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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1226266
審判番号 不服2008-18219  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-17 
確定日 2010-11-04 
事件の表示 特願2003- 45566「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月16日出願公開、特開2004-255585〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年2月24日の出願であって、平成19年12月26日付けで通知した拒絶理由に対し、平成20年3月4日付けで手続補正書が提出されたが、同年6月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月7日付けで手続補正書が提出され、当審から送付した審尋に対し、平成22年3月8日付けで回答書が提出されたものである。
その後、平成22年5月20日付けで当審から通知した拒絶理由に対し、同年7月23日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年7月23日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
適合品であるか否かを示す識別情報を記憶した記憶手段を有する消耗品が着脱可能に装着される着脱部と、該着脱部に装着された消耗品の前記記憶手段に記憶された識別情報を読み取る読取手段と、該読取手段により読み取られた識別情報が適合品であることを示す情報である場合には、前記消耗品との関係で動作が制御される所定の制御対象の動作を前記識別情報に応じた制御情報に基づいて制御する制御手段とを備え、該制御手段により前記識別情報に応じた制御情報に基づいて前記制御対象を動作させて画像形成を行う画像形成装置において、
前記読取手段により前記消耗品の記憶手段から読み取られた識別情報が、不適合品であることを示す情報であるか、もしくは前記適合品であることを示す情報であるかを判別する判別手段と、
該判別手段により前記不適合品であることを示す情報であると判断された際に、前記制御対象の制御情報を操作者により入力可能な状態にする制御情報入力手段を備え、
前記制御手段が、前記消耗品の記憶手段から読み取られた識別情報が前記不適合品であることを示す情報である場合には、前記制御情報入力手段により入力された制御情報に基づいて前記制御対象の動作を制御するものであることを特徴とする画像形成装置。」

3.引用刊行物の記載事項

これに対して、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2001-117743号公報(当審からの拒絶理由通知書における引用文献1、以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。

(a)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、カートリッジに関連する情報のうち、ユーザが知得しておく必要がないと考えられている情報は、従来ではユーザへの表示がなされないか、もともと情報として採用されていない。
【0004】たとえば、カートリッジの製造者についての情報は表示されていないが、もしカートリッジが非純正品である場合には、プリント品質が純正品とは異なる可能性も考慮しなければならないであろう。たとえば、インクジェットプリンタに用いるカートリッジの場合には、純正品と非純正品とではカラーの発色性が異なることがあるが、インクカートリッジの交換前後でカートリッジの製造元の違いを意識せずに印刷してしまうと、色に関わる印刷品質が変わるおそれがある。特に複数のユーザが使用するプリンタでは、例えば純正品の発色性に合わせこんだ印刷データを非純正品カートリッジが装着されたプリンタでそれと気づかずに印刷してしまう場合もあり、出力結果を見て再度色補正をして出力し直さなければならず、余計な手間と消耗品の無駄が発生する。
【0005】本発明は、プリント品質に影響を与える事項についてユーザに情報を与えることで、当該ユーザが適切なカートリッジを選択し得るようにすること、並びに、その情報に応じてユーザが各種プリント条件を調整し得るようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のカートリッジ情報表示構成は、データの読み書きが可能な記憶部を有するICチップを備えた着色媒体カートリッジ(インクカートリッジまたはトナーカートリッジ)をプリンタに装着したときに、当該プリンタのディスプレイまたは当該プリンタに接続されたコンピュータのディスプレイに、ICチップの記憶部(以下、「ICチップ記憶部」と言う)から読み出した情報を表示するもので、プリンタのディスプレイまたはコンピュータのディスプレイ(以下、単に「ディスプレイ」と言うときには、これら何れかのディスプレイを意味する)に表示するカートリッジ情報は、製造・販売者情報と、更に、製造時期情報、カートリッジの型情報、着色媒体の色情報、カートリッジのサイズ情報の少なくとも1つを含むことを特徴とする。これにより、ユーザは少なくともカートリッジの製造者・販売者の情報と、更にいくつかのカートリッジ情報を知得することができ、それらの情報に合わせて印刷品質に関わる各種設定を変えることが可能になる。」

