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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B
管理番号 1223272
審判番号 不服2007-10028  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-09 
確定日 2010-09-06 
事件の表示 平成 8年特許願第345066号「非スランプ性マグネシア-シリカ系ボンドキャスタブル組成物及びその施工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年7月7日出願公開,特開平10-182246〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成8年12月25日の出願であって,平成18年7月5日に拒絶理由通知書が起案され,同年9月5日付けで意見書及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され,平成19年3月6日付けで拒絶査定が起案され,同年4月9日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ,同年5月9日付けで明細書の記載に係る手続補正書が提出され,平成21年10月2日付けで特許法第164条第3項に基づく前置報告を引用した審尋が起案され,同年10月27日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成19年5月9日付けの手続補正の却下の決定

2-1.補正却下の決定の結論
平成19年5月9日付けの手続補正(以下,必要に応じて「本件補正」という。)を却下する。

2-2.理由
(1)平成19年5月9日付けの手続補正の内容
平成19年5月9日付けの手続補正は,平成18年9月5日付けで補正された特許請求の範囲の記載である,
「【請求項1】
0.5?30重量%のマグネシア微粉と,0.5?10重量%の珪酸質微粒子と,カルシア成分の量に換算して2重量%以下(但し,0重量%は除く)のアルミン酸カルシウムセメント,及び/又は5重量%以下(但し,0重量%は除く)の粘土と,0.01?0.5重量%の解膠剤と,残部の耐火性の骨材及び微粉とからなる固形分100重量%を,水で混練した第1成分であって,前記水が混練された第1成分のポンプ圧送可能なコンシステンシィの達成に足りる量で存在する前記ポンプ圧送可能第1成分,及び,
施工時に第1成分に対して添加される第2成分の凝集剤であって,アルミン酸ソーダ等のアルミン酸塩,炭酸ソーダ等の炭酸塩,珪酸ソーダ等の珪酸アルカリ,塩化カルシウム等の塩化物,水酸化ソーダや水酸化カルシウム等の水酸化物,アルミン酸カルシウム,及びポルトランドセメントからなる群より選択される1種以上の凝集剤
からなる非スランプ性マグネシア-シリカ系ボンドキャスタブル組成物。
【請求項2】
型及び型枠の使用なしで,ポンプ及び付帯吹付けノズルを用いてキャスタブル組成物を吹付け施工する方法であって,
0.5?30重量%のマグネシア微粉と,0.5?10重量%の珪酸質微粒子と,カルシア成分の量に換算して2重量%以下(但し,0重量%は除く)のアルミン酸カルシウムセメント,及び/又は5重量%以下(但し,0重量%は除く)の粘土と,0.01?0.5重量%の解膠剤と,残部の耐火性の骨材及び微粉とからなる固形分100重量%を,前記ポンプによる圧送が可能なコンシステンシィの達成に足りる量の水で混練したポンプ圧送可能な第1成分を作り,
前記第1成分をポンプ圧送するとともに,該第1成分の吹付け直前に吹付けノズル内で,アルミン酸ソーダ等のアルミン酸塩,炭酸ソーダ等の炭酸塩,珪酸ソーダ等の珪酸アルカリ,塩化カルシウム等の塩化物,水酸化ソーダや水酸化カルシウム等の水酸化物,アルミン酸カルシウム,及びポルトランドセメントからなる群より選択される1種以上の凝集剤からなる第2成分を,第1成分に対して添加する吹付け施工方法。」を,
補正後の特許請求の範囲の記載である
「【請求項1】
型及び型枠の使用なしで,ポンプ及び付帯吹付けノズルを用いてキャスタブル組成物を吹付け施工する方法であって,
(a)0.5?30重量%のマグネシア微粉と,0.5?10重量%の珪酸質微粒子と,アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が固形分100重量%中で2重量%以下(但し,0重量%は除く)となる量のアルミン酸カルシウムセメント及び/又は5重量%以下(但し,0重量%は除く)の粘土と,0.01?0.5重量%の解膠剤と,残部の耐火性の骨材及び微粉とからなる固形分100重量%を,これに対する外掛け5?11重量%の量の水で混練してなり,かつアレンタウン製AP-10スイング弁ポンプを用いて,内径2インチ,長さ100ftのヘビーデューティホース内を圧送した場合に,該ポンプのシリンダー圧力が2000psi以下となるコンシステンシィを有する第1成分を準備する工程と,
(b)前記第1成分を鋼管及び/又はホースを介して吹付けノズルまでポンプ圧送する工程と,
(c)該第1成分の吹付け直前に吹付けノズル内で,アルミン酸ソーダ等のアルミン酸塩,炭酸ソーダ等の炭酸塩,珪酸ソーダ等の珪酸アルカリ,塩化カルシウム等の塩化物,水酸化ソーダや水酸化カルシウム等の水酸化物,アルミン酸カルシウム,及びポルトランドセメントからなる群より選択される1種以上の凝集剤からなる第2成分を,第1成分に対して添加する工程と
を有する吹付け施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の吹付け施工方法に使用される,前記第1成分及び前記第2成分からなる非スランプ性マグネシア-シリカ系ボンドキャスタブル組成物。」に補正することを含むものである。

