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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23L
管理番号 1221230
審判番号 不服2008-16229  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-26 
確定日 2010-08-05 
事件の表示 特願2004- 80133号「水蒸気改質炉」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月29日出願公開、特開2005-265335号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成16年3月19日の出願であって、 平成20年5月15日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成20年6月26日に本件審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本件出願の請求項1?2に係る発明は、平成20年6月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
炉本体内から排出される燃焼排ガスの熱を利用して燃焼用空気を加熱する蓄熱式熱交換器を備えた蓄熱式燃焼バーナを用いて高温空気燃焼技術により炉本体内を所定温度に加熱して高温空気燃焼雰囲気を形成し、
対流部において前記燃焼排ガスの熱を利用して原料及び/または前記炉本体内の反応管に供給されるプロセス流体を予熱する水蒸気改質炉であって、
前記蓄熱式熱交換器に供給される前記燃焼用空気の一部を前記蓄熱式熱交換器を通すことなく燃焼用空気ブリードとして前記炉本体内に供給し、
前記燃焼用空気ブリードの量は、前記炉本体内に供給される全燃焼空気の1乃至20%であり、
前記燃焼用空気ブリードの量は、前記蓄熱式熱交換器から排出される燃焼排ガスの温度が150℃?200℃になるように定められており、
前記炉本体から前記対流部に導入される前記燃焼排ガスの量を、全燃焼排ガス量の30%?60%とすることを特徴とする水蒸気改質炉。」

2. 引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開第98/14536号(以下「刊行物1」という。)には、炭化水素の水蒸気改質方法に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「1.炭化水素及び水蒸気の混合ガスの水蒸気改質反応により、改質反応ガスを製造する炭化水素の水蒸気改質方法において、
外部燃焼型改質炉及び内部燃焼反応器型改質器によって炭化水素及び水蒸気の混合ガスを改質する改質工程を有し、
前記外部燃焼型改質炉は、触媒を充填した複数の触媒管及び該触媒管を加熱する加熱手段を備え、該加熱手段は、前記触媒管を加熱する複数のバーナーと、該バーナーに供給される燃焼用給気流を予熱する複数の蓄熱体とを備え、
前記外部燃焼型改質炉の燃焼排ガスは、第1バーナーが燃焼作動する間、第2蓄熱体を含む第2流路を通り、第2バーナーの燃焼用給気流を予熱するための第2蓄熱体を加熱し、他方、前記第2バーナーが燃焼作動する間、第1蓄熱体を含む第1流路を通り、第1バーナーの燃焼用給気流を予熱するための第1蓄熱体を加熱し、前記燃焼排ガスの流路は、所定の時間間隔にて第1流路又は第2流路のいずれか一方に選択的に切換制御され、
