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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1220809
審判番号 不服2008-18069  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-15 
確定日 2010-07-29 
事件の表示 特願2003-298001「圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004-104117〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年8月21日に特許出願(先の出願に基づく優先権主張:平成14年8月23日)したものであって、平成20年1月21日付けの拒絶理由の通知に対して、同年3月27日付けで手続補正がされたが、同年6月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月15日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月12日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成20年8月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年8月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正のうち、請求項1についてする補正は、補正前に、
「断面で見て凹形の電子素子収納部と当該凹形周囲に堤部を有する構成で、電子素子を保持するパッケージと、当該電子部品素子を気密封止するキャップとを有する電子部品用パッケージを用い、当該電子部品用パッケージ内に少なくとも表面に励振電極の形成された圧電振動板を収納するとともに、前記パッケージとキャップとの気密接合を、前記気密接合温度が380℃を越える、鉛とハロゲン族材料を含まないガラス接合材を用いる圧電振動デバイスであって、
前記ガラス接合材はパッケージの堤部の幅より大きくかつパッケージ内方において、電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成され、また前記励振電極をイオンミーリングにより一部除去し、圧電振動板の特性を調整することを特徴とする圧電振動デバイス。」
であったものを、補正後に、
「断面で見て凹形の電子素子収納部と当該凹形周囲に堤部を有する構成で、電子素子を保持するパッケージと、当該電子部品素子を気密封止するキャップとを有する電子部品用パッケージを用い、当該電子部品用パッケージ内に少なくとも表面に励振電極の形成された圧電振動板を収納するとともに、前記パッケージと圧電振動板とを導電性接合材により導電接合し、かつ前記パッケージとキャップとの気密接合を、前記気密接合温度が380℃を越える、鉛とハロゲン族材料を含まないガラス接合材を用いる圧電振動デバイスであって、
前記ガラス接合材はパッケージの堤部の幅より大きく、かつパッケージ内方において電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成され、また前記励振電極をイオンミーリングにより一部除去し、圧電振動板の特性を調整することを特徴とする圧電振動デバイス。」(以下、本件補正後の請求項1に係る発明を「本願補正発明1」という。)
とするものである。

そうすると、本件補正において、請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に記載された事項に、「前記パッケージと圧電振動板とを導電性接合材により導電接合し」という事項を付加する補正を含むものといえる。

2.本件補正の適否について
前記補正事項を含む本件補正が、特許法第17条の2第4項の各号に規定する、いずれかの事項を目的とした補正に該当するものといえるかについて検討する。

(a)特許法第17条の2第4項第2号は、拒絶査定不服審判を請求する場合において、特許請求の範囲についてする補正が、「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」という事項を目的とするものであるときに、補正をすることができると規定する。
すなわち、拒絶査定不服審判を請求する場合において、特許請求の範囲についてする補正が、特許法第17条の2第4項第2号に規定する事項を目的とする補正であるというためには、当該補正が、「特許請求の範囲」を減縮するものであるというだけでは十分ではなく、更に、「発明を特定するために必要な事項」を「限定」するものであるという要件をも同時に満たすことを要することは、その法条から明らかである。
そして、前記「発明を特定するために必要な事項」とは、特許法「第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項」とあることから、特許法第三十6条第5項の「請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。」との規定により請求項に記載した「事項のすべて」のうちの「個々の事項」を意味するものと解される。
また、「限定」とは、「事物の範囲や数量などを限り定めること。・・・概念に属性を付加してその意義を狭くすること。すなわち、内包を広くし外延を狭くすること。」(株式会社岩波書店「広辞苑第五版」)を意味するといえる。
そうすると、結局、当該補正が、「発明を特定するために必要な事項」を「限定」するものであるといえるためには、当該補正が、補正前の請求項における「発明を特定するために必要な事項」の一つ以上について、「概念に属性を付加してその意義を狭く」して、概念的により下位の「発明を特定するために必要な事項」とする補正であることを要するともの解される。
また、同号の事項を目的とする補正であるといえるためには、更に、補正前と補正後の対応する請求項に記載された発明の「産業上の利用分野及び解決しようとする課題」が同一であることをも要するものといえる。

