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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1220481
審判番号 不服2006-4011  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-03 
確定日 2010-07-21 
事件の表示 特願2000- 12453「スペクトル拡散通信システムにおける複数のキャリヤの間での改善されたチャネル割当て」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月11日出願公開、特開2000-224650〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は、平成12年1月21日(パリ条約による優先権主張1999年1月21日、米国)の出願であって、平成17年11月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成18年3月3日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成21年7月28日付けで拒絶理由を通知したところ、同年10月21日付けで期間延長請求書が提出され、平成22年1月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 当審において平成21年7月28日付けで通知した拒絶理由の抜粋

以下に、当審において平成21年7月28日付けで通知した拒絶理由を抜粋する。以下の記載中、「<略>」は、拒絶理由通知の記載を省略した箇所である。

『 理 由

本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項第1号並びに第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1及び請求項9の技術内容が不明確である。
備考:
(a)<略>
(b)
請求項1には、「所定のしきい値」が、第2の周波数スペクトル内での第1の周波数スペクトルに対する電磁干渉の差の測定値に基づいて決定されると記載されており、該「しきい値」は、「電磁干渉の差の測定値が最も高くなる場合が最大値であり、電磁干渉の差の測定値が最も低くなる場合が最小値である」と記載されているが、この記載から、どのようにして「電磁干渉の差の測定値」を測定することで、「最大値」や「最小値」が得られるのか不明であり、発明の詳細な説明を参照しても不明である。
例えば、複数のキャリアの各キャリアにおいて「所定のしきい値」を決定する際に、その「決定」のタイミングよりも過去一定期間継続して「電磁干渉の差」を測定した結果、その過去一定期間内で電磁干渉の差が「最も高い値」と「最も低い値」を抽出し、これらをそれぞれ「所定のしきい値」の「最大値」と「最小値」と定義するのか、
もしくは、各キャリア毎に測定される電磁干渉の差の上記の過去一定期間における最も高い値の複数のキャリアにおける平均値と、最も低い値の複数のキャリアにおける平均値を、それぞれ「最大値」と「最小値」と定義するのか、
あるいは、「所定のしきい値」を決定する際に、その「決定」のタイミングで第2のキャリア上に存在する「複数のキャリア」において、それぞれ「第1の周波数スペクトルに対する電磁干渉の差」を測定して、最も測定値の高い値と、最も測定値の低い値を抽出し、それぞれ「所定のしきい値」の「最大値」と「最小値」と定義するのか、
あるいはこれらの方法とは別の定義によるのか、請求項1の記載に基づいて把握することができず、また発明の詳細な説明にも具体的な記載がなく、技術内容を把握できない。
さらに、請求項1に記載された「所定のしきい値」は、その最大値や最小値の求め方が不明であるため、どのように、電磁干渉の差に基づいて決定されるのか、同じく不明であると言わざるを得ない。

(c)?(d)<略>

(2)発明の詳細な説明には、請求項1及び請求項9に係る発明を当業者が実施し得る程度に記載されていない。
備考:
(e)
上記拒絶理由(1)(b)において指摘したように、請求項1及び請求項9には、「所定のしきい値」は、「電磁干渉の差の測定値が最も高くなる場合が最大値であり、電磁干渉の差の測定値が最も低くなる場合が最小値である」と記載されているが、当該最大値、最小値に関する説明として、発明の詳細な説明には、以下の記載(段落【0037】、【0053】)がある。

「【0037】
共通の地理的領域における第2の周波数スペクトルの中の電磁干渉は、共通の地理的領域における第1の周波数スペクトルに対して相対的に測定され、共通の地理的領域の内部での差干渉が計算される。所定のしきい値は測定された差干渉に比例するとして求められ、所定のしきい値の範囲が最高の測定された差干渉における最大値から、最低の測定された差干渉における最小値までとなるように求められる。所定のしきい値は少なくとも1つの隣接しているか、あるいは周囲にあるセルからの干渉がかなり強いキャリヤの割当てを防止するように設定される。オペレータまたは通信システムのユーザがその所定のしきい値を交換センタに対して接続されているユーザ・インタフェース22において入力することが好ましい。」

