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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B63B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B63B
管理番号 1216831
審判番号 不服2009-8529  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-20 
確定日 2010-05-10 
事件の表示 特願2000-367426「コンテナ船のラッシング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月11日出願公開、特開2002-166880〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成12年12月1日の出願であって、平成21年3月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成21年4月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成21年5月20日に手続補正がなされたものである。

II.平成21年5月20日付けの手続補正についての却下の決定
[補正却下の結論]
平成21年5月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
ハッチカバー上に、4段以上に積載された複数段のコンテナを、該ハッチカバー上の前記コンテナの両側に立設されたラッシングブリッジに取り付けられた複数のラッシング要具により固縛し安定させるようにしたコンテナ船のラッシング装置において、
前記ラッシングブリッジの立設高さを、ハッチカバー上より前記コンテナの2段以上に相当する高さに構成するとともに、前記ラッシングブリッジの前記コンテナの2段以上の上端近傍で且つ前記コンテナの最上段部位よりも下段側の1段あるいは複数段部位に前記ラッシング要具を取り付けて、該ラッシングブリッジのラッシング要具取付部よりも上段部位のコンテナを固縛するように構成するとともに、前記上段部位のコンテナを固縛するラッシング要具を、前記コンテナの両側のラッシングブリッジ間をクロスして該コンテナを固縛するように取り付けてなることを特徴とするコンテナ船のラッシング装置。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ハッチカバー上に積載された複数のコンテナを、」を「ハッチカバー上に、4段以上に積載された複数段のコンテナを、」に、「前記ラッシングブリッジのハッチカバー上よりの立設高さを前記コンテナの2段以上に相当する高さに構成するとともに、」を「前記ラッシングブリッジの立設高さを、ハッチカバー上より前記コンテナの2段以上に相当する高さに構成するとともに、」に、「前記ラッシングブリッジの上端近傍に前記ラッシング要具を取り付けて、」を「前記ラッシングブリッジの前記コンテナの2段以上の上端近傍で且つ前記コンテナの最上段部位よりも下段側の1段あるいは複数段部位に前記ラッシング要具を取り付けて、」に、「該ラッシングブリッジのラッシング要具取付部よりも上段部位のコンテナを固縛するように構成したことを」を「該ラッシングブリッジのラッシング要具取付部よりも上段部位のコンテナを固縛するように構成するとともに、前記上段部位のコンテナを固縛するラッシング要具を、前記コンテナの両側のラッシングブリッジ間をクロスして該コンテナを固縛するように取り付けてなることを」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶理由で引用した特開平11-180386号公報(以下「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。

a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンテナ船のハッチカバー上に多列・多段に積み重ねたコンテナの横ずれを防止するコンテナ支持装置であって、ハッチカバー上に載置したハッチカバーの大きさに対応する大きさの移動可能な枠体と、該枠体上にコンテナの長手方向に対峙して設けられたガイド金物と、該ガイド金物を起立させたあと固定する固定装置とを有し、ガイド金物は、起伏可能に立設された平行な複数の柱と、各柱間を連結するブレースと、各柱の内側に突設され、隣り合うコンテナの4隅間を仕切る仕切り板とを有し、ガイド金物の上方部には、最上段のコンテナ下部の4隅を固定する緊締装置を設けてなることを特徴とするコンテナ支持装置。」

b:「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハッチカバーを有するコンテナ船のハッチカバー上に積み重ねるコンテナの横ずれを防止するコンテナ支持装置に関するものである。」

c:「【0010】
図1ないし図4において、1はコンテナ船である。2はコンテナ船1の倉口上を塞ぐハッチカバーである。3は多列・多段に積み重ねられたコンテナである。なお、図1において、船倉内に格納したコンテナについては図示していない。4はハッチカバー2上に載置したハッチカバー2の大きさに対応する大きさの移動可能な枠体である。5は枠体4上にコンテナ3の長手方向に対峙して、起伏可能に立設された平行な1対のガイド金物である。このガイド金物5は、コンテナ3の幅間隔に合わせて平行に配置したI型鋼からなる中間の柱5a,両端の柱5bと、これらの柱5a,柱5bを連結する水平連結部材5cとブレース5dとから構成されている。また、各柱5a,柱5bの下端は、枠体4上に固設した後述するブラケット7Aにピン10により枢着されて起伏可能になっている。各柱5a,柱5bの内側には仕切り板11が突設されており、柱5a,柱5bの内側と仕切り板11とがコンテナ3の4隅に当接することにより、コンテナ3を積み重ねるときのガイドをするとともに、仕切り板11が隣り合うコンテナ3の4隅を仕切ることによりコンテナ船1の航行中のコンテナ3の横ずれを防止している。」

d:「【0020】
・・・このようにガイド金物5を起立させ、コンテナクレーンによりコンテナ3を搬送し、ガイド金物5に案内させながら吊り下ろして枠体4上に積み重ねて格納する。枠体4上にコンテナ3の格納が完了すると、ガイド金物5の上端に設けられている緊締装置8により最上段のコンテナ3下部側面の4隅を固定する。コンテナ3はガイド金物5により4隅を拘束するとともに、ガイド金物5の上方部で緊締装置8で固定しているので、横ずれを起こすことがない。」