(b)すなわち、拒絶査定不服審判を請求する場合において、「特許請求の範囲の減縮」を目的として特許請求の範囲を補正する場合には「(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」との要件をも併せて満たす必要がある点において、訂正審判の場合における特許法第126条において規定する「特許請求の範囲の減縮」という条件のみを要件とする補正とは異なるものといえる。

(c)そこで、本件補正の適否について検討すると、補正前の請求項1の記載に「前記パッケージと圧電振動板とを導電性接合材により導電接合し」という事項を付加することを含む本件補正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とした補正であることは認められる。
しかしながら、補正前の請求項1に「前記パッケージと圧電振動板とを導電性接合材により導電接合し」という事項を付加する補正は、補正前の請求項1に記載されていなかった「パッケージと圧電振動板とを導電接合する導電性接合材」という部材を新たに追加するものであるから、当該補正は、補正前の請求項1に記載した、いずれの「発明を特定するために必要な事項」を「限定」するものであるとも認められない。

(d)審判請求人は、平成22年2月5日付けの回答書において、「上記「前記パッケージと圧電振動板とを導電性接合材により導電接合」する点の補正は、電子部品用パッケージに励振電極の形成された圧電振動板の収納された構成を特定したものであり、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定する、特許請求の範囲の減縮を行う補正です。」と主張するので、この点について検討する。
本件補正により請求項1に付加される「パッケージと圧電振動板とを導電性接合材により導電接合し」という技術的事項は、パッケージと圧電振動板とが導電性接合材により導電接合、すなわち、電気的に接続されるということを特定するものであるから、本件補正事項により特定されるのは、圧電振動板の「電気的」な接続関係であるといえる。
一方、「収納」の字句的な意味は「物をかたづけしまうこと。」(株式会社岩波書店「広辞苑第五版」)であるから、補正前の請求項1の「電子部品用パッケージ内に少なくとも表面に励振電極の形成された圧電振動板を収納する」との記載は、圧電振動板が、断面で見て凹形のパッケージとキャップからなる電子部品用パッケージ内に、かたづけしまわれていることを特定しているにすぎない。すなわち、補正前の請求項1において特定されているのは、圧電振動板と電子部品用パッケージの「空間的」な相互の位置関係であると解される。
そうすると、補正前の請求項1の「電子部品用パッケージ内に少なくとも表面に励振電極の形成された圧電振動板を収納する」は、圧電振動板と電子部品用パッケージの「空間的」な相互の位置関係を特定するのみであり、圧電振動板の「電気的」な接続関係については、何ら言及がないのであるから、圧電振動板の「電気的」な接続を特定する本件補正は、前記「電子部品用パッケージ内に少なくとも表面に励振電極の形成された圧電振動板を収納する」という発明を特定するために必要な事項を「限定」する補正であるとはいえない。
したがって、審判請求人の前記主張は採用することができない。

(e)したがって、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とする補正であるとは認められない。

また、本件補正事項を含む本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。

したがって、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の各号に規定する、いずれの事項を目的とするものではない。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.独立特許要件について
仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するといえるとして、本願補正発明1が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、以下において一応検討する。

4-1.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-267446号公報(以下、「引用例1」という。)、特開2001-44760号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

引用例1:特開2001-267446号公報
(1a)「【発明の属する技術分野】本発明は半導体素子を気密に封止して収納するための半導体素子収納用パッケージに関し、特に封止材にガラスを用いて封止を行う半導体素子収納用パッケージおよびこれを用いた半導体装置に関するものである。」(【0001】)

(1b)「しかしながら、このような封止材は人体に対し有害である酸化鉛を主成分としているため、最近では酸化鉛を含有しない、例えばSnO-ZnO-P_(2)O_(5)系の低温封止ガラスが提案されている(特許第2628007号、米国特許第390037903号)。」(【0004】)