(2)補正の適法性について
本件補正は,補正前の請求項2(補正後の請求項1)について,(i)「カルシア成分の量に換算して2重量%以下(但し,0重量%は除く)のアルミン酸カルシウムセメント」という事項を,「アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が固形分100重量%中で2重量%以下(但し,0重量%は除く)となる量のアルミン酸カルシウムセメント」という事項に補正し,(ii)「固形分100重量%を,前記ポンプによる圧送が可能なコンシステンシィの達成に足りる量の水で混練したポンプ圧送可能な第1成分を作り」という事項を,「固形分100重量%を,これに対する外掛け5?11重量%の量の水で混練してなり,かつアレンタウン製AP-10スイング弁ポンプを用いて,内径2インチ,長さ100ftのヘビーデューティホース内を圧送した場合に,該ポンプのシリンダー圧力が2000psi以下となるコンシステンシィを有する第1成分を準備する工程」という事項に補正し,(iii)「第1成分をポンプ圧送する」という事項を,「第1成分を鋼管及び/又はホースを介して吹付けノズルまでポンプ圧送する」という事項に補正する補正事項を含むものである。
上記(i)の補正事項は,拒絶査定において,「上記補正後の請求項1,2は,『カルシア成分の量に換算して2重量%以下のアルミン酸カルシウムセメント』と記載する。しかしながら,当該記載の意味内容は,必ずしも補正前の『アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が…2重量%以内となる量のアルミン酸カルシウムセメント』と同義とは認められない」と指摘されたことに対応して,平成18年9月5日付けの手続補正前の表現に戻す補正であり,明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。
上記(ii)の補正事項は,補正前の「ポンプ圧送可能な第1成分を作」ることを,「ポンプを用いて,・・・圧送した場合に,・・・コンシステンシィを有する第1成分を準備する工程」を有するという,実質的に同じ事項を意味する表現に変更するとともに,当該「ポンプ圧送可能な第1成分を作」ることに関して,補正前は,「固形分100重量%を,前記ポンプによる圧送が可能なコンシステンシィの達成に足りる量の水で混練したポンプ圧送可能な第1成分を作り」と特定していた事項を,より詳細に「固形分100重量%を,これに対する外掛け5?11重量%の量の水で混練してなり,かつアレンタウン製AP-10スイング弁ポンプを用いて,内径2インチ,長さ100ftのヘビーデューティホース内を圧送した場合に,該ポンプのシリンダー圧力が2000psi以下となるコンシステンシィを有する第1成分を準備する」と特定する事項に補正するものということができ,いわゆる限定的減縮を目的とするものである。
上記(iii)の補正事項は,「第1成分をポンプ圧送する」に対し,「鋼管及び/又はホースを介して吹付けノズルまで」という更なる特定事項を付加するものであり,いわゆる限定的減縮を目的とするものである。
そうすると,本件補正において,上記(i),(ii),(iii)の補正事項を有する請求項1(補正前の請求項2)についての補正は,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号及び第4号に規定する,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の特許請求の範囲に記載された請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

本件補正後の請求項1には,「アレンタウン製AP-10スイング弁ポンプを用いて,内径2インチ,長さ100ftのヘビーデューティホース内を圧送した場合に,該ポンプのシリンダー圧力が2000psi以下となるコンシステンシィを有する第1成分」と記載されている。
しかしながら,「アレンタウン製AP-10スイング弁ポンプ」という製品に関する上記記載により特定される第一成分がどのようなものであるのか直ちに理解できない。そこで,本件補正後の本願明細書の記載を参照すると,段落【0008】には,上記と同様の記載があり,段落【0043】には,「アレンタウン(Allentown)製AP-10スイング弁ポンプを用いて,内径0.051m(2インチ),長さ30.48m(100ft)のヘビーデューティホース内を圧送し」との記載はあるが,結局,アレンタウン製AP-10スイング弁ポンプが具体的にどのような特性を有するポンプであるのか不明である。また,アレンタウン製AP-10スイング弁ポンプが本願出願当時の技術常識であるともいえない。そうすると,本件補正後の請求項1に記載された事項がどのような技術的意味を有するのか当業者が理解できないということになる。
したがって,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は明確であるとはいえず,特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていない。よって,本件補正後の請求項1に係る発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおりであるから,平成19年5月9日付けの手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成19年5月9日付けの明細書の記載に係る手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲に記載された発明は,平成18年9月5日付けの手続補正書により補正された請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものであり,その請求項1に記載された発明(以下「本願発明1」という。)は,次のとおりのものである。

