特開平9-72863号公報
(15)甲第15号証 特開平8-310632号公報
(16)甲第16号証 実開平7-13824号公報
(17)甲第17号証 特開平9-297051号公報
(18)甲第18号証 実開平5-82924号公報
(19)甲第19号証 雑誌「Packaging」1997年No.6
(20)甲第20号証 CDX-Plusオペレーターマニュアル
(21)甲第21号証 X線異物検出装置「IX-GA-2475」の
取扱説明書
(22)甲第22号証 陳述書(高田芳次)
(23)甲第23の1号証 国立国会図書館HP「書誌情報」
(24)甲第23の2号証 雑誌「PACKAGING」1995年第1号
(25)甲第24号証 知財高裁平成21年(行ケ)第10113号被
告準備書面(第1回)
(26)甲第25号証 参考用X線異物検出機仕様書
(27)甲第26号証 X線異物検出機仕様書
(28)甲第27号証 アンリツ展示製品のご案内
(29)甲第28号証 日刊工業新聞1997年9月9日号
(30)甲第29号証 Confirmation(確認書)

第4 被請求人の主張の概要

被請求人は,請求人の上記主張に対して,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,証拠方法として以下の乙第1号証を提出し,答弁書,口頭審理(口頭審理陳述要領書及び第1回口頭審理調書を含む)及び上申書において,請求人の主張する前記無効理由に対して以下のとおり反論している。

1 被請求人の反論
(1)無効理由1
本件発明は,甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明,或いは本件出願前に公然実施された発明(アンリツ株式会社製X線検出器「KD7000シリーズ」)に,甲第5?6号証,実施発明(島津メクテム株式会社製X線異物検査装置「SLDX-1500S-WP」)および甲第14?18号証に記載されている周知技術を適用することによって当業者が容易に想到できた発明ではなく,特許法第29条第2項により特許を受けることができないものではない。

(2)無効理由2
特許法第36条第6項第1号,同条第4項の違反は何ら存在しない。

2 証拠方法
(1)乙第1号証 “X線異物検査装置”IX-G-2450/2480 取扱説明書

第5 各甲号証の記載内容

1 甲第1号証について
平成1997年5月26日に頒布された刊行物である甲第1号証には,アンリツ株式会社製X線検出機KD7000シリーズに関して,次の事項が記載されている。

(1-ア)
表紙左の写真には,本体フレームが3対の脚を有し,コンベアベルトを有する搬送機構が本体フレームに支持され,本体を被うカバーを備え,前記カバーの左右上面には取っ手が設けられ,本体の前面には蝶番が3箇所設けられ,該3つの蝶番の最右端の蝶番の右側には3つのボトルがあることが示されている。

(1-イ)
「最新のX線技術を用い,食品内に混入した異物を検出。アルミ包材やアルミ缶,スチール缶など,容器の材質に左右されず異物検出に威力を発揮します。」(2頁冒頭)

(1-ウ)
「検出原理 コンベアで運ばれてくる食品やパイプ内を通過する食品にX線を照射し,X線透過レベルを高感度のラインセンサで検知します。検知した信号を,最新の信号処理技術により処理し,異物の混入を自動判定します。」(2頁「検出原理」)
検出原理の図には,被検査物を搬送するコンベアベルト直下に配置されたリニアアレー検出器で,被検査物を透過したX線を検知することが示されている。

(1-エ)
「画像処理例」には,包装された「ブロック肉(焼豚)」,「スタンディングパウチ(レトルト食品)」,「袋入り米菓(あられ)」の例が示されており(4頁「画像処理例」),また,5頁写真には,ウインナー,ステーキハム,ロースハム,缶詰,チョコレート,ガム,菓子等が,いずれも包装されていることが示されている。

(1-オ)
「人体に対する安全 X線漏洩対策
○漏洩を防ぐ遮蔽構造
傾斜型コンベアとカーテンの採用や曲げを付けたパイプラインの採用により,外部への漏れ防止を達成。労働安全衛生法に基づき制定された電離放射線障害防止規則で要求される管理区域の設定を必要としません。安心して作業して頂けます。
○誤操作を排除するインタロック機能
多重安全インタロック機能の採用により誤操作排除。また遮蔽カバーが閉まっていないとX線を放射しません。誤って遮蔽カバーを開放した場合には,自動的にX線放射を停止します。」(5頁目「安全性」)

2 甲第2号証について
甲第2号証は,平成9年6月1日に発行された「配管と装置」の6月号であって,次の事項が記載されている。

(2-ア)
「食品プラントにおける機器・設備
X線異物検出機KD7000シリーズ≪技術的特徴と使用例≫
PL法施行直前に販売したX線異物検出機は,金属検出器の欠点を補完すると同時に非金属異物検出が可能であり好評に推移している。昨今の縁合衛生管理製造過程認証制度で益々注目を浴びているKD7000シリーズX線異物検出機の技術的特徴と使用例について述べる。」(41頁巻頭言)

(2-イ)
図2には,被検査物を搬送するコンベアベルト直下に配置されたリニアアレー検出器で,被検査物を透過したX線を検知することが示されている。(42頁)

(2-ウ)
「異物検出機KD7000シリーズは,ライン・センサ方式を用い食品業界向けに開発された装置であり,コンベア搬送型のKD7001AW/KD7002AWモデル,その専用オプションKD2501A画像処理ユニットとパイプ搬送型のKD7101W/KD7102LWモデルから構成され,以下の特徴を有す。
表3に主な仕様を,写真1,2に外観を示す。」(43頁左欄7?14行)

(2-エ)
「安全設計
低X線漏洩構造で,かつ多重安全インター・ロック機能を装備している。」(43頁右欄11?13行)

(2-オ)
「サエタリー性 ステンレス筐体を用い,IP65の防塵防水性を有す。コンベア部は清掃容易な構造となっている。」(43頁右欄14?17行)

(2-カ)
「また,装置のカバーを誤って開けた場合には自動的にX線が停止するなど,十分な安全対策を施している。」(45頁左欄7?9行)

(2-キ)
写真1のKD7001AWは,本体フレームが3対の脚を有し,本体を被うカバーを備えていることが示されている。(44頁)

3 甲第3号証について
甲第3号証には,日新電子工業株式会社製「EX-1001」に関して,次の事項が記載されている。

(3-ア)
「MODEL:EX-1001
食品用X線異物検査装置」(表紙)

(3-イ)
「■鉛ゴム簾による遮蔽構造
■余裕の通過高。
■蛇行防止機構。
■全長が短い。」(「構造」の左図)

(3-ウ)
「■コンベア構造による遮蔽構造
■鉛ゴム簾が製品に当たらない。
■蛇行防止機構。
■扉開閉インターロック機構。」(「構造」の右図)

4 甲第4号証について
甲第4号証には,日新電子工業製「シークバード」に関して,次の事項が記載されている。

(4-ア)
「汎用の量産機を開発 日新電子工業 シークバード
日新電子工業(東京都江東区,松本彪社長)はこのほど,「食品X線異物検査装置EX-101」シリーズ(愛称シークバード)の量産型を発売開始した。」(4?6段見出し及び4段)

(4-イ) 「シークバード台形タイプの構造」の構造が示されている。(4段)

5 甲第5号証について
甲第5号証には,「放射線検査装置」に関して,次の事項が記載されている。

(5-ア)
「【請求項1】 放射線を発生する放射線発生手段と,
該放射線発生手段から発生され被検体を透過した放射線透過信号を検出する放射線検出手段と,
該放射線検出手段が検出した放射線検出信号を画像化し前記被検体の特徴点を捕らえるように前記放射線検出信号を処理する検出放射線処理手段とを備えたことを特徴とする放射線検査装置。
【請求項2】
前記放射線検査装置は被検体を搬送する搬送手段と,放射線の外部への放射を防止する放射線遮蔽手段とを備え,
前記放射線遮蔽手段は,前記放射線発生手段と放射線検出手段とを覆う箱体からなり,該箱体は前記搬送手段により搬送される被検体が出入りする開口部を備え,
前記搬送手段と開口部の位置関係は,被検体への放射線の照射時に生じる散乱放射線の外部への放射を防止するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の放射線検査装置。
【請求項3】
前記放射線検査装置は,前記放射線発生手段と放射線検出手段とを備えた第1の部分と,被検体を搬送する第2の部分とを備えて構成され,
前記第2の部分は第1の部分に対して着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の放射線検査装置。」

(5-イ)
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,従来の放射線検査装置は次のような不便な面があった。
【0007】
被検体によっては前記鉛入りゴム106a,106bが触れることを嫌う場合があり,かかる場合には開口部107,108が開いたままの状態で被検体を通過させる必要がある。この場合には,当然のことながら開口部107,108から放射線が外部に漏れるのを防止する必要がある。しかし,従来の放射線検査装置はかかる機能を備えていなかった。
【0008】
汚れたベルトコンベア101を水洗する場合があり,この場合にはベルトコンベア101が放射線検査装置の内部に組み込まれたままでは水洗の作業性が良くない。」

(5-ウ)
「【0017】
また,請求項3記載の発明は,前記放射線検査装置は,前記放射線発生手段と放射線検出手段とを備えた第1の部分と,被検体を搬送する第2の部分とを備えて構成され,前記第2の部分は第1の部分に対して着脱自在に構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明によれば,例えば第2の部分(ベルトコンベア)が汚れ水洗いが必要な場合がある。かかる場合には第2の部分を第1に部分から引き出して水洗いを行う。」