(1c)「さらに、本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、封止材を酸化鉛を含まない五酸化燐35?55重量%、一酸化錫20?40重量%、酸化亜鉛10?20重量%、酸化アルミニウム2?4重量%、酸化珪素1?3重量%および酸化ホウ素1?6重量%から成るガラス成分にフィラとしてコージェライト系化合物を外添加で40?45重量%添加した第1領域と、五酸化燐35?55重量%、一酸化錫20?40重量%、酸化亜鉛10?20重量%、酸化アルミニウム2?4重量%、酸化珪素1?3重量%および酸化ホウ素1?6重量%から成るガラス成分にフィラとしてコージェライト系化合物を外添加で16?30重量%添加した第2領域とで構成したことから、人体に害を与えたり地球環境に負荷を与えることはなく、またその封止温度が 430℃程度と低いことから絶縁基体と蓋体とを接合させ、半導体素子収納用パッケージを気密に封止する際の温度を低温と成すことができ、その結果、封止材を溶融させる熱が内部に収容する半導体素子に作用しても半導体素子の特性に劣化を招来することはなく、半導体素子を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。」(【0026】)

引用例2:特開2001-44760号公報
(2a)「【請求項1】水晶片と該水晶片に直列に接続したインダクタを同一容器内に収容して一体的にして、インダクタ内蔵型としたことを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】水晶振動子にインダクタ及び電圧可変容量素子を接続した電圧制御発振器において、前記水晶振動子の容器に少なくとも前記インダクタを一体的に収容したことを特徴とする電圧制御発振器。」(【特許請求の範囲】)

(2b)「水晶振動子2は例えば表面実装用の容器内に水晶片7を密閉封入する。水晶片7は両主面に励振電極8(ab)を有し、両端部に接続電極9(ab)を延出する。そして、容器本体10の端子電極(未図示)の形成された底面に両端部を導電性接着剤11によって固着する。さらに、容器本体10の開口面を樹脂12等によってカバー13を封止し、水晶片を密閉する。」(【0006】)

(2c)「そして、インダクタ4と水晶片7とを容器本体10に一体的にした後、図示しない周波数調整器によって発振周波数を監視しながら、予め形成された水晶片7の励振電極8aの電極膜厚を調整する。電極膜厚は例えば蒸着やイオンミーリングによって制御される。ここでは、公称周波数より高い発振周波数に設定して、水晶片7の電極膜厚が形成される。次に、容器本体10にカバー13を接合して水晶片7を密閉封入し、インダクタ4を内蔵した水晶振動子2(インダクタ内蔵水晶振動子とする)を形成する。」(【0015】)

(2d)「さらに、水晶振動子2の構造例えば保持や封止の形態は任意にできる。」(【0022】)

(2e)図1は、引用例2に記載された発明の一実施例を説明する特に水晶振動子の断面図であって、断面で見て凹形の水晶片を収納する開口面と当該凹形周囲に堤部を有する構成で、水晶片を保持する容器本体と、当該水晶片を密封封入するカバーとを有する表面実装用の容器を用い、当該表面実装用の容器内に少なくとも表面に励振電極の形成された水晶片を収納するとともに、前記容器本体と水晶片とを導電性接着剤により固着し、かつ前記容器本体の堤部の幅の全域を覆うように形成された樹脂等により前記容器本体とカバーとを封止し、水晶片を密封した水晶振動子が図示されていることが看取できる。

4-2.当審の判断
(a)引用例2に記載の発明
引用例2の上記摘記(2a)-(2e)を総合勘案すれば、引用例2には、
「断面で見て凹形の水晶片を収納する開口面と当該凹形周囲に堤部を有する構成で、水晶片を保持する容器本体と、当該水晶片を密封封入するカバーとを有する表面実装用の容器を用い、当該表面実装用の容器内に少なくとも表面に励振電極の形成された水晶片を収納するとともに、前記容器本体と水晶片とを導電性接合材により固着し、かつ前記容器本体とカバーとの封止に、樹脂等を用いる水晶振動子であって、
前記樹脂等は容器本体の堤部の幅の全域に形成され、また前記励振電極をイオンミーリングにより一部除去し、水晶片の特性を調整することを特徴とする水晶振動子」の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されていると認められる。

