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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1225928
審判番号 不服2008-904  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-10 
確定日 2010-10-29 
事件の表示 特願2001-307999「光情報媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月25日出願公開、特開2003-123323〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月3日の出願であって、平成18年4月11日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年6月16日付けで手続補正がなされ、平成19年12月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年1月10日付けで拒絶査定不服審判請求がなされた後、同年2月12日付けで手続補正がなされた。
その後、平成22年5月24日付けで審尋がなされ、同年7月28日付けで回答書が提出されたものである。

2.補正の適否・本願発明
平成20年2月12日付け手続補正により、特許請求の範囲の請求項1については、補正前には、
「【請求項1】 板状の透光性基板上に情報記録層を形成し、レーザー光により光学的に読み取り可能な情報が再生及び/又は記録し得る光情報媒体において、前記透光性基板の再生/記録光が入射する側の裏面に、印刷層とインキ受理層とを積層することにより構成されていることを特徴とする光情報媒体。」
とあったものが、
「【請求項1】 板状の透光性基板上に情報記録層を形成し、レーザー光により光学的に読み取り可能な情報が再生及び/又は記録し得る光情報媒体において、前記透光性基板の再生/記録光が入射する側の裏面に、酸化チタンを含有するインキを印刷して形成された下地の印刷層と、該印刷層上に形成されたインキ受理層とが積層されていることを特徴とする光情報媒体。」
と補正された。
上記補正後の請求項1は、印刷層は印刷により形成されるものであること、及びインキ受理層は印刷層上に形成される必要があることが自明である点を考慮すると、補正前の請求項1を引用する請求項8を実質的に独立形式として記載したものに相当し、補正前の請求項1は削除されたとみることができるから、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当するといえる。

よって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年2月12日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 板状の透光性基板上に情報記録層を形成し、レーザー光により光学的に読み取り可能な情報が再生及び/又は記録し得る光情報媒体において、前記透光性基板の再生/記録光が入射する側の裏面に、酸化チタンを含有するインキを印刷して形成された下地の印刷層と、該印刷層上に形成されたインキ受理層とが積層されていることを特徴とする光情報媒体。」

3.引用例
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-6225号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【請求項1】 一方の面に形成された情報信号の記録及び/又は再生がなされる情報記録面と、
上記情報記録面が形成された面とは反対側の面に形成された染料定着層とを備え、
上記染料定着層は、結着剤として紫外線硬化型樹脂と、イオン交換作用に基づくインターカレーション反応により水溶性染料を定着保持する層間化合物とを含有し、インクジェット記録方式に対応したものであることを特徴とするディスク状記録媒体。」

(2)「【0016】本発明を適用したディスク状記録媒体1は、図1に示すように、ディスク媒体2の情報信号が記録再生される面2aとは反対側の面2b上に、染料定着層3が形成されてなる。
【0017】このようなディスク状記録媒体1にインクジェット記録方式により印刷する場合、水溶性染料、水、多価アルコール等を含有する液状の水性インク組成物をプリンタ装置等のノズルから染料定着層3に向けて吐出させ、該染料定着層3上に上記水溶性インク組成物を付着させて画像が形成される。こうしてレーベル印刷されたディスク状記録媒体1は、レーベル表示により内容等が識別可能となり、他のディスク状記録媒体と区別することが可能となる。
【0018】ディスク媒体2としては、例えば、磁気的に情報信号が書き込まれる磁気ディスクや、エンボスピットによって情報信号が予め書き込まれる光ディスクや、記録膜の相変化を利用して情報信号が書き込まれる相変化型光ディスクや、記録膜の磁気光学効果を利用して情報信号が書き込まれる光磁気ディスク等の何れのディスク状記録媒体にも適用可能である。」

(3)「【0045】以上のように構成される本発明を適用したディスク記録媒体1は、次のような方法により作製することができる。
【0046】まず、上述した層間化合物と結着剤とを溶媒中で分散させ、分散液を得る。ここで、分散液の粘度は、1000?5000mPa・sに調整されることが好ましい。分散液の粘度が1000mPa・s以下の場合、スクリーン印刷により染料定着層を形成する場合に、分散液に流動性があるため、4μm以上の膜厚を確保することができなくなる。また、分散液の粘度が5000mPa・s以上の場合、サンドミルにおける分散工程において分散機への負荷が大きく、分散が困難となる。
【0047】次に、ディスク媒体2の情報記録面2aとは反対側の面2b上に、上記分散液をスクリーン印刷により塗布する。分散液をスクリーン印刷により塗布することで、ディスクの内周側と外周側とで分散液の厚みムラが発生せず、染料定着層3をディスク全面に亘って均一に形成することができる。
【0048】なお、このとき、染料定着層3に予め背景色を付けるために、上記分散液を塗布形成する前に、ディスク媒体2との接着面に着色された紫外線硬化樹脂よりなるアンダーコート層が形成されていても良い。また、上記アンダーコート層に酸化チタン等の白色顔料や無機材料からなる着色顔料、又は有機材料からなる染料が含有されていても良い。
【0049】その後、紫外線を照射することにより、結着剤として上記分散液中に含まれている紫外線硬化樹脂を硬化させて染料定着層3を形成して、ディスク状記録媒体1が完成する。」

