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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G |
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管理番号 | 1221929 |
審判番号 | 不服2008-28190 |
総通号数 | 130 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-11-05 |
確定日 | 2010-08-09 |
事件の表示 | 特願2004-376361「果樹類の盛土式根圏制御栽培方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月 4日出願公開,特開2005-204662〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成16年12月27日の出願(優先日:平成15年12月26日,出願番号:特願2003-433465号)であって,平成20年9月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月5日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに,同年12月4日付けで手続補正がなされたものであり,その後,当審において,平成21年10月29日付けで審査官による前置報告書の内容を提示するとともに請求人の意見を求める審尋を行ったところ,平成22年1月12日付けで回答書が提出されたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成20年12月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正 本件補正は,特許請求の範囲について,補正前の請求項3の内容を請求項1及び2に併合させて新たな請求項1及び2とし,請求項4?7を項番を1つづつ繰り上げて新たな請求項3?6とし,さらに,新たに,盛土式根圏制御栽培方法で栽培する果樹類について,「植える果樹類をぶどう又はなし」とすることを特定する請求項7を追加するものである。 2 本件補正の目的 上記請求項7を追加する補正は,新たな請求項を追加するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものともいえない。 すなわち,改正前特許法第17条の2第4項第2号には,「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業状の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と規定されており,同号にいう「特許請求の範囲の減縮」は,補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請されるものというべきであり,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。そうであってみれば,新たに追加された請求項7には,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つ請求項が存在しないことが明らかである。したがって,新たな請求項を追加する上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。 また,新たな請求項を追加する上記補正が,改正前特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除,同項第3号に掲げる誤記の訂正,同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明のいずれの事項を目的とするものでもないことは明らかである。(必要であれば,知的財産高等裁判所平成15年(行ケ)第230号,平成17年(行ケ)第10156号,及び平成17年(行ケ)第10192号の判決文を参照のこと。) 3 むすび 以上のとおり,本件補正は,改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げる何れの目的にも適合しないものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成20年12月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成20年9月3日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 (本願発明) 「土地と縁切りするとともに排水機能を備えた防水層を形成し、該防水層上に成木の収穫期における単位葉面積当たりの細根の表面積が成木の収穫期における地植え樹の約3倍以上となる盛土を予め設定してその設定した容量で盛土を形成し、該盛土の表面を、表面に向う主根の伸長を抑制するに充分な露光状態とし、該盛土内に分岐根の発生を促して細根が絡み合った密集根を形成し、 予め測定して得られた樹種毎の樹の成長状態に合わせて要求される水量の変化に対応させて時期を分割した生育ステージを設定し、その各生育ステージでの最大量を示す晴れ日の1日における蒸散量のデータを基に基準給水量を算出し、 その算出された基準給水量を1日の昼間に複数回に分割して自動潅水を行うことを特徴とする果樹類の盛土式根圏制御栽培方法。」 