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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1215365
審判番号 不服2008-14171  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-06 
確定日 2010-04-22 
事件の表示 平成10年特許願第281942号「多層プリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月31日出願公開、特開2000- 91750〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成10年9月16日の出願であって、平成19年10月10日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月10日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成20年4月28日付けで拒絶査定がなされ、同年6月6日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされるとともに、同年7月3日に手続補正書が提出されたものである。

[2]本願発明
平成20年7月3日付け手続補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1、6を削除し、請求項5を請求項1に繰り上げるとともに、引用する請求項を整合させたものであり、請求項の削除を目的とするものに該当する。

そして、本願の上記補正後の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載される事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

「両面銅張積層板にレーザ加工により貫通孔を設け、その貫通孔に金属化層を設けることでスルーホールを形成してコア基板とし、
該コア基板上に層間樹脂絶縁層および導体回路を形成する多層プリント配線板の製造方法において、
前記両面銅張積層板の銅箔の厚さを12μm未満とし、
前記両面銅張積層板のどちらか一方に向けて前記貫通孔の径が大きくなるように形成し、
前記貫通孔の金属化層の表面に粗化面を設けたことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。」(以下、「本願発明1」という。)

[3]引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本出願前に頒布された特開平6-216488号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(a)「【請求項12】絶縁層と、導体層とを複数積層したプリント配線板において、
該プリント配線板の内方に形成されたところの、導体層としての複数の信号層と、
該信号層間を電気的に接続するために、該信号層間に介在する絶縁層を貫通して形成された微小径のインナバイアホールと、
前記プリント配線板の最外層にフオトリソにより形成されたブラインドバイアホールとを具備することを特徴とするプリント配線板。

【請求項13】前記インナバイアホールは、φ0.3mm以下の微小径であることを特徴とする請求項12に記載のプリント配線板。

【請求項14】前記インナバイアホールは、レーザビームを前記絶縁層に照射することにより形成されることを特徴とする請求項13に記載のプリント配線板。」
(第2頁右欄第6-21行)

(b)「【請求項20】前記複数の信号層と、該信号層の間に介在する絶縁層とは、銅箔厚12μm以下の銅張積層板を基材として形成されていることを特徴とする請求項12に記載のプリント配線板。」(第2頁右欄第36-39行)

(c)「(第6の実施例)図14は、第6の実施例のプリント配線板の構造を示す側断面図である。
…この第6の実施例においては、まず、ガラスエポキシ銅張積層板(銅箔厚は12μm)からなる厚さ0.4mmの内層コア60に、図1に示したレーザ加工装置により、直径約0.1mmの貫通孔62を形成する。そして、このガラエポ板に厚さ約10μmの銅皮膜を無電解メッキにより施し、エッチングレジストを用いてパターン65,67を形成する。…
…次に、このようにして形成された2層板の両面に、両面同時印刷により、感光性樹脂64,66を均一に塗布し、マスクパターンによる両面同時露光によりブラインドバイアホール68を形成する。このとき、樹脂は、先に形成されているインナバイアホール63の内部に充填される…、
…次にこの板に、電気銅メッキプロセスにより、約20μmの銅皮膜70,72を形成する。…」(第7頁右欄第7-29行)

(d)「このように、この第1(「第6」の誤記)の実施例においては、…且つもともと内層材に12μm以下の極薄銅張板を用いているので、信号層のパターン幅もより細かく形成可能である。」(第7頁右欄第35-48行)

(e)「…図15は、第7の実施例のプリント配線板の構造を示した側断面図 である。…
…この第7の実施例のプリント配線板は、第6の実施例の感光性樹脂による絶縁層を更に数段積み重ねると共に、各層に形成された厚さ約20μmの銅皮膜をパターンニングすることにより高多層化(7層板)したものである。」(第8頁左欄第5-11行)

上記記載事項(c)、(e)によれば、引用刊行物1には、
「ガラスエポキシ銅張積層板にレーザ加工により貫通孔を設け、その貫通孔に無電解メッキによる銅皮膜を設けることでインナバイアホールを形成してコア基板とし、該コア基板上に感光性樹脂および電気銅メッキプロセスによる銅皮膜を形成する多層プリント配線板の製造方法において、
前記ガラスエポキシ銅張積層板の銅箔の厚さを12μmとする多層プリント配線板の製造方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

[4]対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比すると、
引用発明における「ガラスエポキシ銅張積層板」、「無電解メッキによる銅皮膜」、「インナバイアホール」、「感光性樹脂」、「電気銅メッキプロセスによる銅皮膜」は、それぞれ、本願発明1における「両面銅張積層板」、「金属化層」、「スルーホール」、「層間絶縁樹脂層」、「導体回路」に相当するから、
両者は、

