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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C |
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管理番号 | 1216783 |
審判番号 | 不服2008-24680 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-25 |
確定日 | 2010-05-13 |
事件の表示 | 平成11年特許願第294074号「移動通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月27日出願公開、特開2001-116564〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年10月15日の出願であって、平成20年8月20日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月25日に拒絶査定に対する審判請求がされると共に、同年10月27日付で手続補正書が提出されたものである。 2.平成20年10月27日付手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「歩行者が携帯する情報端末と走行車両に搭載された通信システムとの間で通信を行なう移動通信システムであって、 前記通信システムは、 通信可能範囲内にある前記情報端末から送信された前記歩行者の歩行位置情報および進行方向情報を受信する第1の受信手段と、 受信された歩行者の歩行位置情報および進行方向情報に基づいて前記歩行者の自車両に対する相対位置データを求める手段と、 前記歩行者の歩行位置情報、進行方向情報および求めた相対位置データに基づく歩行者警告データを自車両内で出力する第1の出力手段とを備え、 前記情報端末は、 自情報端末の現在位置情報および進行方向情報を前記歩行者の歩行位置情報および進行方向情報として送信する第1の送信手段を備えたことを特徴とする移動通信システム。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「情報端末」を「通信可能範囲内にある」情報端末に限定するものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-79100号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 自機を搭載する移動体又は自機を携帯する携帯者の位置を検出する位置検出手段と、 上記位置検出手段によって検出された移動体又は携帯者の位置情報を他の移動体又は携帯者に向けて発信する通信手段とを備えたことを特徴とする衝突防止装置。 【請求項2】 他の移動体又は携帯者から発信される位置情報を傍受する通信手段と、 自機を搭載する移動体又は自機を携帯する携帯者の位置を検出する位置検出手段と、 上記位置検出手段によって検出された位置情報と、上記通信手段によって傍受された他の移動体又は携帯者の位置情報とに基づいて、自機と他の移動体又は携帯者との相対的な位置関係を検出し、自機の周辺に存在する他の移動体又は携帯者の存在を報知すべきか否か判定する判定手段と、 上記判定手段の判定結果に基づいて、他の移動体又は携帯者の存在を自機を搭載する移動体の運転者又は自機を携帯する携帯者に報知する報知手段とを備えたことを特徴とする衝突防止装置。」 ・「【0007】また、例えば、見通しの悪いカーブの先で故障などによりやむを得ず停車しなければならないような場合や、見通しの悪い交差点に進入した場合など、後続車や他の車両にとって死角となる位置に自車両がいる場合には、その車両の位置が後続車など他の車両にとって死角となるため、それらの車両における自車両の検知が遅れ、衝突されるなどの危険性があるという問題もあった。 【0008】本発明は以上の点を考慮してなされたもので、自車両だけでなく、他の車両も含めた情報の共有を実現し、障害物に対する後続車両の衝突や自車両に対する衝突の危険性をも低減させることができる衝突防止装置を提案しようとするものである。」 ・「【0035】(B)第2の実施形態 以下、ASVに適用した本発明の衝突防止装置の第2の実施形態を図面を参照しながら説明する。 【0036】(B-1)第2の実施形態の構成 図5は、第2の実施形態に係る衝突防止装置を利用した衝突防止システムの概念図である。この衝突防止システムの特徴は、各車両11及び12が各自の位置や進行方向等を周辺車両に発信し、各車両が自車両を含めた周辺車両の位置関係を認識できるようにすることにより衝突防止機能を向上させることを目的とした点である。 【0037】これを実現するのが、図5において、破線で囲まれた部分の衝突防止装置である。すなわち、衝突防止装置は、車両位置検出手段11A及び12A、通信手段11B及び12B、運転者警告手段12Cからなる。 【0038】ここで、車両位置検出手段11A及び12Aとしては、第1の実施形態の場合と同様、GPS電波を利用して自車両の位置を検知する手段を用いることができる。またその他にも、例えば交差点に敷設され、各進入路ごとに異なる周波数帯の電波を発信する電波灯台と呼ぶべきものから受信された電波をもって自車両の進入路を検出することにより、自車両の位置を検知する手段を用いても良い。 【0039】なお、通信手段11B及び12Bや運転者警告手段12Cとしては、第1の実施形態において説明したものと同じものを用いることができる。 【0040】(B-2)第2の実施形態の動作 以上の構成を有する衝突防止装置を搭載した車両について、その衝突防止動作がどのように行われるかを図を用いて説明する。図6は、上述した衝突防止装置を搭載した車両11及び12の走行状況を表した配置例の一つである。図6の場合、交差点13に対して図中右方向から車両11が進入中であり、同じく図中下方向から車両12が進入中である状況を表した図である。 