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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B42D
管理番号 1226868
審判番号 無効2009-800145  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-07-03 
確定日 2010-11-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第3960552号発明「ラベル帳票」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3960552号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成15年10月29日 本願出願(特願2003-368912号)
平成19年 5月25日 設定登録(特許第3960552号)
平成21年 7月 3日 本件無効審判請求
(無効2009-800145号)
平成21年 9月11日 答弁書及び訂正請求書の提出
平成21年12月11日 口頭審理陳述要領書の提出(審判請求人)
平成21年12月11日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
平成21年12月11日 口頭審理(口頭で「訂正拒絶理由」を通知)
平成21年12月25日 訂正請求取下書及び上申書の提出(被請求人)

第2 無効審判請求の概要及び被請求人の答弁等
1 請求人サンエイ株式会社は「本件発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として以下の無効理由1乃至3を挙げて、本件発明の特許は特許法第123条第1項第2号及び第4号に該当するので無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第24号証を提出している。
(1)無効理由1(甲第1号証に基づく進歩性の欠如)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に、甲第3乃至第8号証及び第13乃至17号証に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたもので、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。(当審で下線を付した。以下同じ。)
(2)無効理由2(甲第2号証に基づく進歩性の欠如)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に、甲第1及び甲第3乃至第17号証に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたもので、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。
(3)無効理由3(記載不備)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し無効とされるべきである。

<証拠方法>
請求人の提示した証拠方法は、以下のとおり。
甲第1号証:米国特許第6410113号明細書
甲第2号証:特開2002-014617号公報
甲第3号証:実用新案登録第3094763号公報
甲第4号証:実用新案登録第3063089号公報
甲第5号証:特開2001-305966号公報
甲第6号証:特願2003-276363号公報
甲第7号証:特開2003-276364号公報
甲第8号証:実願平05-34482号(実開平06-087974号) のCD-ROM
甲第9号証:特開平07-195868号公報
甲第10号証:特開平11-028875号公報
甲第11号証:特開平07-134554号公報
甲第12号証:特開2000-211269号公報
甲第13号証:特表2003-502220号公報
甲第14号証:特開2003-095225号公報
甲第15号証:特開平08-267397号公報
甲第16号証:実願昭60-002512号(実開昭61-119967 号)のマイクロフィルム
甲第17号証:実開平07-040171号公報
(以上、平成21年7月3日付け無効審判請求書に添付)

甲第18号:特開平05-341716号公報
甲第19号:特開2002-072888号公報
甲第20号:特開平07-304283号公報
甲第21号:特開2003-048294号公報
甲第22号:特開平03-007398号公報
甲第23号:特開平07-150092号公報
甲第24号:特開平08-085280号公報
(以上、平成21年12月11日付け口頭審理陳述要領書に添付)

2 一方、被請求人小林クリエイト株式会社は「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、本件請求項1及び2に係る発明については無効理由のない旨主張した。

第3 本件発明
1 被請求人は、平成21年12月11日の口頭審理において口頭で通知された訂正拒絶理由を受け、同年12月25日付けで平成21年9月11日付け訂正請求を取り下げた。
本件登録時の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】台紙上に上紙が剥離可能に貼合された帳票であって、
上紙は、本票と分離票とが輪郭切り取り線で隣接された伝票片を備え、かつ分離票を除いた裏面領域に粘着剤を塗工した粘着剤層が設けられてなるとともに、
台紙は、粘着剤層と対向する表面領域に剥離剤を塗工した剥離剤層が設けられ、かつ台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであって輪郭切り取り線を囲んで分離票よりも大きな輪郭を有する輪郭ハーフカット線が形成され、輪郭ハーフカット線よりも内側の表面領域に情報記載欄を備えてなり、
伝票片裏面の台紙をめくって輪郭ハーフカット線を切断し、輪郭ハーフカット線の内側部分を残した状態で上紙から台紙を剥がし取ると伝票片を被着体に貼付でき、輪郭切り取り線を切断して本票から分離票を切り離すと分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れるようになっている
ことを特徴とするラベル帳票。
【請求項2】請求項1に記載のラベル帳票において、
前記輪郭切り取り線は、カット部とアンカット部を有する通常ミシン線と、通常ミシン線のアンカット部に設けられたカット部とアンカット部を有するマイクロミシン線とからなる混合ミシン線であることを特徴とするラベル帳票。」

2 請求項1の後段における「輪郭ハーフカット線を切断し」について
「輪郭ハーフカット線」について、本件登録時の特許請求の範囲の請求項1には「台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであって輪郭切り取り線を囲んで分離票よりも大きな輪郭を有する輪郭ハーフカット線」と規定されており、その文言から、「輪郭ハーフカット線」の構成は明りょうであり、台紙の「輪郭ハーフカット線」の内側部分と、台紙の「輪郭ハーフカット線」の外側部分を切り離しているものであって、その輪郭は、輪郭切り取り線を囲んで分離票よりも大きなものであると理解できる。
しかしながら、それに続く後段には「伝票片裏面の台紙をめくって輪郭ハーフカット線を『切断』し」と規定されており、この文言では、台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであるはずの「輪郭ハーフカット線」は、伝票片裏面の台紙をめくることにより、台紙の「輪郭ハーフカット線」の内側部分と、台紙の「輪郭ハーフカット線」の外側部分が切り離されるように解することができ、前段と後段における「輪郭ハーフカット線」の構成が整合しておらず、構成を不明りょうにするものである。

ところで、被請求人(出願人)は、審査段階における平成19年2月19日付け意見書において「台紙11-2の輪郭ハーフカット線23を切断すると、台紙11-2と剥離剤層25が一体となって切断される。すなわち、写真3に示すように、台紙の厚みに比べて剥離剤の厚みは極めて薄く、しかも剥離剤は台紙に浸透していて密着力が強い。このため、少なくとも台紙がカットされていれば、参考図(b)のように台紙11-2を剥がすときに剥離剤層25もカットされて台紙11-2と共に剥がれるようになっている。」と説明していること、及び口頭審理における審判長の「請求項1の『輪郭ハーフカット線を切断し』との文言はないものとして理解する。」との発言に対する両当事者からの同意する旨の陳述を考慮すると、本件登録時の特許請求の範囲の請求項1の後段における「輪郭ハーフカット線を切断し」との文言はないものとして解釈するのが適当であると言わざるを得ない。