前記外部燃焼型改質炉の燃焼排ガスの所定割合の流体部分を該改質炉の炉内領域から熱交換装置に供給し、該熱交換装置における前記流体部分との熱交換作用により、原料炭化水素、前記炭化水素及び水蒸気の混合ガス、空気及び/又は酸素、および前記外部燃焼型改質炉の燃料ガスの少なくとも1つの流体を加熱することを特徴とする水蒸気改質方法。」(請求の範囲1.)
(イ)「次に、上記製造装置系を使用した本発明の水蒸気改質法の第1実施例について、説明する。・・・
第1熱交換器4に給送された混合ガスは、第1熱交換器4において排気ガスラインE1の燃焼排ガスと熱交換し、400乃至700℃に予熱され、原料給送ラインL4を介して、一次改質炉1の触媒管10に導入される。・・・かくして、一次改質炉1において加熱され且つ一次改質反応を受ける混合ガスは、一般に600?900℃の範囲の温度に加熱されるとともに、水素及び炭素を含み且つ未反応の炭化水素をも含む一次改質反応ガスとして生成され、第1給送ラインL5を介して一次改質炉1から導出され、二次改質器3の燃焼反応部31に導入される。・・・
上記第1及び第2バーナー組立体12、13の各バーナー18は、制御装置(図示せず)の高速切換制御下に4方弁V(第6図)とともに同期切換制御される。バーナー18(18a:18b)には、燃焼空気送風機FAの給気圧力下に燃焼用空気が交互に供給されるとともに、燃料ガスが、燃料ガス供給ラインLFを介して交互に供給される。この結果、バーナー18a、18bは、交互に火炎を形成する。第1図に実線で示す燃焼空気供給ラインLA及び大気放出ラインE4の第1運転形態は、第1バーナー組立体12がバーナー18aの燃焼作動運転を実行し且つ第2バーナー組立体13が蓄熱型熱交換器19bの蓄熱運転を実行している状態を示しており、第1図に破断線で示す燃焼空気供給ラインLA及び大気放出ラインE4の第2運転形態は、第1バーナー組立体13のバーナー18bが燃焼作動運転を実行し且つ第1バーナー組立体12の蓄熱型熱交換器19aが蓄熱運転を実行している状態を示している。上記の如く、第1及び第2運転形態は、好ましくは、60秒以下に設定された所定の切換時間毎に交互に切換えられる。
燃焼空気供給ラインLAの燃焼用空気は、バーナー組立体12又は13の蓄熱型熱交換器19と伝熱接触し、熱交換器19の放熱作用により受熱し、例えば、800乃至1500℃に昇温する。かくして高温に予熱された燃焼用空気は、バーナー18の燃料ガスにて燃焼し、触媒管10を加熱する。伝熱部11にて発生した燃焼排ガスの大部分は、バーナー組立体12又は13の蓄熱型熱交換器19と熱交換し、例えば50乃至200℃に冷却し、大気放出ラインE4及び集合煙突等を介して大気に放出される。
燃焼排ガスの一部、好適には、重量比10?30%の流体部分は、排気ガスダクト40及び排気ガスラインE1、E2を介して一次改質炉1の伝熱部11から導出され、第1熱交換器4において第1分流ラインL2の混合ガスと熱交換するとともに、第2熱交換器5において燃焼反応ガス供給ラインS1の空気及び/又は酸素と熱交換する。かくして、100?250℃に冷却した排気ガスラインE3の燃焼排ガスは、集合煙突等を介して大気に放出される。」(明細書第19頁第5行?第20頁第29行)