特に上記(3)の段落【0048】の記載(アンダーコート層を形成する場合)に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「一方の面に情報信号の記録及び/又は再生がなされる情報記録面が形成された、エンボスピットによって情報信号が予め書き込まれる光ディスクや、記録膜の相変化を利用して情報信号が書き込まれる相変化型光ディスク等のディスク媒体と、前記情報記録面が形成された面とは反対側の面に形成された、インクジェット記録方式に対応した染料定着層と、該染料定着層に予め背景色を付けるために、前記染料定着層を塗布形成する前に前記ディスク媒体との接着面に形成された、酸化チタン等の白色顔料が含有され着色された紫外線硬化樹脂よりなるアンダーコート層からなるディスク状記録媒体。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明における「ディスク状記録媒体」においても、当然、板状の基板を有し、引用発明における基板の一方の面に形成されたエンボスピットや相変化の記録膜からなる「情報記録面」は、本願発明における「情報記録層」に相当し、引用発明における「エンボスピットによって情報信号が予め書き込まれる光ディスクや、記録膜の相変化を利用して情報信号が書き込まれる相変化型光ディスク等のディスク媒体」は、本願発明における「レーザー光により光学的に読み取り可能な情報が再生及び/又は記録し得る光情報媒体」に相当するといえ、結局、本願発明と引用発明とは、「板状の基板上に情報記録層を形成し、レーザー光により光学的に読み取り可能な情報が再生及び/又は記録し得る光情報媒体」である点で共通する。
また、引用発明における「前記染料定着層を塗布形成する前に前記ディスク媒体との接着面に形成された、酸化チタン等の白色顔料が含有され着色された紫外線硬化樹脂よりなるアンダーコート層」は、白色顔料として酸化チタンを含有し、紫外線硬化樹脂を主成分とする液状物すなわちインキを塗布して形成されるものであることは自明といえ、染料定着層とディスク媒体との間、すなわち染料定着層の下地として形成されるものであるから、「前記基板の再生/記録光が入射する側の裏面に、酸化チタンを含有するインキを塗布して形成された下地の層」である点で本願発明と共通する。
さらに、引用発明における「インクジェット記録方式に対応した染料定着層」は、上記アンダーコート層上に形成され、インクジェット記録方式により印刷されるインクを定着するための層であるから、「該層上に形成されたインキ受理層」である点で本願発明と共通する。
そして、引用発明における「アンダーコート層」と「染料定着層」とは積層されていることは明らかであり、引用発明における「ディスク状記録媒体」は、本願発明における「光情報媒体」に相当するといえるから、
本願発明と引用発明とは、
「板状の基板上に情報記録層を形成し、レーザー光により光学的に読み取り可能な情報が再生及び/又は記録し得る光情報媒体において、前記基板の再生/記録光が入射する側の裏面に、酸化チタンを含有するインキを塗布して形成された下地の層と、該層上に形成されたインキ受理層とが積層されていることを特徴とする光情報媒体。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
板状の基板が、本願発明では透光性であるのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。

[相違点2]
下地の層を形成するに際して、酸化チタンを含有するインキの塗布が、本願発明では印刷であるのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
光記録媒体の基板として、ポリカーボネートやガラスなど透光性の基板を用いることは例えば特開2000-251329号公報(段落【0027】)や特開2000-268414号公報(段落【0015】)に記載のようにごく普通の技術事項であり、引用発明においても、情報記録面をレーザ光が入射する側の裏面(すなわち、染料定着層が形成される面)の方に形成するなどして、板状の基板として透光性のものを用いるようにすることは当業者が容易になし得ることである。

[相違点2]について
一般に、樹脂を主成分とする液状物すなわちインキを層状に塗布する手段として、スクリーン印刷法は周知であり〔例えば引用例(上記「3.(3)」の記載)、上記特開2000-251329号公報の段落【0025】、上記特開2000-268414号公報の段落【0030】〕、引用発明における酸化チタンを含有するインキについても、周知のスクリーン印刷法を用いて形成することは当業者が適宜なし得ることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまてせもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-18 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-06 
出願番号 特願2001-307999(P2001-307999)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 達也蔵野 雅昭  
特許庁審判長 横尾 俊一
特許庁審判官 月野 洋一郎
井上 信一
発明の名称 光情報媒体  
代理人 三好 千明  
代理人 三好 千明  

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