2 刊行物及び刊行物に記載された事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,鷲尾一広 外4名,「ハウスなし『幸水』のドリップ潅水による根域制限栽培法」,関東東海北陸農業研究成果情報 平成13年度 I,独立行政法人 農業技術研究機構 中央農業総合研究センター,2002年7月31日発行,170?171頁(以下「刊行物1」という。)には,図表とともに,次の事項が記載されている。 (1a)「[要約]ハウスなし『幸水』のドリップ潅水による根域制限栽培では、1樹当たり100Lの培土量で、果実肥大最盛期に1樹当たり14L/日の潅水を行うことにより、糖度12度以上の果実が収穫され、密植にすることから早期多収となる。」(170頁2?4行) (1b)「[成果の内容・特徴 ・・・ 2.・・・植え付けに当たっては遮根シートの上に設置した木枠に培土を入れ、2本主枝の3年生大苗を用いる。 3.ハウス栽培の加温開始は2月上旬、収穫期は7月上旬であり、養水分管理はコンピューター制御機を用いる。 ・・・ 5.潅水は2個のドリッパー(4L/hr/ドリッパー)で8本のマイクロチューブを用い、5:00?9:00は1時間毎、9:00?15:00は30分毎、15:00?18:00は1時間毎に20回に分けて同量を潅水する。なお、時期別の1日当たり潅水量は表1を目標に設定する。 6.培土量を100Lにすることにより、平均果重及び収量が大きくなり、糖度12%以上の果実が収穫できる(表2)。」(170頁14?31行) (1c)図1には,ビニール及び遮根シートの上に設置した木枠に培土を入れたこと,及び,培土の表面を太陽光に対して露出した状態としたこと,が示されている。(171頁 図1) (1d)表1には,加温開始?満開後の時期(2月上旬)から30日ごとに時期を区切って生育ステージを設定し,各生育ステージ別に一日あたりの潅水量の目標を設定したこと,が示されている。(171頁 表1) (1e)表2には,培土量を30L,60L,100Lとして「幸水」を栽培し,平均果重,収量,糖度等を測定したこと,が示されている。(171頁 表2) そして,上記記載事項(1a)ないし(1e)に記載された内容並びに技術常識を総合すると,上記刊行物1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「ビニール及び遮根シートの上に設置した木枠に培土を入れ,培土の表面を太陽光に対して露出した状態とし,幸水を栽培する培土にコンピューター制御機を用いて潅水を行う,ハウスなし幸水のドリップ潅水による根域制限栽培法であって, 培土量は,培土量を30L,60L,100Lとして幸水を栽培した結果に基づいて,平均果重及び収量が大きくなり,糖度12%以上の果実が収穫できた培土量である100Lとし, 潅水量は,加温開始?満開後の時期(2月上旬)から30日ごとに時期を区切って生育ステージを設定し,各生育ステージ別に1日あたりの潅水量の目標を設定し, その設定された1日あたりの潅水量を,5:00?9:00は1時間毎,9:00?15:00は30分毎,15:00?18:00は1時間毎に20回に分けて同量を,コンピュータ制御機を用いて潅水する,ハウスなし幸水のドリップ潅水による根域制限栽培法。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,梅宮善章,「根域制限による落葉果樹根の特性」,農耕と園芸,誠文堂新光社,57巻5号,2002年5月,196?199頁(以下「刊行物2」という。)には,図表とともに,次の事項が記載されている。 (2a)「2 根域制限栽培の方式(図1) 培土をコンテナに詰めたり、遮根シートを敷いた上に盛り土する方式が多い。・・・ (1)コンテナ方式 ・・・ (2)盛り土方式 地表に農業用ビニルシートを敷き、その上に遮根シートやウレタンマットを重ね、培土を盛り、植え付ける。地下からの水分補給が期待できないので、計画的なかん水が必要である。1樹当たりの土量は60lから150l程度である。 この変形タイプとして、土留めに木枠を用いてベッドにしたり、ポリエチレンネットを円筒状に組み、土壌容量を300lくらいまで調節可能とする方式も考えられている。」(196頁上から2段目15行?同頁最下段10行) (2b)「(3)培土の種類と土壌の高さ ・・・ 培土量が少ないと根が回り、多いと土壌水分に不均一ができやすい。果実の発育や維持樹齢から土壌の適量があり、ブドウでは60l程度、モモでは200?250l程度がよいとされている。」(196頁最下段14行?197頁上段7行) (2c)「(4)かん水と施肥 かん水は、パイプやドリップによる自動かん水装置が用いられる。土壌水分は、栄養生長期で多めに維持し、生殖生長期は少な目に維持する。葉の茂った高温期は蒸発水量も多いので、かん水量は多くなる。」(197頁上段12行?18行) (2d)「4 地下部の状態と一般樹の比較 水分と養分を吸収するのは、根系の中でも直径2mm以下の細根の役割が高い。・・・ 根域制限栽培されたブドウで培土を削り取ると、細根が張り巡らされていることが観察される(写真1?3)。 5年生『巨峰』の根系を調査した結果、地下部の乾物重の割合が増加し、地上部の栄養成長が抑制されていた。