「【請求項1】
0.5?30重量%のマグネシア微粉と,0.5?10重量%の珪酸質微粒子と,カルシア成分の量に換算して2重量%以下(但し,0重量%は除く)のアルミン酸カルシウムセメント,及び/又は5重量%以下(但し,0重量%は除く)の粘土と,0.01?0.5重量%の解膠剤と,残部の耐火性の骨材及び微粉とからなる固形分100重量%を,水で混練した第1成分であって,前記水が混練された第1成分のポンプ圧送可能なコンシステンシィの達成に足りる量で存在する前記ポンプ圧送可能第1成分,及び,
施工時に第1成分に対して添加される第2成分の凝集剤であって,アルミン酸ソーダ等のアルミン酸塩,炭酸ソーダ等の炭酸塩,珪酸ソーダ等の珪酸アルカリ,塩化カルシウム等の塩化物,水酸化ソーダや水酸化カルシウム等の水酸化物,アルミン酸カルシウム,及びポルトランドセメントからなる群より選択される1種以上の凝集剤
からなる非スランプ性マグネシア-シリカ系ボンドキャスタブル組成物。」

4.原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は,平成18年7月5日付け拒絶理由通知書に記載した理由2であり,該理由2は,請求項1?4に対して引用文献1,2を引用した特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

5.本願出願前に頒布された刊行物の記載事項
(1)引用文献1:特開昭62-36071号公報
(ア)「特許請求の範囲
焼成耐火粘土,ボーキサイト,シリマナイト,ムライト,アルミナ,炭化珪素,マグネシア及びクロマイトからなる群より選択された耐火骨材の1種または2種以上を93?60重量%,粘土,カオリン,微粉シリカ,微粉アルミナ,微粉マグネシア及び微粉炭化珪素からなる群より選択された50μ以下の耐火超微粉5?30重量%,水硬性アルミナセメント1?10重量%,及びアルカリ金属リン酸塩及びアルカリ金属ポリリン酸塩からなる群から選択された分散剤の1種または2種以上を0.01?0.5重量%含有してなる耐火組成物と硬化促進剤とを吹付け施工する吹付け施工方法において,施工水分量の1/5?3/4の水分と前記耐火組成物とを予めミキサーで混練し,乾式吹付けガンに圧送し,前記混練した耐火組成物に施工水分量の残量の水分及び硬化促進剤よりなる溶液を乾式吹付けガンの吹付けノズルで添加することを特徴とする耐火組成物の吹付け方法。」(特許請求の範囲)
(イ)「[問題点を解決するための手段]
本発明は上記問題点を解決し,吹付け施工方法における施工水分量を減少し,高密度且つ高強度の吹付け施工体を得ることを目的とするものである。」(第2頁右上欄第8?12行)
(ウ)「耐火超微粉としては粘土,カオリン,微粉シリカ,微粉アルミナ,微粉マグネシア,微粉炭化珪素等が挙げられる。耐火超微粉の粒度は50μ以下のものが好ましい。耐火超微粉の添加配合量は5?30重量%が好ましく,耐火超微粉の添加配合量が30重量%を超えると高密度化が困難であるため好ましくなく,また5重量%未満であると高密度化が困難であるとともに,吹付け時に適正な粘性が得られないため好ましくない。なお,上述の耐火超微粉は1種または2種以上を併用して使用することができる。」(第2頁右下欄第3?13行)
(エ)「耐火組成物に使用する水硬性アルミナセメントの添加配合量は1?10重量%が好ましく,水硬性アルミナセメントの添加配合量が10重重景を超えると耐食性が低下するため好ましくなく,また1重量%未満であると高密度化が困難であるため好ましくない。」(第2頁右下欄第14?19行)
(オ)「分散剤として使用するアルカリ金属リン酸塩及びアルカリ金属ポリリン酸塩は例えばウルトラポリリン酸ソーダ,ヘキサメタリン酸ソーダ等が挙げられる。分散剤の添加配合量は0.01?0.5重量%が好ましく,分散剤の添加配合量が0.5重量%を超えると分散効果が低下するために好ましくなく,また0.01重量%未満であると適正な解膠効果が得られないため好ましくない。なお,上述の分散剤は1種または2種以上を併用して使用することができる。」(第2頁右下欄第20行?第3頁左上欄第9行)
(カ)「上述の配合をもつ耐火組成物に必要施工水分量の1/5?3/4の水分を添加してミキサーで予め混練することによって超微粉,水硬性アルミナセメントが一部分散状態となり,ノズルで施工水分量の残部を添加する時の短時間の混合,混練でも完全に分散効果が得られた状態となり,低水分量の吹付け施工が可能となる。」(第3頁左上欄第10?16行)
(キ)「ノズルで添加される施工水分の残部との溶液である硬化促進剤の効果により吹付け施工体が流動崩壊することなく施工することができる。」(第3頁右上欄第2?4行)
(ク)「ノズルで添加される硬化促進剤としては例えばCa(OH)_(2),珪酸ソーダ等を挙げることができ,硬化促進剤の添加配合量は0.01?2重量%が好ましい。硬化促進剤の添加配合量が0.01重量%未満であると,硬化速度が遅く,吹付け施工体の流動崩壊し,また,添加配合量が2重量%を超えると硬化が速く,吹付け施工体組織が層状となり好ましくない。」(第3頁右上欄第5?12行)
(ケ)「本発明方法の全施工水分量は4?10%が好ましい。全施工水分量が4%以未満であると適正な粘性が得られないために好ましくなく,また,10%を超えると高密度化が困難であるために好ましくない。」(第3頁右上欄第13?17行)