・記載事項(ア)の「外部燃焼型改質炉の燃焼排ガスの所定割合の流体部分を該改質炉の炉内領域から熱交換装置に供給し、該熱交換装置における前記流体部分との熱交換作用により、原料炭化水素、前記炭化水素及び水蒸気の混合ガス、空気及び/又は酸素、および前記外部燃焼型改質炉の燃料ガスの少なくとも1つの流体を加熱する」は、記載事項(イ)の「排気ガスダクト40及び排気ガスラインE1、E2を介して一次改質炉1の伝熱部11から導出され、第1熱交換器4において第1分流ラインL2の混合ガスと熱交換する」ことにより行われるものであるので、外部燃焼型改質炉の燃焼排ガスの所定割合の流体部分を該改質炉の炉内領域から排気ガスダクト40及び排気ガスラインE1、E2を介して第1熱交換器4に供給し、該第1熱交換器4における流体部分との熱交換作用により、炭化水素及び水蒸気の混合ガスを加熱するといえる。

すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「触媒を充填した複数の触媒管及び該触媒管を加熱する加熱手段を備え、該加熱手段は、触媒管を加熱する複数のバーナーと、該バーナーに供給される燃焼用給気流を予熱する複数の蓄熱体とを備え、
外部燃焼型改質炉の燃焼排ガスは、第1バーナーが燃焼作動する間、第2蓄熱体を含む第2流路を通り、第2バーナーの燃焼用給気流を予熱するための第2蓄熱体を加熱し、他方、第2バーナーが燃焼作動する間、第1蓄熱体を含む第1流路を通り、第1バーナーの燃焼用給気流を予熱するための第1蓄熱体を加熱し、燃焼排ガスの流路は、所定の時間間隔にて第1流路又は第2流路のいずれか一方に選択的に切換制御され、
外部燃焼型改質炉の燃焼排ガスの所定割合の流体部分を該改質炉の炉内領域から排気ガスダクト40及び排気ガスラインE1、E2を介して第1熱交換器4に供給し、該第1熱交換器4における流体部分との熱交換作用により、炭化水素及び水蒸気の混合ガスを加熱する外部燃焼型改質炉」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平9-137914号公報(以下「刊行物2」という。)には、排気ガスの熱を利用して酸化剤を加熱する熱回収式燃焼装置及びその制御方法に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ウ)「【請求項10】 通気性を有する蓄熱体と、前記蓄熱体に設けられた貫通孔内に先端部が配置された燃焼用バーナと、前記蓄熱体を通して炉内に酸化剤を供給する酸化剤通路と、前記蓄熱体を通して前記炉内から排気ガスを排出する排気ガス通路と、前記蓄熱体と前記酸化剤通路及び前記排気ガス通路との間に相対的な回転運動を生じさせる相対回転運動発生機構と、
前記酸化剤通路を通して供給されるべき前記酸化剤の一部を前記燃焼用バーナの前記先端部に供給する酸化剤バイパス通路とを備えている熱回収式燃焼装置の制御方法であって、
前記排気ガス通路を通して排出される前記排気ガスの温度が酸露点温度または水露点温度以下に下がらないように前記酸化剤バイパス通路を流れる前記酸化剤の流量を定めることを特徴とする熱回収式燃焼装置の制御方法。」
(エ)「【0004】本発明の目的は、露点腐食の発生を防止できる熱回収式燃焼装置及びその制御方法を提供することにある。」
(オ)「【0018】また運転中に燃料中の硫黄分濃度や水素,メタン等の組成が変わると、排気ガス中のSOx の濃度や水分濃度が変わって酸露点温度や水露点温度も変わる。このような場合には、酸化剤バイパス通路を流れる酸化剤の流量を調節する流量調節手段を設けておけばよい。そして排気ガス通路を通して排出される排気ガスの温度が酸露点温度または水露点温度以下に下がらないように酸化剤バイパス通路を流れる酸化剤の流量を流量調節手段により調節する。なお実際的には、排気ガスに含まれるSOx の濃度や水分濃度を測定し、この測定値に基いて酸露点温度または水露点温度を定め、その酸露点温度または水露点温度以下に排気ガスの温度が下がらないようにする。」
(カ)「【0034】・・・そして燃焼用バーナ15の燃焼量を少なくして運転する、即ちターンダウンして運転する場合に、バルブ26を閉じた状態で従来と同じ運転をすると、蓄熱体4の伝熱面積が相対的に大きくなるので、排気ガスの温度が下がり過ぎて、即ち熱効率が上がり過ぎて排気ガス温度が酸露点以下、場合によっては水露点温度以下になる。排気ガスの温度が酸露点温度以下または水露点温度以下に下がって、排気ガス通路を構成する排気ガスダクト71の内部、酸化剤ダクト72の外壁部等のうち排気ガスに触れる部材上にH2 SO4 を含むドレンが付着したり、水分が凝縮付着してその部分で露点腐食が発生する。そこでこの例では、燃焼に必要な量の酸化剤(通常は空気)のうち、その一部を蓄熱体4を通さずにガイド用管路21を利用して形成した酸化剤バイパス通路を通して、燃焼用バーナ15の先端部に位置するノズル18に供給する。」
(キ)「【0036】図3は、酸化剤として空気を用い、且つ排気ガスにSOx を含む場合における排気ガス温度とバイパス空気量の関係を示している。なお条件は、炉内温度800℃で、酸化剤ダクトに供給される空気の温度が15℃の場合である。ここでバイパス空気量とは、ガイド用管路21を通して供給する低温の空気の量である。・・・
【0037】また下記の表1は、図3の関係から求めたバイパス空気量と排気ガス温度の実測値と、供給する空気量を100%とした場合におけるバイパス量と排気ガス量の関係を示している。
【0038】
【表1】」
なお、表1には、バイパス量(0,5,10,15%)に対応する熱交換後の排ガス温度(169,191,216,243℃)が記載されている。