なかでも、細根の割合が露地栽培に比べて高くなる。 これは、地植えでは土壌中で根は広く張るために太い根が必要となるが、根域制限では根域の拡大が限られるので太い根の量が減少するためである(図2)。 また、細根で吸収した養水分は葉へ移行する。これを1枚の葉(表面積)を支える根(表面積)の比で示すと、地植えに比べ根域制限栽培では約5倍も高くなっていた(表1)。 これは、土量が限られ細根の密度が高くなるため、根の周囲の水分と養分は常に不足がちとなる。言い換えると、根はストレスの高い環境にさらされることになる。そこで、根は効率的に養水分を獲得するために、さらに細根の量を増やして環境に適応したと考えられる。」(198頁最上段2行?199頁上段7行) (2e)「かん水は自動化による操作が必要であるが、かん水量は生育ステージや、晴天日、曇雨天日といった気象条件でも異なる。 特に葉が繁茂した成熟期の晴天は高温となるため、水分不足を生じると、葉焼けを引き起こす。・・・」(199頁下段3?9行) (2f)表1には,ブドウ「巨峰」について,根域制限栽培した5年生樹の単位葉面積当たりの細根の表面積が,地植えの5年生樹の単位葉面積当たりの細根の表面積の5倍であることが示されている。 3 対比 本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「ビニール及び遮根シート」は,土地と縁切りするものであり,かつ,木枠に入れた培土の側方から過剰な水を排水する排水機能を備えたものであることが明らかであるから,本願発明の「土地と縁切りするとともに排水機能を備えた防水層」に相当する。 また,引用発明の「培土」は,ビニール及び遮根シートの上に設置した木枠に入れられた土であって,ビニール及び遮根シートの上に盛られた状態のものであるから,本願発明の「盛土」に相当する。 また,引用発明の「培土の表面を太陽光に対して露出した状態とし」と本願発明の「盛土の表面を、表面に向う主根の伸長を抑制するに充分な露光状態とし」とは,「盛土の表面を露光状態とし」の点で共通している。 また,引用発明の「加温開始?満開後の時期から30日ごとに時期を区切って生育ステージを設定し,各生育ステージ別に1日あたりの潅水量の目標を設定し」と本願発明の「予め測定して得られた樹種毎の樹の成長状態に合わせて要求される水量の変化に対応させて時期を分割した生育ステージを設定し、その各生育ステージでの最大量を示す晴れ日の1日における蒸散量のデータを基に基準給水量を算出し」とは,「時期を分割した生育ステージを設定し,その各生育ステージでの基準給水量を算出し」の点で共通している。 また,引用発明の「設定された1日あたりの潅水量を,5:00?9:00は1時間毎,9:00?15:00は30分毎,15:00?18:00は1時間毎に20回に分けて同量を,コンピュータ制御機を用いて潅水する」は,本願発明の「算出された基準給水量を1日の昼間に複数回に分割して自動潅水を行う」に相当する。 また,引用発明の「ハウスなし幸水のドリップ潅水による根域制限栽培法」は,本願発明の「果樹類の盛土式根圏制御栽培方法」に相当する。 してみれば,両者の一致点および相違点は,次のとおりである。 <一致点> 「土地と縁切りするとともに排水機能を備えた防水層を形成し,該防水層上に盛土を形成し,該盛土の表面を露光状態とし, 時期を分割した生育ステージを設定し,その各生育ステージでの基準給水量を算出し, その算出された基準給水量を1日の昼間に複数回に分割して自動潅水を行う, 果樹類の盛土式根圏制御栽培方法。」 <相違点1> 盛土の容量が,本願発明は「成木の収穫期における単位葉面積当たりの細根の表面積が成木の収穫期における地植え樹の約3倍以上となる盛土を予め設定してその設定した容量」であるのに対し,引用発明は「培土量を30L,60L,100Lとして幸水を栽培して平均果重及び収量が大きくなり,糖度12%以上の果実が収穫できた培土量である100L」である点。 <相違点2> 盛土表面の露光状態が,本願発明は「表面に向う主根の伸長を抑制するに充分な露光状態」であって,結果として「盛土内に分岐根の発生を促して細根が絡み合った密集根を形成」するのに対し,引用発明は「培土の表面を太陽光に対して露出した状態」であるものの,本願発明のようになっているかどうか明らかでない点。 <相違点3> 基準給水量が,本願発明は「予め測定して得られた樹種毎の樹の成長状態に合わせて要求される水量の変化に対応させて時期を分割した生育ステージを設定し,その各生育ステージでの最大量を示す晴れ日の1日における蒸散量のデータを基に基準給水量を算出し」たものであるのに対し,引用発明は「加温開始?満開後の時期(2月上旬)から30日ごとに時期を区切って生育ステージを設定し,各生育ステージ別に1日あたりの潅水量の目標を設定」したものであって,晴れの日の蒸散量のデータを基に潅水量を設定したものかどうか明らかでない点。 4 判断 まず,相違点1について検討する。刊行物2には,一般に,根域栽培した果樹の細根の割合は,露地栽培に比べて高くなることが記載されており,ブドウの「巨峰」について,根域制限栽培した5年生樹の単位葉面積当たりの細根の表面積が,地植えの5年生樹の単位葉面積当たりの細根の表面積の5倍であること,すなわち,成木の単位葉面積当たりの細根の表面積をパラメーターとして表現すると,適切に根域制限栽培した巨峰の単位葉面積当たりの細根の表面積は,適切に露地栽培したものの5倍となることが示されている。 