3 本件発明の認定
上記2で検討したように、本件登録時の特許請求の範囲の請求項1の後段における「輪郭ハーフカット線を切断し」との文言はないものとして理解する。
本件請求項1乃至2に係る発明は、以下に記載のとおりのものである(以下、請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)。

「【請求項1】台紙上に上紙が剥離可能に貼合された帳票であって、
上紙は、本票と分離票とが輪郭切り取り線で隣接された伝票片を備え、かつ分離票を除いた裏面領域に粘着剤を塗工した粘着剤層が設けられてなるとともに、
台紙は、粘着剤層と対向する表面領域に剥離剤を塗工した剥離剤層が設けられ、かつ台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであって輪郭切り取り線を囲んで分離票よりも大きな輪郭を有する輪郭ハーフカット線が形成され、輪郭ハーフカット線よりも内側の表面領域に情報記載欄を備えてなり、
伝票片裏面の台紙をめくって、輪郭ハーフカット線の内側部分を残した状態で上紙から台紙を剥がし取ると伝票片を被着体に貼付でき、輪郭切り取り線を切断して本票から分離票を切り離すと分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れるようになっていることを特徴とするラベル帳票。
【請求項2】請求項1に記載のラベル帳票において、
前記輪郭切り取り線は、カット部とアンカット部を有する通常ミシン線と、通常ミシン線のアンカット部に設けられたカット部とアンカット部を有するマイクロミシン線とからなる混合ミシン線であることを特徴とするラベル帳票。」

第4 甲第1及び2号証に記載の事項
1 甲第1号証には、図とともに、次の事項が記載されている。
なお、甲第1号証は英語で記載されたものであるので審判請求人が提出した翻訳文を併記し、以下でする甲第1号証に記載された発明の認定は、原則、以下の翻訳文に基づいて行う。

ア When containers are used to ship merchandise to a customer, it is common for the customer to use the same container to return to the sender the merchandise when it fails to meet requirements. The original recipient address must then be obliterated by being either removed or marked over, or a new label may be affixed over the original recipient address. Should the container have a separate return address thereon from the original sender, that return address must also be removed or supplanted.
The quality and security of the replacement addresses on the same container may vary significantly depending on the care and method used for readdressing. In the worst case, a reapplied label may fall off during the return trip of the container, and interrupt the delivery.
In many commercial transactions, merchandise may only be returned with advanced permission and a corresponding return authorization (RA) number therefor. The RA number is typically obtained by phone, and is typically placed on the return label itself for ready visibility by the original sender upon receipt of the container.
Accordingly, it is desired to provide an improved shipping label for both sending a container to a recipient, and returning the same container to a second recipient, such as the original sender.(第1欄第5乃至8パラグラフ)
(商品を顧客に出荷するときにコンテナが使用される際に、商品が要件を満たしていない場合には、通常、顧客が同一のコンテナを使用して商品を発送者に返送することがある。その場合、元の受領者用アドレスは、除去するか、元のアドレスを塗りつぶして消去されなければならない。あるいは新しいラベルを元の受領者のアドレス上に貼付してもよい。コンテナに元の発送者からの別の返送先アドレスが貼付されている場合は、その返送先アドレスが除去されるか、取り替えられなければならない。
同一のコンテナ上で取り替えられたアドレスの品質および安全性は、再度のアドレス(貼付)作業における配慮と方法に極めて左右される場合がある。最悪の場合、再貼付されたラベルはコンテナが返送される途中で剥がれ落ち、また、配送が中断してしまう場合がある。
多数の商取引において、商品は事前に許可を得て、それに対応する返品確認(RA)番号があるもののみを返送することができる。RA番号は、通常、電話で取得され、また、コンテナの受領時に元の発送者がすぐに目にすることができるように返送ラベル自体に通常配置される。
従って、コンテナを受領者に送り、また、同一のコンテナを元の発送者のような第2の受領者に戻すために改良された出荷用ラベルを提供することが望まれる。)

イ BRIEF SUMMARY OF THE INVENTION
A label laminate includes a release liner and label bonded thereto by an adhesive. The liner includes a skip in the release thereof, and the label includes a skip in the adhesive thereof aligned therewith. The label is removable from the liner, and the release skip may be printed thereon.(第1欄第第9パラグラフ)
(発明の概要
ラベル積層体は剥離ライナーとこれに接着剤によって接着されたラベルを含んでいる。ライナーは当該剥離層内に非形成部分を含み、またラベルは当該非形成部分と重ねてそろえられた接着層内に非形成部分を含んでいる。ラベルはライナーから除去することができ、また剥離剤非形成部分はこの上に印字することができる。)

