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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1221225
審判番号 不服2008-14339  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-06 
確定日 2010-08-05 
事件の表示 特願2003-107731「樹脂封止型半導体装置とその製造方法、および積層型樹脂封止型半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日出願公開、特開2004-319577〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成15年 4月11日の出願であって、平成20年 1月28日付け拒絶理由通知に対して、同年 4月 3日付けで手続補正がされたが、同年 4月30日付けで拒絶査定され、これに対し、同年 6月 6日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1?13に係る発明は、平成20年 4月 3日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものであると認める。

「【請求項1】 外部回路と接続するための外部端子部と、半導体素子と接続するための内部端子部とを、連結部にて一体的に連結してなる端子部材で、且つ、ハーフエッチング加工法を用いて、加工用素材から、外部端子部の少なくとも一部を加工用素材の厚さの厚肉にし、内部端子部をハーフエッチングにて薄肉にしている端子部材を、複数個と、前記内部端子部の厚さより薄い半導体素子とを用い、半導体素子の所定の端子部と所定の端子部材の内部端子部とをワイヤボンディング接続して、前記加工用素材の厚さ幅内に全体を収め、加工用素材の厚さ幅に揃えて樹脂封止した樹脂封止型半導体装置であって、各端子部材の内部端子部は、そのハーフエッチング面側を端子面とし、各端子部材を同じ向きにし、外部端子部の表裏の面および内部端子部の端子面が、それぞれ、一平面上に、揃うようにし、周辺部に、内部端子部側を内側に向けて、各端子部材を配しており、外部端子部の表裏面と外側側面とを端子面として露出させており、また、半導体素子を、各端子部材の内部端子部から離れた位置に、その端子面を、端子部材のハーフエッチング面側と同じ向きにして、且つ、その端子面でない側の面である裏面を、各端子部材のハーフエッチング面に対向する側の面に、揃えて、ダイパッドなしで、樹脂中に、前記裏面を露出させるようにして、配置していることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。」


3.引用例
これに対し、原査定で拒絶の理由で引用された、本願の出願前に国内において頒布された刊行物1(特開2001-177005号公報)には、次の事項が記載されている。

(1)刊行物1:特開2001-177005号公報(拒絶理由通知の引用文献1)

(1a)「【請求項1】 半導体素子と、該半導体素子の側方に近接して配設された複数のリードと、該リードと該半導体素子とを接続するボンディングワイヤと、該半導体素子と該ボンディングワイヤとを封止する封止樹脂とを有する半導体装置において、
該リードの上面は上面上段部と該上面上段部より低い上面下段部とを有し、該上面上段部における該リードの厚さは該半導体素子の厚さより厚く、該ボンディングワイヤは該上面下段部と該半導体素子の表面に形成された電極パッドとにボンディングされており、該封止樹脂の上面が該リードの上面上段部と同一平面をなして該リードの上面上段部が露出し、該封止樹脂体の下面が該リードの下面及び該半導体素子の裏面と同一平面をなして該リードの下面及び該半導体素子の裏面が露出していることを特徴とする半導体装置。」 (【特許請求の範囲】)

(1b)「図1及び図2は本発明の半導体装置を示す断面図及び斜視図である。同図において、1は半導体素子(チップ)、2はリード、3はボンディングワイヤ、4は封止樹脂である。
多数のリード2が半導体素子1の対向する2辺又は4辺の側方に近接して配設されている。各リード2の上面側は段差を有し、上面上段部2aと上面下段部2bからなっている。いずれも半導体素子1寄りが上面下段部2bであり、上面上段部2aより低い。半導体素子1の裏面側にはダイパッドはなく、半導体素子1の厚さはリード2の上面上段部2aにおける厚さより薄い。ボンディングワイヤ3はリード2の上面下段部2bと半導体素子1表面の電極パッド(図示は省略)とにボンディングされており、そのループの頂点はリード2の上面上段部2aより低く形成されている。」
(【0012】?【0013】)