・記載事項(ウ)の「酸化剤」は、記載事項(カ)の「燃焼に必要な量の酸化剤(通常は空気)」であるので、燃焼用空気といえる。

すると、刊行物2には、次の発明が開示されているものということができる。
「通気性を有する蓄熱体と、蓄熱体に設けられた貫通孔内に先端部が配置された燃焼用バーナと、蓄熱体を通して炉内に燃焼用空気を供給する燃焼用空気通路と、蓄熱体を通して炉内から排気ガスを排出する排気ガス通路と、蓄熱体と燃焼用空気通路及び排気ガス通路との間に相対的な回転運動を生じさせる相対回転運動発生機構と、燃焼用空気通路を通して供給されるべき燃焼用空気の一部を燃焼用バーナの先端部に供給する燃焼用空気バイパス通路とを備え、
排気ガス通路を通して排出される排気ガスの温度が酸露点温度または水露点温度以下に下がらないように燃焼用空気バイパス通路を流れる燃焼用空気の流量を定める熱回収式燃焼装置の制御方法。」(以下、[刊行物2記載の方法]という。)

3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
ア.引用発明の「外部燃焼型改質炉」は、本願発明の「炉本体」及び「水蒸気改質炉」に相当し、以下同様に「燃焼用給気流を予熱するための第1蓄熱体」及び「燃焼用給気流を予熱するための第2蓄熱体」は「炉本体から排出される燃焼排ガスの熱を利用して燃焼用空気を加熱する蓄熱式熱交換器」に、「触媒管」は「炉本体内の反応管」に相当する。
イ.引用発明の「外部燃焼型改質炉」は、「触媒管を加熱する加熱手段を備え、該加熱手段は、触媒管を加熱する複数のバーナー」であって、その加熱は、記載事項イの「一次改質炉1において加熱され且つ一次改質反応を受ける混合ガスは、一般に600?900℃の範囲の温度に加熱」するものであって、該600?900℃を上回る温度の高温空気燃焼雰囲気を形成していることが明らかであるので、本願発明の「蓄熱式燃焼バーナを用いて高温空気燃焼技術により炉本体内を所定温度に加熱して高温空気燃焼雰囲気を形成」する水蒸気改質炉に相当する。
ウ.引用発明の「炭化水素及び水蒸気の混合ガス」、「排気ガスダクト40及び排気ガスラインE1、E2」は、それぞれ本願発明の「原料及び/または前記炉本体内の反応管に供給されるプロセス流体」、「対流部」に相当する。
そして、引用発明の「外部燃焼型改質炉」は、「燃焼排ガスの所定割合の流体部分を該改質炉の炉内領域から排気ガスダクト40及び排気ガスラインE1、E2を介して第1熱交換器4に供給し、該第1熱交換器4における前記流体部分との熱交換作用により、炭化水素及び水蒸気の混合ガスを加熱する」ものであるので、本願発明の「対流部において前記燃焼排ガスの熱を利用して原料及び/または前記炉本体内の反応管に供給されるプロセス流体を予熱する水蒸気改質炉」に相当する。
エ.引用発明の「外部燃焼型改質炉の燃焼排ガスの所定割合」における「燃焼排ガス」は、本願発明の「全燃焼排ガス」に相当する。
そして、引用発明の「外部燃焼型改質炉の燃焼排ガスの所定割合の流体部分を該改質炉の炉内領域から排気ガスダクト40及び排気ガスラインE1、E2を介して第1熱交換器4に供給し、該第1熱交換器4における前記流体部分との熱交換作用により、炭化水素及び水蒸気の混合ガスを加熱する」ことと、本願発明の「炉本体から前記対流部に導入される前記燃焼排ガスの量を、全燃焼排ガス量の30%?60%とする」こととは、「炉本体から前記対流部に導入される前記燃焼排ガスの量を、全燃焼排ガス量の所定割合とする」点において共通する。