ウ Illustrated in FIG. 1 is a shipping container 10 configured for shipping an item or article to a recipient. The container may take any conventional form such as the rectangular box illustrated, or a cylindrical shipping tube, or flat envelopes, for example. The article may have any conventional form such as merchandise, or written correspondence of one or more sheets, for example. And, the container may be mailed or shipped using any suitable means such as U.S. Postal Service, or private carrier, or local courier, for example.
A shipping label or laminate 12 is provided in accordance with one embodiment of the present invention for attachment to the container for identifying the recipient, as well as permitting re-shipment of the same container to a second recipient, which may be the original sender.The laminate 12 includes a pressure sensitive address label 14 having a front face or surface upon which may be printed a recipient first address 16
A release liner 18 is initially disposed under the label, With the label being releasably bonded thereto by a suitable adhesive 20 covering the back side or surface of the label. The liner may have any conventional configuration including a release agent 22, such as silicone, coated thereon for permitting removal of the label by being peeled away therefrom. The adhesive typically used for pressure sensitive labels is permanently bonded to the label back and is releasable from the liner so that the label may be reapplied to other surfaces as desired.
In FIG. 1, the shipping laminate 12 has been bonded to the container for initial shipment to the identified first recipient. The container also includes a return address 24 suitably located. In FIG. 2, the label 14 has been removed by the recipient and re-applied atop the return address using the same adhesive found on the back of the label. (第2欄第5乃至8パラグラフ)
(図1は物品ないし商品を受領者に出荷するために構成された出荷用コンテナ10を示す。このコンテナは、例えば図示した方形ボックス、または円筒形出荷用チューブあるいは平坦な封筒のような従来の形態を取ることができる。物品は例えば商品、また1枚あるいはそれ以上のシートから成る通信書類であってもよい。さらに、コンテナは例えばアメリカ郵政公社または個人配送者あるいは地域の宅配業者等の適切な手段を使用して郵送または出荷してもよい。
受領者を識別するためにコンテナに貼付されるとともに、同一のコンテナを元の発送者である第2の受領者に対して再出荷することを可能とする出荷用ラベルないし積層体12は、本発明の一実施形態によって提供されてもよい。積層体12は受領者第1アドレス16の印字可能な前面ないし表面を有する感圧アドレス・ラベル14を含んでいる。
剥離ライナー18が最初ラベルの下方に配置されており、このラベルはラベルの裏面ないし表面を覆う適切な接着剤20によつて剥離可能に接着されている。ライナーはシリコーンのような剥離剤22を含んでいる従来の形態であってもよく、ライナー上にコーティングされ、ライナーから剥がすことによってラベルの除去を可能にする。感圧ラベルのために使用される接着剤は、通常、ラベル裏面に恒久的に接着され、また、ライナーから剥離可能であるため、ラベルは所望により他の表面に再貼付することができる。
図1において、出荷用積層体12は被識別第1受領者に対して最初に出荷するためにコンテナに接着させれる。コンテナはまた適切に配置された返送用アドレス24を含んでいる。図2において、ラベル14は受領者によって取り外され、またラベルの裏面上に見られる同一の接着剤を使用する返送用アドレス上部に再貼付される。)

エ The dual skip shipping label laminate 12 illustrated in FIG. 3 may be used to advantage in the initial forwarding and return of the same container 10 illustrated in FIGS. 1 and 2. The container is simply addressed by initially printing the recipient first address 16 atop the label in any suitable manner, either by hand, or by printer.
As shown in FIGS. 2 and 3, a recipient second address 30 is printed below the release 22, which is transparent, in any conventional manner. For example, the second address 30 may be printed directly atop the liner 18 itself, prior to the application of the release 22 thereatop. Or, the liner 18 may be transparent, and the second address 30 may be printed atop the container prior to affixing the shipping laminate thereatop. The second address would then be viewable directly through the clear liner. Or, the second address may be printed in mirror form on the back side of the clear liner for correct viewing from the front side thereof.
The shipping laminate 12 may then be suitably affixed to the container 10 as illustrated in FIG. 1, with the first address 16 being visible. The container may then be suitably sent to the indicated first address of the first recipient.
The first recipient may then remove the label 14 from the underlying liner to expose to view the second address 30 and the release skip 28.(第3欄第4乃至7パラグラフ)
(図3に示した二重の出荷用ラベル積層体は、図1および2に示した同一のコンテナ10の初期転送および返送における利点をしようすることができる。コンテナは、手によるか、プリンターによるかの適切な方法でラベル上部に受領者の第1アドレス16を最初に印字することによって簡単にアドレスが掲載される。
図2および3に示すように、受領者第2アドレス30がいずれかの好都合な方式によって透明な剥離剤22の下方に印字される。例えば、第2アドレス30は剥離剤22を上部に適用する前に、ライナー18自体の上部に直接印字することができる。または、ライナー18が透明で、また第2アドレス30が、出荷積層体の上部に貼付される前に、コンテナの上部に印字される。次に、第2アドレスを透明なライナーを通して直接見ることができる。または、第2アドレスがライナーの前方から正確に見えるように透明ライナーの裏面上に鏡像形態に印字することができる。
次に、出荷用積層体12は、図1に示すように、第1アドレス16が見えるようにコンテナ10に適切に貼付することができる。次に、コンテナは第1受領者の指示された第1アドレスに適切に送ることができる。
次に、第1受領者はラベル14を下層にあるライナーから除去し、第2アドレスと剥離剤非形成部分28が見えるように露出させることができる。)

オ In the preferred embodiment illustrated in FIGS. 3 and 4, the shipping laminate also includes a label rim or border 14b surrounding the label 14 and being laterally coextensive therewith. The label border also includes the adhesive 20 coated on the back surface thereof for bonding the border to the liner.
The label 14 and its border 14b preferably comprise a common face sheet including a perimeter die cut 34 therebetween as illustrated in FIGS. 3 and 4.
Correspondingly, the liner 18 includes a surrounding border 18b therearound in a common back sheet separated by a perimeter die cut 36 therebetween. As shown in FIG. 4, the label die cut 34 preferably extends through the label face sheet and through the adhesive 20 down to the release layer. The liner die cut 36 preferably extends though the liner back sheet and the release 22 up to the adhesive 20. (第3欄第10パラグラフ乃至第4欄第1パラグラフ)
(図3と4に示した好ましい実施形態において、出荷用積層体は、また、ラベル14を取り囲んでいるラベルの周縁部ないし縁取り部14bを含んでおり、また、ラベルと横方向に同一の広がりをもっている。ラベル縁取り部分はまたラベルの裏面にコーティングされた接着剤20も含んでおり、縁取り部分をライナーに接着している。
ラベル14とこの縁取り部分14bは、好ましくは、図3と4に示すようにこられ両者の間に周辺ダイカット34を含む共通面を備えている。
同様に、ライナー18はこの周囲を取り囲んでいる縁取り部分18bを含んでおり、当該縁取り部分は、これら両者の間に周辺ダイカット36によって分離された共通バック・シート内にある。図4に示すように、ラベルのダイカット34はラベル面シートを介して、また接着剤20を介して剥離層下方に延伸していることが好ましい。ライナーのダイカット36はライナーの裏面シートと剥離剤22を通して接着剤20まで延伸していることが好ましい。)