記載事項a及びc、図1及び3によれば、コンテナ船のハッチカバー上に多列・多段に積み重ねたコンテナの横ずれを防止するコンテナ支持装置が記載されており、図1及び3ではコンテナは4段積載されている。
コンテナ支持装置の柱5aの高さはハッチカバー上よりコンテナの2段以上に相当する高さであり、コンテナ支持装置の柱5aの上端近傍にはコンテナを固定する緊締装置が取り付けてある。

上記記載から引用例1には、
ハッチカバー上に、4段以上に積載された複数段のコンテナを、該ハッチカバー上の前記コンテナの両側に立設された柱5aに取り付けられた複数の緊締装置により固縛し安定させるようにしたコンテナ船のコンテナ支持装置において、
前記柱5aの立設高さを、ハッチカバー上より前記コンテナの2段以上に相当する高さに構成するとともに、前記ラッシングブリッジの前記コンテナの2段以上の上端近傍に前記緊締装置を取り付けて、コンテナを固縛するように構成するコンテナ船のコンテナ支持装置、 が記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。

同じく原査定の拒絶理由で引用した特開2000-128066号公報(以下「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。

e:「【0001】
【発明の属する技術分野】コンテナ船において上甲板の上側へのコンテナの積載構造に関し、特に長尺のコンテナの積載構造に関する。」

f:「【0002】
【従来の技術】コンテナ船は、その概念的な横断面図である図4及びそのX矢視拡大側面図である図5に示すように、上甲板11に開口形成された開口(ハッチ12)を介して船倉1A内にコンテナ30を収容すると共に、ハッチ12をハッチカバー14で塞いだ上に複数段積み重ねてコンテナ30を搭載するように構成されている。
【0003】ハッチ12の開口縁部には所定高さのハッチコーミング13が立設されており、ハッチカバー14はこのハッチコーミング13の上に載置される。
【0004】ハッチ12は、船倉1A内に40ftのコンテナを挿置し得る開口長さに設定され、このハッチ12の前後両側にはそれぞれラッシングブリッジ20が立設されている。
【0005】ラッシングブリッジ20はコンテナ30と略等しい高さとされ、このラッシングブリッジ20にハッチカバー14の上に積載したコンテナをコンテナ固縛金物で固縛するようになっているものである。」

3.対比
引用発明の「柱5a」は、本願補正発明の「ラッシングブリッジ」に相当し、同じく「緊締装置」は、「ラッシング要具」に相当し、「コンテナ支持装置」は、「ラッシング装置」に相当する。

上記の事項を考慮して、引用発明と本願補正発明を対比すると、両者は次の点で一致する。
ハッチカバー上に、4段以上に積載された複数段のコンテナを、該ハッチカバー上の前記コンテナの両側に立設されたラッシングブリッジに取り付けられた複数のラッシング要具により固縛し安定させるようにしたコンテナ船のラッシング装置において、
前記ラッシングブリッジの立設高さを、ハッチカバー上より前記コンテナの2段以上に相当する高さに構成するとともに、前記ラッシングブリッジの前記コンテナの2段以上の上端近傍に前記ラッシング要具を取り付けて、コンテナを固縛するように構成するコンテナ船のラッシング装置。

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
ラッシング要具の取付位置に関し、本願補正発明は、ラッシングブリッジのコンテナの2段以上の上端近傍で且つコンテナの最上段部位よりも下段側の1段あるいは複数段部位にラッシング要具を取り付けているが、引用発明では、ラッシングブリッジのコンテナの2段以上の上端近傍にラッシング要具を取り付けているが、コンテナの最上段部位よりも下段側の1段あるいは複数段部位ではない点。

(相違点2)
本願補正発明においては、ラッシングブリッジのラッシング要具取付部よりも上段部位のコンテナを固縛しているのに対し、引用発明は、コンテナを固縛しているが、ラッシングブリッジのラッシング要具取付部よりも上段部位のコンテナを固縛しているか否か明確ではない点。