【0041】これら2台の車両11及び12は互いに運転者から死角の位置に入っており、双方の進入が確認できない状態を表している。 【0042】まず、車両の位置情報を発信する側の処理を、図6の車両11に搭載された衝突防止装置の動作を例にとって説明する。図7は、車両11における衝突防止装置の動作内容を示すフローチャートである。 【0043】この車両11における衝突防止装置の車両位置検出手段11Aは、ステップSP21に示すように、常時、車両位置を検出しており、その位置情報を直ちに通信手段11Bに送る。 【0044】通信手段11Bは、受け取った自車両の位置情報を、ステップSP22に示すように、周辺車両に送出する。このときにおける通信手段11Bの自車両の位置情報送出方法は第lの実施形態における障害物情報の送出方法と同様である。 【0045】次に、他の車両からの位置情報を傍受する側の処理動作を、車両12における衝突防止装置の動作を例に説明する。図8は、車両12における衝突防止装置の動作内容を示すフローチャートである。この動作内容は第1の実施形態における車両2の衝突防止装置の動作内容とほぼ同様である。 【0046】まず、ステップSP31に示すように、通信手段12Bにおいて、常時、他の車両からの位置情報の有無が傍聴される。ここで、位置情報が傍受されたか否かの判定はステップSP32において行われ、傍受が確認された場合は、そのときの車両Dの位置がステップSP33に示すように、車両位置検出手段12Aにおいて検出される。そして、傍受された位置情報を利用した自車両に対する発信車両の相対位置の検出がステップSP34で行われる。 【0047】この車両の存在を運転者に警告すべきかどうかは、ステップSP35で判定され、警告を行なうと判断された場合には、ステップSP36に示すように、運転者警告手段により運転者へ障害物に関する警告が行われる。なお、警告すべきかどうかの判定は道路の形状や発信車両までの距離などを考慮して行えば良く、例えば、発信車両の位置が交差点における横方向からの交差路にある場合、あるいは自車両のすぐ脇であるような場合などには警告をすると判定すれば良い。また、どのような場合に警告を与えるかについては事前に運転者が運転者警告手段12Cに対して設定するようにしても良い。 【0048】なお、車両11の衝突防止装置の構成は、車両12の衝突防止装置の構成の一部であり、これらはいずれも第1の実施形態における衝突防止装置の構成の一部であるとも考えることができる。従って、車両12の衝突防止装置は、車両11の衝突防止装置の機能を兼ね備えることができ、また本発明の第1の実施形態における衝突防止装置は、車両11および12の衝突防止装置の両者の機能を兼ね備えることができる。 【0049】(B-3)第2の実施形態の効果 以上のように、第2の実施形態によれば、各車両が検知した自車両の位置を通信手段によって周辺の他の車両に発信することにし、また各車両は他の車両から発信された位置情報を傍受することにしたことより、運転者からは死角となり確認できないような位置にある車両に対してもその存在を事前に検知することが可能となる。 【0050】これにより、従来装置ではなし得なかった衝突の可能性の未然防止を実現できる衝突防止装置を得ることができる。また、自車両の位置を周囲に通知するというだけであれば、図5及び図6の車両11のように車両位置検出手段11Aと通信手段11Bだけで良く、装置の軽量化及び省電力化を実現できる。このため、例えば、自転車、自動二輪車、歩行者に対しても装備が可能である。」 ・また、図5には、車両位置検出手段11A及び通信手段11Bからなる端末と、車両位置検出手段12A、通信手段12B及び運転者警告手段12Cからなる自機との間で通信を行う衝突防止装置のブロック図が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、第2の実施形態に係る次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「歩行者が携帯する端末と車両に搭載された自機との間で通信を行う衝突防止装置であって、 前記自機は、 前記端末から周辺車両に発信された前記歩行者の位置情報や進行方向を傍受する通信手段12Bと、 傍受された位置情報を利用した自車両に対する前記歩行者の相対位置の検出が行われ、 前記相対位置に基づく警告を運転者へ行う運転者警告手段とを備え、 前記端末は、 各自の位置情報や進行方向を発信する通信手段11Bを備えた衝突防止装置。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、 後者における「端末」が前者における「情報端末」に相当し、以下同様に、 「車両」が「走行車両」に、 「自機」が「通信システム」に、 「衝突防止装置」が「移動通信システム」に、 「端末から周辺車両に発信された」態様が「通信可能範囲内にある情報端末から送信された」態様に、 「位置情報や進行方向」が「歩行位置情報および進行方向情報」に、 「傍受する」態様が「受信する」態様に、 「通信手段12B」が「第1の受信手段」に、それぞれ相当する。 また、後者の「傍受された位置情報を利用した自車両に対する歩行者の相対位置の検出が行われ」る態様と前者の「受信された歩行者の歩行位置情報および進行方向情報に基づいて前記歩行者の自車両に対する相対位置データを求める手段」を備える態様とは、「受信された歩行者の歩行位置情報に基づいて歩行者の自車両に対する相対位置データを求める手段」を備えるとの概念で共通する。 そして、後者の「相対位置に基づく警告」が前者の「求めた相対位置データに基づく歩行者警告データ」に相当するから、後者の「相対位置に基づく警告を運転者へ行う運転者警告手段」と前者の「歩行者の歩行位置情報、進行方向情報および求めた相対位置データに基づく歩行者警告データを自車両内で出力する第1の出力手段」とは、「求めた相対位置データに基づく歩行者警告データを自車両内で出力する第1の出力手段」との概念で共通する。 