カ The liner border 18b may then be readily removed from the label border 14b so that the exposed adhesive 20 behind the label border may be used for bonding the remaining laminate to the container as illustrated in FIG. 1.(第4欄第3パラグラフ)
(ライナー縁取り部分18bはラベル縁取り部分14bから容易に除去することができ、これによってラベル縁取り部分後方にある露出した接着剤20が、残りの積層体を図1に示すようにコンテナに接着するために使用できる。)

キ 第4図から、「周辺ダイカット34」及び「周辺ダイカット36」が、それぞれ、裏面から表面まで到達する深さの切り込みであることが看取れる。

ク 第3、4図から、「周辺ダイカット36」は「周辺ダイカット34」を囲んでラベル14よりも大きな輪郭を有することが看取れる。

ケ 第3図から、「ラベル14」と「ラベル縁取り部分14b」が、周辺ダイカット34を境に隣接された状態であることが看取れる。

コ 第4図から、接着剤20が「ラベル14」及び「ラベル縁取り部分14b」の裏面に設けられて「接着剤層」をなし、剥離剤22が「ライナー18」及び「ライナー縁取り部分18b」の表面に設けられて「剥離剤層」をなすことが看取れる。

サ 図3から、ライナーの「周辺ダイカット36」よりも内側に印字された「第2アドレス30」が看取れる(以下、この領域を「第2アドレスの印字された領域」という。)。

シ 上記カの「ライナー縁取り部分18bはラベル縁取り部分14bから容易に除去する・・・コンテナに接着するために使用できる。」とは、「周辺ダイカット36」の内側部分を残した状態でラベルからライナーを除去すると接着剤が露出し、出荷用ラベルをコンテナに貼付できることを意味している。

ス 上記ア乃至シより、ラベル裏面のライナー( ライナー縁取り部分18b)をめくって、「周辺ダイカット36」の内側部分を残した状態でラベルからライナーを除去すると出荷用ラベルをコンテナに貼付でき、「周辺ダイカット34」によりラベル14を除去するとラベル14に相当する部分に第2アドレスが露出することになる。

上記記載から、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲第1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ライナー上にラベルが剥離可能に接着された出荷用ラベルであって、
ラベルは、第1アドレスが印字されたラベル14とラベル縁取り部分14bとが周辺ダイカット34を境に隣接し、かつ裏面にコーティングされた接着剤層が設けられるとともに、
ライナーは、接着剤層と対向する表面に剥離剤をコーティングした剥離剤層が設けられ、かつライナーの裏面から表面まで到達する深さの切り込みであって周辺ダイカット34を囲んでラベル14よりも大きな輪郭を有する周辺ダイカット36が形成され、周辺ダイカット36よりも内側に第2アドレスの印字された領域を備えてなり、
ラベル裏面のライナーをめくって、周辺ダイカット36の内側部分を残した状態でラベルからライナーを除去すると出荷用ラベルをコンテナに貼付でき、
周辺ダイカット34によりラベル14を除去するとラベル14に相当する部分に第2アドレスが露出する出荷用ラベル。」

2 甲第2号証には、図とともに、次の事項が記載されている。
ア 台紙と、この台紙上に粘着剤を介して剥離可能に仮着された表示ラベルとからなり、この表示ラベルには、配送情報が記載される情報領域と、この情報領域の近傍に切り離し可能に設けられた受領確認領域とが設けられ、前記台紙に、前記受領確認領域に対応する部位を他の台紙部分から切り離し可能にする切り込みを形成してなることを特徴とする荷札。【特許請求の範囲】

イ 本発明は、流通等において配送される荷物に貼付されて、配送先や配送元の情報、ならびに、配送後の受領確認を得られるようにした荷札に関するものである。【発明の属する技術分野】

ウ このような従来の荷札にあっては、ほぼ同一形状の荷札を2枚積層した構成であることから、荷札全体を構成する用紙の量が多いといった不具合や、これらを剥離可能に仮着する粘着剤の量も多量なものとなるといった不具合がある。【発明が解決しようとする課題】

エ 前記受領確認領域Bは、略長方形状に形成されており、その領域に沿った切り込み4によって、前記情報領域Aから切り離し可能となされている。 【0010】

オ 前記台紙2に形成された切り込み7は、図1に示すように、前記受領確認領域Bを形成する切り込み4を取り囲むようにして形成されており、前記受領確認領域Bには、受領印の押印部8が形成されている。【0011】

カ 第1の情報領域5および第2の情報領域6のそれぞれに必要事項を記入した後に、台紙2を剥離する。このとき、前記台紙2には、受領確認領域Bに対応した部位に切り込み7が形成されていることにより、図3に示すように、この受領確認領域Bに対応した部位が、前記表示ラベル3に貼り付いた状態で台紙2が剥離され、前記受領確認領域Bに対応した部位以外の部分において粘着剤Zが露出させられた状態となされる。 【0014】

キ この状態において前記表示ラベル3を、配送すべき荷物の所定位置に、前記粘着剤Zにより貼付する。これによって、荷物に、その配送情報が表示され、配送手続きが可能となる。【0015】

ク そして、配送先においては、受取人による受領印押印部8への押印が完了すると、図4ないし図6に示すように、受領確認領域Bを表示ラベル3から剥離し、受領証として使用する。このようにして剥離された受領確認領域Bは、その裏面に粘着剤Zが残っていることから、この受領確認領域Bを、粘着剤Zを用いて配達記録帳等に貼付することが可能である。【0016】

ケ 図2乃至4から、「切り込み4」及び「切り込み7」が、それぞれ、裏面から表面まで到達する深さの切り込みであることが看取れる。

コ 図1、2から、台紙に形成された「切り込み7」は、「切り込み4」を囲んで受領確認領域Bよりも大きな輪郭を有することが看取れる。

サ 図1から、「情報領域A」と「受領確認領域B」が、切り込み線4を境に隣接された状態であることが看取れる。

シ 図3、4から、「粘着剤Z」が表示ラベルの裏面に沿って露出する「粘着層」をなすことが看取れる。

ス 甲第2号証には、台紙に対する剥離処理については明記されていないが、台紙を剥離することにより粘着剤Zを露出させることが記載されているのであるから(上記摘記カを参照。)、台紙は粘着剤層と対向する表面が「剥離性」であることは明らかである。