(b)対比・判断
本願補正発明1と引用例2発明とを対比すると、引用例2発明の「水晶片」、「水晶片を収納する開口面」、「容器本体」、「密封封入」、「カバー」、「表面実装用の容器」、「導電性接着剤により固着」、「封止」、「水晶振動子」は、それぞれ本願補正発明1の「電子素子、電子部品素子、及び、圧電振動板」、「電子素子収納部」、「パッケージ」、「気密封止」、「キャップ」、「電子部品用パッケージ」、「導電性接合材により導電接合」、「気密接合」、「圧電振動デバイス」に相当する。
また、引用例2に記載された発明の「樹脂等」と、本願補正発明2の「気密接合温度が380℃を越える、鉛とハロゲン族材料を含まないガラス接合材」は、「接合材」である点で一致する。

そうすると、結局、本願補正発明1と引用例2発明は、
「断面で見て凹形の電子素子収納部と当該凹形周囲に堤部を有する構成で、電子素子を保持するパッケージと、当該電子部品素子を気密封止するキャップとを有する電子部品用パッケージを用い、当該電子部品用パッケージ内に少なくとも表面に励振電極の形成された圧電振動板を収納するとともに、前記パッケージと圧電振動板とを導電性接合材により導電接合し、かつ前記パッケージとキャップとの気密接合に、接合材を用いる圧電振動デバイスであって、
前記接合材はパッケージの堤部に形成され、また前記励振電極をイオンミーリングにより一部除去し、圧電振動板の特性を調整することを特徴とする圧電振動デバイス。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1: 本願補正発明1では、パッケージとキャップとの気密接合を「気密接合温度が380℃を越える、鉛とハロゲン族材料を含まないガラス接合材」を用いるのに対して、引用例2発明では、樹脂等を用いると記載されている点。

相違点2:本願補正発明1では、接合材は「パッケージの堤部の幅より大きく、かつパッケージ内方において電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成」されているのに対して、引用例2には、この点が明記されていない点。

上記各相違点について検討する。
・相違点1について
引用例2の上記摘記(2b)には「容器本体10の開口面を樹脂12等によってカバー13を封止し、水晶片を密閉する。」と記載されており、また、摘記(2d)には「さらに、水晶振動子2の構造例えば保持や封止の形態は任意にできる。」と記載されている。
そうすると、前記「樹脂等」との記載に照らして、引用例2には、容器本体10の開口面をカバー13で封止し水晶片を密閉する封止材として、「樹脂」はもちろんのこと、封止という機能を果たす限りにおいて、樹脂以外の封止材をも使用するという選択肢があるという技術思想が、明示的に示されているものと認められる。

一方、引用例1には、(a)半導体素子を気密に封止して収納するための半導体素子収納用パッケージに関する発明が記載されており、(b)引用例1の上記摘記(1b)には、封止材に含まれる酸化鉛が人体に対し有害であることから、最近では酸化鉛を含有しない封止ガラスが提案されているという技術開発の方向性が開示されており、(c)さらに、摘記(1c)には、「五酸化燐35?55重量%、一酸化錫20?40重量%、酸化亜鉛10?20重量%、酸化アルミニウム2?4重量%、酸化珪素1?3重量%および酸化ホウ素1?6重量%から成るガラス成分にフィラとしてコージェライト系化合物を外添加で40?45重量%添加した第1領域と、五酸化燐35?55重量%、一酸化錫20?40重量%、酸化亜鉛10?20重量%、酸化アルミニウム2?4重量%、酸化珪素1?3重量%および酸化ホウ素1?6重量%から成るガラス成分にフィラとしてコージェライト系化合物を外添加で16?30重量%添加した第2領域とで構成」した封止温度が 430℃程度の、絶縁基体と蓋体とを接合させ、半導体素子収納用パッケージを気密に封止する、ガラス成分にフィラを添加した封止材が開示されている。そして、前記封止材が、鉛とハロゲン族材料を含まないことは、上記の成分の表記から明らかといえる。

