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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1221142
審判番号 不服2006-19542  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-04 
確定日 2010-08-04 
事件の表示 特願2004- 69539「ヒドロキシル化カルボン酸トリグリセリド由来のポリエステルおよび分子量650乃至10,000g/molのオイルを含む化粧品組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月 7日出願公開,特開2004-277420〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,平成16年3月11日(パリ条約による優先権主張2003年3月12日 仏国)の出願であって,平成17年4月19日付け拒絶理由通知書が通知され,その指定期間内の同年11月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成18年5月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し同年9月4日に拒絶査定不服審判が請求がなされるとともに,同年10月4日付けで手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。

2.平成18年10月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成18年10月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願発明
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正することを含むものである。
「i)ヒドロキシル化カルボン酸のトリグリセリドの少なくとも1種を,a)6から40個の炭素原子を含む脂肪族モノカルボン酸で,さらにb)3から10個の炭素原子を含む脂肪族ジカルボン酸で,エステル化することにより得られる少なくとも1種のポリエステル,ii)650から10,000g/molの分子量の少なくとも1種の高分子量オイル,ならびにiii)少なくとも1種の着色剤を含む,化粧品として許容される媒質を含む,ケラチン物質のための美容ケアおよび/またはメイクアップ組成物。」

上記請求項1についての補正は,補正前請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である,「a)脂肪族モノカルボン酸」及び「b)脂肪族ジカルボン酸」を,それぞれ「a)6から40個の炭素原子を含む脂肪族モノカルボン酸」及び「b)3から10個の炭素原子を含む脂肪族ジカルボン酸」に,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において限定するものであって,平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「旧特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかについて以下検討する。

(2)引用刊行物及びその記載事項
原審で引用された,本願優先権主張の日前に頒布されたことが明らかな刊行物A?Cには,それぞれ以下の事項が記載されている。

刊行物A:米国特許第6342527号明細書
刊行物B:特開平11-310511号公報
刊行物C:特開平07-188152号公報

(2-A)刊行物Aの記載事項(翻訳文で記載する。)
(A-1)第1欄第10?16行
「本発明は,ヒマシ油とイソステアリン酸とを反応させた中間体を,引き続き二塩基酸とエステル化させてポリエステルを提供するという連続反応によって製造される,ある新しいポリエステル類の使用に関する。さらに,本発明は,このポリエステルを効果的に光沢を付与する濃度で適用することからなる,皮膚に光沢を提供する方法について述べる。」
(A-2)第5欄第21?27行
「適用例

本発明の化合物はリップスティック及びカラー化粧品に処方されて高い光沢を皮膚に提供する。」
(A-3)第5欄第34行?第6欄第3行
「請求の範囲
1.次式からなるポリエステル:
A-(B)_(x)-A
ここで,Aは:

Bは;

であり,
ここで
全てのO-の間を連結する基は次式-C(O)-CH_(2)CH_(2)-C(O)-からなるスクシニル基であり;
Rは5?33の炭素数を有するアルキル及びアルキレンから選択され;
xは1?50の範囲内の整数である。」

(2-B)刊行物Bの記載事項
(B-1)【0014】?【0015】
「本発明によるエステルは,優位には,液状分枝C24-C28脂肪酸,たとえば2-デシルテトラデカン酸,エステル,特にポリオール,たとえばグリセロール,モノ-,ジ-,またはトリグリセリドであってもよいエステルである。該エステルは,好ましくは,Guerbetタイプの分枝C24-C28トリグリセリド,特にC24酸,たとえば2-デシルテトラデカン酸,トリグリセリドである。…。
該トリグリセリドは,たとえば,Stearinerie Dubois社からDUB TGI 24の商品名で販売されているグリセリル=トリ(2-デシルテトラデカノアート)である。」
(B-2)【0043】
「実施例3:リップスティック
C_(24)トリグリセリド(DUB TGI 24)・・・・・・・・・・7.0%

ピグメント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7.0%
香料,防腐剤,酸化防止剤・・・・・・・・・・・・・・・0.4%
方法:ベントンを油相の一部に分散させ,次いで,脂肪相の残りを添加し,95℃に加熱する。ピグメントを粉砕して均一にした後,混合物を適当な型にキャスティングする。光沢および適用に関して良好な化粧品特性を示すリップスティックがこのようにして得られる。」

(2-C)刊行物Cの記載事項
(C-1)【0043】?【0044】
「実施例II:口紅棒
次の成分を混合した:

ゴマ油 11.31g

Amoco Chemical社により“Indopol H300”の名称で市販さ
れるポリブチレン 12.48g
該混合物を60?70℃の温度で1時間水浴上で加熱し,次いで次の成分の混合物を添加した:

かくして得られた混合物をディスコンチミル(Discontimil) 粉砕機を用いて粉砕し,次の成分の混合物を添加した:

該混合物を100℃で1時間加熱した後に,均質な混合物が得られこれに 0.3gの香料を添加した。混合物の温度が大体60℃に再び降下した時に2gのNε-ドデシルオキシカルボニル-L-リシンを添加し,該混合物を成形型にそゝいだ。かくして得られた口紅棒は同時に均質で緻密化しており良好な耐衝撃性を有した。口紅棒は唇に容易に塗布され,なめらかで良好な保持力を有する。」

(3)対比
刊行物Aには,その(A-1)及び(A-2)からみて,ヒマシ油とイソステアリン酸とを反応させた中間体を,引き続き二塩基酸とエステル化させることにより得られたポリエステル(以下,単に「ヒマシ油ポリエステル」という。)をリップスティック及びカラー化粧品に処方すると高い光沢を皮膚に提供することができる旨記載されており,このことはヒマシ油ポリエステルのリップスティック又はカラー化粧品に向けられた用途を示すものであるから,刊行物Aには,「ヒマシ油ポリエステルを含むリップスティック又はカラー化粧品用組成物」(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと解される。
ここで,本願補正発明と引用発明とを対比する。
刊行物A記載のヒマシ油ポリエステルは,その請求の範囲1項(A-3)に記載されたとおりの次式からなるポリエステルである。
A-(B)_(x)-A
ここで,Aは:

Bは;

であり,
ここで
全てのO-の間を連結する基は次式-C(O)-CH_(2)CH_(2)-C(O)-からなるスクシニル基であり;
Rは5?33の炭素数を有するアルキル及びアルキレンから選択され;
xは1?50の範囲内の整数である。
上記構造を有する,引用発明で使用されるポリエステルは,本願請求項1に記載のi)のポリエステルをさらに特定して記載している請求項9?10及び11?14の記載,さらにはi)のポリエステルについて詳細に説明している明細書【0039】?【0049】の記載を参酌すると,本願補正発明で使用されるi)のポリエステルに相当するものである。
したがって,両発明は,ともに
「ヒマシ油ポリエステルを含む化粧用組成物」である点で一致し,以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明では,化粧用組成物が「ケラチン物質のための美容ケアおよび/またはメイクアップ組成物」であるのに対して,引用発明では「リップスティック又はカラー化粧品」である点。
[相違点2]
本願補正発明では,「ii)650から10,000g/molの分子量の少なくとも1種の高分子量オイル,iii)少なくとも1種の着色剤,及び,化粧品として許容される媒質」の三成分を含むことが特定されているのに対して,引用発明ではそのような特定がなされていない点。

なお,以下,分子量の単位を省略することもある。

(4)判断
以下,上記相違点について検討する。

・[相違点1]について
本願補正発明は,「ケラチン物質のための美容ケアおよび/またはメイクアップ組成物」とするものであるが,本願請求項1の記載を引用する同25及び同30のほか,明細書【0003】及び【0081】にも「口紅またはリップグロス」が本願補正発明に係る組成物に含まれる旨記載されていて,さらには実施例1においても口紅の処方例が記載されている。
これに対して,引用発明においては「リップスティック又はカラー化粧品」とするものであるが,これは本願明細書における「口紅またはリップグロス」と明らかに重複するものであるから,結局,上記相違点1に関しては,両者の間に実質的な差異はないものである。

・[相違点2]について
最初に,[相違点2]として挙げた三成分のうちの,「ii)650から10,000g/molの分子量の少なくとも1種の高分子量オイル」(以下,単に「高分子量オイル」ともいう。)について検討する。

一般に,化粧品に対しては,皮膚に対する柔軟作用やエモリエント効果や,或いは,顔料の展着性など種々の機能を備えるものとして,各種油性成分が配合されている。(例えば,(ア)日本化粧品技術者会編「化粧品事典」,丸善株式会社,平成15年12月15日発行,p.179?180,及び,(イ)廣田博著「化粧品用油脂の科学」,フレグランスジャーナル社,平成9年5月20日発行,p.2?3,参照)
そして,口紅についても,固体状,半固体状,液状の各種油性成分が使用されており,そのうち液状の油性成分としては,比較的低分子のものから高分子のものまで各種成分が使用されている(前出の「化粧品事典」p.259?260,p423?424)。

そこで,本願補正発明における「高分子量オイル」が,この分野における,本願優先権主張の日前の従来技術との関連でどのように位置づけられるものであるかについて検討する。

