ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D |
---|---|
管理番号 | 1217310 |
審判番号 | 不服2008-21940 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-08-28 |
確定日 | 2010-05-27 |
事件の表示 | 特願2003-384233「地盤改良方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日出願公開、特開2005-146609〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年11月13日の出願であって、平成20年7月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月22日付けで手続補正がなされたものである。 その後、平成21年8月10日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年10月13日付けで回答書が提出された。 2.平成20年9月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年9月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正の内容・補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲を次のとおりに補正しようとする補正事項を含むものである。 「【請求項1】内部が空になるようにしてケーシングを地盤中に埋設し、埋設された前記ケーシング内にドレーン材を投入し、投入完了した前記ケーシングを引抜くことにより地盤改良パイルを形成する地盤改良方法において、前記ドレーン材として、スラッジに生石灰または生石灰系固化材を添加し混合して造粒することにより75μm未満の細粒分の含有率が10%以下に調整された粒状物と、砂礫、砂利およびスラグのうちの少なくとも1つを主成分とする粒状物とを混合して得られた粒状物を形成する地盤改良方法。」(下線部は補正された部分である。) 上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を特定する「造粒された粒状物」を「造粒することにより75μm未満の細粒分の含有率が10%以下に調整された粒状物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。 (2)刊行物及びその記載内容 刊行物1:内藤和章編「チェックポイントに基づく 土木施工管理の実務 8巻 地盤改良工事」第2刷、株式会社山海堂、昭和58年6月30日発行、116?121頁 刊行物2:特開2002-105944号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物1には、「図6-2 打込み式サンドドレーンの施工順序」として、次の図面と図の説明が記載されている。 (117頁)。 上記記載によれば、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。 「内部が空になるようにしてケーシングを軟弱層中に所定の深さまで打ち込み、打ち込まれた前記ケーシング内に砂を投入し、投入完了した前記ケーシングを引抜くことにより地盤改良パイルを形成する地盤改良方法。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) 同じく、刊行物2には、図面とともに、次のことが記載されている。 (2a)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、土木建設工事の軟弱地盤の改良方法、特に軟弱地盤にパイルを打設することによって軟弱地盤や液状化地盤を改良する地盤改良方法に関するものである。」、 (2b)「【0002】 【従来の技術】パイルを打設する地盤改良方法として、ケーシングを地盤中に打込み、このケーシング内に投入した砂、砂利等の骨材を起振機やロッド等で突き固めながらケーシングを引き上げ、締固められた状態のパイルを地盤中に造成するサンドコンパクションパイル工法(以下、「SCP」という)が知られている。」、 (2c)「【0009】この発明の目的は、スラッジを有効に利用し、SCPに適用して良品質の砂材を用いた場合と同等の効果を得ることができる地盤改良方法を提供することにある。」、 (2d)「【0016】本発明においては、スラッジ及びスラッジから副生されるケーキを用いて粒状物を得る。スラッジ及びケーキは、通常、産業廃棄物として排出されるものである。… 【0020】…スラッジに生石灰又は生石灰系の改良材を添加し混合して粒状物を造粒する。例えば、フィルタープレス等により脱水したそのままの含水状態のスラッジに対して生石灰を1重量%以上混合して造粒する。…」、 (2e)「【0034】造成装置をリーダ24の頂部より昇降用ワイヤにより吊持した状態で、起振機23を作動してケーシング21を上下振動させつつ、昇降用ワイヤを繰り出してケーシング21を地盤中に貫入する。ケーシング21が所定深度に達したら、起振機23の作動を停止し、粒状物Sをホッパー22よりケーシング21内部に所定量投入する。… 【0035】ケーシング21内部に粒状物Sを投入した後、エア供給ノズルから圧縮空気を供給して、ケーシング21内部を…加圧した状態で、…ケーシング21を引き抜きつつケーシング21内部の粒状物Sを下端部から地盤中に排出し、地盤改良パイプPを形成する。…」。 上記記載によれば、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。 「ケーシングを地盤中に打込み、このケーシング内に投入した砂、砂利等の骨材を起振機やロッド等で突き固めながらケーシングを引き上げ、締固められた状態のパイルを地盤中に造成するサンドコンパクションパイル工法による地盤改良方法において、前記骨材として、スラッジに生石灰又は生石灰系の改良材を添加し混合して造粒した粒状物を用いる地盤改良方法。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。) (3)対比 本願補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、上記刊行物1記載の発明の「軟弱層」は本願補正発明の「地盤」に相当し、以下、「砂」は「ドレーン材」又は「粒状物」に、「所定の深さまで打ち込み」は、「埋設し」に、「サンドドレーン」は「地盤改良パイル」に、それぞれ相当するから、両者は、 「内部が空になるようにしてケーシングを地盤中に埋設し、埋設された前記ケーシング内にドレーン材を投入し、投入完了した前記ケーシングを引抜くことにより地盤改良パイルを形成する地盤改良方法において、前記ドレーン材として、粒状物を用いる地盤改良方法。