ところで、引用例2発明の「水晶振動子」と、引用例1に記載された「半導体素子収納用パッケージ」に係る発明は、気密封止する部材が「両主面に励振電極を有する水晶片」と「半導体素子」という点で一応相違するといえるが、他方、両者とも大気中に保持することで不具合が生じる可能性がある部材を、容器中に気密封止することで外気から保護することを目的としている点で課題を共通とする発明であるといえる。
また、引用例2の上記摘記(2a)の「電圧制御発振器」との記載からも明らかなように、引用例2の水晶振動子が電気回路の一部分を構成する部品であることから、引用例2発明は、引用例1に記載された半導体素子収納用パッケージに係る発明と、電気回路用の部品という点において、技術的に密接に関連した技術分野に属する発明であるともいえる。

そうすると、引用例1と引用例2に接した当業者であれば、引用例2において、「樹脂等によってカバーを封止し」と記載されているところの「樹脂等」として、引用例1に記載された、鉛とハロゲン族材料を含まない封止温度が 430℃程度の封止材を用いることは容易になし得たことと認められる。また、このような封止材を用いたことによる効果も当業者が予測する範囲内のものといえる。
そうすると、引用例2発明において、相違点1について、本願補正発明1の構成を採用することは当業者が容易に想到し得たことといえる。

・相違点2について
引用例2の上記摘記(2e)から、引用例2には、容器本体の堤部の幅の全域を覆うように形成された封止材により前記容器本体とカバーとを封止した水晶振動子が看取できる。
一方、封止材を封止部に供給する際に、仮に、部材の製造上の寸法の誤差や、封止材を供給する際の供給位置の誤差等があったとしても、封止材を供給すべき範囲の全てに確実に該封止材を供給するため等の理由によって、本来封止材を供給すべき範囲よりも若干広い範囲に封止材を形成することは、下記の周知文献1-3からも明らかなように周知の事項といえる。
また、封止時の加熱と加圧によって、溶融した封止材が、凹形周囲の堤部とこれに対向するキャップとの間から内外にはみ出してメニスカスを作り出し、前記堤部の幅より大きい状態で形成されることは、下記の周知文献4の図1(d)、及び、周知文献2-3の図面にも記載されているように格別のこととはいえない。
してみれば、容器本体の堤部の幅の全域を覆うように形成された封止材により前記容器本体とカバーとを封止した水晶振動子が図示された引用例2に記載された発明において、該接合材を、パッケージの堤部の幅より大きく、かつパッケージ内方において電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成して、相違点2について、本願補正発明1の構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことといえる。また、このような構造を採用したことによる効果は当業者が予測する範囲内のものと認められる。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において「前記ガラス接合材はパッケージの堤部の幅より大きくかつパッケージ内方において、電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成する構成としています。これによりガラス接合材の溶融が促進され、ガラス溶融時に無用な加熱を行うことが回避でき、必要最小限の加熱でガラス接合を行うことができます。以上により、圧電振動デバイスを構成する圧電振動板や励振電極、そして導電性接合材に対して熱による影響を抑制することができます。」として、格別の効果を主張する。
しかしながら、電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成することによって、ガラス接合材の溶融が促進されるとする効果は、明細書に記載されておらず、また、当業者にとって自明な効果であるともいえないから、本願補正発明1の進歩性を肯定する根拠としては採用することができない。
また、仮に、ガラス接合材を電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成することでガラス接合材の溶融が促進されるという効果を認めたとしても、本願補正発明1は、パッケージとキャップとの気密接合を、気密接合温度が380℃を越える、鉛とハロゲン族材料を含まないガラス接合材を用いることを特定しているだけであって、気密接合時の温度の上限は何ら特定していないのであるから、審判請求人の主張する「必要最小限の加熱」以外の加熱によってガラス接合したものをも含む発明であると解されるから、「必要最小限の加熱」を前提とした「圧電振動デバイスを構成する圧電振動板や励振電極、そして導電性接合材に対して熱による影響を抑制することができます。」という効果を認めることはできない。
したがって、審判請求人の前記主張はその主張の根拠を欠くから採用することができない。