(5-エ)
「【0035】
(1-1)本実施形態例の機構系の構成
図1(a),(b)に示すように,放射線検査装置Dの機構系は,X線管2等を支持すると共に,X線の外部への漏れを遮蔽する支持台1およびX線遮蔽箱6の部分と,被検体を該X線遮蔽箱6内に搬送するコンベア台11の部分とにより構成されている。
【0036】
前記支持台1およびX線遮蔽箱6の部分は,4本の脚を有する支持台1上の上方にはX線管2が配置され,該X線管2の下方にはX線フィルタ3と次に説明する疑似物体投入器4とが配置されている。更に,下方にはX線センサ5が配置されている。
【0037】
以上のように構成されたX線管2,X線フィルタ3,疑似物体投入器4,X線センサ5等がX線遮蔽箱6により覆われている。即ち,X線遮蔽箱6は直方体状をなし,その長手方向の前面にはX線を遮蔽する扉7が蝶番により開閉自在に取り付けられ,該扉7の対向側面は支持台1に固定されている。X線遮蔽箱6の短手方向の両側面には被検体10の通過用の入出口をなす開口部8a,8bが形成されている。
【0038】
また,前記コンベア台11の4本の脚の先端部には,それぞれキャスタ12が取り付けられ,前面方向に引き出し可能に構成されている。コンベア台11の上面には第1ベルトコンベア12と第2ベルトコンベア14とが配置されている。第1ベルトコンベア12は第1ローラ13aと第2ローラ13bとにより放射線検査装置内に向かって上昇するように張架され,第1ローラ13aは開口部8aから外部に出た位置に配置され,第2ローラ13bは前記疑似物体投入器4の下方近くの位置に配置されている。このように構成することにより,被検体10は上昇方向に搬送される。」

(5-オ)
「【0051】
(1-3)本実施形態例の動作説明
1)放射線検査装置の概略動作説明 図1および図3に示すように,第1ベルトコンベア12に載置された被検体10は,該第1ベルトコンベア12および第2ベルトコンベア14を介して放射線検査装置本体内に搬送され,X線管2,X線センサ(ラインセンサ)5によりX線透過画像が得られる。」

(5-カ)
「【0076】
【発明の効果】
以上説明したように各請求項記載の発明によれば,被検体が開口部に接触することなく放射線検査装置により検査を受けることができ,搬送手段(ベルトコンベア)を水洗する場合に,その他の箇所に影響を与えることなく水洗ができ,放射線検査装置がインラインで使用される場合に,放射線検査装置や組立ラインのシステムの異常を検知し,その異常に対して即座に対処する体勢を取ることができ,例えば,食肉用のハムの包装用針金と異物との判別を行うことができ,地震等の場合に,放射線検査装置の動作を停止させることができる。」

(5-キ)
図1(a)(b)には,
第1ベルトコンベア12と第2ベルトコンベア14を有するコンベア台11の底面側に4本の脚を有する支持台1が配置され,
支持台1は,コンベア台11の引き出し方向と逆側に垂直部を有し,
X線遮蔽箱6は直方体状をなし,コンベア台11の引き出し方向にはX線を遮断する扉7が蝶番により開閉自在に取り付けられ,該扉7の対向側面は前記支持台1の垂直部に固定され,
ラインセンサ5の一方は,支持台1の垂直部に直角に支持され,他方は自由端になっており,
扉7を開けることにより,第1ベルトコンベア12と第2ベルトコンベア14の側面全体及び底面を露出することが示されている。

6 甲第6号証について
甲第6号証には,「異物検査装置」に関して,次の事項が記載されている。

(6-ア)
「【0015】
X線管13は,第2のコンベア11の水平面部11aの上方に,スリット15aを有するX線コリメータ15を挟んで配設されている。X線センサ14は,第2のコンベア11の水平面部11aの下方に配設され,X線管13から照射することで被検査物10を透過するX線を検出するものであり,画像化手段16はX線センサ14で検出されたX線に基づいて画像化するものである。」

(6-イ)
「【0027】
図2の実施形態は,以上述べた構成以外に次のような構成を備えている。X線遮蔽体21は図3に示すように,X線遮蔽体21の側面の所望の位置に,コンベア引出用開口部21bを形成し,このコンベア引出用開口部21bに放射線遮蔽材料からなる開閉遮蔽扉22を開閉可能に設け,第1のコンベア12および第2のコンベア11は移動可能な構成,すなわちキャスタ23を有する台車24に載置したものである。このように構成することにより,台車24に載置されている該コンベア全体を開閉遮蔽扉22を開放した状態で,コンベア引出用開口部21bから引出可能に構成されている。
【0028】
従って,コンベア11,12を水洗いなどにより清掃する際等に,X線遮蔽体21内からコンベア11,12を引き出すことができるので,作業が行いやすい。
【0029】
さらに,図2の実施形態で,第1のコンベア12と第2のコンベア11の重なる位置であって該両コンベア12,11に近接した位置にほぼ水平に,X線の透過しにくい材料からなる放射線遮蔽板25を配設し,該放射線遮蔽板25と両コンベア12,11により,被検査物10から発生する放射線散乱線を遮蔽できる位置に配設されている。このように構成することにより,散乱X線20がX線遮蔽体21内から外部に出るのを防ぐことができるばかりでなく,コンベア12,11からの搬送物例えば被検査物10の落下を防止できる。なお,図中27はコンベアフレームを示している。」

(6-ウ)
図2及び図3には,開閉遮蔽扉22を開けると,コンベア12及びコンベア11の側面全体及び底面が露出することが示されている。

(6-エ)
図3には,図2で14が付されたX線センサの一方は,X線遮蔽体21の垂直部に直角に支持され,他方端は自由端となっていることが示されている。

7 甲第7号証について
甲第7号証は,1996年9月4日に作成されたものであって,食品用X線異物検出装置SLDX-1500の組立図が示されている。

8 甲第8号証について
甲第8号証は,請求人代理人 弁護士 榊原浩が平成21年1月28日に撮影した写真撮影報告書であって,加ト吉水産株式会社に存在する「SLDX-1500S-WP」を示しており,写真7?14には,ラインセンサが筺体背面に垂直に固定され他方が自由端であり,搬送コンベアがキャスタ付き引退自在のユニットに片持ち支持されていることが示されている。

9 甲第9号証について
甲第9号証は,1997年4月1日に設計され,1997年4月2日に承認を受けた「SLDX-1500S-WP」の外観図であって,「納入先 株式会社加ト吉多度津工場様」,「工号 96/14005」と記載されている。

10 甲第10号証について
甲第10号証は,平成9年6月1日に発行された「配管と装置」の6月号であって,次の事項が記載されている。

(10-ア)
「そこで本稿では,X線検査の基本原理およびその安全性について解説し,併せて弊社の「食品用ソフトX線異物検出装置SLDXシリーズ」の紹介をする。」(8頁左欄下から2行?右欄2行)

(10-イ)
10頁右上には,「写真2 1500S-PB/WP」と記載されている。

11 甲第11号証について
甲第11号証は,請求人 知的財産課 湊 芳典が,平成21年2月21日及び同月27日に撮影した写真撮影報告書であって,甲第7号証に撮影されている,加ト吉水産株式会社に現存していた「SLDX-1500-WP」の銘板の光学電子顕微鏡拡大像及びX線透過像によると,「SLDX-1500-WP」,「150002」,「1996.11」と刻印されていることが示されている。

12 甲第12号証について
甲第12号証は,請求人 知的財産課 橋本修が作成した「SLDX-1500」のカタログに関する陳述書であって,次の事項が記載されている。

(12-ア)
「「SLDX-1500」は,装置本体のみの呼称であり,それに被検査物を投入するシュート(「S」)を付設すると「SLDX-1500S」となり,何も付設しないと「SLDX-1500N」となる。さらに,防水仕様の有無により,以下のサブカテゴリーに分けていた。

<投入シュート「S」タイプ>
ア 「SLDX-1500S-PB」 本体は製,塗装のみの非防水
(「PB」:Painted Body)

イ 「SLDX-1500S-WP」 本体はステンレス製,防水仕様
(「WP」:Water Proof)

<投入シュートのない「N」タイプ>
ウ 「SLDX-1500N-PB」 本体は製,塗装のみの非防水

エ 「SLDX-1500N-WP」 本体はステンレス製,防水仕様」

13 甲第13号証について
甲第13号証は,食品用X線異物検出装置「SLDX-1500-PB/WP」取扱説明書であって,次の事項が記載されている。

(13-ア)
「13.保守・点検
装置をトラブルなく長期にわたりご使用いただくために,別紙「日常点検リスト」「定期点検リスト」に従って日常点検および定期点検を実施してください。」(125頁)

(13-イ)
「13.4 搬送ベルトのテンション調整
(1)タッチパネルの【手動運転】両面でコンベア[ON]キーを押します。
(2)装置正面の扉を開け,搬送ベルトの回転状態を確認します。
(3)搬送ベルトがたるんでいたり,搬送ベルトが蛇行している場合は,一度,タッチパネルの【手動運転】画面でコンベア〔OFF〕キーを押し,コンベアを停止します。
(4)テールローラのテンションボルトを回して,搬送ベルトの張り具合が均等になるようにします。
(5)タッチパネルの【手動運転】画面でコンベア〔ON〕キーを押します。
(6)10分程度,搬送ベルトの回転状態を確認します。
(7)まだ搬送ベルトがたるんでいたり,蛇行している場合は,(3)?(6)項の操作を繰り返します。
(8)調整が終了したら,タッチパネルの【手動運転】画面でコンベア〔OFF〕キーを押し,コンベアを停止します。