(2)両発明の一致点
「炉本体内から排出される燃焼排ガスの熱を利用して燃焼用空気を加熱する蓄熱式熱交換器を備えた蓄熱式燃焼バーナを用いて高温空気燃焼技術により炉本体内を所定温度に加熱して高温空気燃焼雰囲気を形成し、
対流部において前記燃焼排ガスの熱を利用して原料及び/または前記炉本体内の反応管に供給されるプロセス流体を予熱する水蒸気改質炉であって、
前記炉本体から前記対流部に導入される前記燃焼排ガスの量を、全燃焼排ガス量の所定割合とする水蒸気改質炉。」

(3)両発明の相違点
(ア)本願発明は、「蓄熱式熱交換器に供給される燃焼用空気の一部を蓄熱式熱交換器を通すことなく燃焼用空気ブリードとして炉本体内に供給し、
燃焼用空気ブリードの量は、炉本体内に供給される全燃焼空気の1乃至20%であり、
燃焼用空気ブリードの量は、蓄熱式熱交換器から排出される燃焼排ガスの温度が150℃?200℃になるように定められて」いるのに対して、引用発明は、そのようなものでない点。
(イ)炉本体から対流部に導入される燃焼排ガスの割合が、本願発明は、「30%?60%」であるのに対して、引用発明は、「所定割合」である点。

4.本願発明の容易推考性の検討
(1)相違点(ア)について
ア.まず、刊行物2記載の方法と、本願発明の対応関係を検討する。
(a)刊行物2の「蓄熱体」は、本願発明の「蓄熱式熱交換器」に相当する。
(b)刊行物2の「燃焼用空気バイパス通路」は、「燃焼用空気通路」が「蓄熱体を通して炉内に燃焼用空気を供給する燃焼用空気通路」であって蓄熱体に燃焼用空気を供給するものであるから、蓄熱体を通すことなく「燃焼用バーナの先端部」、すなわち「炉内」に燃焼用空気を供給するものであることが明らかであるので、刊行物2記載の方法の「燃焼用空気通路を通して供給されるべき燃焼用空気の一部を燃焼用バーナの先端部に供給する燃焼用空気バイパス通路」による燃焼用空気の供給は、本願発明の「蓄熱式熱交換器に供給される前記燃焼用空気の一部を前記蓄熱式熱交換器を通すことなく燃焼用空気ブリードとして前記炉本体内に供給」することに相当する。
(c)刊行物2記載の方法の「燃焼用空気バイパス通路を流れる燃焼用空気の流量」は、「排気ガス通路を通して排出される前記排気ガスの温度が酸露点温度または水露点温度以下に下がらないように」定めるものであって、本願明細書に本願発明の目的として一番目に記載された「【0006】本発明の目的は、蓄熱式熱交換器から排出される燃焼排ガスが酸露点温度以下になるのを防止する」と共通の意図で決定される流量である。
そうすると、刊行物2記載の方法の「燃焼用空気通路を通して供給されるべき燃焼用空気の一部を燃焼用バーナの先端部に供給する」及び「排気ガス通路を通して排出される排気ガスの温度が酸露点温度または水露点温度以下に下がらないように燃焼用空気バイパス通路を流れる燃焼用空気の流量を定める」と、本願発明の「燃焼用空気ブリードの量は、前記炉本体内に供給される全燃焼空気の1乃至20%であり、
前記燃焼用空気ブリードの量は、前記蓄熱式熱交換器から排出される燃焼排ガスの温度が150℃?200℃になるように定められており」とは、
「燃焼用空気ブリードの量は、炉本体内に供給される全燃焼空気の一部であり、
燃焼用空気ブリードの量は、蓄熱式熱交換器から排出される燃焼排ガスの温度が酸露点温度または水露点温度以下に下がらないように定められ」る点で共通するものである。
(d)刊行物2記載の方法の「燃焼用空気バイパス通路を流れる燃焼用空気の流量」は、記載事項(オ)の「実際的には、排気ガスに含まれるSOx の濃度や水分濃度を測定し、この測定値に基いて酸露点温度または水露点温度を定め、その酸露点温度または水露点温度以下に排気ガスの温度が下がらないように」「酸化剤バイパス通路を流れる酸化剤の流量を流量調節手段により調節する」ものとして記載されており、酸露点温度や水露点温度が、排気ガスに含まれるSOx の濃度や水分濃度等に対応して決定される設計値として取り扱われており、その酸露点温度または水露点温度以下に排気ガスの温度を制御する酸化剤の流量も同様に設計値として取り扱われているといえる。
一方、記載事項(キ)には、ある特定条件下のバイパス量(0,5,10,15%)に対応する熱交換後の排ガス温度(169,191,216,243℃)が例示されている。