本願補正発明でいう「高分子量オイル」とは,明細書【0052】に
「高分子量オイル
本発明による組成物は…,650から10,000g/molの範囲の高分子量オイルを含む。オイルは,水に相溶しない非水化合物であり,雰囲気温度(25℃)および大気圧(760mmHg)で液体である。」
と記載されていて,さらに,以下の(1)?(4)の成分が具体例の中に含まれている(【0056】等)。
(1)商品名「Indopol H-300」等の分子量650以上のポリブチレン
(2)2-デシルテトラデカン酸トリグリセリル
(3)トリイソステアリン酸グリセリル
(4)ごま油

また,これら具体例の中には明記されていないものではあるが,上記【0052】の記載の条件に該当し,かつ,化粧品の油性成分として周知慣用の以下の成分も,本願補正発明の「高分子オイル」に該当するものと解せられる。
(5)重質流動パラフインのうちの分子量が650?10,000のもの
(6)ポリイソブテンや水添ポリブテンのうちの分子量が650?10,000のもの
(7)ヒマシ油
(リシノール酸を主成分とする脂肪酸のトリグリセリドであり平均分子量は約935程度)
(8)オリーブ油
(オレイン酸を主成分とする脂肪酸のトリグリセリドであり平均分子量は約880程度)
(9)マカデミアナッツ油
(オレイン酸及びパルミトレイン酸を主成分とする脂肪酸のトリグリセリドであり平均分子量は約850程度)
(10)水添ロジンジイソステアリングリセリド
(分子量約900程度)

そして,これら(1)?(10)の成分は,例えば,上記した(3)トリイソステアリン酸グリセリル,(7)ヒマシ油,(8)オリーブ油,(9)マカデミアナッツ油は,何れも前出の「化粧品事典」(p.260及びp.424)に例示されているように口紅に対して使用されている慣用成分であるし,また,その他の成分も,以下に示すように,何れも従来から口紅等の化粧品の油性成分として使用されてきたものである。
(1)商品名「Indopol H-300」等の分子量650以上のポリブチレンは,例えば,刊行物C(C-1),特開2002-3340号公報の各実施例などで使用されている。
(2)2-デシルテトラデカン酸トリグリセリルは,例えば,刊行物B((B-1)に記載の「DUB TGI 24」に相当し,(B-2)の実施例3で使用されている。
(4)ごま油は,例えば,刊行物C(C-1)のほか,特開2000-344627号公報の各実施例,特開2000-178126号公報の実施例9などで使用されている。
(5)重質流動イソパラフインのうちの分子量が650?10,000のものは,例えば,特開2000-297012号公報の各実施例,特開平2002-121113号公報の各実施例,特開2001-288039号公報の請求項6及び各実施例などで使用されている。
(6)ポリイソブテンや水添ポリブテンのうちの分子量が650?10,000のものは,例えば,特開平9-208430号公報の各実施例,特開2001-158718号公報の実施例22及び23,特開2002-316910号公報の各実施例,などで使用されている。
(10)水添ロジンジイソステアリングリセリドは,例えば,特開2000-297012号公報の各実施例,特開2000-204016号公報などで使用されている。

すなわち,本願補正発明の「高分子量オイル」には,従来から口紅等に対して配合されてきた多くの油性成分が包含されるものである。

ところで,本願補正発明においては,油性成分としては,必ずしも高分子量オイルのみが使用されるものではなく,明細書【0066】?【0072】によれば,固体状の油性成分や追加のオイルとして分子量650未満の低分子量のオイル(以下,単に「低分子量オイル」ということもある。)の配合も許容されるものであって,しかも,実施例1においても低分子量オイルやワックス類が配合されている。

これらの点を踏まえて,引用発明に係る化粧用組成物に対して,高分子量オイルを配合することが当業者にとって容易であったかを検討すると,通常油性成分は複数組み合わされて,化粧品として求められる各種機能を備えたものとするべく配合されるものであるから,例えば,口紅に必要な機能を備えた化粧品とするべく,従来から使用されていた(1)?(10)等の成分を使用して,これと低分子量オイルや固体状の油性成分とを適宜組み合わせて,引用発明に係る化粧用組成物に配合して,リップスティック又はカラー化粧品とすることは当業者が容易になし得るものとせざるをえないものである。