注意
搬送ベルトのテンション調整中は,手や衣服を巻き込む可能性があります。
コンベア回転中は,手などをコンベアに近づけないで下さい。
搬送ベルトの張りすぎに注意して下さい。
搬送ベルトを張り過ぎると,過負荷状態になりコンベアの運転が出来なくなる可能性があります。」(129頁)

(13-ウ)
「13.5. 装置の掃除
13.5.1 PBタイプ
(1)非防水ですので,清掃は,水を含ませた後固く絞った雑巾または乾いたウエスで行って下さい。
(2)清掃後は,十分仁乾燥ざせて下さい。
13.5.2 WPタイプ
(1)搬送コンダアおよびコンベア収納部(正面下部扉の内側)は水洗が可能です。
(2)正面上部および後ろ面扉と天井には水が掛からないように注意して下さい。装置内 部に水等が浸入すると故障の原因となります。清掃は,絞った雑巾または乾いたウエス で行って下さい。」(130頁)

14 甲第14号証について
甲第14号証には,「簡易型高分解能X線透過自動検査装置」に関して,次の事項が記載されている。

(14-ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,X線透過自動検査装置の改善に係り,より詳しくは,フォーカスサイズの径が50μm以上の通常サイズからサブミリサイズのX線源を活用することにより,低コストで撮像の分解能が優れると共に,コンパクトでメインテナンスを容易ならしめるようにした簡易型高分解能X線透過自動検査装置の技術分野に属するものである。」

(14-イ)
「【0007】
従って,本発明の目的とするところは,サブミリフォーカスサイズのX線源の活用を可能ならしめることにより,低コストで分解能が優れると共に,コンパクトであって,しかもメインテナンスの容易な簡易型高分解能X線透過自動検査装置を提供するにある。」

(14-ウ)
「【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る簡易型高分解能X線透過自動検査装置は,下記のように考えてなしたものである。即ち,フォーカスサイズの径が50μm以上のX線源を用いれば,X線源は比較的低コストであるからX線透過自動検査装置を安価にすることができ,しかも撮像面より上方の搬入口で受取った被検査物を昇降台で水平移動させ,かつ撮像面の上側の検査位置まで下降させて被検査物の画像を撮像すれば,例えフォーカスサイズの径が50μm以上の比較的低コストのX線源であっても,分解能の優れたほぼ等倍の撮像を得ることができるので,X線透過自動検査装置に高分解能を付与することが可能になる。
【0014】
そして,撮像済の被検査物を昇降台で搬送レベルに上昇させ,かつ水平移動で搬出口まで搬送する構成とすれば,シールドボックスの高さを従来よりも低くすることができ,X線透過自動検査装置の重心が下がり装置の安定性の向上が可能になるのに加えて,前記シールドボックスの被検査物の搬入口および搬出口を有しない一方側の内壁に前記昇降台を昇降させる昇降台駆動装置を付設すれば,前記内壁の他方側に開閉自在な扉を設けることができ,昇降台や昇降台駆動装置を容易にメインテナンスすることができる。」

(14-エ)
「【0016】
図1(a),図1(b)および図1(c)に示す符号1はシールドボックスであり,このシールドボックス1の一方側には,図1(a)に示すように,搬入ラインLiで搬送されてきた被検査物であるプリント基板Pを搬入するための搬入口1iが,他方側には,撮像済みのプリント基板Pを搬出ラインLoに搬出するための搬出口1oが設けられている。また,このシールドボックス1の上部には,通常サイズ,即ち50μm以上の径のフォーカスサイズFを有するX線発生装置2aが内設されてなるX線源2が設けられている。さらに,シールドボックス1の1面には,図1(c)に示すように,開閉自在な扉1dが設けられている。
なお,フォーカスサイズFの径を50μm以上としたのは,コストとぼけの程度とを勘案して決定したもので,実際には300μmのフォーカスサイズのものを使用している。
【0017】
このシールドボックス1の内側の前記扉1dの配設位置の相対する壁面には垂直な一対のリニアガイドレール3,3が設けられていて,この一対のリニアガイドレール3,3の間に垂直に設けられた昇降台駆動装置であるロッドレスシリンダ4によって後述する構成になる昇降台5が前記リニアガイドレール3,3に案内されて昇降作動されるように構成されている。このように,リニアガイドレール3,3を用いることにより,昇降,停止位置の如何を問わず昇降台5を水平状態でに維持することができる。
【0018】
前記昇降台5は,前記搬入口1iと搬出口1oとの向きの平行な一対のガイドプレート5a,5aの相反する側のそれぞれに設けられた駆動モータ5m,5mで駆動される一対ずつの駆動プーリ5b,5bと,従動プーリ5c,5cとが設けられており,これら駆動プーリ5b,5bと,従動プーリ5c,5cとにはベルト5d,5dが掛装されている。つまり,これがプリント基板Pの水平移送機構であり,搬入口Liで受取ったプリント基板Pを検査位置に移送し,この検査位置において停止すると共に,撮像による検査終了後に検査済みのプリント基板Pを搬出口Lo側に移送するものである。さらに,昇降台5の下方位置にはプリント基板Pの画像を撮像する撮像面6が配設される。なお,前記シールドボックス1に扉1dを設けたのは,扉1dを開くことによりシールドボックス1内の昇降台5等の内部機構および搬入したプリント基板Pの取出しといったメインテナンス性を向上させるためと,このX線透過自動検査装置の組立の容易化のためとであって,例えば着脱自在なカバーでも良く,必ずしも扉である必要はない。」

(14-オ)
図1(a),図1(b)には,プリント基板Pを移送するベルト5dを備えた昇降台5がリニアガイドレール3に片持ちに支持されていることが示されている。

15 甲第15号証について
甲第15号証には,「ベルトコンベア」に関して,次の事項が記載されている。

(15-ア)
「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は製造工場や配送現場で食品,食用原材料,食用中間品,或いは,薬品等を連続的に搬送するベルトコンベアに関し,特に,搬送時に側方への搬送物の落下を防止するトラフを備えたベルトコンベアに関するものである。」

(15-イ)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来のベルトコンベアでは,以下のような問題点を有していた。
(1)食用品や薬品を搬送する場合は特に衛生の面が重要視されるが清掃等のための搬送部の脱着が困難で作業性に劣り不衛生であるという問題点を有していた。
(2)各構成が固定されたままであり隅部や溝部を有し清掃が困難で搬送物の残査や汚れが堆積し腐敗し或いは雑菌等が繁殖し不衛生となるという問題点を有していた。
(3)フレームの端部にサイズの大きな駆動部を有しフレームの端部に駆動部を位置させる空間を必要とし作業範囲が狭まるという問題点を有していた。
(4)トラフを用いた場合はトラフと搬送部の間に力が作用し回転中にずれや斜行が発生するという問題点を有していた。」

(15-ウ)
「【0010】
【作用】
この構成によって,トラフを容易にフレームから取り外し洗浄液に浸漬させ洗浄し殺菌清掃できる。また,フレーム表面が平滑で洗浄し易くトラフやフレーム及び搬送部を清潔に保つことができる。搬送接触面の傾斜角度や形状の異なるトラフを用途に応じフレームに固定できる。トラフの脱着がトラフ固定部に係止部を挿着するだけで良く特殊な器具を必要とせず容易に据付が可能である。また,使用中にトラフがフレームから移動したり脱落することがなく強固に固定できる。
駆動部がフレームの長手方向の略中央部に装設されるので,フレームの両端部はローラだけが配設され搬送品の搬入空間や排出空間が狭くとも搬入排出ができる。駆動部がモータープーリからなり搬送部への動力伝達機構が必要なく構造が簡便で搬送部の回転が確実に行われる。
搬送部にガイド部を備えフレームにガイド部と移動自在に嵌合するガイド受け部を設けたので,搬送部が回転中にガイド部とガイド受け部が常に嵌合されており搬送部が斜行せず正常な位置を回転できる。
ローラブラケット軸受ユニットが上方にはね上げられ張設されていた搬送部を緩め,出し入れが容易にできる。又,脚部がL字状に形成され一側部が開放されており搬送部の脱着が容易に行えベルトコンベアのメンテナンスや清掃が容易で衛生的に優れる。」

(15-エ)
「【0012】
以上のように本実施例によれば,フレームの両縁部に脱着自在に配設された搬送接触面部と,搬送接触面部の側面から下方に立設された係止部と,フレームの側面に配設され係止部を脱着自在に挿着するトラフ固定部と,フレームの略中央部の下方に装設されたモータープーリからなる駆動部と,を設けたので,簡単な構造にも係わらずトラフの脱着が容易であると同時に搬送物を落下させることなく搬送できる。トラフを分離することによりトラフとフレームの表面の洗浄や殺菌が簡単にかつ確実に行うことができ清潔が要求される食品や食品原料或いは薬品の搬送に好適に用いられる。また,脚部がL字状で一方が開放されているのでローラブラケット軸受ユニットと回動させるだけで搬送部を簡単に外すことができ搬送部の表裏面の洗浄を確実に行うことができる。フレームの両側面に外側に傾斜した搬送接触面を有するトラフを設けたので搬送時のフレーム側面からの搬送品の落下を防止でき作業効率を向上させることができる。駆動部を中央部に設けたので両端部にはフレームの上部に障害物がなく作業時に頭等をぶつけたりすることがなく安全性に優れるとともに製品の高さを制限することがなく作業性に優れている。駆動部にモータープーリを用いたので動力伝達機構が必要なく構造が簡便で量産性に富み,また,動力の伝達が確実で信頼性が高い。」