(b)「【0020】図2にも示されるように、インクカートリッジ111,112には、パッド端子を有するICチップ1111,1121が備えられている。これらのICチップ1111,1121には、カートリッジ情報C_INFOが格納された記憶部が設けられている。ICチップ1111,1121は、メモリのみから構成されてもよいし、読み出し/書き込み用回路等を含んで構成されていてもよい。」

(c)「【0026】プリンタ1のコントロールプログラムは、図示しない計数カウンタにより、プリントヘッドノズルからのショット回数を、インク種ごとに監視しており、インクカートリッジ111,112のインク残量が所定量になると、コンピュータ2のプリント制御プログラムにインク残量が減少した旨の情報を渡す。この情報に基づき、プリント制御プログラムは、ディスプレイ22に図3に示すような表示画面51を表示する。この表示画面51は、インクカートリッジの装着を促すイラスト511と、メッセージボックス512と、「対処方法」と「閉じる」との選択ボタン5131,5132と、「インク残量」を示す2つのインクカートリッジ図形(黒およびカラー)5141,5142と「カートリッジ情報」の呼び出しボタン5143とからなる。なお、図3ではカラーのカートリッジ図形5142には、警告サインが付されている。
【0027】ユーザが、「対処方法」の選択ボタン5131を押すと、一連のインクカートリッジ交換方法のガイダンスを含むインクカートリッジ交換ユーティリティプログラムが起動し、図4(A)?(C),図5(A)?(C),図6(A)?(C)、図7(A),(B)(表示画面601?611)に示す画面を表示することができる。なお、図7(B)(表示画面611)で、「印刷」ボタン6111を押すと、図7(C)に示すような、図3に示したと同様の表示画面51をディスプレイ22に表示する。この表示画面51では、すでに新しいインクカートリッジの装着がなされているのでイラスト511に表示されたプリンタは、図3とは異なっている。また、図7(C)では、メッセージボックス512と、「対処方法」と「閉じる」との選択ボタン5132と、「インク残量」を示す2つのインクカートリッジ図形(黒およびカラー)5141,5142と「カートリッジ情報」の呼び出しボタン5143とからなる。なお、図7(C)では、図3においてカラーのカートリッジ図形5142に付されていた警告サインは表示されていない。」

(d)「【0029】本実施形態では、仮に、ユーザが図8(A)(表示画面7)において、ICチップ1111、1121を備えていないカートリッジもしくはICチップ1111、1121からの情報の読み出しが不能であるようなカートリッジ(たとえば純正でないインクカートリッジ)を装着した場合には、図8(A)、(B)(表示画面7)における、製造元の表示、型番の表示(図8(A)、(B)では「△△△社」、「ABCD-123」や、「ABCD-124」)は表示されないか、製造元、型番が異なる旨の表示(たとえば、「製造元が異なります」,「型番が不明です」)がなされる。
【0030】また、このときの図8(A),(B)に示した、「製造元」の欄には何も表示されないか、「UNKNOWN」等の製造者不明の表示がなされる。すなわち、非純正インクカートリッジの場合には、「製造元」の欄には表示がなされないか、所定のものとは異なる旨の表示がなされる。また、中には、非純正インクカートリッジの「製造元」、「インク種類」,「カートリッジ名称」,「型番」,「製造年月」について認識されて表示される場合もあろうが、それはそれで製造元等が純正品と異なって表示されるため、ユーザは非純正カートリッジであると認識できる。
【0031】「製造元」は、ユーザがより良好なプリント出力を得るための重要な情報であり、「インク種類」,「カートリッジ名称」,「型番」は、新品購入の際の便宜となるであろうし、「製造年月」は製造元による保証期間を明らかにする意味がある。
【0032】なお、上記実施形態では、「カートリッジ情報」は、通常、プリンタが稼動しているときにディスプレイに表示されるが、プリンタが稼動していないときでも、一定時間ごとに表示することもできる。プリンタが稼動していないとき場合には、表示の形態は問わず、たとえばディスプレイの隅に所定の小さな警告図形を表示するようにしてもよい。
【0033】「カートリッジ情報」は、プリンタ1のメモリ124に記載されており、インクカートリッジ111,112が取り除かれたときでも、これらの「カートリッジ情報」をメモリ124に残しておき、適宜の手段(たとえば、「カートリッジ情報」にこれまで装着されていたカートリッジについての情報を表示するようにしてもよい。
【0034】
【発明の効果】本発明では、プリント品質に影響を与える事項、特に製造・販売者情報と、製造時期情報、前記カートリッジの型情報、着色媒体の色情報、カートリッジのサイズ情報の少なくとも1つについて、ユーザに情報を与えることができるので、当該ユーザが適切なカートリッジを選択でき、また、知得したカートリッジ情報に応じてユーザが各種プリント条件を補正することが可能となり、結果として品質の高いプリント結果が得られる。」