(2)引用文献2:特開平6-172044号公報
(コ)「【請求項1】 アルミナ質原料を主成分とする骨材50?95重量%と,
1mm径以下の粒径を有するAl_(2)O_(3)とMgOとを主成分とするスピネル骨材を50?1重量%と,
75μm以下の粒径を有するマグネシア骨材を1?8重量%と,
平均粒径1μm以下の超微粉シリカを0.5?2重量%と,
結合材として,Al_(2)O_(3)とCaOとの合量が99重量%以上のアルミナセメントをCaO換算で1重量%を越えない範囲で配合してなるアルミナ・スピネル質キャスタブル耐火物。」(特許請求の範囲)
(サ)「超微粉シリカは,キャスタブル耐火物に施工時の流動性を付与するとともに,結合剤としてのアルミナセメントまたは,マグネシアから溶出するCa^(2+),Mg^(2+)のイオンによるファンデル-ワルース結合で強固な結合を発現し,施工体の強度,緻密化を向上させる。」(段落【0018】)
(シ)「アルミナセメントはAl_(2)O_(3) +CaOの合量が99重量%以上であり,かつ添加量としてキャスタブル中のCaO量が1重量%を越えない範囲に限定される。・・・・・・CaO量が1重量%を越える場合でも同様に耐食性の低下が生じる。」(段落【0019】)