(15-オ)
図3には,搬送部6を支持するフレーム4が,脚部7の垂直柱7aに一方を自由端とし片持ち支持されていることが示されている。

16 甲第16号証について
甲第16号証には,「コンベア」に関して,次の事項が記載されている。

(16-ア)
「【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかるに上記のようなコンベヤを使用して前処理食品,例えば,パン粉のころもを付けたえびなどを搬送する場合,パン粉がベルトに付着したり主フレームに落下して付着したりするので,ベルトや主フレームを衛生上からも時々清掃する必要がある。そのためにはベルトの取外し,脚柱フレームの固着された主フレームの清掃に多大の時間と労力を必要とする等の問題があった。
【0004】
本考案はこれに鑑み,清掃を簡単に行うことのできるコンベヤを提供することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するため,本考案は,所要長さを有するフレームに駆動ローラと従動ローラとを設け,これらのローラにベルトを巻回し,前記駆動ローラを駆動する駆動装置を設けたコンベヤにおいて,コの字状の脚柱フレームと,この脚柱フレームの上部フレーム腕に嵌挿される嵌挿部を備えた主フレームとを有することを特徴とするものである。
【0006】
【作用】
上記の構成により,主フレームを脚柱フレームに固着されている上部フレーム腕から引き抜くことにより主フレームは単体となるため,主フレームの清掃は容易に行なえる。」

(16-イ)
「【0011】
下部水平部材19は,ステンレスの角パイプよりなり,同じくステンレスの角パイプよりなる垂直部材20に対して主フレーム2の長手方向に直角となる方向に固着されている。また,上部水平部材21はステンレスの丸パイプ及び角材等よりなり,下部水平部材19と平行に垂直部材20に固着されており,この上部水平部材21の垂直部材20に対する反対側の端部には栓部材22が挿着されている。そして,この栓部材22にはめねじ23が螺刻されている。そして,この上部水平部材21には図2に示すように主フレーム2の側部の孔部24が挿入されるとともにボルト25を主フレーム2の孔部26を介してめねじ23に螺合させて主フレーム2を脚柱フレーム4に固定し主フレーム2は脚柱フレーム4により片持支持されるようになっている。また,上部水平部材21の下部近傍の垂直部材20には,上部水平部材21と平行にローラ取付部材27が設けられており,このローラ取付部材27には受けローラ7が軸着されている。また,所定の下部水平部材19の下面にはキャスタ28とジャッキボルト29の両方あるいはいずれかが装着されている。
【0012】
ベルト8は,ゴムベルト等よりなり,主フレーム2の駆動ローラ5と,補助フレーム3の従動ローラに巻回されるとともに,巻回されたベルト8の下面を受けローラ7によって支持してベルト8のたれ下がりを防止している。
【0013】
駆動装置9は,モータ30と,駆動スプロケット31と,従動スプロケット32と,チェーン33とを有している。
【0014】
モータ30は,駆動ローラ5側の2本の脚柱フレーム4間に設けられた台板34に固着されており,駆動スプロケット31はモータ30に取付られ,従動スプロケット32は駆動ローラ5に取付られている。そして,駆動スプロケット31と従動スプロケット32との間にはチェーン33がかけわたされている。また,駆動スプロケット31,従動スプロケット32およびチェーン33を囲んでチェーンカバー35が設けられている。」

17 甲第17号証について
甲第17号証には,「自動計量コンベア装置」に関して,次の事項が記載されている。

(17-ア)
「【請求項1】 被計量物を搬送すると共に重量検出器で計量する計量コンベヤと,該計量コンベヤを支持する本体フレームとを備えた自動計量コンベヤ装置において,
前記本体フレームは,ベースに立設された支柱と,該支柱から前方に突出する突出部を持つアームとを備え,
該アームの突出部に前記重量検出器を介して計量コンベヤが支持されていることを特徴とする自動計量コンベヤ装置。」

(17-イ)
「【0002】
【従来の技術】
この種の自動計量コンベヤ装置は,多量の被計量物を連続して計量する場合に用いられるものであり,その一例を図12に示す。図12において,自動計量コンベヤ装置は,被計量物を搬送すると共に図示しないロードセルで計量する計量コンベヤ100と,該計量コンベヤ100の上流に配設されて計量コンベヤ100に被計量物を送り込む送込コンベヤ101と,2つのコンベヤ100,101を支持する本体フレーム102とを備えている。この種の自動計量コンベヤ装置では,トレーに載せた食品を計量する場合があり,食品の汁や一部がコンベヤ100,101に付着することがある。そのため,コンベヤ100,101を洗浄液等で清掃する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし,この従来技術では,本体フレーム102が2つのコンベヤ100,101の真下に配設されており,該本体フレーム102におけるコンベヤ100,101の支持面103に食品等が落下して付着することがある。そのため,コンベヤ100,101の清掃時に,前記支持面103も洗浄する必要があり,自動計量コンベヤ装置の清掃性が悪い。
【0004】
したがって,本発明の主な目的は,清掃性の良い自動計量コンベヤ装置を提供することである。」

(17-ウ)
「【0014】
まず,本体フレーム1について説明する。本体フレーム1は,前記2つのコンベヤ3A,3を支持するもので,下部のベース10と該ベース10に立設された支柱11などを備えている。前記ベース10は,下方に突出する4本の脚部10aを備えている。なお,各脚部10aには,図示しない雄ネジが形成されており,若干の高さ調整ができるようになっている。
【0015】
図2および図3に示すように,前記支柱11は中空の角筒状で,アルミ製の押出材からなる支柱本体11aを備えている。該支柱本体11aは,支柱11の背面,下面および上面が開口した平面断面形状が略一様なレール状に形成されている。該支柱本体11aの下面および上面の開口は,各々,図1のベース10および上蓋11bで閉塞されている。一方,図3に明示するように,前記支柱本体11aの背面の開口は,背面蓋11cで閉塞されている。
【0016】
前記支柱11の内部には,2つのコンベヤ3A,3(図1)などを制御する制御機器12や配線材が収容されている。図1の上蓋11bの上には,操作部13aおよび表示器13bを備えた操作パネル13が配設されている。なお,支柱本体11aと,上蓋11bおよび背面蓋11c(図2)などとの間は,ゴムパッキンやラビリンス構造などにより適宜のシールが施されている。
【0017】
図2において,支柱11には,支持フレーム14を介して,一対のアーム15,15が固定される。前記支持フレーム14は,3つの支持フレームピース14a,14b,14aが,図3のように,互いに締結されて,支持フレーム14の前面および両側面を囲撓するような状態で,止ネジ14cによって支柱本体11aに固定されている。したがって,アーム15および支持フレーム14は取付高さを調整することができる。なお,止ネジ14cの先端と支柱本体11aとの間には,当て板14dが介挿されている。」

18 甲第18号証について
甲第18号証には,「コンベア」に関して,次の事項が記載されている。

(18-ア)
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 脚部と,前記脚部に直交状に配設固定された無端ベルトを保持するフレームと,前記フレームの長手方向の一端部に上下方向に回動自在に軸着された補助フレームと,前記フレームの長手方向の一側部に配設された駆動モータやチェーン等からなる駆動部と,を備えたコンベヤにおいて,前記駆動部の配設された前記フレームの一側部と対向する他の側部に配設された主ローラ受と,シャフトに回転自在に装着されたテンションローラと,前記駆動部と前記主ローラ受間に装着された駆動ローラと,前記駆動部の側板に揺動自在に遊着されかつ前記主ローラ受に嵌脱自在に装着された少なくとも一以上の前記テンションローラと,を有することを特徴とするコンベヤ。」