(e)図3、図4、図8は以下のとおりのものである。

【図3】


【図4】


【図8】


ここで、「知得したカートリッジ情報に応じてユーザが各種プリント条件を補正することが可能となり、結果として品質の高いプリント結果が得られる。」のであるから、その他の記載も勘案すると、非純正品であるというカートリッジ情報を得た場合には、印刷品質が変わらないように、ユーザが各種プリント条件を補正することが把握できる。

これらを踏まえると記載事項から、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「純正品か否かを示す情報を記憶したICチップを有するカートリッジが装着される箇所を有し、装着されたカートリッジのICチップに記憶された情報を読み取って、純正品か非純正品かを区別できるような情報を表示し、かかる表示によって、純正品か非純正品かを認識したユーザが各種プリント条件を補正して画像形成を行うプリンタ。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「非純正品」は、引用刊行物に、純正品とはカラーの発色性が異なるために、製造元の違いを意識せずに印刷してしまうと、色に関わる印刷品質が変わるおそれがあり、その後再度色補正をして出力し直さなければならないことも記載されていることからして、本願発明の「不適合品」の一種であるものといえる。
してみると、引用発明の
「純正品か否かを示す情報」、
「ICチップ」、
「カートリッジ」、
「カートリッジが装着される箇所」、
「各種プリント条件」、
「プリンタ」
は、それぞれ本願発明の
「適合品であるか否かを示す識別情報」、
「記憶手段」、
「消耗品」、
「着脱部」、
「制御情報」、
「画像形成装置」
に相当する。
また、明記はされていないものの、引用発明において、ICチップに記憶された情報を読み取るには、なんらかの読取手段を有していることは明らかである。
さらに、こちらも明記はされていないが、引用発明における「各種プリント条件」を入力する手段が、本願発明の「制御情報入力手段」に相当し、引用発明における「各種プリント条件」によって、制御対象となる部位が,本願発明の「制御対象」に相当するといえる。

してみると、両者は、
「適合品であるか否かを示す識別情報を記憶した記憶手段を有する消耗品が着脱可能に装着される着脱部と、該着脱部に装着された消耗品の前記記憶手段に記憶された識別情報を読み取る読取手段とを有する画像形成装置において、
制御情報入力手段により入力された制御情報に基づいて制御対象の動作を制御する画像形成装置。」
の点で一致し、

以下の点で相違する。

・相違点1
本願発明は、読取手段により読み取られた識別情報が適合品であることを示す情報である場合に、消耗品との関係で動作が制御される所定の制御対象の動作を識別情報に応じた制御情報に基づいて制御する制御手段を備え、該制御手段により識別情報に応じた制御情報に基づいて制御対象を動作させて画像形成を行い、識別情報が不適合品であることを示す情報である場合に、制御情報入力手段により入力された制御情報に基づいて制御対象の動作を制御するのに対し、引用発明ではかかる点が不明である点。