(相違点3)
本願補正発明においては、上段部位のコンテナを固縛するラッシング要具を、コンテナの両側のラッシングブリッジ間をクロスして該コンテナを固縛するように取り付けているのに対し、引用発明は、そのような構造になっていない点。

4.相違点についての判断
(1)相違点1について。
本願補正発明においては、ラッシングブリッジのコンテナの2段以上の上端近傍で且つコンテナの最上段部位よりも下段側の1段あるいは複数段部位にラッシング要具を取り付けているが、引用発明においても、ラッシング要具を取り付け位置がラッシングブリッジのコンテナの2段以上の上端近傍である点では同じであり、コンテナの最上段部位よりも下段側の1段あるいは複数段部位であるか否かは、ラッシングブリッジを超えてコンテナをどの程度の高さまで積載するかによって決まるものである。
そして、コンテナをラッシングブリッジを超える高さまで積載することは引用例2(記載事項f)にも記載されているように公知の事項であるから、相違点1に係る構成とすることに何ら困難性は認められず、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について。
本願補正発明においては、ラッシングブリッジのラッシング要具取付部よりも上段部位のコンテナを固縛しているが、このようなことは引用例2(記載事項f)や特表平11-502484号公報(Fig3)にも記載されているように周知の事項であって、相違点2に係る構成とすることに何ら困難性は認められず、当業者が容易になし得ることである。

(3)相違点3について。
本願補正発明においては、上段部位のコンテナを固縛するラッシング要具を、コンテナの両側のラッシングブリッジ間をクロスして該コンテナを固縛するように取り付けている。
しかし、引用例1では上段部位のコンテナではないがコンテナの両側のラッシングブリッジ間をクロスして該コンテナを固縛する取り付け方法が記載されているし、上段部位のコンテナをラッシング要具によって固縛することは、特表平11-502484号公報(Fig3)にも記載されているように周知の事項であるから、これらの事項を考慮すれば、相違点3に係る構成とすることに何ら困難性は認められず、当業者が容易になし得ることである。

そして、出願人が主張する効果についても何ら格別のものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.上記補正却下された後の本願発明について
1.本願発明の記載事項
平成21年5月20日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成21年1月13日付け手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】ハッチカバー上に積載された複数のコンテナを、該ハッチカバー上の前記コンテナの両側に立設されたラッシングブリッジに取り付けられた複数のラッシング要具により固縛し安定させるようにしたコンテナ船のラッシング装置において、
前記ラッシングブリッジのハッチカバー上よりの立設高さを前記コンテナの2段以上に相当する高さに構成するとともに、前記ラッシングブリッジの上端近傍に前記ラッシング要具を取り付けて、該ラッシングブリッジのラッシング要具取付部よりも上段部位のコンテナを固縛するように構成したことを特徴とするコンテナ船のラッシング装置。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は前記II.2に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.1で検討した本願補正発明の「ハッチカバー上に、4段以上に積載された複数段のコンテナを、」が「ハッチカバー上に積載された複数のコンテナを、」に、「前記ラッシングブリッジの立設高さを、ハッチカバー上より前記コンテナの2段以上に相当する高さに構成するとともに、」が「前記ラッシングブリッジのハッチカバー上よりの立設高さを前記コンテナの2段以上に相当する高さに構成するとともに、」に、「前記ラッシングブリッジの前記コンテナの2段以上の上端近傍で且つ前記コンテナの最上段部位よりも下段側の1段あるいは複数段部位に前記ラッシング要具を取り付けて、」が「前記ラッシングブリッジの上端近傍に前記ラッシング要具を取り付けて、」に、「該ラッシングブリッジのラッシング要具取付部よりも上段部位のコンテナを固縛するように構成するとともに、前記上段部位のコンテナを固縛するラッシング要具を、前記コンテナの両側のラッシングブリッジ間をクロスして該コンテナを固縛するように取り付けてなることを」が「該ラッシングブリッジのラッシング要具取付部よりも上段部位のコンテナを固縛するように構成したことを」になるものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記II.4に記載したとおり、引用例1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に当業者が容易に発明をすることができたものである。

4..むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本件審判の請求は成り立たない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-16 
結審通知日 2010-03-19 
審決日 2010-03-30 
出願番号 特願2000-367426(P2000-367426)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B63B)
P 1 8・ 121- Z (B63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 友也大熊 雄治  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 小関 峰夫
金丸 治之
発明の名称 コンテナ船のラッシング装置  
代理人 松本 廣  
代理人 高橋 昌久  

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