(18-イ)
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は無端ベルトの着脱が自在で原料や製品等の品物の乗り継ぎ移送の容易なコンベヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年,各種産業界で原料や製品等の搬送にコンベヤが使用されている。例えば食品業界においても生産ラインに各種コンベヤが使用されている。しかし,従来のコンベヤは加工食品の製造中についた食品等のくずや欠け等を取り除く際,フレーム等を分解しなければ無端ベルトの脱着ができず,無端ベルトの脱着に多大の労力と時間を要して,作業性に劣りひいては生産性を阻害するという問題点を有していた。そこで当出願人は鋭意検討の結果,無端ベルトの脱着が容易でコンベヤの清掃・保守管理が簡単で,生産性,作業性の高効率化,生産ラインの合理化等に適したポータブルタイプのコンベヤを開発し,実願平2-19160号として出願を行った。
以下に従来のコンベヤについて説明する。
図5は従来のポータブルタイプのコンベヤの搬送ベルトを取り外した状態を示す斜視図である。
1はヘッドドライブタイプのコンベヤ本体,2はコの字状をしフレームを片持支持する鉄製等の角パイプ等からなる脚部,2aは脚部2間に架設され脚部2を支持する補助ステー,2bはコンベヤを移動させる際に使用するキャスタ,2cはコンベヤを設置する際に使用するジャッキーボルト,3は鋼板等で形成され長手方向の一側部に延設されたヘッド側側壁3a,他側部に延設されたテール側側壁3bを備えたフレーム,4はヘッド側側壁3aに回転自在に装着された駆動ローラ,5はヘッド側側壁3aの一方に固定され駆動ローラ4のスプロケット(図示せず)を回転させるチェーン(図示せず)を内装した駆動部の側板,6は駆動モータやスピードコントローラ等を内装したドライブボックス6aの外部にスイッチ等を配設した駆動部,7はフレーム3の所定部に1乃至複数個横設されたキャリアローラ,8はフレーム3の近傍で脚部2に固定されたリターンローラ支持部材8aに回転自在でかつ脱着自在に軸着されたリターンローラ,9は補助フレーム固定用ノブ9aで一端部がフレーム3に上方向に回動自在に装着された補助フレーム,9bは補助フレーム9の長手方向の側面に形成された切欠部,9cは切欠部9bに嵌合し補助フレーム9を固定するテール側側壁3bの側面に形成された突起部,10は補助フレーム9の他端部の側壁に形成されたガイドスリット10aに摺動自在に装着されボルトやナット等からなる位置決め手段で当接されているテールローラ,11はゴム板からなる無端ベルトである。 以上のように構成された従来のポータブルタイプのコンベヤについて,以下その動作を説明する。
まず,無端ベルト11を装着する際は補助フレーム固定用ノブ9aを緩め補助フレーム9を上向に立ち上げ,各リターンローラ8を外す。次いで無端ベルト11の一端を補助フレーム9のテールローラ10にかけた後,駆動ローラ4に懸ける。次いで,補助フレーム9を倒してフレーム3の面と水平にして切欠部9bをテール側側壁3bの突起部9cに嵌合させた後,補助フレーム固定用ノブ9aで固定する。次いで,リターンローラ8を装着し,コンベヤ1を目的の場所までキャスタ2bで移動させ,所定の場所でジャッキーボルト2cを降ろし定置させる。次いで,駆動部を起動させ無端ベルト11で搬送作業を行う。 無端ベルト11をはずす際は,各リターンローラ8をはずし前記と同様にして補助フレーム9を立ち上げた後,無端ベルトを手前に引くだけで簡単に無端ベルト11をコンベヤ本体から外すことができる。次いで,無端ベルト11やフレーム3の清掃を行う。
次にコンベヤ同志を衝合させて品物を乗り継ぎ移送する場合について説明する。図6は2台のコンベヤを一列に並べて品物を搬送する際のコンベヤ同志間の移送部の模式図である。コンベヤ間で品物を乗り継ぎ移送する際は,1のコンベヤのテールローラ部に他のコンベヤのヘッドローラ部を衝合させて行っている。Aは品物である。」

19 甲第19号証について
甲第19号証の3頁右上図の装置(CDX-Plus)は,本体カバー前面中央部に設けられた蝶番を介して配置された前面部と,該前面部左右に設けられ,それぞれ取っ手を設けた左右上面とからなる検査室扉を含み,該検査室扉は,前記蝶番を基点に前記取っ手を手前に引くことにより,コンベアベルトの上面を開放できるとこ,及び前記カバーに含まれる検査室扉には,左右の上面部の奥に一対の金具を備えることが示されている。

20 甲第20号証について
甲第20号証には,「CDX OPERATOR MANUAL」に関して,次の事項が記載されている。

(20ーア)
「Figure3 CDX Conveyer System Controls and Indicators」(19頁,請求人仮訳「第3図 CDX搬送システムの制御及び指示」)

(20-イ)
「4.6.Beam Path The CDX has the X-Ray generator at the top of the system producing a narrow beam directed downwards through the product and conveyor belt and into the l inear array detector.」(15頁「4.6」,請求人仮訳「CDXはシステムの上部にX線発生装置を有する。X線発生装置は下方に向けて細いビームを照射し,細いビームは物品とコンベアベルトとを透過してリニアアレー検出器に入る」)

(20-ウ)
「14.4 Conveyor System
1.Low pressure water jets can be used for cleaning but high pressure water jets must not be used.
2.Switch off and remove the X-ray Enable Key for the Main Control Panel.
This key can then be inserted into the red interlock switch located at the rear of the inspection chamber lid.
3.Turn the key clockwise and open the inspection chamber lid by means of the grab handles.See Figure.1
4.Clean the upper side of the conveyor belt.The belt can be moved forwards to that a new section can be cleaned.as follows.
Switch the key on the conveyor control box (see Figure.1)to Hand
(only authorized cleaners will be issued with a key)
Press the Start button on the conveyor control box.
Press the Stop button(on the conveyor control box)when a new section of belt has appeared.
5.If it is necessary to clean the under side of the belt,release the belt tensioners by pushing the Tensioning Lever(on the outside of the conveyor,see Figure 1)upwards.The conveyor Start button must not be operated when the belt tension has been released.
6.Pull the belt over the conveyor base so that the under side can be cleaned.」
(75頁14.4 1?6,請求人仮訳
「14.4 搬送機構
1.清掃には低圧水のみが使用可能であり高圧水を用いてはならない。
2.稼働を停止しメインコントロールパネルからX線照射用キイを抜く。このキイは検査室蓋後方の赤い連動スイッチに挿入できる。
3.キイを時計回りに回し把持手段(取っ手)により検査室蓋を開ける。図1参照。
4.コンベアベルトの上側を清掃する。次の方法によりベルトを動かし新たに清掃する部分を露出させる。
コンベアコントロールボックスのキイを手でオンする(図1参照)。(許可されたクリーナーのみがキイと共に販売されるであろう。)
コンベアコントロールボックスのスタートボタンを押す。
新しい清掃部分が現れたら(コンベアコントロールボックスの)ストップボタンを押す。
5.ベルトの裏面を清掃する必要がある場合は(コンベアの外側にある)テンションレバー(図1参照)を上向きに押してベルトテンショナーを開放する。ベルトテンションが緩んでいる時は,コンベアのスタートボタンを操作してはならない。
6.コンベアのベースからベルトを浮かすと底面側が清掃できる。」)

21 甲第21号証について
甲第21号証には,X線異物検査装置「IX-GA-2475」の取扱説明が記載されている。

22 甲第22号証について
甲第22号証は,キユーピータマゴ株式会社 生産本部 工務部 部長 高田芳次が作成したKD7000シリーズに関する陳述書であって,次の事項が記載されている。

(22-ア)
「キユーピー株式会社は,1997年当時アンリツ株式会社が販売していたX線異物検出器KD7000シリーズの導入を検討し,1999年に導入して,ゆでタマゴに残留する殻等の検出に使用した実績があります。
キユーピー株式会社に同検出機の取扱説明書等が残存している形跡はないですが,同検出機が,以下の構造を備えていたことは,当時キユーピー株式会社生産技術部の管理職であった私は,良く記憶しています。

(1)ラインセンサは,コンベアベルトのループの中,上側のベルトの直下に配置されて いたこと。
(2)カバーの上方に設けられた取っ手を手前に引くことにより,前面の蝶番を基点にカ バーが開放され,コンベアベルトの上方が開放されること。」

23 甲第23の1号証について
甲第23の1号証は国立国会図書館HP「書誌情報」であって,次の事項が記載されている。

(23-ア)
「タイトル Packaging」

(23-イ)
「刊行頻度 BM:隔月刊」

24 甲第23の2号証について
甲第23の2号証は,雑誌「PACKAGING」1995年第1号であって,次の事項が記載されている。

(24-ア)
「ISSUE No1,1995」(フロントページ)

(24-イ)
「PACKAGING,JANUARY 1995」(page2の左下角)

25 甲第25号証について
甲第25号証は,「アンリツ株式会社」から「サンハウス食品株式会社」宛の「参考用X線異物検出機 仕様書」であって,次の事項が記載されている。

(25-ア)
「発行日:1995年7月12日」(フロントページ)

(25-イ)
「1.構成 本機は下記により構成されています
1) KD901G X線異物検出機 1台」(2頁)

(25-ウ)
「参考用X線異物検出機の組立図が示されている。」(4頁)

26 甲第26号証について
甲第26号証は,「アンリツ株式会社」から「サンハウス食品株式会社」宛の「X線異物検出機 仕様書」であって,次の事項が記載されている。

(26-ア)
「発行日:1995年7月26日
改版 :1995年8月28日」(フロントページ)

(26-イ)
「1.構成 本機は下記により構成されています
1) KD901G X線異物検出機 1台(添付図面参照願います。)」(2頁)

27 甲第27号証について
甲第27号証は,「アンリツ展示製品のご案内」であって,次の事項が記載されている。

(27-ア)
「X線異物検出機
金属,ガラス,石などを自動検出・選別
KD7001AW
低エネルギのX線を用い,食品内に混入した高密度不純物(金属,ガラス,石,ゴムなど)を高速で検出,選別します。包装内の素材欠品検出も可能。画像処理機能を搭載することでより高感度を実現しました。」(2頁)

(27-イ)
「1997年8月8日制作80(OK)」(6頁)