周知文献1:特開平11-307661号公報
(周1-1)「【請求項1】セラミック基体と、当該セラミック基体の主面周囲に周状に形成された少なくとも1層からなる第1の接合部と、前記第1の接合部と対応して接合される第2の接合部が周状に形成されたフタとからなり、前記両接合部のうち少なくとも一方の接合部を溶融させることにより気密接合を行う電子部品用パッケージであって、前記各接合部の幅はほぼ等しいか、あるいは溶融する接合部の幅が広く形成されていることを特徴とする電子部品用パッケージ。」(【特許請求の範囲】)

(周1-2)「【請求項6】前記接合部のいずれか一方あるいは両接合部が低融点ガラスからなることを特徴とする請求項1記載の電子部品用パッケージ。」(【特許請求の範囲】)

(周1-3)「【従来の技術】気密封止を必要とする電子部品の例として、水晶振動子、水晶フィルタ、水晶発振器等の水晶応用製品があげられる。これらはいずれも水晶振動板の表面に金属薄膜電極を形成し、この金属薄膜電極を外気から保護するため、気密封止されている。」(【0002】)

(周1-4)「溶融する接合部が半田の場合を例にとり、本発明による作用等を説明する。半田溶融により、セラミック基体に形成された金属層を基準として、フタの搭載位置が自己矯正され、位置決め固定される。すなわち金属層と半田層の幅をほぼ等しくするか、金属層の幅を相対的に狭くすることにより、半田が溶融した際、セラミック基体に形成された金属層を基準として、フタの搭載位置が表面張力により自己矯正され、位置決め固定される。例えば図2に示すようにフタ2がずれて搭載された場合でも、半田溶融時の表面張力により矢印X方向に微小移動しフタが所定の位置に接合される。
金属層の幅が半田層の幅よりも狭い場合は、すなわち図3と図4に示す金属層の幅A<半田層の幅Bの場合は、仮に上述の自己矯正作用が完全に機能しなかった場合でも、接合面積(シールパス幅)が確保できるので、接合における信頼性が高くなる。また、セラミック基体は製造誤差をある程度見込む必要があるが、このような製造誤差が発生した場合であるとか、また半田層の形成を圧延法により行った場合の製造誤差、低融点ガラス形成における製造誤差等が発生した場合においても、上述と同様に接合面積(シールパス幅)が確保できるので、接合における信頼性が高くなる。なお、半田層の幅が金属層の幅より大きすぎる場合、半田の溶融時の放出ガスがパッケージ内部に蓄積されやすくなるので、設計時に考慮すべき点である。」(【0018】-【0019】)

周知文献2:特開2002-171150号公報
(周2-1)「一般に表面実装型の圧電デバイスは、圧電振動片及び必要に応じてIC素子を実装したベースに蓋を接合して封止するパッケージ構造を有し、特にガラス材料の蓋を用いて、封止後に外側から圧電振動片にレーザ光を照射することにより周波数調整できるようにしたものが知られている。図8は、このようなパッケージ構造を有する従来の音叉型圧電振動子の一例を示している。この圧電振動子は、絶縁材料からなる矩形箱状のベース1とガラス材料からなる薄板状の蓋2とからなるパッケージ3を有し、その中に音叉型水晶振動片4がその基端部4aでベース1底面に片持ち式に支持されている。蓋2は、その下面周縁をベース1上端面に低融点ガラス5を用いて接合され、パッケージ内部を気密に封止している。
【発明が解決しようとする課題】圧電デバイスのパッケージには、例えば落下等の衝撃や実装時につかまれることにより、外力が作用する。ところが、上述した従来の、単に蓋をベース上端面に載せて接合したパッケージ構造の圧電デバイスは、特にパッケージの側方から作用する力を全て水平方向の接合面で受けることになるので、元々構造的に側方からの外力に対する接合強度が弱いという性質がある。このため従来は、低融点ガラスの破損によりパッケージの気密性を喪失しないように、接合面積を広く即ち封止幅(図8におけるw)を大きくして接合強度を高めている。」(【0003】-【0004】)

(周2-2)図8(A)は、周知文献2に記載された従来の圧電振動子を示す縦断面図であって、同図から、低融点ガラス5が、パッケージの堤部の幅より大きく、かつパッケージ内方において電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成されていることを看取することができる。