イ.そうすると、刊行物2記載の方法と本願発明とは、次の点で一致するものである。
「蓄熱式熱交換器に供給される燃焼用空気の一部を蓄熱式熱交換器を通すことなく燃焼用空気ブリードとして炉本体内に供給し、
燃焼用空気ブリードの量は、炉本体内に供給される全燃焼空気の一部であり、
前記燃焼用空気ブリードの量は、前記蓄熱式熱交換器から排出される燃焼排ガスの温度が酸露点温度または水露点温度以下に下がらないように定められて」いる点。

ウ.そして、刊行物2記載の方法は、記載事項(エ)の「露点腐食の発生を防止」するものであって、引用発明においても腐食の発生防止は当然望まれることであり、かつ、引用発明に、刊行物2記載の方法を採用することを阻止する特段の理由もない以上、引用発明の外部燃焼型改質炉の給気方法として、刊行物2記載の発明の熱回収式燃焼装置の制御方法を使用することは容易である。
さらに、酸露点温度または水露点温度以下に下がらないように定められる燃焼排ガスの温度、及び、該温度を制御する燃焼用空気の流量は、上記ア.(d)記載の様に条件に対応して適当な値を選択する設計値であり、かつ、本願発明の「全燃焼空気の1乃至20%」「燃焼排ガスの温度が150℃?200℃」も、刊行物2の【表1】に例示された値から特別かけ離れたものでも無いことを考慮すると、引用発明の外部燃焼型改質炉の給気方法として、刊行物2記載の発明の熱回収式燃焼装置の制御方法を使用するとともに、条件に対応して、酸露点温度または水露点温度以下に下がらないように定められる燃焼排ガスの温度及び、該温度となる空気ブリードの量を設定して、相違点(ア)に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点(イ)について
炉本体から対流部に導入される燃焼排ガスの所定割合に関して、刊行物1の記載事項(イ)には、「燃焼排ガスの一部、好適には、重量比10?30%の流体部分は、排気ガスダクト40及び排気ガスラインE1、E2を介して一次改質炉1の伝熱部11から導出され、第1熱交換器4において第1分流ラインL2の混合ガスと熱交換する」と記載されており、「好適には」と記載されている様に、該値が適宜選択される設計値として扱われたものであると共に、例示された「10?30%」も、「30%」において、本願発明の「30%?60%」と共通するものである。
そうすると、炉本体から対流部に導入される燃焼排ガスの所定割合として、該30%を選択して、相違点(イ)に係る発明特定事項とすることも当業者が容易に想到し得たことである。

(3)総合判断
そして、本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物2記載の方法から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の方法に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-04 
結審通知日 2010-06-08 
審決日 2010-06-22 
出願番号 特願2004-80133(P2004-80133)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 伸幸  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 中川 真一
冨岡 和人
発明の名称 水蒸気改質炉  
代理人 西浦 ▲嗣▼晴  

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