「【0053】
ステップS32は第1の負荷レベルが第2の負荷レベルより大きかった場合に、ステップS16の後に続く。ステップS32において、第1の周波数スペクトルに相対的な電磁干渉が第2の周波数スペクトルの範囲内で測定され、地理的領域、セクタ、または問題のセルラ領域の内部での差干渉が計算される。次に、ステップS34において所定のしきい値が、その測定された差干渉に対して比例するように設定される。所定のしきい値の範囲は測定された最高の差干渉における最大値から、測定された最小の差干渉における最小値までであることが好ましい。」

ここで、段落【0053】の「最大値」とは「しきい値の最大値」の意味と解される。そうすると、段落【0053】の「測定された最高の差干渉における最大値」とは「測定された最高の差干渉におけるしきい値の最大値」という意味になる。しかし、この表現では、「測定された最高の差干渉」と「しきい値の最大値」の関係が不明確である。「最小値」についても同様に不明確である。

また、上記した発明の詳細な説明の記載を参照しても、どのようにして「電磁干渉の差の測定値」を測定することで、「所定のしきい値」が取り得る範囲であるところの「最大値」や「最小値」が得られるのか不明であり、当業者が請求項1及び9に係る発明を容易に実施し得る程度に記載されているとは認められない。

(f)
請求項1及び9には、「電磁干渉の差の測定値に基づいて所定のしきい値を決定する」との記載があり、発明の詳細な説明の段落【0050】を参照すると、「所定のしきい値は0?100%の範囲内にある。所定のしきい値に対する初期値(default Value)は約40%である。しかし、初期値はセルのトポロジーによって、あるケースにおいては約25%にまで低くすることができる。所定のしきい値が100%に設定された場合、キャリア間のハンドオフは発生しない。所定のしきい値が0に設定された場合、所定のしきい値に対して比較することによって決定されるように、移行先候補キャリアの負荷が適切であった場合に、キャリア間のハンドオフが発生する。」と記載されている。
すなわち、発明の詳細な説明からすると、「所定のしきい値」の具体的な値は、「0?100%」であって、「%」を単位とする値であると読み取れるが、上述したように、どのように、所定のしきい値の最大値や最小値が得られるのか不明である上に、電磁干渉の差がどのような測定値であるかにかかわらず、測定値が最も高くなる場合、所定のしきい値は「100%」であり、測定値が最も低くなる場合、所定のしきい値は「0」になると考えられる。そうすると、「所定のしきい値」は、その最大値や最小値の求め方が不明であるため、どのように、電磁干渉の差に基づいて決定されるのか、同じく不明であると言わざるを得ない。
換言すれば、例えば、「所定のしきい値」を決定するタイミングで、その過去一定期間継続して「電磁干渉の差」を測定した結果、その過去一定期間内で電磁干渉の差が「最も高い値」と「最も低い値」を抽出し、これらをそれぞれ「所定のしきい値」の「最大値」と「最小値」と定義するものと仮定すれば、時間とともに、電磁干渉の差の「最も高い値」と「最も低い値」は変化していく。しかし、「所定のしきい値」の範囲は、上述したように、過去及び現在の電磁干渉の差がどのような値であっても、「0?100%」であって、その最大値「100%」と最小値「0」は不変である。したがって、電磁干渉の差に基づいて決定される「所定のしきい値」は、電磁干渉の差の最も高い値と最も低い値が変化する状況で、それぞれを不変の値である最大値「100%」と「0」に対応させた範囲において、どのように決定するのか、「その測定された差干渉に対して比例するように設定される」との記載(段落【0037】、【0053】)を見ても、具体的にどのように求めるのか、当業者が容易に実施し得る程度に記載されているとは言い難い。

(3)?(7)<略> 』


第3 意見書及び手続補正書の内容

これに対して、審判請求人による平成22年1月29日付けの手続補正書及び意見書の内容は、以下のとおりである。

1.補正された特許請求の範囲

本件補正により、本願の明細書において補正されたのは「特許請求の範囲」のみであり、そのうちの請求項1に係る発明は、以下のとおりである(アンダーライン表示は審判請求人による)。