6.対比・判断
引用文献1には,記載事項(ア)に,「耐火骨材・・・・・・を93?60重量%,粘土,カオリン,微粉シリカ,微粉アルミナ,微粉マグネシア及び微粉炭化珪素からなる群より選択された50μ以下の耐火超微粉5?30重量%,水硬性アルミナセメント1?10重量%,及びアルカリ金属リン酸塩及びアルカリ金属ポリリン酸塩からなる群から選択された分散剤の1種または2種以上を0.01?0.5重量%含有してなる耐火組成物と硬化促進剤とを吹付け施工する吹付け施工方法において,施工水分量の1/5?3/4の水分と前記耐火組成物とを予めミキサーで混練し,乾式吹付けガンに圧送し,前記混練した耐火組成物に施工水分量の残量の水分及び硬化促進剤よりなる溶液を乾式吹付けガンの吹付けノズルで添加することを特徴とする耐火組成物の吹付け方法」が記載され,記載事項(イ)に,「本発明は・・・・・・吹付け施工方法における施工水分量を減少し,高密度且つ高強度の吹付け施工体を得ることを目的とする」と記載されていることから,上記記載事項(ア)に記載された方法によって吹付け施工してなる,上記耐火組成物と上記硬化促進剤と水とからなる「吹付け施工体」が記載されているといえる。
そして,記載事項(ウ)には,「耐火超微粉は1種または2種以上を併用して使用することができる」と記載されており,上記耐火超微粉の2種以上を併用することが記載されているといえる。更に,記載事項(キ)には,「ノズルで添加される硬化促進剤としては例えばCa(OH)_(2),珪酸ソーダ等を挙げることができ」と記載されており,硬化促進剤はCa(OH)_(2),珪酸ソーダ等であることが記載されている。
また,記載事項(キ)の「吹付け施工体が流動崩壊することなく」との記載から,「吹付け施工体が流動崩壊しない」ことも記載されているといえる。
上記引用文献1に記載された事項を本願発明1の記載ぶりに則して整理すると,引用文献1には,
「5?30重量%の粘土,カオリン,微粉シリカ,微粉アルミナ,微粉マグネシア及び微粉炭化珪素からなる群より選択された2種以上を併用した50μ以下の耐火超微粉と,1?10重量%の水硬性アルミナセメントと,0.01?0.5重量%のアルカリ金属リン酸塩及びアルカリ金属ポリリン酸塩からなる群から選択された分散剤と,93?60重量%の耐火骨材を含有してなる耐火組成物を,施工水分量の1/5?3/4の水分と混練した耐火組成物,及び,前記混練した耐火組成物に施工水分量の残量の水分及び硬化促進剤よりなる溶液を乾式吹付けガンの吹付けノズルで添加するCa(OH)_(2),珪酸ソーダ等の硬化促進剤及び前記施工水分量の残量の水分からなる流動崩壊しない吹付け施工体」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで,本願発明1と引用発明とを対比する。
まず,本願発明1の「マグネシア微粉」について,本願明細書の記載を参照すると,段落【0012】に「本発明でいう微粉とは,粒径が0.2mm以下であり,実質的にその内の50重量%以上が74μm以下である」と記載されている。そして,本願発明1の「珪酸質微粒子」については,本願明細書に明確な定義は見あたらないものの,段落【0016】に,「珪酸質微粒子の粒径は10μm以下であることが望ましい。」と記載されていることから,10μm以下程度の粒径を有する微粉であると認められる。これに対して,引用発明の「粘土,カオリン,微粉シリカ,微粉アルミナ,微粉マグネシア及び微粉炭化珪素からなる群より選択された2種以上を併用した50μ以下の耐火超微粉」は,記載事項(ウ)に「耐火超微粉の粒度は50μ以下のものが好ましい」と記載されていることから,粒径が50μm以下の微細な粒子とみることができる。また,本願発明の「マグネシア微粉」及び「珪酸質微粒子」は,技術常識に照らせば,いずれも耐火性の微細な粒子であるということができる。したがって,本願発明1の「マグネシア微粉」及び「珪酸質微粒子」と,引用発明の上記「耐火超微粉」とは,それぞれの粒径範囲は完全に一致しないものの,「耐火性の微細な粒子」である点では共通するものとみることができる。
そして,引用発明の「水硬性アルミナセメント」が本願発明1の「アルミン酸カルシウムセメント」に相当することは当業者にとって明らかである。
また,引用発明の「アルカリ金属リン酸塩及びアルカリ金属ポリリン酸塩からなる群から選択された分散剤」は,記載事項(オ)の「0.01重量%未満であると適正な解膠効果が得られない」という作用に関する記載からみて,本願発明1の「解膠剤」に相当するものである。そして,本願発明1の解膠剤の含有量は,「マグネシア微粉と,・・・珪酸質微粒子と,・・・アルミン酸カルシウムセメント,及び/又は・・・粘土と,0.01?0.5重量%の解膠剤と,残部の耐火性の骨材及び微粉とからなる固形分100重量%を,水で混練した第1成分」と特定されることから,凝集剤が添加される前の第1成分の,水と混練される前の固形分において0.01?0.5重量%であるところ,引用発明では,記載事項(ア)に,「耐火超微粉と,・・・水硬性アルミナセメントと,・・・分散剤の1種または2種以上を0.01?0.5重量%含有してなる耐火組成物,・・・水分と混練した耐火組成物,及び,前記混練した耐火組成物に施工水分量の残量の水分及び硬化促進剤よりなる溶液を・・・添加する」と記載されていることから,硬化促進剤(次に述べるとおり本願発明1の凝集剤に相当)が添加される前の,水と混練される前の耐火組成物において0.01?0.5重量%であることは明らかであるから,本願発明1と引用発明の解膠剤(分散剤)の含有量は一致しているといえる。
更に,引用発明の「耐火骨材」は,本願発明1の「耐火性の骨材」に相当する。
また,引用発明の「Ca(OH)_(2),珪酸ソーダ等の硬化促進剤」における,「Ca(OH)_(2)」,「珪酸ソーダ」は,本願発明の「アルミン酸ソーダ等のアルミン酸塩,炭酸ソーダ等の炭酸塩,珪酸ソーダ等の珪酸アルカリ,塩化カルシウム等の塩化物,水酸化ソーダや水酸化カルシウム等の水酸化物,アルミン酸カルシウム,及びポルトランドセメントからなる群より選択される1種以上の凝集剤」における,「珪酸ソーダ」,「水酸化カルシウム」にそれぞれ相当し,引用文献1の記載事項(ク)に,「ノズルで添加される硬化促進剤・・・硬化促進剤の添加配合量が0.01重量%未満であると,硬化速度が遅く,吹付け施工体の流動崩壊し,また,添加配合量が2重量%を超えると硬化が速く」と記載された「硬化促進剤」の作用と,本願明細書の段落【0026】に,「凝集剤は,第1成分を凝集せしめると共に,マグネシア-シリカ-水系の結合部の生成による水硬を促進する。」と記載された「凝集剤」の作用とからみて,引用発明の「硬化促進剤」は,本願発明1の「凝集剤」に相当するものである。
そして,引用発明の「流動崩壊しない」ことは,本願明細書の段落【0002】に「その吹付け表面から崩落(スランプ)しないように」と記載されているように,本願発明1の「非スランプ性」に相当することである。また,引用発明の「吹付け施工体」は,不定形の耐火性組成物を吹付けて施工した物であり,耐火物に関する技術分野で一般にキャスタブル組成物などと呼ばれる耐火性組成物の一種であることは当業者にとって明らかであるから,本願発明1の「キャスタブル組成物」に相当するということができる。
そうすると,本願発明1と引用発明とは,
「耐火性の微細な粒子と,アルミン酸カルシウムセメントと,0.01?0.5重量%の解膠剤と,耐火性の骨材とを含有する固形分と,水,及び,施工時に前記成分に対して添加される凝集剤であって,珪酸ソーダ,水酸化カルシウムからなる群より選択される1種以上の凝集剤からなる非スランプ性キャスタブル組成物。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