セ 上記ア乃至スより、台紙2をめくって、切り込み線7の内側を残した状態で表示ラベル3から台紙2を剥離して粘着剤層を露出させて表示ラベル3を荷物に貼付し、受取人による受領印押印部8への押印が完了すると、切り込み線4を利用して、受領確認領域Bを表示ラベル3から剥離することになる。

上記記載から、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲第2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「台紙上に表示ラベルが剥離可能に仮着された荷札であって、
表示ラベルは、情報領域Aと受領確認領域Bとが切り込み4を境に隣接し、かつ裏面に粘着剤層を設けられるとともに、
台紙は、粘着剤層と対向する表面が剥離性であり、かつ台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであって切り込み4を囲んで受領確認領域Bよりも大きな輪郭を有する切り込み7が形成され、
表示ラベル裏面の台紙をめくって切り込み線7の内側を残した状態で表示ラベルから台紙を剥離して粘着剤層を露出させて表示ラベルを荷物に貼付し、切り込み4を利用して受領確認領域Bを表示ラベル3から剥離するようにした荷札。」

第5 当審の判断
1 無効理由1について
(1)本件発明
本件発明1及び本件発明2を再掲すると、以下のとおりである。

「【請求項1】台紙上に上紙が剥離可能に貼合された帳票であって、
上紙は、本票と分離票とが輪郭切り取り線で隣接された伝票片を備え、かつ分離票を除いた裏面領域に粘着剤を塗工した粘着剤層が設けられてなるとともに、
台紙は、粘着剤層と対向する表面領域に剥離剤を塗工した剥離剤層が設けられ、かつ台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであって輪郭切り取り線を囲んで分離票よりも大きな輪郭を有する輪郭ハーフカット線が形成され、輪郭ハーフカット線よりも内側の表面領域に情報記載欄を備えてなり、
伝票片裏面の台紙をめくって、輪郭ハーフカット線の内側部分を残した状態で上紙から台紙を剥がし取ると伝票片を被着体に貼付でき、輪郭切り取り線を切断して本票から分離票を切り離すと分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れるようになっている
ことを特徴とするラベル帳票。
【請求項2】請求項1に記載のラベル帳票において、
前記輪郭切り取り線は、カット部とアンカット部を有する通常ミシン線と、通常ミシン線のアンカット部に設けられたカット部とアンカット部を有するマイクロミシン線とからなる混合ミシン線であることを特徴とするラベル帳票。 」

(2)本件発明1と甲第1発明との対比
ア 甲第1発明の「ライナー」は本件発明1の「台紙」に相当し、同様に、「ラベル」は「上紙」に、「接着された」は「貼合された」に、「出荷用ラベル」は「帳票」及び「ラベル帳票」に、「接着剤層と対向する表面に剥離剤をコーティングした剥離剤層」は「粘着剤層と対向する表面領域に剥離剤を塗工した剥離剤層」に、「コンテナ」は「被着体」に、「露出する」は「現れる」に相当する。

イ 甲第1発明の「ラベル」は、商品であるコンテナを送付するための第1アドレスが印字された「ラベル14」を備えていることから「伝票片」と呼べるものである。

ウ 甲第1発明の「周辺ダイカット34」は、「周辺ダイカット34」の内側に位置する「ラベル14」と外側に位置する「ラベル縁取り部分14b」とを切り離しているものであり、「ラベル14」はこの「周辺ダイカット34」を境にして除去されることが予定されているので、本件発明1の「輪郭切り取り線」とは「輪郭除去予定線」という点で共通する。

エ 甲第1発明の「周辺ダイカット36」は、上記ウと同様に、「周辺ダイカット36」の内側部分と外側部分を切り離しているものであり、本件発明1の「輪郭ハーフカット線」に相当する。

オ 甲第1発明の「ラベル14」には、第1アドレスが印字され、このラベル14を除去することで第2アドレスが露出することから、「ラベル14」は「分離票」と呼べるもので、ラベルは「ラベル縁取り部分14bと分離票(「ラベル14」)が輪郭除去予定線で隣接された伝票片を備え」ていることになる。

カ 甲第1発明の「第2アドレスの印字された領域」は、情報を記載した欄、つまり「情報記載欄」と呼べるものであるので、本件発明1の「情報記載欄」に相当する。

キ 上記カより、甲第1発明の「ラベル14を除去するとラベル14に相当するライナー部分に第2アドレスが露出する」と
本件発明1の「分離票を切り離すと分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れる」とは、
「分離票を除去すると分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れる」という点で共通する。

ク 甲第1発明の「ラベル縁取り部分14b」と本件発明1の「本票」とは、「被着体」の上に残置される部分 (以下「残置部」という。)という点で共通している。
また、甲第1発明の「裏面にコーティングされた接着剤層が設けられる」と本件発明1の「分離票を除いた裏面領域に粘着剤を塗工した粘着剤層が設けられてなる」とは、
「裏面に粘着剤を塗工した粘着剤層が設けられてなる」という点で共通している。

ケ 上記クより、甲第1発明の「ラベルは、第1アドレスが印字されたラベル14とラベル縁取り部分14bとが周辺ダイカット34を境に隣接し、かつ、裏面にコーティングされた接着剤層が設けられる」と
本件発明1の「上紙は、本票と分離票とが輪郭切り取り線で隣接された伝票片を備え、かつ分離票を除いた裏面領域に粘着剤を塗工した粘着剤層が設けられてなる」とは、
「上紙は、残置部と分離票とが輪郭除去予定線で隣接された伝票片を備え、かつ裏面に粘着剤を塗工した粘着剤層が設けられてなる」という点で共通する。