(1c)「半導体素子1の表面とボンディングワイヤ3とを封止する封止樹脂4の表面はリード2の上面上段部2aと同一平面をなし、従ってリード2の上面上段部2aは露出している(図2(A)参照)。封止樹脂4の裏面はリード2の下面2cと同一平面をなし、従ってリード2の下面2cと半導体素子1の裏面は露出している(図2(B)参照)。尚、リード2の外側端面も露出している。」 (【0014】)

(1d) 「図3は本発明の半導体装置の他の実施形態を示す断面図である。同図において、図1及び図2と同じものには同一の符号を付与した。5は実装基板(例えば、プリント配線板)、6は導電性接合材(例えば、半田)である。
複数の半導体装置を実装基板5上に積み重ね、3Dモジュール化したものであり、第1の半導体装置のリード2の下面2cは実装基板5のランド5aと、第1の半導体装置のリード2の上面上段部2aは第2の半導体装置のリード2の下面2cと、 ・・・・ それぞれ導電性接合材6で接合されている。」 (【0015】?【0016】)

(1e)「この半導体装置の製造に使用するリードフレーム7はリード部7aとフレーム7bからなり、ダイパッドはない。各リード部7aの上面にはエッチング(ハーフエッチ)・・・・ により形成された段差を有している。」 (【0018】)


(1f) また、摘記(1d)の記載から、第1の半導体装置のリード2の下面2cは実装基板5のランド5aと接続され、また、第1の半導体装置のリード2の上面上段部2aは第2の半導体装置のリード2の下面2cと接続されていることが理解できる。そして、実装基板及び第2の半導体装置は、第1の半導体装置に対して外部回路を有するものであるから、半導体装置のリードの上面上段部及びリードの下面は、外部回路と接続するためのものであるといえる。

(1g) さらに、摘記(1a)において「半導体素子の側方に近接して配設された複数のリード」と記載され、また、図1の記載は、半導体素子1とリード2との間に封止樹脂が存在するものと認められることから、刊行物1には、半導体素子が、各リードから離れた位置に配設された事項が記載されているといえる。


そこで、刊行物1の摘記(1a)?(1e)、記載事項(1f)?(1g)を整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
(刊行物1発明)
「外部回路と接続するためリードの上面上段部及びリードの下面と、半導体素子と接続するための上面下段部とを、一体的に形成してなるリードで、且つ、ハーフエッチングを用いて、リードフレームから、上面上段部をリードフレームの厚さの厚肉にし、上面下段部をハーフエッチングにて薄肉にしているリードを、複数個と、前記上面上段部の厚さより薄い半導体素子とを用い、半導体素子の表面の所定の電極パッドと所定のリードの上面下段部とをボンディングワイヤでワイヤボンディング接続して、該半導体素子と該ボンディングワイヤとを封止する封止樹脂とを有する樹脂封止型半導体装置であって、各リードの上面下段部は、そのハーフエッチング面側を端子面とし、各リードを同じ向きにし、リードの上面上段部、リードの下面が、それぞれ、一平面上に、揃うようにし、周辺部に、半導体素子寄りが上面下段部であるように各リードを配しており、リードの上面上段部及びリードの下面と外側端面とを端子面として露出させており、また、半導体素子を、各リードの上面下段部から離れた位置に、その電極パッドのある面を、リードのハーフエッチング面側と同じ向きにして、且つ、その電極パッドのある面でない側の面である裏面を、各リードのハーフエッチング面に対向する側の面に、揃えて、ダイパッドなしで、樹脂中に、前記裏面を露出させるようにして、配置していることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。」


4.対比
本願発明と刊行物1発明を対比すると、

(a)刊行物1発明における「リードの上面上段部」及び「リードの下面」、「上面下段部」、「リード」、「リードフレーム」、「半導体素子の表面の所定の電極パッド」、「上面上段部」、「リードの下面」、並びに、「外側端面」は、本願発明における「外部端子部」、「内部端子部」、「端子部材」、「加工用素材」、「半導体素子の所定の端子」、「外部端子部の表面」、「外部端子部の裏面」、並びに、「外側側面」にそれぞれ相当する。