「両面銅張積層板にレーザ加工により貫通孔を設け、その貫通孔に金属化層を設けることでスルーホールを形成してコア基板とし、
該コア基板上に層間樹脂絶縁層および導体回路を形成する多層プリント配線板の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
両面銅張積層板の銅箔の厚さが、本願発明1では、「12μm未満」であるのに対し、引用発明では、12μmである点、

(相違点2)
本願発明1では、「前記両面銅張積層板のどちらか一方に向けて前記貫通孔の径が大きくなるように形成」されるのに対し、引用発明ではそのような特定がない点、

(相違点3)
本願発明1では、「前記貫通孔の金属化層の表面に粗化面を設け」るのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

そこで、上記相違点について検討する。
ア.(相違点1)について
引用刊行物1には、上記記載事項(a)、(b),(d)によれば、銅箔厚さが12μm未満の銅張積層板についても、レーザ加工により貫通孔を形成されることが示されており、引用発明において、その銅箔の厚さを「12μm未満」とすることに格別の困難性は認められない。

イ.(相違点2)について
両面銅張積層板にレーザ加工により貫通孔を設けるにあたり、どちらか一方に向けて前記貫通孔の径が大きくなるように形成することは、以下のとおり、本出願前に周知の事項であり、引用発明における貫通孔をそのようにすることは、所望に応じて当業者が適宜なしえた事項にすぎない。

・周知例1:特開平8-116174号公報
「【請求項9】絶縁基板の両面に金属箔を接着する工程と、前記絶縁基板に貫通方向にテーパーを持つ貫通孔を設ける工程と、前記貫通孔内に金属をめっきを施す工程と、前記金属箔をパターンニングする工程を具備することを特長とする回路形成基板の製造方法。…

【請求項11】レーザー加工法を用いて絶縁基板にテーパー形状の貫通孔を形成することを特徴とする請求項8から10の何れかに記載の回路形成基板の形成方法。」(第2頁左欄第38行-同頁右欄第1行)と記載されるとともに、図2には、テーパー形状として、絶縁基板のどちらか一方に向けて前記貫通孔の径が大きくなるものが示されている。

・周知例2:特開昭62-239591号公報
「例えば導体回路を構成するための導体となる部分を予め具備する基体(例えば、紙基材フェノール銅張積層板、ガラス基材エポキシ銅張積層板)を使用して、例えばスルーホール用孔壁…に導体層を形成して導体回路の一部を構成し、…本発明方法の特徴の1つは、スルーホール用として基体に形成する孔のうち少なくとも1つをテーパー状の孔とする…。テーパー状の孔は、例えばレーザー穿孔によりスルーホール用孔を形成することにより得られる。」(第2頁右上欄第8行-同頁左下欄第3行)と記載されるとともに、第4図には、テーパー形状として、基体のどちらか一方に向けて孔の径が大きくなるものが示されている。

ウ.(相違点3)について
プリント配線板のコア基板に設けられた貫通孔において、その内壁に形成された金属導電層(金属化層)の表面を凹凸(粗化面)とすることにより、孔内に充填される樹脂等との密着性を得ることは、以下のとおり、本出願前に周知の事項であり、引用発明における無電解メッキによる銅皮膜(金属化層)表面を粗化面とすることも、当業者が適宜なしえた事項にすぎない。

・周知例3:特開平9-181415号公報
「【請求項1】スルーホールを有し、該スルーホール内を充填材によって密封状態に閉塞処理してなるプリント配線板において、該スルーホール内壁の導体表面に凹凸層が形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】前記凹凸層は銅-ニッケル-リンからなる針状合金層である、請求項1に記載のプリント配線板。」(第2頁左欄第2-8行)

・周知例4:特開平10-154876号公報
図7には、プリント配線板のコア基板の貫通孔内壁の導体回路表面を粗化面とし、さらに樹脂を充填する様子が示されている。

そして、本願発明1が、引用刊行物1の記載事項及び周知技術からは予想しえない効果を奏するものとも認められない。

よって、本願発明1は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[5]むすび
以上のとおり、本願発明1(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-18 
結審通知日 2010-02-23 
審決日 2010-03-09 
出願番号 特願平10-281942
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ黒石 孝志  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 川真田 秀男
鈴木 正紀
発明の名称 多層プリント配線板の製造方法  
代理人 田下 明人  

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