相違点A:本願発明1は,「マグネシア-シリカ系ボンドキャスタブル組成物」であり,耐火性の微細な粒子が「マグネシア微粉」及び「珪酸質微粒子」であるのに対し,引用発明では,「粘土,カオリン,微粉シリカ,微粉アルミナ,微粉マグネシア及び微粉炭化珪素からなる群より選択された2種以上を併用した50μ以下の耐火超微粉」を含有するが,「マグネシア微粉」及び「珪酸質微粒子」に特定されていない点

相違点B:本願発明1では,「耐火性の骨材及び微粉」を含有するのに対して,引用発明では,「耐火骨材」を含有するものの,耐火骨材の粒度について特定されておらず,「耐火性の微粉」も含むことが特定されていない点

相違点C:本願発明1では,凝集剤が添加される前の第1成分の,水と混練される前の固形分の組成範囲について,「0.5?30重量%のマグネシア微粉と,0.5?10重量%の珪酸質微粒子と,カルシア成分の量に換算して2重量%以下(但し,0重量%は除く)のアルミン酸カルシウムセメント,及び/又は5重量%以下(但し,0重量%は除く)の粘土と,0.01?0.5重量%の解膠剤と,残部の耐火性の骨材及び微粉とからなる」と特定するのに対し,引用発明では,硬化促進剤(凝集剤)が添加される前の,水と混練される前の耐火組成物(本願発明の第1成分の固形分に相当)の組成範囲について,「5?30重量%の粘土,カオリン,微粉シリカ,微粉アルミナ,微粉マグネシア及び微粉炭化珪素からなる群より選択された2種以上を併用した50μ以下の耐火超微粉と,1?10重量%の水硬性アルミナセメントと,0.01?0.5重量%のアルカリ金属リン酸塩及びアルカリ金属ポリリン酸塩からなる群から選択された分散剤と,93?60重量%の耐火骨材を含有してなる」と特定する点

相違点D:本願発明1では,最終的な組成物が,各成分がどのように混合されて得られる組成物であるかについて,「固形分100重量%を,水で混練した第1成分であって,水が混練された第1成分のポンプ圧送可能なコンシステンシィの達成に足りる量で存在する前記ポンプ圧送可能第1成分,及び,施工時に第1成分に対して添加される第2成分の凝集剤・・・からなる・・・キャスタブル組成物」と特定するのに対して,引用発明では,「耐火組成物を,施工水量の1/5?3/4の水分と混練した耐火組成物,及び,前記混練した耐火組成物に施工水分量の残量の水分及び硬化促進剤よりなる溶液を乾式吹付けガンの吹付けノズルで添加するCa(OH)_(2),珪酸ソーダ等の硬化促進剤及び前記施工水分量の残量の水分からなる・・・吹付け施工体」と特定する点