(b) 摘記(1e)から、リードフレームのリード部をハーフエッチングして、上面上段部と上面下段部との段差を備えた一体的なリードを形成するものであるから、刊行物1発明は、上面上段部2aと上面下段部2bとを一体的に連結する部分を有しているといえる。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「外部端子部と、内部端子部とを、連結部にて一体的に連結してなる端子部材」を有する点で一致する。

(c) 摘記(1b)における「ボンディングワイヤ3は ・・・ そのループの頂点はリード2の上面上段部2aより低く形成されている。」との記載から、ボンディングワイヤはリードフレームの厚さ幅内に収まっているといえる。さらに、摘記(1c)における「半導体素子1の表面とボンディングワイヤ3とを封止する封止樹脂4」及び「封止樹脂4の表面はリード2の上面上段部2aと同一平面をなし、・・・・・ 封止樹脂4の裏面はリード2の下面2cと同一平面をなし、」との記載から、刊行物1発明は、リードフレームの厚さ幅内に全体を収め、リードフレームの厚さ幅に揃えて樹脂封止したものであるといえる。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「加工用素材の厚さ幅内に全体を収め、加工用素材の厚さ幅に揃えて樹脂封止した」点で一致する。

(d) 刊行物1発明における「半導体素子寄りが上面下段部であるように各リードを配して」いる事項について、摘記(1b)の「多数のリード2が半導体素子1の対向する2辺又は4辺の側方に近接して配設されている。」との記載によれば、刊行物1発明は、半導体素子がリードより半導体装置の内側に設けられていることから、上面下段部は内側に向けて配設されているものであると認められる。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「内部端子部側を内側に向けて」いる点で一致する。

よって、両者は、「外部回路と接続するための外部端子部と、半導体素子と接続するための内部端子部とを、連結部にて一体的に連結してなる端子部材で、且つ、ハーフエッチング加工法を用いて、加工用素材から、外部端子部の少なくとも一部を加工用素材の厚さの厚肉にし、内部端子部をハーフエッチングにて薄肉にしている端子部材を、複数個と、半導体素子とを用い、半導体素子の所定の端子部と所定の端子部材の内部端子部とをワイヤボンディング接続して、前記加工用素材の厚さ幅内に全体を収め、加工用素材の厚さ幅に揃えて樹脂封止した樹脂封止型半導体装置であって、各端子部材の内部端子部は、そのハーフエッチング面側を端子面とし、各端子部材を同じ向きにし、外部端子部の表裏の面の端子面が、それぞれ、一平面上に、揃うようにし、周辺部に、内部端子部側を内側に向けて、各端子部材を配しており、外部端子部の表裏面と外側側面とを端子面として露出させており、また、半導体素子を、各端子部材の内部端子部から離れた位置に、その端子面を、端子部材のハーフエッチング面側と同じ向きにして、且つ、その端子面でない側の面である裏面を、各端子部材のハーフエッチング面に対向する側の面に、揃えて、ダイパッドなしで、樹脂中に、前記裏面を露出させるようにして、配置していることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。」で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、「内部端子部の厚さより薄い半導体素子を用い」るものであるのに対し、刊行物1発明では、「リードの上面上段部における厚さより薄い厚さの半導体素子」を用いる点。

(相違点2)
本願発明は「内部端子部の端子面が、一平面上に、揃うようにし」たものであるのに対し、刊行物1発明では、内部端子部の端子面の位置関係が明記されていない点。


5.判断
・相違点1について
ワイヤボンディングされる内部端子部より薄い半導体素子を用いる場合があることは、周知文献にも記載されているように、樹脂封止型半導体装置において、周知の事項であるといえる。