なお,本願明細書には「実際には,分子量が低すぎるオイルを,本発明による組成物の(複数種)ヒドロキシル化カルボン酸トリグリセリドからのポリエステルと組み合わせると,光沢が十分でない組成物となり,他方,分子量が大きすぎるオイルでは,余りに粘着性がありすぎると思われる組成物となる。例えば,カプリル/カプリン酸のトリグリセリド(例えば,UniqemaによりEstol 3603 MCTオイルとして販売または製造されるもの)は,分子量が494g/molであり,本発明の組成物の特性より化粧品としての特性が劣る組成物となる。」(【0054】?【0055】)と記載されているものであるが,その一方で,上記したように,明細書【0071】?【0072】によれば,本願補正発明では追加のオイルとして分子量650未満の低分子量オイルの配合も許容されるものであって,現に実施例1においてもリンゴ酸ジイソステアリル(分子量639)や平均分子量が650に満たないトリグリセリド混合物を含む処方が記載されていて,その処方に基づいた口紅が良好な特性を示す旨の記載がなされているものである。したがって,明細書で具体的に挙げられている「カプリル/カプリン酸のトリグリセリド」はともかく,他の低分子量のオイルの種類や配合量によっては,本願補正発明の範囲内となる組成物が得られるものと解さざるを得ず,そのような場合には,低分子量オイルと高分子量オイルとが併用されることになるから,明細書【0054】?【0055】における記載が,少なくとも部分的には高分子量オイルを含んでいる油性成分を,引用発明に係る化粧品に対して配合することが当業者にとって容易にはなし得ないものであるとする根拠とはなり得ないものである。

また,液状の油性成分も,つや・光沢に影響を与える成分であることが知られている上,ヒマシ油ポリエステルもその化学構造からみて油性成分としての機能も兼ね備えていると考えられ得るものではあるが,油性成分はそれぞれにいくつかの機能をもつものとして通常は複数の成分が組み合わされて配合されるものであることは上記したとおりであるから,たとえ,引用発明に係る化粧用組成物に既にヒマシ油ポリエステルが配合されているからといって,他の液状の油性成分の配合が不必要になるとか,或いは,高分子量の油性成分の配合が不必要になるといったことは,通常はあり得ないので,このような事情によって,引用発明に対して高分子量オイルを配合することが容易にはなし得なかったものとすることはできない。

次に,「着色剤」及び「化粧品として許容される媒質」について検討すると,これらはいずれも引用発明に係るリップスティックやカラー化粧品において用いられる基本的成分であるから,これら成分は引用発明に係る化粧品にも当然に配合されるものである。

したがって,引用発明に係る組成物に対して「ii)650から10,000g/molの分子量の少なくとも1種の高分子量オイル,iii)少なくとも1種の着色剤,及び,化粧品として許容される媒質」の三成分を配合することは,当業者が容易になし得ることである。

一方,本願明細書には,本願補正発明の効果として「光沢保持,塗り(すべすべ感),心地よさ,色の保持」(【0086】等)といったことが記載されているが,このような効果については,いずれも口紅等の化粧品に対して通常求められる性質に関するものであって,配合する油性成分の種類及びその配合量の選択にあたり,当然に確認される性質であり,それら性質について良好な効果を示す成分の組合せやその配合割合が選択されるものであるから,明細書記載の上記効果を以て本願補正発明が格別予想外の効果を奏するものとされるものではないし,また,これらの効果に関しては,単に定性的な効果の比較に止まるものであって,客観性に欠けるものである上,具体的に実施例を以て示されているものは,特定の高分子オイルを使用した特定の処方のみに関するものであるのに対して,本願補正発明は特にオイルの配合に関して非常に広範囲の処方が可能であるので,実施例で示された効果が本願補正発明の全範囲にわたって同様に奏されるものとすることもできない。

よって,本願補正発明は,刊行物A?C記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明
平成18年10月4日付けの手続補正は上記の通り却下されたので,本願請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という)は,平成17年11月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「i)ヒドロキシル化カルボン酸のトリグリセリドの少なくとも1種を,a)脂肪族モノカルボン酸で,さらにb)脂肪族ジカルボン酸で,エステル化することにより得られる少なくとも1種のポリエステル,ii)650から10,000g/molの分子量の少なくとも1種の高分子量オイル,ならびにiii)少なくとも1種の着色剤を含む,化粧品として許容される媒質を含む,ケラチン物質のための美容ケアおよび/またはメイクアップ組成物。」

(2)引用刊行物
原審で引用された刊行物A?C及びその記載事項は,上記2.(2)で記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は,前記2.において検討した本願補正発明における,i)の成分の製造の際に原料として使用される化合物a)及びb)の炭素数に関する限定を削除したものに相当する。
そうすると,本願発明と比較して,使用するヒマシ油ポリエステルの原料となるカルボン酸類の炭素数に関してさらに限定が付された本願補正発明が,前記2.(4)に記載したとおり,刊行物A?C記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとされるのであるから,本願発明も同様な理由により,刊行物A?C記載の発明及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,刊行物A?C記載の発明及び周知事項の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,結論のとおり審決する。

以上

 
審理終結日 2010-02-24 
結審通知日 2010-03-02 
審決日 2010-03-19 
出願番号 特願2004-69539(P2004-69539)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 貴子  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 穴吹 智子
井上 典之
発明の名称 ヒドロキシル化カルボン酸トリグリセリド由来のポリエステルおよび分子量650乃至10,000g/molのオイルを含む化粧品組成物  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  

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