28 甲第28号証について
甲第28号証は,「日刊工業新聞1997年9月9日号」であって,次の事項が記載されている。

(28-ア)
「’97 日本国際包装機械展 アンリツ小間 東ホールNo.439」

29 甲第29号証について
甲第29号証は,元Graseby社のManaging Director であったM.Shiel氏の確認書であって,次の事項が記載されている。

(29-ア)
「2) Both the "CDX" and "CDX-PLUS" units are X-ray inspection machines, and characterized by the elements shown below:」(当審仮訳「「CDX」及び「CDX-Plus」はX線検出機で,以下に示される要素により特徴付けられています」)

(29-イ)
「4) The Inspection chamber door opens like this:
a) The chamber door pivots to front side on the hinge unit in front of the machine by pulling the grab handles on the door;
b) Then the upper side of the conveyor belt appears, and the belt can be cleaned.
5) The underside of the belt is cleaned by releasing the belt tensioners by pushing the Tensioning Lever(in front of the machine)upwards.」(請求人仮訳「4)検査室ドアは以下のようにして開く。検査室ドアはドア上の取っ手を引くことにより装置前方のヒンジを支軸として旋回する。するとコンベア上面が現れ,ベルトを清掃することができる。5)ベルトの裏面は装置前方のテンショニングレバーを上方に押すことでベルトテンションを弛めて清掃する」)

第6 当審の判断

1 甲第1発明について
(1-ア)ないし(1-オ)の事項を総合すると,甲第1号証には,以下の発明が記載されているものと認められる。

「X線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置であって,
3対の脚を有する本体フレーム,
被検査物を移動するコンベアベルトを有する搬送機構,
被検査物を透過したX線を前記コンベアベルトの下方において検出するリニアアレー検出器,
前記コンベアベルト及び前記リニアアレ-検出器を被い,左右上面部にはそれぞれ取っ手が設けられた遮蔽カバーを備え,
前記遮蔽カバーは開放可能であるX線異物検査装置。」(以下「甲第1発明」という。)

2 甲第2発明について
(2-ア)ないし(2-オ)の事項を総合すると,甲第2号証には,以下の発明が記載されているものと認められる。

「X線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置であって,
3対の脚を有する本体フレーム,
被検査物を移動するコンベアベルトを有する搬送機構,
被検査物を透過したX線を前記コンベアベルトの下方において検出するリニアアレー検出器,
前記コンベアベルト及び前記リニアアレ-検出器を被うカバーを備え,
前記カバーは開けることことができるX線異物検査装置。」(以下「甲第2発明」という。)

3 実施発明1について
請求人は,第1回口頭審理の際に,予備的に,甲第1号証に記載された「KD7000シリーズ」のX線異物検出機が本件特許出願前に公然実施されたものであることを追加主張している。そこで,請求人が提出した甲各号証を検討すると,甲第1号証,甲第2号証,甲第22号証,甲第27号証及び甲第28号証を総合すると,アンリツ製X線異物検出機「KD7000シリーズ」が公然実施の状態であったと推認できる。
次に,請求人が提出したその他の証拠を検討すると,甲第23の1号証,甲第23の2号証を参酌しても,甲第19号証,甲第20号証が,本件原出願の出願日前に頒布されたか否かについては疑義はあるものの,一応公然実施されたKD7000を特定するための状況証拠として採用する。そうすると,甲第1号証,甲第2号証,甲第19号証,甲第20号証,甲第22号証及び甲第29号証の記載事項を総合すると,本件特許の出願前に次の発明(以下「実施発明1」という。)が記載されていると認められる。

「X線によって,被検査物である食品の異物検査を行うX線検査装置であって,
3対の脚を有する本体フレーム,
前記本体フレームに支持され,被検査物を移動するコンベアベルトを有する搬送機構,
前記本体フレームに支持され,被検査物を透過したX線を前記コンベアベルトの下方において検出するリニアアレー検出器,
前記コンベアベルト及び前記リニアアレ-検出器を被うためのカバー,
を備え,
前記カバーは,当該本体カバーの前面中央部に設けられた蝶番を介して配置された前面部と,該前面部の左右に設けられ,それぞれ取っ手を設けた左右上面部とからなる検査室蓋を含み,
前記検査室蓋は,前記蝶番を基点に前記取っ手を手前に引くことにより,前記コンベアベルトの上面を開放し,前記コンベアベルトの上面の清掃を可能とし,
更に,ベルトテンションを緩ませることにより,前記コンベアベルトの裏面も清掃することが可能であり,
前記カバーに含まれる検査室蓋は,左右の上面板の奥に一対の金具を備える,X線異物検査装置。」

4 実施発明2について
甲第7号証ないし甲第13号証を総合的に判断すると,製造元島津メクテム株式会社に係るX線異物検査装置「SLDX-1500S-WP」は以下の構成を有しているものと認める。

「X線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置であって,
被検査物を搬送する搬送機構を有し,
該搬送機構は下端に車輪を有した4つの支柱からなる台上に配置され,該搬送機構の後側は2本の支柱にて支持され,正面側は2本の支柱に蝶番で取り付けられたブラケットと解除可能となるよう係止され,
検査装置本体は,一方の端部が自由端で,他方の端部が支持端である,搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレーム,筐体,及びX線を遮蔽するカバーを有し,
前記台は,前記搬送機構の下方に底板,及び正面側の2本の支柱の前記ブラケットの下方位置にX線を遮蔽するパネルを設け,
前記カバーは,搬送機構の正面側及び片持ちフレームの自由端側において開閉する開閉部分を備え
前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備えるX線異物検査装置。」(以下「実施発明2」という。)

5 無効理由の検討
(1)無効理由1について
ア 甲第1発明について
(ア)本件発明と甲第1発明との対比
その機能・構造からみて,甲第1発明の「被検査物を移動するコンベアベルトを有する搬送機構」,「リニアアレー検出器」,「前記コンベアベルト及び前記リニアアレー検出器を被い,左右正面部にはそれぞれ取っ手が設けられた遮蔽カバー」が,それぞれ,本件発明の「少なくとも被検査物を移動する搬送機構」,「該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサ」,「漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバー」に相当することは明らかである。
また,甲第1発明の「遮蔽カバー」は,「開放可能である」ことから,甲第1発明と本件発明の「カバー」は「開閉部分を備える」点で共通する。

そうすると,両者は,
(一致点)
「X線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置において,被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサと,漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバーを備え,前記カバーは開閉部分を備えるX線異物検査装置。」
である点で一致し,以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
搬送機構及びラインセンサが,本件発明では「一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として」いる「片持ちフレーム」により支持されているのに対して,甲第1発明では,搬送機構及びラインセンサが,X線異物検査装置内で,片持ちで支持されているのか不明である点。

(相違点2)
漏洩X線を防止するためのカバーの開閉部分が,本件発明では,「前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する」ものであり,更に「前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備える」ものであるのに対して,甲第1発明では,「遮蔽カバー」を開放することによりどの部分が露出されるのか不明であり,更に,固定器具を備えるのか不明である点。

(イ) 相違点についての検討
(相違点1)について
甲各号証に記載されている事項をみると,ラインセンサを片持ちにすることに関して,上記(5-ア)ないし(5-キ)によると,甲第5号証には「ラインセンサ5の一方は,支持台1の垂直部に直角に支持され,他方は自由端になっている」という事項,上記(6-ア)ないし(6-イ)によると,甲第6号証には「ラインセンサ14の一方は,X線遮蔽体21の垂直部に直角に支持され,他方端は自由端になっている」という事項が記載されており,また,実施発明2には「ラインセンサを支持する片持ちフレーム」という構成が含まれている。
また,搬送機構を片持ちにすることに関して,(14-ア)ないし(14-オ)によると,甲第14号証には「X線透過自動検査装置において,シールドボックス1の内側の前記扉1dの配設位置の相対する壁面にはプリント基板Pを移送するベルト5dを備えた昇降台5がリニアガイドレール3に片持ちに支持されている」という事項,上記(15-ア)ないし(15-オ)によると,甲第15号証には「食品等を搬送するベルトコンベアにおいて,脚部7の垂直柱7aに,搬送部6が一方を自由端とし片持ち支持されている」という事項,上記(16-ア)によると,甲第16号証には「食品を搬送するベルトコンベアにおいて,清掃を簡単に行うことができるようにするため,コの字状の脚柱フレームと,この脚柱フレームの上部フレーム腕に嵌挿される嵌挿部を備えた主フレームとを有する」という事項,上記(17-ア)及び(17-イ)によると,甲第17号証には「被計量物を搬送すると共に重量検出器で計量する計量コンベヤと,該計量コンベヤを支持する本体フレームとを備えた自動計量コンベヤ装置において,前記本体フレームは,ベースに立設された支柱と,該支柱から前方に突出する突出部を持つアームとを備え,該アームの突出部に前記重量検出器を介して計量コンベヤが支持されている」という事項,上記(18-ア)によると,甲第18号証には「食品等を搬送するコンベアにおいて,コの字状をしフレームを片持支持する鉄製等の角パイプ等からなる脚部2に,コンベア本体1を支持する」という事項が記載されている。また,実施発明2には「搬送機構は下端に車輪を有した4つの支柱からなる台上に配置され,該搬送機構の後側は2本の支柱にて支持され,正面側は2本の支柱に蝶番で取り付けられたブラケットと解除可能となるよう係止され」る構成が含まれている。
しかしながら,搬送機構を片持ちにすれば,搬送機構自体の重量に加え,被検査物の重量が片持ち支持している箇所にかかるため,両持ちで支持する場合と比較して,搬送機構の安定性が損なわれるおそれがあり,搬送機構の安定性を維持するためには,片持ち支持している箇所の強度を高める等の必要性が生じることは技術常識といえる。したがって,搬送機構をあえて片持ちにするには,ベルトを取り外して清掃する等の積極的な動機付けが必要であるというべきである。
そうすると,甲第20号証(20-ウ)の「3.キイを時計回りに回し把持手段(取っ手)により検査室蓋を開ける。図1参照。4.コンベアベルトの上側を清掃する。」との記載,甲第22号証の「カバーの上方に設けられた取っ手を手前に引くことにより,前面の蝶番を基点にカバーが開放され,コンベアベルトの上方が開放されること。」との陳述,および甲第29号証(29-イ)の「4)検査室ドアは以下のようにして開く。検査室ドアはドア上の取っ手を引くことにより装置前方のヒンジを支軸として旋回する。するとコンベア上面が現れ,ベルトを清掃することができる。5)ベルトの裏面は装置前方のテンショニングレバーを上方に押すことでベルトテンションを弛めて清掃する」)との陳述からみて,甲第1発明は,「遮蔽カバー」を開けることにより,コンベアベルトの上方を開放して清掃を行うものであることは明らかであり,また,甲第1号証には,搬送機構の清掃をし易くする等の動機付けとなる記載及び示唆がないことから,甲第14ないし18号証及び実施発明2から,搬送機構を片持ちにすることが周知であったとしても,甲第1発明の搬送機構を片持ちにしようとすることは,当業者が容易に想到し得たということはできない。