「【請求項1】 無線通信システムにおいて、複数のキャリア間でトラヒックを割り当てる方法であって、該システムは、第1の周波数スペクトル内にあり所定の地理的な領域を取り扱う少なくとも第1のキャリア、及び、該第1の周波数スペクトルとは異なる第2の周波数スペクトル内にあり該地理的な領域を取り扱う第2のキャリアを有し、該方法は、
該第1のキャリア上の第1の負荷レベルを測定し、該第2のキャリア上の第2の負荷レベルを測定する段階、 該地理的領域において、該第1の周波数スペクトルに対して該第2の周波数スペクトル内で測定された電磁干渉の差に基づいて所定のしきい値を決定する段階であって、該しきい値は、最も高い測定された干渉の差に対応する最大値と最も低い測定された干渉の差に対応する最小値の範囲から選択されるものである、段階、
該しきい値が該最大値の場合、該第1のキャリアと該第2のキャリア間キャリア間ハンドオフを禁止する段階、及び、
該第2の負荷レベルと該第1の負荷レベルの差が該しきい値よりも小さい場合、キャリア間ハンドオフを許可する段階
からなる方法。」

2.意見書の内容

また、審判請求人は意見書において、当審による拒絶理由通知で指摘した事項のうち、請求項1及び請求項9(補正後の請求項1及び7)に関する拒絶理由である上記の(1)(b)、(2)(e)及び(f)対して、次のように反論している。

『(b)、(e)、(f)について
「しきい値」が、「最も高い測定された干渉の差に対応する最大値と最も低い測定された干渉の差に対応する最小値の範囲から選択されるものである」ことを明確にしています。』


第4 当審の判断

上記「第3 意見書及び手続補正書の内容」によると、審判請求人は、請求項1において、「しきい値」が、「最も高い測定された干渉の差に対応する最大値と最も低い測定された干渉の差に対応する最小値の範囲から選択されるものである」と補正することで、当審による拒絶理由通知で指摘した事項の上記(1)(b)、(2)(e)及び(f)の点を明確にしたものと主張している。

しかしながら、審判請求人による上記平成22年1月29日付けの手続補正書及び意見書は、当審による上記の拒絶理由を依然として解消していない。

すなわち、本件補正後の請求項1には、「所定のしきい値」を決定する段階として、「最大値」と「最小値」の範囲から選択されるものである、と記載されているが、当該「最大値」については「最も高い測定された干渉の差に対応する最大値」と記載され、「最小値」については「最も低い測定された干渉の差に対応する最小値」と記載されている。
そうすると、「最も高い測定された干渉の差」について、「干渉の差」が「最も高い」とは、どのようにして測定されるのか、また、「最も低い測定された干渉の差」について、「干渉の差」が「最も低い」とは、どのようにして測定されるのか、特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明を参照しても、依然として不明である。

例えば、請求項1に記載された「所定のしきい値」を決定する段階において、その「決定」のタイミングよりも過去一定期間継続して、「電磁干渉の差」を測定した結果、その過去一定期間内で電磁干渉の差が「最も高い値」と「最も低い値」を抽出し、これらに対応して、それぞれ「所定のしきい値」の「最大値」と「最小値」を定義するのか、
あるいは、当該「所定のしきい値」を決定する段階において、その「決定」のタイミングで第2のキャリア上に存在する複数のキャリアにおいて、それぞれ「第1の周波数スペクトルに対する電磁干渉の差」を測定して、最も測定値の高い値と、最も測定値の低い値を抽出し、これらに対応して、それぞれ「所定のしきい値」の「最大値」と「最小値」を定義するのか、
あるいは、これらの方法とは別の定義によるのか、請求項1の記載の「最も高い測定された干渉の差」及び「最も低い測定された干渉の差」は、どのようにして測定されるのか、依然として把握することができない。

換言すれば、「測定された干渉の差」が「最も高い」値、或いは「最も低い」値とは、その前提として「干渉の差」の「測定値」が複数ある中で、その複数の測定値の大小を互いに比較することにより、「最も高い測定された干渉の差」と「最も低い測定された干渉の差」が得られるものと把握されるが、その「最も高い」値と「最も低い」値を得るための前提となる複数の干渉の差の測定値は、どのようにして得られるのか、特許請求の範囲の記載に基づいて把握することができず、また、発明の詳細な説明にも具体的な記載がなく、依然として不明である。

