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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E06B |
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管理番号 | 1222772 |
審判番号 | 不服2008-17043 |
総通号数 | 130 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-03 |
確定日 | 2010-09-03 |
事件の表示 | 特願2003-107407「面格子付引違いサッシ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日出願公開,特開2004-316083〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成15年4月11日の出願であって,平成20年5月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,その後,当審において,平成22年1月15日付けで平成20年7月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされるとともに,同日付けで拒絶理由の通知がなされたところ,同年4月2日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成22年4月2日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 「互いに引違う屋内外の障子を組込んだ窓枠に屋外端側に突出させて面格子を組付けて構成した面格子付引違いサッシにおいて、格子枠と該格子枠に並設した縦格子とで構成した面格子を窓枠に、内外の障子で閉塞する該窓枠の開口部を取り囲む前記格子枠を該窓枠の屋外端側に密接させて組付け、前記格子枠の左右の縦枠と前記縦格子中の少くも該縦枠に隣接する縦格子との間の通気空間全域を不透明パネルで閉塞した、面格子付引違いサッシ。」 第3.刊行物とその記載内容 (1)当審における拒絶理由に引用され本願出願前に頒布された実公昭58-5833号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「目隠し面格子付網戸ユニツト」に関して,図面とともに次のことが記載されている。 (1a)「この考案は、家屋開口部の窓枠前面に外周を四面枠とし内部に複数の引違い網戸を収納し、且つその前方に目隠し翼片を着脱自在に嵌合した格子枠を備えてなる目隠し面格子付網戸ユニツトに関するものである。」(1欄25?29行) (1b)「この考案は、…窓枠の外部に取付けする面格子付網戸ユニツトにおいて、外周を四面枠とすると共に、前面に格子枠を有する面格子本体を構成する、この四面枠の上枠,下枠には複数の引違い網戸を収納し、格子枠には側面に嵌合溝を形成すると共に、嵌合溝に目隠し翼片の側縁に設けた係合部を着脱自在に嵌合し、且つ該面格子本体の後方上下枠には、窓枠の上下框に取付けされる高さ調整具を装設せしめるようにしたもので、従つて、面格子付網戸ユニツトとして窓枠の前面への装置が容易となり、且つ面格子の四周枠内に複数の網戸が収納され、窓枠開口部全面を防虫でき、ガラス戸の中央の開放によつて片側のみでなく両側に開口ができ、左右から室内通風換気ができ通風効果を著しく向上することができる。更に、格子枠に着脱自在に側縁を嵌装した目隠し翼片によつて、外部からの目隠し効果を果し、目隠しの必要な個所のみに自由に取付選定できる等の便利さとを有し、防犯,防虫、目隠し及び通風換気等の機能を十分に達成できるものである。」(2欄4?24行) (1c)「次にこの考案の1実施例を図面について説明すると、窓枠10の前面に装着する面格子本体1は、方形状の四面枠2と、その前面の格子枠3,3……と、前記格子枠3,3に着脱自在に嵌装された目隠し翼4,4……から構成されている。 前記四面枠2は、上枠5、下枠6及び左右の側枠7,7より構成され、該上枠5及び下枠6には複数の網戸14,14が引違い状態に収納されている。又、四面枠2の前面に数条取付けされる格子枠3には、側面に嵌合溝8を形成せしめてある。前記嵌合溝8には、湾曲又は各種模様を設けた透明又は半透明の明るい色彩等を有する目隠し翼片4を嵌装せしめると共に、その目隠し翼片4の側縁には、嵌合溝8に着脱が容易な形状の係合部9を形成せしめてある。なお、この目隠し翼片4,4の対向位置には所要の隙間を形成せしめてある。 前記窓枠10の上框11,下框12及び左右の縦框13の内部にはガラス戸15,15が摺動自在に収納されている。該上框11の前周には取付用の垂下縁19が構成されると共に、下框12には係合用の直立縁20が構成されている。次に、四面枠2の上枠5後方には、該垂下縁19に調整自在に取付けされる高さ調整具17をビス18によつて支持されている、次に下枠6後方には、前記下框の直立縁20に係合される係止部16を形成せしめてある。