以上のことから、本件発明1と甲第1発明を対比すると、両者は、以下の点で一致する。

「台紙上に上紙が剥離可能に貼合された帳票であって、
上紙は、残置部と分離票とが輪郭除去予定線で隣接された伝票片を備え、かつ裏面に粘着剤を塗工した粘着剤層が設けられてなるとともに、
台紙は、粘着剤層と対向する表面領域に剥離剤を塗工した剥離剤層が設けられ、かつ台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであって輪郭除去予定線を囲んで分離票よりも大きな輪郭を有する輪郭ハーフカット線が形成され、輪郭ハーフカット線よりも内側の表面領域に情報記載欄を備えてなり、
伝票片裏面の台紙をめくって、輪郭ハーフカット線の内側部分を残した状態で上紙から台紙を剥がし取ると伝票片を被着体に貼付でき、輪郭除去予定線を利用して残置部から分離票を除去すると分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れるようになっているラベル帳票。」

一方、両者は以下の点で相違している。
<相違点1>
残置部に関し
本件発明1では「本票」と特定されるものであるのに対して、甲第1発明では「ラベル縁取り部分14b」である点。

<相違点2>
輪郭除去予定線に関し
本件発明1では「切り取り線」であるのに対して、甲第1発明では「ダイカット」である点。

<相違点3>
粘着剤を塗工する領域に関し
本件発明1が「分離票を除いた裏面領域」と特定されるものであるのに対して、甲第1発明では、上記特定を有していない点。

<相違点4>
分離票の除去に関し
本件発明1では「輪郭切り取り線を切断して本票から分離票を切り離す」と特定されるものであるのに対して、甲第1発明では、上記特定を有していない点。

(3)判断
<相違点1>について
ア 甲第1号証には、第1受領者である顧客が受け取った商品が要件を満たしていない場合に、顧客はRA番号を電話で取得して同一のコンテナを使用して商品を発送者に返送することが記載されており(摘記ア等を参照。)、配送された商品を特定するための情報やRA番号を問い合わせるための電話番号を出荷用ラベルに表記することは、充分に動機付けがあると言える。

イ そして、伝票を商品に貼付して発送する際に、顧客の利便性を考えて、伝票の残置部に「商品名」や「問い合わせの電話番号」等の情報を表記することは、本願出願前に周知のことである(例えば、特開2003-246457号公報、特開2001-354267号公報、特開平11-059022号公報、特開平10-236036号公報を参照。)。

ウ してみれば、甲第1発明の残置部である「ラベル縁取り部分14b」に、「商品名」や「問い合わせの電話番号」等の情報を表記することは、容易に着想し得たことである。

エ 「商品名」等の表記された「ラベル縁取り部分14b」は、伝票としての情報を備えることになるので「本票」と呼べるものである。

オ 以上のことから、甲第1発明において、上記<相違点1>の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点2>及び<相違点3>について
ア 甲第1発明の「分離票(ラベル14)」は、「周辺ダイカット34」により残置部(ラベル縁取り部分14b)とは分離された状態にあることから、分離票はその裏面に設けられた粘着剤層により台紙(ライナー)に剥離可能に保持されていることになる。
しかし、粘着剤層を利用した伝票において、配送中等に伝票の一部がめくれ不用意に剥がれ落ちる危険性のあることは、本願出願前に周知である(例えば、甲第21号証、特開2001-051606号公報、特開2000-211268号公報、特開2000-119612号公報、特開平10-181248号公報を参照。)。

イ ところで、分離票を切り取り線に保持させ、分離票を除いた裏面領域に粘着剤を塗工することで、配送中の不用意な剥がれ落ちを防止するとともに、分離票を容易に剥がすことのできるようにした伝票は、本願出願前に周知である(例えば、甲第5号証、甲第6号証、特開2003-108000号公報、特開2002-079780号公報、特開平08-185121号公報を参照。)。

ウ してみれば、甲第1発明において、分離票の配送中の不用意な剥がれ落ちを防止するとともに、分離票を容易に剥がすことのできるように、分離票の保持手段である粘着剤層に代えて、切り取り線を採用し、分離票を除いた裏面領域に粘着剤を塗工することは、当業者が容易に着想し得たことである。

エ 以上のことから、甲第1発明において、上記<相違点2>及び<相違点3>の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点4>について
ア 上記<相違点1>乃至<相違点3>で検討したように、甲第1発明の「上紙」は、「輪郭切り取り線で隣接した本票と分離票を備え」るとともに、「分離票を除いた裏面領域に粘着剤層を設けられてなる」ことになる。
この結果、甲第1発明は「輪郭切り取り線を切断して本票から分離票を切り離す」との構成を備えることになる。

イ 以上のことから、甲第1発明において、上記<相違点4>の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件発明1の奏する効果も、甲第1発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものである。

(4)本件発明2と甲第1発明との対比
上記<相違点1>乃至<相違点4>に加えて、以下の点で相違する。
<相違点5>
本件発明2では「輪郭切り取り線は、カット部とアンカット部を有する通常ミシン線と、通常ミシン線のアンカット部に設けられたカット部とアンカット部を有するマイクロミシン線とからなる混合ミシン線である」と特定されるものであるのに対して、甲第1発明では、上記特定を有していない点。

(5)判断
<相違点1>乃至<相違点4>について
上記「(3)判断」を参照。

<相違点5>について
ア 大きなカット部と大きなアンカット部を有する大きなミシン線と、大きなミシン線のアンカット部に設けられた小さなカット部と小さなアンカット部を有する小さなミシン線とからなる混合ミシン線は、本願出願前に周知である(例えば、特開2003-026127号公報、特開2001-244579号公報、特開平11-321156号公報、特公平02-012717号公報、実願昭59-083939号(実開昭60-195714号)のマイクロフィルムを参照。)。

イ 上記「(3)判断」において検討したように、「輪郭切り取り線」を採用することは当業者が容易になし得たことであり、「輪郭切り取り線」として、上記アで指摘した周知の混合ミシン線を採用することは、適宜なし得たことである。

ウ 「大きなミシン線」と「小さなミシン線」のそれぞれの大きさは、上紙の厚みや強度等を勘案して、適宜設定し得る設計事項である。

エ 以上のことから、甲第1発明において、上記<相違点5>の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件発明2の奏する効果も、甲第1発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものである。