一方,盛土の容量について,引用発明は,幸水の良好な収穫を得るためには100Lがよいとしており,また,刊行物2には「果実の発育や維持樹齢から土壌の適量があり、ブドウでは60L程度、モモでは200?250L程度がよいとされている。(上記記載事項(2b)参照。)」と記載されている。そして,これらの樹種毎の最適な盛土の容量で根域制限栽培すれば,各種果樹の細根の割合が露地栽培に比べて高くなるのは当然予測出来ることであり,その際,成木の単位葉面積当たりの細根の表面積をパラメーターとして表現すると,少なくとも,巨峰では5倍となることが知られている。 そうすると,本願発明の「成木の収穫期における単位葉面積当たりの細根の表面積が成木の収穫期における地植え樹の約3倍以上となる盛土を予め設定してその設定した容量」というのは,各種果樹に適した盛土の容量として既に知られている,幸水で100L程度,ブドウで60L程度,モモで200?250L程度といった量を,成木の単位葉面積当たりの細根の表面積をパラメーターとして表現したものにすぎない。 裏を返せば,引用発明において,幸水の良好な収穫を得るために予め測定して得られた100Lという盛土の容量や,刊行物2で示されたブドウで60L程度,モモで200?250L程度という,各種果樹に適した盛土の容量を,刊行物2に示されたように,成木の単位葉面積当たりの細根の表面積をパラメーターとして表現すること,すなわち,「成木の収穫期における単位葉面積当たりの細根の表面積が成木の収穫期における地植え樹の約3倍以上となる盛土を予め設定してその設定した容量」と表現することは,当業者にとってさほど困難なこととはいえない。 なお,本願の明細書の段落【0034】には,地植え樹に対する根域制限栽培樹の成木の単位葉面積当たりの細根の表面積の比について,ぶどうでは4.5培,なし等では概ね約3倍以上と記載されており,上記比は樹種によっても異なるものであるから,「3倍以上」という数値に臨界的意義はない。 次に,相違点2について検討する。本願発明の「表面に向う主根の伸長を抑制するに充分な露光状態」について,本願の明細書の段落【0031】には,日射透過率が14%の半透明シートで覆った状態でも根は反応すると記載されており,要は,多少なりとも日光が当たる状態であれば,表面に向う主根の伸長が抑制される,とされている 一方,引用発明は,特にシートで覆うこともせず,日光が普通に当たる状態なのであるから,引用発明の露光状態も,当然,「表面に向う主根の伸長を抑制するに充分な露光状態」であって,結果として「盛土内に分岐根の発生を促して細根が絡み合った密集根を形成」するものであることは,明らかである。 したがって,相違点2は,実質的な相違点ではない。 次に,相違点3について検討する。引用発明の「生育ステージ」は,なしの幸水について,加温開始?満開後の時期(2月上旬)から30日ごとに時期を区切って生育ステージを設定し,各生育ステージ別に1日あたりの潅水量の目標を設定したものであるが,これらの潅水量は予め実験等により算出されたものであることは明らかであり,これを,各種果樹の樹種に応じてより細やかな給水制御を行うために,樹種毎に,樹の成長状態毎に最適な給水量を測定して,樹の成長状態毎に分割した生育ステージを設定することは,当業者が容易になし得たことである。 また,曇りの日の蒸散量より晴れ日の蒸散量が多いことは,刊行物2に「土壌水分は、栄養生長期で多めに維持し、生殖生長期は少な目に維持する。葉の茂った高温期は蒸発水量も多いので、かん水量は多くなる。(上記記載事項(2c)参照。)」及び「かん水は自動化による操作が必要であるが、かん水量は生育ステージや、晴天日、曇雨天日といった気象条件でも異なる。(上記記載事項(2e)参照。)」と記載されているように技術常識であり,また,晴れの日も曇りの日も水分不足にならないように,蒸散量の多い日を基準にして給水することも,当業者が容易に思いつくことにすぎない。 そうすると,引用発明において,予め測定して得られた樹種毎の樹の成長状態に合わせて要求される水量の変化に対応させて時期を分割した生育ステージを設定したり,その各生育ステージでの最大量を示す晴れ日の1日における蒸散量のデータを基に基準給水量を算出したりすることは,当業者が容易になし得たことである。 また,本願発明の作用効果についてみても,引用発明及び刊行物2記載の技術から予測し得たものである。 したがって,本願発明は,引用発明及び刊行物2記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 上記したとおり,本願発明は,引用発明及び刊行物2記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-19 |
結審通知日 | 2010-05-18 |
審決日 | 2010-06-02 |
出願番号 | 特願2004-376361(P2004-376361) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A01G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上田 泰、草野 顕子 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
神 悦彦 関根 裕 |
発明の名称 | 果樹類の盛土式根圏制御栽培方法 |
代理人 | 平山 俊夫 |