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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47B
管理番号 1217364
審判番号 不服2008-22491  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-03 
確定日 2010-05-26 
事件の表示 特願2004-142049「チェスト」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日出願公開、特開2005-323648〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯・本願発明
本願は、平成16年5月12日の出願であって、平成20年7月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月2日付けで手続補正がなされたものであり、その請求項1ないし3に係る発明は、上記平成20年10月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「チェスト本体に収容される合成樹脂製の引出の側面にレールが延設されたチェストにおいて、
前記レールを前記側面の下部に設けたことを特徴とするチェスト。」(以下、「本願発明」という。)

【2】引用刊行物記載の発明
1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平2002-17486号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】筐体の左右側壁に組み付け可能なレール支持棚と、このレール支持棚にスライド可能に支持される左右のスライドレールと、このスライドレールにスライド可能に支持される引出しとからなり、引出し全部を引き出すことができる二段スライド構造であって、スライドレールは後方にスライド片の端部に抜け防止片を一体に設けたレールストッパを備えてなると共に、レール支持棚は前記抜け防止片が挿通可能な嵌め込み孔と、前記スライド片をスライド可能に支持するスライド溝とを備えたことを特徴とする引出しのスライド構造。
【請求項2】引出しはスライド段部を有し、且つ該スライド段部の一箇所には係止突部を形成してなると共に、スライドレールは前記スライド段部をスライド可能に抱持するレール部を有し、且つ該レール部には前記係止突部と係合する引出しストッパを形成してなり、さらに前記引出しストッパは弾性を有する請求項1記載の引出しのスライド構造。」
(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばプラスチック製収納ボックスにおいて、特に成型や組み立てが容易な引出しの二段スライド構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、書類や文具だけでなくFDやCDといった記録メディアを含め、多種多様に亘る物品を整然と収納できる引出し式の収納ボックスは種々存在するが、その中でもボックス全体あるいは筐体を除く部材(特に引出し)をプラスチック成型したものが広まりつつある。」
(1c)「【0014】次に、引出し20は、前方に取り手21を有する比較的深めの箱体22からなり、その左右側板23のそれぞれには上方スライド段部24および下方スライド段部25を平行に長手方向に突設している。・・・」
(1d)「【0016】続いて、レール支持棚30は、図3に示すように、一枚のプラスチック板に上下等間隔に略逆コ字状の支持段部31…31を連続して突設してなる。・・・
【0017】最後にスライドレール40は、図4に示すように、引出し20の各スライド段部24、25をスライド可能に抱持する断面コ字状の上方レール部41と下方レール部42とを中板43と共に一体成型したものであって、断面は略「弓」字状を呈する。各レール部41、42の前方には、ガイド片44、45を対向した状態で突設している。・・・」
(1e)「【0024】次に上述した構造からなる各部材の組み立てについて説明すると、先ずレール支持棚30を筐体10の左右側壁内部にそれぞれ組み付ける。・・・
【0025】次に、上記要領で組み付けられた左右のレール支持棚30それぞれにスライドレール40を組み付ける。ここでは図9に示すように、・・・レール支持棚30の各支持段部31がスライドレール40の各レール部41、42を支持し(図9(B)参照)、スライドレール40はスライド溝33に沿ってスライド可能に支持される。・・・
【0026】最後に引出し20をその各スライド段部24、25をスライドレール40の各レール部41、42の前方開放部から挿入する形でスライドレール40に組み付ける。・・・」
(1f)「【0031】さらに本実施形態によれば全ての引出しを上述したスライドレール40による二段スライド方式とすることも可能であるし、例えばスライドレール40を省略できる比較的浅い引出し50については、図11に示すように、直接支持段部31に当該引出しをスライド可能に保持することもできる。」
(1g)【図1】には、引出し20の側板23の上部に上方スライド段部24および下方スライド段部25を設けられることが記載され、【図11】には、引出し50(20)の上部に、支持段部31にスライド可能に保持されるレール部を形成することが記載されている。
上記の記載事項を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「筐体に収容されるプラスチック製の引出しの左右側板の上部に、上方スライド段部24および下方スライド段部25、あるいはレール部が長手方向に突設されたプラスチック製収納ボックス。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