平成21年12月25日付け上申書(第5乃至6頁)の「(1-3)相違点に係る構成の容易想到性について」において、「甲第1号発明のように、そもそも、再ちょう付できなければ『ラベル14』という構成は役に立たなくなってしまうという構成のものにおいて、わざわざ役に立たないように粘着剤層を設けない構成を採用することは、到底ありえないし、あり得ないことである。」(第5頁下から2行目乃至第6頁第3行目)と主張している点について

甲第1号証には、再貼付されたラベルは剥がれ落ちるおそれのあること、「ラベル14」は所望により再貼付されるものであることが開示されており(上記摘記ア及びウを参照。)、甲第1発明の「ラベル14」は、その裏面に必ず粘着剤層を設けて再貼付しなければならないというものではない。
してがって、上記「粘着剤層を設けない構成を採用することは、到底ありえないし、あり得ないことである。」との主張は採用できない。

(6)無効理由1についての結論
本件発明1及び本件発明2は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたもので、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。

2 無効理由2について
(1)本件発明1
上記「1 無効理由1について (1)本件発明」を参照。

(2)本件発明1と甲第2発明との対比
ア 甲第2発明の「表示ラベル」は本件発明1の「上紙」に相当し、同様に、「仮着された」は「貼合された」に、「荷札」は「帳票」及び「ラベル帳票」に、「情報領域Aと受領確認領域B」は「本票と分離票」に相当する。

イ 甲第2発明の「表示ラベル」は、配送先の住所等を記載した「情報領域A」と受領押印のための「受領確認領域B」とが設けられ、伝票片としての機能を有していることから「伝票片」と呼べるものである。

ウ 甲第2号証の「切り込み4」と本件発明1の「輪郭切り取り線」とは、「輪郭除去予定線」という点で共通する。

エ 甲第2号証の「切り込み7」は、本件発明1の「輪郭ハーフカット線」に相当する。

オ 上記のことを踏まえると、甲第2発明の「表示ラベルは、情報領域Aと受領確認領域Bとが切り込み4を境に隣接し、かつ裏面に粘着剤層を設けられる」と
本件発明1の「上紙は、本票と分離票とが輪郭切り取り線で隣接された伝票片を備え、かつ分離票を除いた裏面領域に粘着剤を塗工した粘着剤層が設けられてなる」とは、
「上紙は、本票と分離票とが輪郭除去予定線で隣接された伝票片を備え、かつ裏面に粘着剤層が設けられてなる」という点で共通する。

カ 甲第2発明の「台紙は、粘着剤層と対向する表面が剥離性であり、かつ台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであって切り込み4を囲んで受領確認領域Bよりも大きな輪郭を有する切り込み7が形成され、
表示ラベル裏面の台紙をめくって切り込み7の内側を残した状態で表示ラベルから台紙を剥離して粘着剤層を露出させて表示ラベルを荷物に貼付し、切り込み4を利用して受領確認領域Bを表示ラベル3から剥離するようにした」と
本件発明1の「台紙は、粘着剤層と対向する表面領域に剥離剤を塗工した剥離剤層が設けられ、かつ台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであって輪郭切り取り線を囲んで分離票よりも大きな輪郭を有する輪郭ハーフカット線が形成され、輪郭ハーフカット線よりも内側の表面領域に情報記載欄を備えてなり、
伝票片裏面の台紙をめくって、輪郭ハーフカット線の内側部分を残した状態で上紙から台紙を剥がし取ると伝票片を被着体に貼付でき、輪郭切り取り線を切断して本票から分離票を切り離すと分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れるようになっている」とは、
「台紙は、粘着剤層と対向する表面領域が剥離性であり、かつ台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであって輪郭除去予定線を囲んで分離票よりも大きな輪郭を有する輪郭ハーフカット線が形成され、
伝票片裏面の台紙をめくって、輪郭ハーフカット線の内側部分を残した状態で上紙から台紙を剥がし取ると伝票片を被着体に貼付でき、輪郭除去予定線を利用して本票から分離票を除去するようになっている」という点で共通する。

以上のことから、本件発明1と甲第2発明を対比すると、両者は、以下の点で一致する。
「台紙上に上紙が剥離可能に貼合された帳票であって、
上紙は、本票と分離票とが輪郭除去予定線で隣接された伝票片を備え、裏面に粘着剤層が設けられてなるとともに、
台紙は、粘着剤層と対向する表面領域が剥離性であり、かつ台紙裏面から台紙表面まで到達する深さの切り込みであって輪郭除去予定線を囲んで分離票よりも大きな輪郭を有する輪郭ハーフカット線が形成され、
伝票片裏面の台紙をめくって、輪郭ハーフカット線の内側部分を残した状態で上紙から台紙を剥がし取ると伝票片を被着体に貼付でき、輪郭除去予定線を利用して本票から分離票を除去すようになっているラベル帳票。」

一方、両者は、以下で相違している。
<相違点1>
輪郭除去予定線に関し
本件発明1では「切り取り線」であるのに対して、甲第2発明では「切り込み」である点。

<相違点2>
粘着剤層に関し
本件発明1が「分離票を除いた裏面領域に粘着剤を塗工した」と特定されるものであるのに対して、甲第2発明では、上記特定を有していない点。
<相違点3>
剥離性に関し
本件発明1が「表面領域に剥離剤を塗工した剥離剤層」によって該機能を有しているのに対して、甲第2発明では、剥離剤層を備えているか否か不明である点。

<相違点4>
台紙に関し
本件発明1が「輪郭ハーフカット線よりも内側の表面領域に情報記載欄を備えてなり」と特定されるものであるのに対して、甲第2発明では、上記特定を有していない点。

<相違点5>
本件発明1では「輪郭切り取り線を切断して本票から分離票を切り離すと分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れるようになっている」と特定されるものであるのに対して、甲第2発明では、上記特定を有していない点。

(3)判断
上記<相違点1>及び<相違点2>について
ア 甲第2発明の「切り込み4」は、分離票(受領確認領域B)と本票(情報領域A)を切り離した状態にするものであるので、分離票の裏面に設けられた「粘着剤層」が、荷札から分離票が剥がれ落ちないように保持していることになる。