そこで,上記相違点A?Dについて,以下,検討する。

相違点Aについて:
引用文献2には,記載事項(コ)に,「骨材50?95重量%と,・・・・・・スピネル骨材を50?1重量%と,75μm以下の粒径を有するマグネシア骨材を1?8重量%と,平均粒径1μm以下の超微粉シリカを0.5?2重量%と,結合材として,Al_(2)O_(3)とCaOとの合量が99重量%以上のアルミナセメントをCaO換算で1重量%を越えない範囲で配合してなるアルミナ・スピネル質キャスタブル耐火物」が記載されており,そして,記載事項(サ)には,「超微粉シリカは,キャスタブル耐火物に施工時の流動性を付与するとともに,結合剤としてのアルミナセメントまたは,マグネシアから溶出するCa^(2+),Mg^(2+)のイオンによるファンデル-ワルース結合で強固な結合を発現し,施工体の強度,緻密化を向上させる」と記載されている。これらの記載から,引用文献2には,キャスタブル耐火物について,平均粒径1μm以下の超微粉シリカを,アルミナセメント及び75μm以下の粒径を有するマグネシアとともに含有させた場合,流動性の付与とともに,施工体の強度,緻密化を向上させ得るという技術的知見が開示されているといえる。
そうすると,引用発明においても施工体の強度,緻密化を向上することは当業者にとって自明の課題であるから,引用発明において,上記引用文献2に開示された技術的知見に基づき,耐火超微粉を微粉マグネシアと微粉シリカの組み合わせに特定することは,当業者が容易に想到し得ることである。
ここで,引用発明の「微粉シリカ」と本願発明1の「珪酸質微粒子」を比較すると,これらはいずれも珪酸質の材料である点では一致するが,先に述べたとおり,本願発明1の「珪酸質微粒子」は,10μm以下程度の粒径を有するものと認められるところ,引用発明の「微粉シリカ」は,粒径が50μm以下のものであって,粒径の範囲として,本願発明1の「珪酸質微粒子」の方が,引用発明の「微粉シリカ」よりも微細な範囲のものとみることができる。
しかしながら,上述のとおり,引用文献2には,平均粒径1μm以下の超微粉シリカを用いることで,流動性の付与とともに,施工体の強度,緻密化を向上させ得るという技術的知見が開示されているから,引用発明において,微粉マグネシアと微粉シリカの組み合わせに特定した際に,微粉シリカを粒径が更に微細な微粒子に特定することも当業者が容易に想到し得ることである。

相違点Bについて:
本願発明1の「耐火性の骨材及び微粉」について,本願明細書には,段落【0010】に,「耐火性の骨材及び微粉(マグネシアの微粉は除く)としては,・・・・・・例えば,電融又は焼結アルミナ,仮焼アルミナ,ボーキサイト,電融又は合成ムライト,シリマナイト,アンダリューサイト,カイヤナイト,バン土頁岩,シャモット,ロー石,珪石,溶融シリカ,電融又は焼結マグネシア,電融又は焼結スピネル,電融又は焼結ジルコニア,ジルコン,クロム鉱,電融又は焼結マグネシア-ライム,電融ジルコニア-ムライト,電融アルミナ-ジルコニア,チタニア,炭化珪素,窒化珪素,天然又は人造の黒鉛,石油コークス,ピッチコークス,無煙炭,カーボンブラック,ピッチ等の無定形炭素等が挙げられ,これらの内の1種又は2種以上を使用する。」と記載されており,段落【0012】には,「本発明でいう微粉とは,粒径が0.2mm以下であり,実質的にその内の50重量%以上が74μm以下である」と記載されている。ここで例示された耐火性の骨材及び微粉のうち,「シリマナイト」,「アンダリューサイト」,「カイヤナイト」,「バン土頁岩」,「シャモット」,「ロー石」,「珪石」の微粉は一般的な粘土として用いられる鉱物であり,また,「珪石」はシリカを主成分とし,「ボーキサイト」はアルミナを主成分とする鉱物である。そして,「溶融シリカ」,「電融又は焼結アルミナ」,「仮焼アルミナ」,「電融又は焼結マグネシア」,「炭化珪素」は,シリカ,アルミナ,マグネシア又は炭化珪素に他ならない。
したがって,本願発明1の「耐火性の微粉」は,引用発明の「粘土,カオリン,微粉シリカ,微粉アルミナ,微粉マグネシア及び微粉炭化珪素からなる群より選択された2種以上を併用した50μ以下の耐火超微粉」と,材料の種類及び粒径において共通するものとみることができる。
そして,本願明細書には,本願発明1において,「耐火性の骨材」とともに「微粉」をも含有させることで本願発明1に特有の作用効果を奏する旨の記載は見あたらない。
そうすると,引用発明の上記「耐火超微粉」は,2種以上を併用したものであって,3種以上を併用することもできるものであるから,相違点Aで検討したとおり,微粉マグネシア及び微粉シリカを併用するようにした上で,更に他の耐火超微粉も含有させることは,当業者が適宜なし得ることである。