(相違点2)について
上記(相違点1)で検討したとおり,甲第1発明の「遮蔽カバー」は,コンベアベルトの上方を開放して清掃を行うものであることは明らかである。
次に,X線の漏洩を防止するためのカバーに関して,上記(5-キ)によると,甲第5号証には「扉7を開けることにより,第1ベルトコンベア12と第2ベルトコンベア14の側面及び底面の全体を露出することが」という事項,上記(6-ウ)によると,甲第6号証には「開閉遮蔽扉22を開けると,コンベア12の側面及び底面の全体が露出する」という事項,上記(14-エ)によると,甲第14号証には「シールドボックス1内の昇降台5等の内部機構および搬入したプリント基板Pの取出しといったメンテナンス性を向上させるため扉1dを設ける」という事項が記載されている。また,上記実施発明2には「前記カバーは,搬送機構の正面側及び片持ちフレームの自由端側において開閉する開閉部分を備える」構成が含まれている。
しかしながら,甲第5号証及び甲第6号証の「扉」と実施発明2の「カバー」の技術的意義は,「扉」又は「カバー」を閉じた状態ではX線の漏洩を防止し,ベルトの清掃等の際には,カバーを開けることにより搬送機構を支持したコンベア台を装置本体から前方に引き出すことができるようにするためのもの,つまり,「扉」又は「カバー」と搬送機構を支持したコンベア台の引き出しは,技術的に関連しているものである。
そうすると,甲第1発明に,甲第5号証,甲第6号証に記載された事項及び実施発明2に含まれる構成を適用した場合,ラインセンサは本体フレームに片持ちに支持されるものの,搬送機構については本体フレームに片持ちに支持されるのではなく,引き出し可能なコンベア台に支持される発明となるべきであり,甲第5号証,甲第6号証及び実施発明2の搬送機構とカバーの技術的関連性を無視し,カバーに関する事項のみを甲第1発明に適用して,相違点2に係る本件発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たということはできない。
また,上記(14-ア)ないし(14-オ)によると,甲第14号証は,プリント基板の簡易型高分解能X線透過自動検査装置であって,X線源のメンテナンス,プリント基板の取り出しに関する課題を解決するためのものであり,甲第1発明に,甲第14号証に記載された事項を適用しようとする動機付けはないというべきである。

(ウ)まとめ
したがって,本件発明は,相違点1及び相違点2において,甲第1発明,甲第5号証,甲第6号証,甲第14ないし18号証及び実施発明2から当業者が容易に発明できたものではないので,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

イ 甲第2発明について
(ア)本件発明と甲第2発明との対比
その機能・構造からみて,甲第2発明の「被検査物を移動するコンベアベルトを有する搬送機構」,「リニアアレー検出器」,「前記コンベアベルト及び前記リニアアレー検出器を被うカバー」が,それぞれ,本件発明の「少なくとも被検査物を移動する搬送機構」,「該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサ」,「漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバー」に相当することは明らかである。
また,甲第2発明の「カバー」は,「開けることができる」ことから,甲第2発明と本件発明の「カバー」は「開閉部分を備える」点で共通する。
そうすると,両者は,
(一致点)
「X線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置において,被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサと,漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバーを備え,前記カバーは開閉部分を備えるX線異物検査装置。」
である点で一致し,以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
搬送機構及びラインセンサが,本件発明では「一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として」いる「片持ちフレーム」により支持されているのに対して,甲第2発明では,搬送機構及びラインセンサが,X線異物検査装置内で,片持ちで支持されているのか不明である点。

(相違点2)
漏洩X線を防止するためのカバーの開閉部分が,本件発明では,「前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する」ものであり,更に「前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具を備える」ものであるのに対して,甲第2発明では,「カバー」を開けることによりどの部分が露出されるのか不明であり,更に,固定器具を備えるのか不明である点。

(イ)相違点についての検討
上記(相違点1)および(相違点2)は,上記「第6 5 (1) ア (ア)」で検討した(相違点1)および(相違点2)と実質的に同一である。
そうすると,上記「第6 3 (1) ア (イ)」で検討したように,本件発明は、甲第1発明,甲第5号証,甲第6号証,甲第14ないし18号証及び実施発明2から当業者が容易に想到し得たということはできないから,同様の理由により,甲第2発明、甲第5号証,甲第6号証,甲第14ないし18号証及び実施発明2から当業者が容易に想到し得たということはできない。

(ウ)まとめ
したがって,本件発明は,相違点1及び相違点2において,甲第2発明,甲第5号証,甲第6号証,甲第14ないし18号証及び実施発明2から当業者が容易に発明できたものではないので,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

ウ 実施発明1について
(ア)本件発明と実施発明1との対比
その機能・構造からみて,実施発明1の「被検査物を移動するコンベアベルトを有する搬送機構」,「リニアアレー検出器」,「前記コンベアベルト及び前記リニアアレー検出器を被うためのカバー」,「金具」が,それぞれ,本件発明の「少なくとも被検査物を移動する搬送機構」,「該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサ」,「漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバー」,「開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器具」に相当することは明らかである。
また,実施発明1では「検査室蓋は,前記蝶番を基点に前記取っ手を手前に引くことにより,前記コンベアベルトの上面を開放し,前記コンベアベルトの上面の清掃を可能とし」ていることから,「カバーは開閉部分」を備えているといえる。

そうすると,両者は,
(一致点)
「X線によって被検査物である食品の異物検査を行うX線異物検査装置において,被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサと,漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバーを備え,該カバーは開閉部分を備えるとともに,前記開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器を備えるX線異物検査装置。」
である点で一致し,以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
搬送機構及びラインセンサが,本件発明では「一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として」いる「片持ちフレーム」により支持されているのに対して,実施発明1では,搬送機構及びラインセンサが,X線異物検査装置内で,片持ちに支持されているのか不明である点。

(相違点2)
漏洩X線を防止するためのカバーの開閉部分が,本件発明では,「前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する」ものであるのに対して,実施発明1では,コンベアベルトの上面を開放するものである点。

(イ)相違点について
実施発明1と本件発明の(相違点1)は,上記「第6 5 (1) ア (ア)」で検討した(相違点1)と実質的に同一である。そして,(相違点2)については,実施発明1の「カバー」は,「コンベアベルトの上面を開放するもの」であることが明らかであり,また,「開閉部分の閉鎖状態を保持する固定器を備える」点で,「第6 5 (1) ア (ア)」で検討した(相違点2)とは異なっているが,本件発明の「前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する」という構成を備えていない点では同じである。
そうすると,上記「第6 5 (1) ア (イ)」で検討したように,本件発明は、甲第1発明,甲第5号証,甲第6号証,甲第14ないし18号証及び実施発明2から当業者が容易に想到し得たということはできないから,同様の理由により,実施発明1,甲第5号証,甲第6号証,甲第14ないし18号証及び実施発明2から当業者が容易に想到し得たということはできない。

(ウ)まとめ
したがって,本件発明は,相違点1及び相違点2において,実施発明1,甲第5号証,甲第6号証,甲第14ないし18号証及び実施発明2から当業者が容易に発明できたものではないので,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(2)無効理由2について
ア 特許法第36条第6項第1号について
特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知的財産高等裁判所 平成17年(行ケ)10042号事件 平成17年11月11日判決参照)。

以下,上記の観点に立って,本件について検討することとする。

(ア)特許請求の範囲の記載
本件発明には,「一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として,少なくとも被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレームと,漏洩X線を防止するために前記搬送機構および前記ラインセンサを被うカバーとを備え,前記カバーは前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備える」ことが特定されている。