周知文献:特開2002-76175号公報
(周1)「図1?4に示した第1の実施の形態において、半導体パッケージ1は、その略中央部に位置した半導体チップ2と、該半導体チップ2の両端部側に設けられている複数の電極3にそれぞれ一端が接続された金線からなる複数のリード線4と、これら各リード線4の他端がそれぞれ接続された外部端子5と、これら半導体チップ2、リード線4および外部端子5を保護するために樹脂により封止したモールド部6とから構成され、該モールド部6によってパッケージとしての強度と全体形状が維持されている。
・・・・・
半導体チップ2の下面とモールド部6の下面とが同一面に形成され、且つ半導体チップ2の下面が露出した状態に形成される。
また、この実施の形態における外部端子5は、第1のリード5aと第2のリード5bとを二段重ねにし、且つ段差をもって形成したものである。このように二段重ねで外部端子5を形成することにより、その底面、側面および上面の三面を露出させた状態で形成でき、それによって積層マルチチップモジュール実装に適した外部端子形態になる。そして同時に二段重ねの段差を利用して、各リード線4の他端を第1のリード5aに安定した状態で接続できる。」 (【0013】?【0015】)

「因みに、第1の実施の形態に係る半導体パッケージ1は、半導体チップ2の厚みが略100μm、ワイヤ(リード線4)高さが略150μm以下であり、第1のリード5aと第2のリード5bの厚みがそれぞれ0.125mmで形成されることから、トータルの半導体パッケージ1の高さは0.25mmの超薄型に形成できる。」 (【0046】)

一方、刊行物1発明は、半導体素子の厚さについて「リードの上面上段部における厚さより薄い」ことを規定するだけであるから、使用する半導体素子の厚さは、「リードの上面上段部における厚さより薄い」という条件を満たす範囲において適宜決定すべき設計的事項であると解される。
なお、刊行物1の図1には、半導体素子の厚さが内部端子部よりも厚い形状が図示されているが、特許出願における図面は設計図とは異なり、説明しようとする発明のポイント以外の縮尺等は正確でない場合があることは周知事項であり、また、図1は発明の実施の一形態を示しているだけであって、これ以外の形状をとることを阻むものともいえない。
そして、周知文献からも明らかなように、本願出願時において封止樹脂型半導体装置の内部端子部を厚さよりも、半導体素子の厚さを薄くした構造は周知なものであるから、刊行物1に記載された発明において、半導体素子として、内部端子部より薄い半導体素子を使用することは、当業者において容易に想到し得たものである。
さらに、両者を組み合わせることを阻む格別の理由も認められず、また、両者を組み合わせる動機も当業者の予想する範囲である。
なお、審判請求人は、審判請求の理由において、内部端子部の厚さより薄い半導体素子を用いることによるワイヤ高さの許容を大きくする等の効果を主張するが、この効果は明細書に記載されていない効果であるから、本願発明の効果であるとしても、進歩性の判断の根拠として採用することはできない。また、仮に、このような効果を認めることができたとしても、このような効果は、内部端子部の厚さより薄い半導体素子を用いる形態から当業者が予測し得たものであり、格別のものとはいえない。このことは、審判請求の理由の「 5] 尚、念のため述べておきますが、・・・・・」の欄において、「内部端子部の厚さより薄い半導体素子を用いる形態の意味するところは、・・・・・ 明記されていなくとも ・・・・・ 、当業者は、・・・・・ ワイヤボンディング性を良くし、・・・・・・ 理解できます。」と自ら認めるところでもある。したがって、審判請求の前記主張は採用しない。


・相違点2について
刊行物1の摘記(1d)より、上面下段部はリードフレームのリード部からハーフエッチングで形成されたものであり、同一の材料のエッチングが同じ速さで進行するということを考慮すれば、上面下段部は一平面上に揃っているといえる。
したがって、前記相違点2は実質的な相違点であるとはいえない。

すなわち、相違点1について本願発明の構成に採用することは、刊行物1発明及び従来周知の事項から容易に想到し得たものであり、また、相違点2は実質的な相違点であるとは認められない。


6.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び従来の周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許を受けることができないものであり、他の請求項2?13に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-03 
結審通知日 2010-06-08 
審決日 2010-06-21 
出願番号 特願2003-107731(P2003-107731)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 英夫  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 田中 永一
加藤 浩一
発明の名称 樹脂封止型半導体装置とその製造方法、および積層型樹脂封止型半導体装置  
代理人 金山 聡  

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