相違点Cについて:
まず,微粉マグネシア及び珪酸質微粒子の含有量について,相違点Aについて検討したとおり,引用文献2に開示された技術的知見に基づいて,微粉マグネシアと微粉シリカとの組み合わせに特定した際に,それぞれの含有量を個別に調整して特定することは当業者が容易に想到し得ることである。そして,本願明細書の【表1】?【表4】に記載されたデータやその他の記載を参照しても,微粉マグネシア及び珪酸質微粒子の含有量の上限値及び下限値に,他の成分の含有量との相対的な差異による特性のばらつきを超えた格別の臨界的な意義があるものとは認められないから,耐火超微粉5?30重量%とされる引用発明において,微粉マグネシア及び微粉シリカ(珪酸質微粒子)それぞれの含有量を,多少広めに,微粉マグネシアを0.5?30重量%,珪酸質微粒子を0.5?10重量%と特定することは,当業者が格別の困難なくなし得ることである。
次に,アルミン酸カルシウムセメントの含有量について,引用文献2には,記載事項(シ)に,「アルミナセメントは・・・・・・添加量としてキャスタブル中のCaO量が1重量%を越えない範囲に限定される。・・・・・・CaO量が1重量%を越える場合でも同様に耐食性の低下が生じる。」と記載されており,アルミナセメントの添加量について,CaO量が1重量%を越える場合に耐食性の低下が生じるという技術的知見も開示されている。よって,引用発明において,上記技術的知見に基づき,水硬性アルミナセメント(アルミン酸カルシウムセメント)の含有量について,カルシア成分の量に換算した量の観点から限定を加えることは当業者が容易に想到し得ることである。そして,本願明細書の【表1】?【表4】に記載されたデータやその他の記載を参照しても,2重量%という上限値に,他の成分の含有量との相対的な差異による特性のばらつきを超えた格別の臨界的な意義があるものとは認められないから,多少広めに,2重量%以下と特定することに格別の困難性は認められない。
そして,引用発明において,明記された成分以外の成分が含まれないものとすることは当業者が適宜なし得ることであり,上記のとおりに上記各成分の含有量を特定した場合に,耐火性の骨材及び微粉の含有量を,相対的な表現として,「残部の耐火性の骨材及び微粉とからなる」と特定することも,当業者が格別の困難なくなし得ることである。

相違点Dについて:
本願発明1では,「固形分100重量%を,水で混練した第1成分であって,水が混練された第1成分のポンプ圧送可能なコンシステンシィの達成に足りる量で存在する前記ポンプ圧送可能第1成分,及び,施工時に第1成分に対して添加される第2成分の凝集剤・・・からなる・・・キャスタブル組成物」と特定されることから,本願発明1は,施工時に第1成分(固形分及び水)に対して第2成分が添加された後の,第1成分及び第2成分からなる組成物と認められる。
一方,引用発明は,「耐火組成物を,施工水量の1/5?3/4の水分と混練した耐火組成物,及び,前記混練した耐火組成物に施工水分量の残量の水分及び硬化促進剤よりなる溶液を乾式吹付けガンの吹付けノズルで添加する・・・硬化促進剤及び前記施工水分量の残量の水分からなる流動崩壊しない吹付け施工体」であり,更に,記載事項(カ)には,「ノズルで施工水分量の残部を添加する時の短時間の混合,混練でも完全に分散効果が得られた状態となり,低水分量の吹付け施工が可能となる。」との記載もあることから,引用発明の「吹付け施工体」は,本願発明1とは水の加え方が異なる方法により作成された組成物ではあるが,最終的に全ての成分が完全に混合された後の組成物である点では本願発明1の組成物と共通する「物」である。
また,最終的な組成物における水分量としても,引用文献の記載事項(ケ)には,「本発明方法の全施工水分量は4?10%が好ましい。」と記載されているところ,本願明細書の段落【0032】には,「水の添加量は,第1成分の比重と粒度構成によって当然異なるが,通常,5.0?8.0重量%の水分量で容易にポンプ圧送可能な第1成分が得られる。但し,第1成分を非常に長距離,そして,高所まで圧送する場合は水分量を1?3重量%程度多く添加する場合もあり」と記載されており,本願明細書に「第1成分の比重と粒度構成によって当然異なるが」と記載されていることも考慮すれば,両者はほぼ一致しているとみることができる。
そうすると,上記相違点Dにより,全ての成分が混合された後の最終的な組成物としての実質的な差異が生じるものとは認められず,相違点Dは実質的なものではない。

したがって,本願発明1は,引用文献1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-05 
結審通知日 2010-07-09 
審決日 2010-07-22 
出願番号 特願平8-345066
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C04B)
P 1 8・ 121- Z (C04B)
P 1 8・ 537- Z (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横島 重信  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 深草 祐一
小川 慶子
発明の名称 非スランプ性マグネシア-シリカ系ボンドキャスタブル組成物及びその施工方法  
代理人 小堀 益  
代理人 堤 隆人  

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