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) ドレーン材として、本願補正発明では、「スラッジに生石灰または生石灰系固化材を添加し混合して造粒することにより75μm未満の細粒分の含有率が10%以下に調整された粒状物と、砂礫、砂利およびスラグのうちの少なくとも1つを主成分とする粒状物とを混合して得られた粒状物」を用いるのに対し、刊行物1記載の発明は「砂」を用いる点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 まず、ドレーン材を構成する粒状物の材料について検討すると、ドレーン材として砂礫、砂利、スラグを主成分とする粒状物を用いることは、周知慣用であり(例えば、審尋で引用した特開昭56-89619号公報参照)、刊行物1が、一般技術文献であることを考慮すると、刊行物1記載の発明の「砂」は、これらの周知慣用の粒状のドレーン材の総称として記載されていることは明らかである。 一方、刊行物2記載の発明には、スラッジの有効利用を図るために、サンドコンパクションパイル工法による地盤改良方法に用いる粒状物として、スラッジに生石灰を添加し混合して造粒した粒状物を用いることが示されている。 そして、刊行物1記載の発明の地盤改良方法であるサンドドレーン工法と、刊行物2記載の発明の地盤改良方法であるサンドコンパクションパイル工法とは、いずれも砂等の粒状物による柱を地盤中に形成する軟弱地盤改良方法である点で共通するものであり、砂等の粒状物からなる柱をドレーン材とするか、締め固めてサンドコンパクションパイルとするかは、地盤の状況に応じて適宜選択されてきたものである。 例えば、審尋において周知例として挙げた特開昭62-211417号公報には、サンドドレーン(SD)工法とサンドコンパクション(SCP)工法は、土層に応じて造成されることが記載され、同じく、審尋おいて周知例として挙げた「土質工学ハンドブック改訂編集委員会、「土質工学ハンドブック(1982年版)」、社団法人土質工学会、昭和57年11月15日、1011頁左欄11?13行」には、単一の機械装置を使用してサンドコンパクションパイルとサンドドレーンウェルが施工域と深度において任意に切り換えられることが記載されている。 そうすると、刊行物2記載の発明の、スラッジに生石灰を添加し混合して造粒した粒状物を、サンドドレーン工法に用いる粒状物として採用しようとすることは、当業者が容易に想到うることであり、刊行物1記載の発明において、刊行物2記載の発明で用いられる、スラッジに生石灰を添加し混合して造粒した粒状物を、従来から使用されてきた砂礫、砂利、スラグを主成分とする粒状物と混合して用いることは当業者が容易になしうることである。 次に、粒状物における細粒分の含有率について検討すると、サンドドレーン工法に用いる砂等の粒度として、粒径が75μm以下の細粒分の含有率を少なくすることが適切であることは、技術常識である。 例えば、審尋において引用した上記「土質工学ハンドブック(1982年版)」の1008頁の表23.14には、サンドドレーン工法に用いる砂の粒度について、「サンドドレーンの透過率74μm≦3%」と記載され、また、平成20年11月5日付けの審判請求書の手続補正書に添付された参考文献1「現場技術者のための土と基礎シリーズ16 軟弱地盤対策工法 調査・設計から施工まで 土質工学会 第94頁」には、サンドドレーン用砂の粒度分布は透水性を考慮して適切な粒度とすること、サンドドレーン用砂の適切粒度は、0.074mm(74μm)以下のシルトが微少であること(図-2.4)が記載され、同じく参考文献2「土質試験の方法と解説 第一回改定版 社団法人 地盤工学会 85頁 表-2.4.3」には、サンドマットについて、粒径が75μm以下の細粒分の含有率が15%を超えるもの(75μmふるい通過率Fc%)は、透水性が良くない材料であることが記載されている。 そうすると、軟弱地盤中の水の排出を目的とするサンドドレーン工法に使用する粒状物を、75μm未満の細粒分の含有率を10%以下に調整し、透水性の良好なものとすることは、当業者が容易になしうることである。 そして、本願補正発明の作用効果は、刊行物1、2記載の発明から予測することができる程度であり、格別顕著なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成20年9月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年4月1日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「内部が空になるようにしてケーシングを地盤中に埋設し、埋設された前記ケーシング内にドレーン材を投入し、投入完了した前記ケーシングを引抜くことにより地盤改良パイルを形成する地盤改良方法において、前記ドレーン材として、スラッジに生石灰または生石灰系固化材を添加し混合して造粒された粒状物と、砂礫、砂利およびスラグのうちの少なくとも1つを主成分とする粒状物とを混合して得られた粒状物を用いることを特徴とする地盤改良方法。」(以下、「本願発明」という。) (1)刊行物の記載内容 原査定に引用され本願出願前に頒布された刊行物及びその記載内容は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「造粒された粒状物」の限定事項である「造粒することにより75μm未満の細粒分の含有率が10%以下に調整された」との事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-24 |
結審通知日 | 2010-03-30 |
審決日 | 2010-04-12 |
出願番号 | 特願2003-384233(P2003-384233) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E02D)
P 1 8・ 575- Z (E02D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 苗村 康造 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
神 悦彦 関根 裕 |
発明の名称 | 地盤改良方法 |
代理人 | 石川 泰男 |