したがって、本件補正後の請求項1に記載された技術内容は不明確であって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を依然として満たしていない。

また、発明の詳細な説明には、当審による拒絶理由通知の上記(2)(e)及び(f)で示したように、段落【0037】、【0050】、【0053】等において「最高の測定された差干渉」と「最低の測定された差干渉」に関する記述があるが、前記所定のしきい値の「最大値」と「最小値」を得るための「最も高い測定された干渉の差」と「最も低い測定された干渉の差」は、どのようにして、その前提となる複数の干渉の差を測定することで得られるのか、これらの発明の詳細な説明を参照しても具体的な記載がなく、その技術内容を把握することができない。

特に、発明の詳細な説明の段落【0050】を参照すると、「所定のしきい値は0?100%の範囲内にある。所定のしきい値に対する初期値(default Value)は約40%である。しかし、初期値はセルのトポロジーによって、あるケースにおいては約25%にまで低くすることができる。所定のしきい値が100%に設定された場合、キャリア間のハンドオフは発生しない。所定のしきい値が0に設定された場合、所定のしきい値に対して比較することによって決定されるように、移行先候補キャリアの負荷が適切であった場合に、キャリア間のハンドオフが発生する。」と記載されている。
すなわち、発明の詳細な説明からすると、「所定のしきい値」の具体的な値は、「0?100%」であって、「%」を単位とする値であると読み取れるが、上述したように、どのようにして、電磁干渉の差の「最も高い」値や「最も低い」値を得るのか不明である上に、当該電磁干渉の差がどのような測定値であるかにかかわらず、該測定値が「最も高い」値の場合、これに対応して所定のしきい値は最大値の「100%」であり、測定値が「最も低い」値の場合、これに対応して所定のしきい値は最小値の「0%」になると考えられる。そうすると、「所定のしきい値」は、その測定値の「最も高い」値や「最も低い」値の求め方が不明であるため、どのように、電磁干渉の差に基づいて決定されるのか、合わせて不明であると言わざるを得ない。

換言すれば、例えば、「所定のしきい値」を決定するタイミングで、その過去一定期間継続して「電磁干渉の差」を測定した結果、その過去一定期間内で電磁干渉の差が「最も高い」値と「最も低い」値を抽出し、これらに対応してそれぞれ「所定のしきい値」の「最大値」と「最小値」を定義するものと仮定すると、時間の経過とともに、電磁干渉の差の「最も高い」値と「最も低い」値は変化していく。しかも、当該抽出する時間範囲である過去一定期間の長さ次第で、これら測定値の最も高い値と最も低い値は、別の値になる可能性がある。しかし、「所定のしきい値」の範囲は、上述したように、過去及び現在の電磁干渉の差がどのような値であっても、「0?100%」であって、その最大値「100%」と最小値「0%」は不変である。したがって、電磁干渉の差に基づいて決定される「所定のしきい値」は、電磁干渉の差の範囲を決める最も高い値と最も低い値が変化する状況で、それぞれを不変の値である最大値「100%」と最小値「0%」に対応させた所定のしきい値の範囲において、どのように決定するのか、「その測定された差干渉に対して比例するように設定される」との記載(段落【0037】、【0053】)を見ても、具体的にどのように求めるのか、当業者が容易に実施し得る程度に記載されているとは言えない。

したがって、本件補正後の発明の詳細な説明は、請求項1に記載された発明を実施するのに、どのようにして電磁干渉の差の最も高い値と最も低い値を測定し、どのようにして電磁干渉の差に基づいて所定のしきい値を決定するのか、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ充分に記載されておらず、特許法第36条第4項に規定する要件を依然として満たしていない。


第5 むすび

以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項及び第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-22 
結審通知日 2010-02-24 
審決日 2010-03-09 
出願番号 特願2000-12453(P2000-12453)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04B)
P 1 8・ 536- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高木 進白井 孝治  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 近藤 聡
角田 慎治
発明の名称 スペクトル拡散通信システムにおける複数のキャリヤの間での改善されたチャネル割当て  
代理人 本宮 照久  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 臼井 伸一  
代理人 朝日 伸光  
代理人 越智 隆夫  
代理人 岡部 正夫  

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