2.同、特開2001-112557号公報(以下、「引用文献2」という。)には、特に図1,3,4,7,8と共に、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】キャビネットに取り付けられる引き出し箱があって、この引き出し箱の外側面の中程に中程桟を設けるとともに、同引き出し箱の外側面の下部に下部桟を設け、さらに、同引き出し箱の上部に他の引き出し箱の下部桟が嵌合する嵌合凹部を設けたことを特徴とする引き出し箱構造。」
(2b)「【0002】
【従来の技術】従来より、図7および図8に示すごとく、一般の机や洗面化粧台などキャビネット(1)において、引き出し箱(2)を使用して、収納スペースを確保するような引き出し箱構造が知られていたものであり、引き出し箱(2)としては様々な形態で使用されてきたものであった。
【0003】 具体的には、・・・図8に示すごとく、上記引き出し箱(2)の外側面の底部に丸型ストッパー(12)が付いた断面略L字型の専用レール部材(11)・・・を取り付けて、上記キャビネット(1)にもこの専用レール部材(11)に合う丸型ストッパー(12)が付いた断面略L字型の専用レール部材(11)が取り付けられていたものが挙げられるものであった。」
(2c)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような引き出し箱構造においては、引き出し箱(2)を使用する形態に応じて、同引き出し箱(2)の外側面の形状を全く異なるように形成しなければならないものであり、引き出し箱(2)としては使用する形態が違えば、併用することができないものであった。しかも、このような引き出し箱構造においては、引き出し箱(2)を保管する方法として、同引き出し箱(2)の底板を他の引き出し箱(2)の上部の開口に押し込んで図9に示すごとき重ねたような構造をとっていたものであったが、引き出し箱(2)の自重によって、深く重ねすぎた場合には、同引き出し箱(2)どうしが容易に分離することができないという問題があった。
【0005】本発明は、上述の事実に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、レールの構造の違いなどのように引き出し箱を使用する形態が異なっても、同引き出し箱を併用することができ、保管の際など、同引き出し箱どうしを容易に積み重ねできるとともに、容易に分離することができる引き出し箱構造を提供することにある。」
(2d)「【0016】上記下部桟(4)は、図1ないし図5に示すごとく、上記引き出し箱(2)の外側面の下部に設けられるものである。・・・この下部桟(4)が存在することにより、図3に示すごとく、同下部桟(4)に丸型ストッパー(12)が付いた断面略L字型の専用レール部材(11)を取り付けて、上記キャビネット(1)にもこの専用レール部材(11)に合う丸型ストッパー(12)が付いた断面略L字型の専用レール部材(11)が取り付けられて、上記引き出し箱(2)が開閉することができるようになるものである。」
(2e)「【0022】本発明に係る引き出し箱構造によると、図1ないし図6に示すごとく、キャビネット(1)に取り付けられる引き出し箱(2)があって、この引き出し箱(2)の外側面の中程に中程桟(3)を設けるとともに、同引き出し箱(2)の外側面の下部に下部桟(4)を設け、さらに、同引き出し箱(2)の上部に他の引き出し箱(2)の下部桟(4)が嵌合する嵌合凹部(5)を設けたので、中程桟(3)が存在することにより、引き出し箱(2)の外側面の上部との間に凹溝状のレール体が自ずと形成されるものであり、このレール体が上記キャビネット(1)に取り付けられた角棒状の引出レールと嵌合して、引出レールに対してレール体が摺動して、同引き出し箱(2)が開閉することができるようになるものである一方、下部桟(4)が存在することにより、同下部桟(4)に丸型ストッパーが付いた断面略L字型の専用レール部材を取り付けて、上記キャビネット(1)にもこの専用レール部材に合う丸型ストッパーが付いた断面略L字型の専用レール部材が取り付けられて、上記引き出し箱(2)が開閉することができるようになるものである。」
(2f)「【0024】すなわち、本発明は、レールの構造の違いなどのように引き出し箱(2)を使用する形態が異なっても、同引き出し箱(2)を併用することができ、保管の際など、同引き出し箱(2)どうしを容易に積み重ねできるとともに、容易に分離することができるものである。」

【3】対比・判断
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明の「筐体」、「プラスチック製の引出し20」、「左右側板23」、「上方スライド段部24および下方スライド段部25」、「プラスチック製収納ボックス」は、それぞれ、本願発明の「チェスト本体」、「合成樹脂製の引出」、「側面」、「レール」、「チェスト」に相当している。
また、引用文献1記載の発明において、レールを長手方向に突設するとは、レールを「延設」するものといえる。
したがって、両者は、
「チェスト本体に収容される合成樹脂製の引出の側面にレールが延設されたチェスト。」
の点で一致し、下記の点で相違している。
〈相違点〉
引出の側面のレールを、本願発明では、側面の下部に設けたのに対し、引用文献1記載の発明では、側板の上部に設けた点。

そこで、上記相違点について検討する。
引用文献2には、従来の技術として、引き出し箱の外側面の中程にレール体(9)を取り付けたもの、もしくは、引き出し箱の外側面の底部に断面略L字型の専用レール部材(11)が取り付けたものがあることが記載されているとともに、引き出し箱の外側面の中程に中程桟を設けるとともに、同引き出し箱の外側面の下部に下部桟及び下部桟に取り付けられる断面略L字型の専用レール部材(11)を設け、キャビネットに設けた角棒状の引き出しレール又は下部のレール断面略L字型の専用レール部材のいずれにも対応できるようにした引き出し箱が記載されている。
上記、引用文献2に記載されているように、引出しの側面の下部にレールを設けることは普通に行われていることであって、引用文献1記載の発明の引出しの側面に設けるレールを、側面の下部に設けるようにすることは、当業者が適宜なしうることである。

また、本願発明の効果について、明細書には、合成樹脂製の引出を金型で形成する場合、この引出の側面は、金型の抜き勾配によって上方へ向かうに従って側方へ広がるように形成されており、該側面は、下方へ向かうに従って内側へ後退するように傾斜しているが、本願発明は、チェスト本体と引出の側面間の間隙が最も大きくなる下部空間を利用してレールを取り付けることができ、幅広となる側面上部にレールを設ける従来と比較して、引出の内容量の減少を防止することができる旨、記載されているが(段落【0027】?【0028】)、引用文献2は、引き出し箱として、【図9】に示されるような、保管の際積み重ねるものを主に意図しており、【図1】及び【図4】には、上端に突出縁を有し、横幅寸法が下方へ向かうに従って小さくなる形状の引き出し箱において、引き出し箱の底部に下部桟4を設けることが記載されており、引き出し箱の底部にレールを設けると、引き出し箱とキャビネット(本願発明の「チェスト本体」に相当する。)との間隙の最も広い部分を利用できることは、引用文献2の記載から容易に予測することができ、本願発明の効果は、全体として、引用文献1、2記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということはできない。

したがって、本願発明は、引用文献1、2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【4】むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1、2記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-19 
結審通知日 2010-03-30 
審決日 2010-04-12 
出願番号 特願2004-142049(P2004-142049)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 秀幹  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
山本 忠博
発明の名称 チェスト  
代理人 三好 千明  

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