…」(2欄25行?3欄12行) (1d)「この考案は上述の構成よりなり、…第2図に示す状態より、ガラス戸15,15を左右自在に引き開けると網戸14,14によつて防虫、通風換気が確実に達成できる。また、第8図に示す如く、ガラス戸15,15を中央に引き開けて、左右両側より通風換気が効率良く達成できる。…、且つ格子枠3,3に着脱自在の目隠し翼片4,4によつて自由に目隠し位置を選定して装着でき、目隠しの効果を向上せしめる。」(3欄15?26行) (1e)そして,上記(1c)の「該上框11の前周には取付用の垂下縁19が構成されると共に、下框12には係合用の直立縁20が構成されている。次に、四面枠2の上枠5後方には、該垂下縁19に調整自在に取付けされる高さ調整具17をビス18によつて支持されている、次に下枠6後方には、前記下框の直立縁20に係合される係止部16を形成せしめてある。」との記載及び第1?3,5,6図の記載から,四面枠2を窓枠10の開口部を取り囲むように該窓枠10の前面外部に密接させて組付けていることは明らかである。また,上記(1b)の「格子枠に着脱自在に側縁を嵌装した目隠し翼片によつて、外部からの目隠し効果を果し、目隠しの必要な個所のみに自由に取付選定できる」との記載から,面格子本体1の目隠しの必要な通気空間に位置する格子枠3に目隠し翼片4を取付けて当該通気空間を閉塞していることは明らかである。 上記(1a)?(1e)の記載及び当業者の技術常識からみて,刊行物1には,次の発明(以下,「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ガラス戸15,15を摺動自在に収納した窓枠10に前面外部に突出させて面格子本体1を取付けて構成した建具において,上枠5,下枠6及び左右の側枠7,7より構成した方形状の四面枠2と該四面枠2に並設した格子枠3とで構成した面格子本体1を窓枠10に,ガラス戸15,15で閉塞する該窓枠10の開口部を取り囲む前記四面枠2を該窓枠10の前面外部に密接させて組付け,前記面格子本体1の目隠しの必要な通気空間に位置する格子枠3に透明又は半透明の明るい色彩等を有する目隠し翼片4を取付けて当該通気空間を閉塞した,建具。」 (2)同じく,実公昭59-32711号公報(以下,「刊行物2」という。)には,「目隠し翼片を有する手摺り又は面格子」に関して,図面とともに次のことが記載されている。 (2a)「従来この種の目隠し翼片を取り付けた手摺り又は面格子は、種々散見されるが、これらは縦桟及び横桟を以つて枠組した表面又は裏面に螺子、針金等を以つて固定するか、又は各縦桟間に目隠し板材を嵌挿せしめるものもあるが、…。更に、両者とも目隠し板材は不透明なので、目隠し効果はあつても入射する光も遮るため昼間は部屋が暗くなつてしまい圧迫感があるという欠点を有していた。」(2欄10?25行) (2b)「この考案の一実施例を図面について説明すると、手摺り又は面格子等の組枠本体1は、数本の縦桟2,2……と…上下の横桟3,3とによつて方形状に組枠されている。なお、左右の縦桟2,2に替えて、縦桟2,2より太い縦桟9,9を組枠することもある。次に該縦桟2,2の長手方向の側面には、その隣接する格子棒の側面に向かつて開口し…た凹条溝4,4が各形成せしめてある。この凹条溝4,4に取り付けされる目隠し翼片5,5……は、…」(2欄28行?3欄1行) (2c)そして,第2図には,縦桟9とそれに隣接する縦桟2との間に目隠し翼片5,5を取付けたものが示されている。 第4.対比・判断 (1)本願発明と刊行物1記載の発明との対比 刊行物1記載の発明の「(ガラス戸15,15を摺動自在に収納した)窓枠10」が本願発明の「(互いに引違う屋内外の障子を組込んだ)窓枠」に相当し,以下同様に,「(窓枠10の)前面外部」が「(窓枠の)屋外端側」に相当し,「面格子本体1」が「面格子」に相当し,「(上枠5,下枠6及び左右の側枠7,7より構成した方形状の)四面枠2」が「格子枠」に相当し,「格子枠3」が「縦格子」に相当し,「(窓枠10に…面格子本体1を取付けて構成した)建具」が「(窓枠に…面格子を組付けて構成した)面格子付引違いサッシ」に相当する。 また,刊行物1記載の発明の「面格子本体1の目隠しの必要な通気空間に位置する格子枠3に透明又は半透明の明るい色彩等を有する目隠し翼片4を取付けて当該通気空間を閉塞した」と本願発明の「格子枠の左右の縦枠と縦格子中の少くも縦枠に隣接する縦格子との間の通気空間全域を不透明パネルで閉塞した」とは「格子枠の屋外側からの目隠しの必要な通気空間を目隠しパネルで閉塞した」で共通する。 そうすると,両者は, 「互いに引違う屋内外の障子を組込んだ窓枠に屋外端側に突出させて面格子を組付けて構成した面格子付引違いサッシにおいて,格子枠と該格子枠に並設した縦格子とで構成した面格子を窓枠に,内外の障子で閉塞する該窓枠の開口部を取り囲む前記格子枠を該窓枠の屋外端側に密接させて組付け,前記格子枠の屋外側からの目隠しの必要な通気空間を目隠しパネルで閉塞した,面格子付引違いサッシ。」で一致し,次の点で相違する。 <相違点1> 目隠しパネルについて, 本願発明では,不透明パネルであるのに対し, 刊行物1記載の発明では,透明又は半透明の明るい色彩等を有する目隠し翼片4である点。 <相違点2> 格子枠の閉塞について, 本願発明では,格子枠の左右の縦枠と縦格子中の少くも縦枠に隣接する縦格子との間の通気空間全域を不透明パネルで閉塞したのに対し, 刊行物1記載の発明では,格子枠(面格子本体1)の目隠しの必要な通気空間を目隠しパネル(目隠し翼片4)で閉塞しているものの,その通気空間が左右の縦枠と少くもそれに隣接する縦格子との間の通気空間を含むのか定かでなく,また,目隠しパネルにより通気空間全域を閉塞しているのか定かでない点。 (2)相違点についての検討 <相違点1について> 本願発明の「不透明パネル」について,本願の出願当初明細書には,「不透明パネル9は、実施形態では樹脂パネルを用いているがガラスパネルでも良く、要は、屋外側から透視できない不透明パネルであれば良い。」(段落【0010】を参照。)と記載されている。 一方,刊行物1記載の発明の「目隠し翼片4」も,「透明又は半透明の明るい色彩等を有する」ものではあるが,刊行物1の「格子枠に着脱自在に側縁を嵌装した目隠し翼片によつて、外部からの目隠し効果を果し」(上記(1b)を参照。)との記載から,少なくとも,屋外側から透視できないパネルにより形成されているものと推認できる。 そうすると,本願発明の「不透明パネル」と刊行物1記載の発明の「(透明又は半透明の明るい色彩等を有する)目隠し翼片4」との間に,実質的な差異を認めることができないというべきである。 仮に,そうでないとしても,刊行物2には,不透明な目隠し板材が従来から普通に採用されていることが記載されている(上記(2a)を参照。)から,刊行物1記載の発明において,上記「目隠し翼片4」を「不透明パネル」として,上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは,刊行物2記載の技術から,当業者が容易に想到できたものである。 <相違点2について> 刊行物1には,「1実施例」を示す図面のうちの特に第1,2図をみると,側枠7と該側枠7に隣接する格子枠3とを近接させて,これら両部材間の通気空間を閉塞した(側枠7と格子枠3との間の通気空間は目隠し翼片4で閉塞していない)ものが示されている。 当該事項は,審判請求人が,平成22年4月2日付けで意見書中での「…刊行物1記載の発明は、図面で明らかな通り、側枠7(縦枠)と該側枠7に隣接する格子枠3(縦格子)を互いに近接させて側枠7と該格子枠3の間の通気空間を閉塞するようにしたもので(従って本願請求項発明とは、側枠7と格子枠3の間の通気空間を閉塞する手段を異にする)、第2図で明らかな通り側枠7と格子枠3との間に隙間が認められる…」(【意見の内容】,12?16行)との主張に沿う事項である。 しかしながら,刊行物1記載の発明においては,側枠7に隣接する格子枠3の配設位置が,上記のような側枠7に近接する位置に限定されないものであって,当該格子枠3の配設位置によっては,それと側枠7との間に目隠しの必要な通気空間が形成される場合もあり得るものと思量されるところ,このような通気空間を目隠し翼片4により閉塞しようとすることは,当業者が普通に考えることにすぎない。また,刊行物2にも,縦桟9(本願発明の「縦枠」に相当する。)とそれに隣接する縦桟2(本願発明の「縦格子」に相当する。)との間の通気空間に目隠し翼片5,5(目隠しパネル)を取付けたものが記載されている(上記(2b),(2c)を参照。)。さらには,通気空間全域を目隠しパネルで閉塞することは当業者が必要に応じて随時設計できる程度の事項にすぎない。 従って,刊行物1記載の発明において,上記「目隠しの必要な通気空間」を「左右の縦枠と少くもそれに隣接する縦格子との間の通気空間」とし,さらに,当該「通気空間」の全域を目隠しパネル(不透明パネル)で閉塞するようにして,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,刊行物2記載の技術から,当業者が容易に想到できたものである。 (3)作用効果・判断 そして,本願発明全体の構成により,格別の作用効果を奏するとは認められない。 よって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5.むすび 以上のとおりであり,本願発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-25 |
結審通知日 | 2010-06-15 |
審決日 | 2010-06-29 |
出願番号 | 特願2003-107407(P2003-107407) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(E06B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西村 綾子 |
特許庁審判長 |
伊波 猛 |
特許庁審判官 |
宮崎 恭 山本 忠博 |
発明の名称 | 面格子付引違いサッシ |
代理人 | 江藤 剛 |
代理人 | 江藤 剛 |