・相違点2
本願発明は、読取手段により消耗品の記憶手段から読み取られた識別情報が、不適合品であることを示す情報であるか、もしくは適合品であることを示す情報であるかを判別する判別手段を有し、該判別手段により前記不適合品であることを示す情報であると判断された際に、制御対象の制御情報を操作者により入力可能な状態にする制御情報入力手段を備えているのに対し、引用発明では、適合品か不適合品かを区別できるような情報の表示を行い、制御情報入力手段が、不適合品の場合に操作者により入力可能な状態とするものではない点。

上記相違点について検討する。

・相違点1について
画像形成装置においては、本来適合品を装着して使用するものであるから、ユーザーの利便性を考慮すると、適合品の場合も不適合品の場合も制御情報を一から調整しなければならないような状態にするのではなく、適合品が装着された場合には、ユーザーが特段の調整を行うことなく使えるようにしておくことが自然である。してみると、引用発明においても、識別情報の設定を適合品の装着に合った設定としておき、適合品が装着された場合には設定の変更を行わなくても利用可能とし、不適合品が装着されたときのみに設定の変更が必要であるように、デフォルトの設定を定める、すなわち、識別情報が適合品を表す情報である場合には、識別情報に応じた制御情報に基づいて制御を行い、識別情報が不適合品を表す情報である場合には、制御情報入力手段により入力された制御情報に基づいて制御対象の動作を制御することは、当業者が適宜容易になし得ることである。

・相違点2について
まず、引用発明においても、純正品か非純正品かを区別できるような情報を表示していることから、なんらかの不適合品か適合品かを判別する判別手段は有しているものといえる。
次に、画像形成装置において、なんらかの不具合が発生したときに、操作者に指示を与えたり、入力を受け付けることが可能となるようにすることは、周知である。
例えば、引用刊行物の段落【0026】,【0027】には、インクの残量が少なくなるという不具合が生じたときに、まず図3に示されるようなインクの残量が少なくなったことを知らせるような画面を表示させた後に、対処方法ボタンのクリックという入力を行うと、図4以降に示されているような、インクカートリッジの交換手法を知らせるような画面を表示させることが記載されている。
また、特開2002-214977号公報には以下の記載がある。
「【0009】3.複写機等の画像形成装置では、現像剤や転写紙等の資材の不足によって画像形成が実行できないことがあるし、又、原稿自動送りの不調で所望の画像形成が上手くできない場合や、紙詰まり(ジャム)で画像形成が実行できないことがある。
【0010】このような不具合が発生した場合に、画像形成装置の制御卓(コンソール)や上部外装に設けたモニタに、操作ガイドとなる画面(以下、ガイド画面)を順次表示する技術が知られており、ユーザはガイド画面を手本として操作を行う。この技術では、発生した不具合の種別を自動判別して、適合する操作ガイド画面を表示し、当該ガイド画面が複数画面に及ぶ場合には、ユーザの操作で次の画面を表示する構成となっている。なお、ガイド画面に係る画像データはROM等に保存されている。」
これらの記載から、紙詰まりという不具合が生じたときには、発生した不具合の種別を自動的に判別して、適合する操作ガイド画面を表示させることが示されているといえる。
ここで、引用発明における非適合品の装着も、そのまま印刷を行うと色に関する印刷品質が変わるおそれがあるという点からすると、不具合の一種であると考えられるから、引用発明に上記周知技術を適用して、適合品か不適合品であるかを判別手段によって判別し、不適合品であると判断したときのみ、制御情報を入力するための入力手段を画面に表示するなどして、操作者が入力可能とするようにすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。

効果の点についても、本願発明の効果は、引用発明及び上記周知技術から予測し得る程度のものにすぎない。

したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-31 
結審通知日 2010-09-07 
審決日 2010-09-21 
出願番号 特願2003-45566(P2003-45566)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑井 順一  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 一宮 誠
柏崎 康司
発明の名称 画像形成装置  
代理人 佐久間 剛  
代理人 柳田 征史  

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