イ ところで、分離票を切り取り線に保持させ、分離票を除いた裏面領域に粘着剤を塗工することで、分離票を容易に剥がすことのできるようにした伝票は、本願出願前に周知である(例えば、甲第5号証、甲第6号証、特開2003-108000号公報、特開2002-079780号公報、特開平08-185121号公報を参照。)。

ウ また、伝票片の整理・保管の仕方として、甲第2号証に開示されたように分離票の裏面に予め粘着剤層を設けて配達記録帳に貼付するだけではなく、記録帳に粘着剤層を設けて伝票片をその粘着剤層に貼付したり、あるいは穴あきホルダーに係止したり様々な形態が採用されており、伝票の整理のために、必ずしも分離票の裏面に粘着剤層が必要であるという訳ではない(例えば、特開平08-142563号公報、特開平07-242088号公報、実願平05-014833号(実開平06-074377号)のCD-ROM、実願平04-083344号(実開平06-055768号)のCD-ROM、実願昭58-196936号(実開昭60-103341号)のマイクロフィルム、実願昭58-070634号(実開昭59-176579号)のマイクロフィルムを参照。)。

エ してみれば、甲第2発明において、粘着剤層に代えて、分離票を切り取り線に保持させ、分離票を除いた裏面領域に粘着剤層を設けることは、上記イ及びウを勘案して、当業者が容易になし得たことである。

オ 以上のことから、甲第2発明において、上記<相違点1>及び<相違点2>の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
上記<相違点3>について
ア 剥離剤を塗工することにより剥離剤層を形成することは、剥離性機能設ける手法として適宜採用し得る周知の手法である。

イ してみれば、甲第2発明において、上記<相違点3>の構成を採用することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。

上記<相違点4>について
ア ラベル帳票は取り扱いやすいように限られた表面積しか有しておらず、この限られた表面積を有効利用することは自明の課題であり、そのために、分離票を本票から剥がした際に、その下層に予め印字した商品広告や「毎度ありがとうございます。」等のメッセージなどが現れるように工夫したラベル帳票も本願出願前に周知である(例えば、甲第9乃至12号証、特開平10-138664号公報、特開平09-327985号公報を参照。)。

イ してみれば、甲第2発明において、顧客により多くの情報を伝えるために、台紙の「切り込み7」の内側に情報記載欄を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 以上のことから、甲第2発明において、上記<相違点4>の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

上記<相違点5>について
ア 上記<相違点1>乃至<相違点4>で検討したように、「受領確認領域B」の裏面に粘着剤層を設けずに切り取り線により「受領確認領域B」を剥がすようにするとともに、台紙の「切り込み7」の内側に情報記載欄を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 上記アで指摘した構成を甲第2発明が採用した結果、「輪郭切り取り線を切断して本票から分離票を切り離すと分離票に相当する部位に台紙の情報記載欄が現れるようになっている」との構成を備えることになる。

ウ 以上のことから、甲第2発明において、上記<相違点5>の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件発明1の奏する効果も、甲第2発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものである。

(4)本件発明2と甲第2発明との対比
上記<相違点1>乃至<相違点5>に加えて、以下の点で相違する。
<相違点6>
本件発明2では「輪郭切り取り線は、カット部とアンカット部を有する通常ミシン線と、通常ミシン線のアンカット部に設けられたカット部とアンカット部を有するマイクロミシン線とからなる混合ミシン線である」と特定されるものであるのに対して、甲第1発明では、上記特定を有していない点。

(5)判断
<相違点1>乃至<相違点5>について
上記「(3)判断」を参照。

<相違点6>について
ア 大きなカット部と大きなアンカット部を有する大きなミシン線と、大きなミシン線のアンカット部に設けられた小さなカット部と小さなアンカット部を有する小さなミシン線とからなる混合ミシン線は、本願出願前に周知である(例えば、特開2003-026127号公報、特開2001-244579号公報、特開平11-321156号公報、特公平02-012717号公報、実願昭59-083939号(実開昭60-195714号)のマイクロフィルムを参照。)。

イ 上記「(3)判断」において検討したように、「輪郭切り取り線」を採用することは当業者が容易になし得たことであり、「輪郭切り取り線」として、上記アで指摘した周知の混合ミシン線を採用することは、適宜なし得たことである。

ウ 「大きなミシン線」と「小さなミシン線」のそれぞれの大きさは、上紙の厚みや強度等を勘案して、適宜設定し得る設計事項である。

エ 以上のことから、甲第2発明において、上記<相違点6>の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件発明2の奏する効果も、甲第2発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものである。

平成21年12月25日付け上申書(第10乃至11頁)の「(1-2)相違点5及び6について」において、「甲第2発明がラベルを一から製造するものであれば、これらの周知技術を適用することも考えられるが、甲第2発明のような既存のラベルを使用した発明に対し、これらの周知技術を適用した場合には却って加工は複雑になると言える。」(第11頁第19乃至22)と主張している点について

確かに、被請求人が主張するように、甲第2号証には「さらに、既存のラベルに切り込みを入れるといった簡単な加工によって本発明の荷札が得られ、既存のラベルを有効利用することも可能である。」【発明の効果】と記載されてはいるが、これはあくまでも製造方法の一例であり、甲第2号証に記載された「荷札」を、必ず既存のラベルを元にして製造しなければならないというものではないことは、当業者であれば容易に理解し得ることである。
したがって、上記主張は、採用できない。

(6)無効理由2についての結論
本件発明1及び本件発明2は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたもので、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。


第6 むすび
以上のとおり、本件発明1及び本件発明2は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、及び甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び本件発明2についての特許は、特許法第29条第2号の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1及び本件発明2についての特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
審判費用については、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-20 
結審通知日 2010-01-25 
審決日 2010-02-05 
出願番号 特願2003-368912(P2003-368912)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (B42D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野 忠悦  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 藏田 敦之
星野 浩一
登録日 2007-05-25 
登録番号 特許第3960552号(P3960552)
発明の名称 ラベル帳票  
代理人 川田 篤  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 新保 雄司  
代理人 和田 成則  
代理人 竹田 稔  
代理人 高橋 祥子  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 茅原 裕二  
代理人 石原 達夫  
代理人 服部 謙太朗  

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