さらに、後者の「各自の位置情報や進行方向を発信する通信手段11B」が前者の「自情報端末の現在位置情報および進行方向情報を歩行者の歩行位置情報および進行方向情報として送信する第1の送信手段」に相当する。 したがって、両者は、 「歩行者が携帯する情報端末と走行車両に搭載された通信システムとの間で通信を行なう移動通信システムであって、 前記通信システムは、 通信可能範囲内にある前記情報端末から送信された前記歩行者の歩行位置情報および進行方向情報を受信する第1の受信手段と、 受信された歩行者の歩行位置情報に基づいて前記歩行者の自車両に対する相対位置データを求める手段と、 求めた相対位置データに基づく歩行者警告データを自車両内で出力する第1の出力手段とを備え、 前記情報端末は、 自情報端末の現在位置情報および進行方向情報を前記歩行者の歩行位置情報および進行方向情報として送信する第1の送信手段を備えた移動通信システム。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 相対位置データを、本願補正発明では、歩行位置情報「および進行方向情報」に基づいて求めているのに対し、引用発明では位置情報に基づいて求めている点。 [相違点2] 第1の出力手段が、本願補正発明では「歩行者の歩行位置情報、進行方向情報および」求めた相対位置データに基づく歩行者警告データの3種類の情報を出力しているのに対し、引用発明では、相対位置データに基づく歩行者警告データは出力しているものの、歩行者の歩行位置情報や進行方向情報まで出力しているか否か明らかではない点。 (4)判断 上記相違点について以下検討する。 ・相違点1について 本願明細書の【0047】における「次いで、コントローラ29は、受信した歩行位置データおよび進行方向データとDGPS受信処理部21から送信される自車両2の走行位置データおよび走行方向データに基づいて、自車両2と歩行者55との間の相対距離(例えば、10mとする)を求め(ステップS5)」という記載を参酌すれば、本願補正発明における「相対位置データ」とは、相対距離のことと解される。 そして、相対距離を求めるための具体的方法は本願明細書に記載されていないが、一般的に歩行者と自車両との相対距離は、これらの位置が判明すれば求められるものであり、進行方向は相対距離に直接関係しない情報と言える。 そうすると、本願発明では、一応、歩行位置情報「および進行方向情報」に基づいて相対位置データを求めると記載されているが、歩行者位置情報に基づいて相対位置データを求めている引用発明と、実質的には相違しない。 したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 ・相違点2について ナビゲーションの技術分野において、移動体の位置情報や進行方向を表示することは常套手段と言える。そして、引用発明の歩行者が携帯する端末は歩行者の歩行位置情報や進行方向情報を発信しているから、引用発明における第1の出力手段も、上記常套手段に倣い、これらの歩行位置情報や進行方向情報を出力するように改変して、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 そして、本願補正発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明及び上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおりであって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願の発明について 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年10月9日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「歩行者が携帯する情報端末と走行車両に搭載された通信システムとの間で通信を行なう移動通信システムであって、 前記通信システムは、 前記情報端末から送信された前記歩行者の歩行位置情報および進行方向情報を受信する第1の受信手段と、 受信された歩行者の歩行位置情報および進行方向情報に基づいて前記歩行者の自車両に対する相対位置データを求める手段と、 前記歩行者の歩行位置情報、進行方向情報および求めた相対位置データに基づく歩行者警告データを自車両内で出力する第1の出力手段とを備え、 前記情報端末は、 自情報端末の現在位置情報および進行方向情報を前記歩行者の歩行位置情報および進行方向情報として送信する第1の送信手段を備えたことを特徴とする移動通信システム。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は、上記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記「2.(1)補正後の本願の発明」で検討した本願補正発明の「情報端末」について「通信可能範囲内にある」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)対比」及び「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明及び上記常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-09 |
結審通知日 | 2010-03-16 |
審決日 | 2010-03-29 |
出願番号 | 特願平11-294074 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01C)
P 1 8・ 575- Z (G01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 東 勝之 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
仁木 浩 小川 恭司 |
発明の名称 | 移動通信システム |
代理人 | 波多野 久 |
代理人 | 関口 俊三 |