周知文献3:特開2001-94379号公報
(周3-1)「このような構成であれば、カバー11が許容誤差範囲内で位置ズレを生じたとしても、第2図に示したように、シールパスWは枠壁12の壁幅として一定値を維持する。したがって、接合強度及び耐湿性を良好に維持して信頼性を高める。また、枠壁12は固定されて位置ズレを生じないので、溶融した樹脂7が水晶片3に付着することもない。したがって、設計自由度を損うことがなく、振動特性を良好に維持できる。」(【0011】)

(周3-2)「また、凹部6には、ICチップ2のみならずコンデンサ等の他の素子を収容してもよい。また、水晶片3は両端を固着して保持したが、一端側に引出電極を延出して一端部のみを保持してもよい。また、樹脂7はカバー11側に塗布したがセラミックベース10側に塗布されていてもよい。また、樹脂7による封止としたが、ガラス及びその他の封止材を用いた場合であっても同様に適用できる。また、カバー11はセラミック等の絶縁体であっても金属でもよい。そして、平板状としたが枠壁12との接合面が平板状であればよい。」(【0013】)

(周3-3)図1、図2、図3、図5は、いずれも周知文献3に記載された実施例を説明する水晶発振器の断面図であって、各図から、封止材が、パッケージの堤部の幅より大きく、かつパッケージ内方において電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成されていることを看取することができる。

周知文献4:特開平5-226492号公報
(周4-1)「図1は本発明の第1の実施例を示すパッケージの封止工程断面図である。まず、図1(a)に示すように、ホットプレートのような加熱装置31上に半導体素子33が搭載された、封止されるべきセラミックベース基板32を載せ、それにキャップ34(後述)にコーティングされているフリットガラス35(後述)の軟化点以上に加熱しておく。例えば、軟化点が340C°のガラスであれば、360?380C°に加熱しておく。次いで、図1(b)に示すように、フリットガラス35付セラミックキャップ
(蓋)34を搭載する。すると、図1(c)に示すように、セラミックキャップ34のフリットガラス35の一部が溶融し、セラミックキャップ34が固定される。この状態で、炉に入れ、図1(d)に示すように、完全にフリットガラスを溶融(例えば、420C°に加熱)させ封止する。」(【0009】-【0010】)

(周4-2)図1は、周知文献4に記載された発明の第1の実施例を示すパッケージの封止工程断面図であって、図1(d)から、封止材が、パッケージの堤部の幅より大きく、かつパッケージ内方において電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成されていることを看取することができる。

4-3.むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するといえるとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

III.本願発明について
1.本願発明
平成20年8月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-3に係る発明は、平成20年3月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「断面で見て凹形の電子素子収納部と当該凹形周囲に堤部を有する構成で、電子素子を保持するパッケージと、当該電子部品素子を気密封止するキャップとを有する電子部品用パッケージを用い、当該電子部品用パッケージ内に少なくとも表面に励振電極の形成された圧電振動板を収納するとともに、前記パッケージとキャップとの気密接合を、前記気密接合温度が380℃を越える、鉛とハロゲン族材料を含まないガラス接合材を用いる圧電振動デバイスであって、
前記ガラス接合材はパッケージの堤部の幅より大きくかつパッケージ内方において、電子素子収納部にはみ出す状態で周状に形成され、また前記励振電極をイオンミーリングにより一部除去し、圧電振動板の特性を調整することを特徴とする圧電振動デバイス。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由に引用された引用例1-2と、その主な記載事項は、前記「II.4-1.」に記載したとおりである。

3.当審の判断
本願発明1を特定するに必要な事項を全て含み、さらに具体的に限定したものに相当する本願補正発明1が、前記「II.4-2.」に記載したとおり、引用例1-2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も同様の理由で、引用例1-2に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-28 
結審通知日 2010-06-01 
審決日 2010-06-14 
出願番号 特願2003-298001(P2003-298001)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷部 智寿宮崎 園子  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 筑波 茂樹
加藤 浩一
発明の名称 圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法  
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