(イ)本件明細書の発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には,「X線異物検査装置が備える搬送機構やX線検出器等は,X線の漏洩防止や防塵のためにX線遮蔽を兼ねたカバーによって被われる構成であり,又,この構成部分はカバーを含めて支持脚101によって支持される構成である。そのため,搬送用のベルトやX線検出器等の補修,清掃,あるいは部品交換等のメンテナンスを行うには,カバーを分解して取り外す必要があり,又,カバーを取り外した状態においても,支持脚の陰となる部分のメンテナンスが困難であり,工具や交換具品が支持脚と干渉して挿入が困難となる。」(「【0009】),「本発明は片持ちのフレーム構成とすることによって,X線異物検査装置の側面部分や底面部分に,支持のための脚部材が存在しない構成とすることができ」(【0013】),「片持ちフレームで支持される機構を被うカバーを開閉可能な構成とし,該カバーを開くことによって,X線異物検査装置の側面や底面を開放状態とする。」(【0015】),「X線発生部の駆動を停止した後,開閉カバー62を開けることによって,搬送機構3及びX線検出器4の側面及び底面部分を露出させることができ,清掃や補修のための工具や交換部品を内部に挿入することができる。」(【0032】),「これらの構成部分のメンテナンスを行う場合,脚部や支柱等が内部あるいは開閉カバーの開放位置に存在すると,工具や交換部品と干渉して取り扱いや挿入を困難にする場合がある。これに対して,本発明のX線異物検査装置では,搬送機構やX線検出器を片持ちで支持する構成とすることによって,開閉カバーの開放側には脚部や支柱を除いた構成とすることができるため,工具や交換部品の挿入や取り扱いを容易とすることができる。」(【0034】)と記載されている。

(ウ)発明の詳細な説明に記載された発明と特許請求の範囲に記載された発明との対比
次に,本件明細書の記載が,本件発明の記載との関係で,上記アの明細書のサポート要件に適合するか否かについて検討する。
上記(イ)によると,メンテナンスを行う場合,脚部が開閉カバーの開放位置に存在すると工具や交換部品の挿入を困難にするが,搬送機構やX線検出器を片持ちで支持する構成とすることによって,一方の端部は自由端となるので支持のための脚部材がない構成となり,そして,カバーを開くことにより搬送機構3及びX線検出器4の側面及び底面部分を露出させることができるため,開閉カバーの開放側には脚部がなく,側面や底面が開放状態となり,メンテナンスを容易にするとの課題を解決できる発明が開示されている。
これに対して,本件発明には,「一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として,少なくとも被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレーム」および「前記カバーは前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備える」という事項が特定されており,当該事項を有することにより,発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではないことは明らかである。

(エ)請求人の主張について
請求人は,審判請求書(33頁1行?35頁7行),弁駁書(20頁1行?21頁4行),口頭審理陳述要領書(12頁下15行?15頁14行)及び口頭審理陳述要領書(2)(5頁10?20行)において,概略,以下の主張をしている。

「開放側の支持脚を省略する」という技術事項が,特許請求の範囲に適切に反映されていないので,搬送機構及びラインセンサが片持ちにフレームに支持されており,該搬送機構及びラインセンサを被うカバーが搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備えていても,脚部が支持端側のみならず自由端側(カバーの開放側)に存在するものであっては,「支持のための脚部が存在しない構成とする」ことができず,「支持脚に干渉することなく工具や交換部品をX線異物検査装置に挿入」するという作用効果を発揮し得ない。

上記請求人の主張は,換言すれば,「開放側の支持脚を省略する」という技術事項が,本件発明の構成として含まれていないため,本件発明は,脚部が支持端側のみならず自由端側(カバーの開放側)に存在するものも含むことになるが,そうすると,「支持脚に干渉することなく工具や交換部品をX線異物検査装置に挿入」するという本願の作用効果を発揮し得ない発明についても本件発明は含むことになるので,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないと主張しているものと解される。
しかしながら,特許法第36条第6項第1号の意義は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」であるから,本件発明が,発明の詳細な説明に記載されているか判断すればよいものであり,そもそも、請求人が想定している「支持脚」とは、「搬送機構」および「ラインセンサ」以外の何を支持するものか不明であって、そのような本件明細書に記載されていない「開放側の支持脚を省略する」という技術事項を想定して,特許法第36条第6項第1号に違反するか否か論ずることは,その前提において誤りがある。
そうすると,請求人は,明細書に記載されていない技術事項に基づいて,特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていないと主張していることになるので,請求人の主張は採用できない。

イ 特許法第36条第4項について
特許法第36条第4項は,実施可能要件,すなわち,特許請求の範囲に記載されている発明が,当業者がその実施をすることができることができる程度に発明の詳細な説明に記載されていることである。以下,上記の観点に立って,本件について検討する。

(ア)本件明細書の発明の詳細な説明の記載
上記(イ)の摘記事項に加え,発明の詳細な説明には「フレーム10は,最下部の支持部分を構成する基部11と,該基部11上に立てられる垂直支持部12と,該垂直支持部12から水平方向に取り付けられる水平支持部13,15を備える。水平支持部13,15は,その一方の端部を垂直支持部12側に固定あるいは移動可能に取り付けられ,他方の端部を自由端とし,片持ちによる支持フレームを構成している。なお,図1,2では,水平支持部13は垂直支持部12側に固定され,L字型支持部15は垂直支持部12側に対して上下方向に移動可能に取り付けられる構成例を示している。又,X線異物検査装置1が備える他の機構についても,垂直支持部12に片持ちで取り付けた水平支持部(図示しない)により支持することができる。」(【0019】),「搬送機構3及びX線検出器4は,水平支持部13によって垂直支持部12に片持ち支持させることができる。又,駆動部39は,支持部14によってベルトコンベアに取り付けられている。なお,駆動部39は,図示しない水平支持部によって垂直支持部12に片持ち支持させることもできる。」(【0026】),「図1,2において,カバー6は搬送機構3及びX線検出器4を被い,漏洩X線の防止及び防塵を行っている。漏洩X線の防止には,X線が漏洩する可能性のある部分に鉛のシールド部材を設けることによって行うことができる。図において,カバー6は固定カバー61と開閉カバー62を備え,開閉カバー62は固定カバー61に対してヒンジ等の開閉機構により取り付けられる。開閉カバー62は,カバー6の側面部分や底面部分を開閉可能とすることができる。」(【0029】)と記載されている。そして、当該記載及び図1ないし図3を参酌すれば,「その一方の端部を垂直支持部12側に固定あるいは移動可能に取りつけられ,他方の端部を自由端とし,片持ちによる支持フレームを構成し」,また,「カバー6は固定カバー61と開閉カバー62を備え,開閉カバー62は固定カバー61に対してヒンジ等の開閉機構により取りつけられる」と記載されていることから,「一方の端部を自由端とし他方の端部を支持端として,少なくとも被検査物を移動する搬送機構および該搬送機構によって移動中の被検査物を透過したX線を検出するラインセンサを支持する片持ちフレーム」および「前記カバーは前記片持ちフレームの自由端側において,前記搬送機構の側面や底面を露出自在に開閉する開閉部分を備える」X線異物検査装置を当業者であれば実施可能であるといえる。

(イ)請求人の主張について
請求人は,実施可能要件について,概略,以下のとおり主張している。

(a)「本件発明の詳細な説明は,搬送機構及びラインセンサを支持するフレームが片持ちフレームであるという請求項の発明特定事項のみを前提として支持脚の干渉を防止できるという,発明の実施可能性の担保が不十分な記載不備の瑕疵を有するものであることは明らかである。」(審判請求書35頁4?7行)
(b)省略されるべき「脚」は,「搬送機構やX線検出器等の構成部分をカバーを含めて支持する支持脚」(【0009】),「検査装置の側面部分や底面部分の支持脚」(【0013】),「X線異物検査装置の側部方向や底部方向が開放される支持脚」(【0015】,【0035】),或いは「開閉はカバーの開放側の支持脚」のいずれにも該当しなければならない。そうでないと,特許法施行規則第24条様式29[備考]8(現行施行規則では「用語は,その有する普通の意味で使用し,かつ,明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用する」)に適合しないことになるからである。(口頭審理陳述要領書14頁17?26行)

しかしながら,上記請求人の主張は,上記アで検討したように,明細書に記載されていない「開放側の支持脚を省略する」という技術事項を想定して,実施可能要件を論ずるのは,その前提において誤りがある。

ウ まとめ
したがって,本件明細書の特許請求の範囲は,特許法第36条第6項第1号の規定に違反するということはできず,また,本件発明の詳細な説明の記載は同条第4項に違反するものであるということもできない。

第7 結び
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件発明に係る特許を無効とすることができない。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-28 
結審通知日 2009-10-30 
審決日 2009-11-10 
出願番号 特願2006-62993(P2006-62993)
審決分類 P 1 113・ 537- Y (G01N)
P 1 113・ 536- Y (G01N)
P 1 113・ 121- Y (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島田 英昭鈴木 俊光  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官
松本 征二
秋月 美紀子
登録日 2006-05-19 
登録番号 特許第3804687号(P3804687)
発明の名称 X線異物検査装置  
代理人 伊原 友己  
代理人 速見 禎祥  
代理人 喜多 俊文  
代理人 吉村 雅人  
代理人 上原 理子  
代理人 岩坪 哲  
代理人 藤岡 宏樹  
代理人 豊岡 静男  
代理人 加古 尊温  
代理人 櫻井 義宏  
代理人 開本 亮  
代理人 江口 裕之  

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