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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C |
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管理番号 | 1227158 |
審判番号 | 不服2007-24797 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-09-07 |
確定日 | 2010-11-19 |
事件の表示 | 特願2002-183673「印刷フィルム類を用いた装飾パネルの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月25日出願公開、特開2003-334837〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続きの経緯 本願は、平成14年5月21日の出願であって、平成18年8月28日付けで拒絶理由が通知され、同年10月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年7月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月7日に拒絶査定不服審判が請求され、同年10月9日に手続補正書と共に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年11月1日付けで前置報告がなされ、それに基いて当審において平成22年1月19日付けで審尋がなされ、それに対して同年3月25日に回答書が提出され、当審において同年22年6月16日付けで拒絶理由が通知され、同年8月23日に意見書と共に手続補正書が提出されたものである。 第2.本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明は、平成22年8月23日提出の手続補正書によって補正された明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)の記載からみて、本願明細書等の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下「本願発明1」という。) 「基材フィルムとしてポリエステル樹脂より成るシートを使用し、その表面にシルク印刷によりUV照射による加工を経て印刷層を形成し、当該基材フィルムを金型内に挿入し、型締め後、溶融状態の樹脂を金型内に注入し、樹脂を固化させることにより樹脂成形品を形成すると同時にインサートしたフィルムを樹脂成形品に一体密着させ、型開き後に成形品を取り出し、フィルムを剥離することで、基材フィルムの表面に形成されている、印刷層の凸型形状を樹脂成形品の表面又は裏面に同時に、若しくは片面のみに、凹形状として転写した印刷フィルム類を用いたゲーム機用装飾パネルの製造方法。」 第3.当審において通知した拒絶理由の概要 当審において通知した平成22年6月16日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由2の概要は、以下のとおりである。 「2)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・・・ 理由 2)について (2-1)引用文献 引用文献1:特開昭62-28217号公報(拒絶査定の備考において、なお書きとして提示された文献) ・・・ 」 第4.当審において通知した拒絶の理由の妥当性について検討 1.刊行物の記載事項 本願の出願日前に頒布されたことが明かな特開昭62-28217号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「シート(3)の表面に硬度の高いインキ(4)を印刷し、そのシート(3)を真空成形により合成樹脂成形品(1)の表面形状に形成して、合成樹脂成形品(1)の成形用金型(5)のキャビティ(6)内に装着し、その後キャビティ(6)内に溶融樹脂(10)を供給し、その溶融樹脂(10)の圧力により、合成樹脂成形品(1)の表面に前記インキ(4)による凹凸(2)ができるように、シート(3)を金型(5)内面に接当させ、合成樹脂成形品(1)を、その表面にシート(3)が重合するように成形したことを特徴とする合成樹脂成形品の製造方法。」(特許請求の範囲) (イ)「本発明は、表面に凹凸を有する合成樹脂成形品の製造方法に関する。」(1頁左欄18行?19行) (ウ)「<従来技術> 例えば化粧品容器のキャップその他に使用される合成樹脂成形品には、その表面に梨地模様、格子模様、ローレット模様、文字、図形その他を形成する凹凸が形成されたものがあるが、・・・。しかし、従来のこの種の合成樹脂製品の製造方法は、第19図に示す如く合成樹脂製品(21)を形成する金型(22)の合成樹脂製品(21)の凹凸(23)を形成すべき表面に対応する金型(22)の内面に凹凸(24)を予め形成しておき、合成樹脂製品(21)の金型(22)による射出成形の際に、この凹凸(24)により、合成樹脂製品(21)に凹凸(23)を形成するものであった。 <発明が解決しようとする問題点> ・・・その凹凸(23)の種類に応じて金型(22)を夫々製造しておく必要があり、従って非常に不経済であり、また金型(22)の内面に細かい凹凸(24)を刻設する必要から、各金型(22)の製造も面倒でかつ高価になつた。」(1頁右欄1行?2頁左上欄1行) (エ)「<実施例> 以下、本発明を図示の実施例に従って説明する。・・・塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンその他により構成した真空成形可能な合成樹脂シート(3)上へ、・・・UVインキ、2液タイプ及び1液(エポキシ、メラミン、アルキド、ニョウソ)等の硬度の高いインキ(4)をスクリーン等の印刷方法により印刷する。・・次に真空成形した樹脂シート(3)を・・・キャビティ(6)内に下型(8)内面に添うように配置される。・・・溶融樹脂(10)を注入する。・・・溶融樹脂(10)としては、成形品(1)の要求される特性に応じて、ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン系樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂等の合成樹脂の内から適宜選択される。樹脂シート(3)の内面側に溶融樹脂(10)が注入されるのに応じて、溶融樹脂(10)の圧力により、樹脂シート(3)が下型(8)の内面に押圧接当され、合成樹脂成形品(1)はその外面に樹脂シート(3)が重合するように成形される。このとき合成樹脂成形品(1)の外面にはインキ(4)による凹凸(2)が形成される。 その後第6図に示す如く下型(8)に樹脂シート(3)を残した状態で樹脂成型用金型(5)から合成樹脂成形品(1)を取出せばよく、第7図に示す如く外面に凹凸(2)を有する合成樹脂成形品(1)が完成する。」(2頁右上欄6行?右下欄13行) (オ)「成形品(1)の形状は有底円筒状に限定されず、椀状、球状面その他の形状であってもよい。」(3頁左下欄20行?右下欄1行) (カ)「<発明の効果> 本発明によれば、硬度の高いインキ(4)を印刷したシート(3)を成形用金型(5)のキャビテイ(6)内に装着することにより、合成樹脂成形品(1)の金型成形時に該合成樹脂成形品(1)の表面に前記インキ(4)による凹凸(2)を形成できるため、金型(5)に合成樹脂成形品(1)の凹凸(2)を形成するための細かい凹凸を刻設しておく必要がなくなり、単にシート(3)を変えることにより同一の金型(5)で合成樹脂成形品(1)の表面に梨地模様、格子模様、文字、図形等を形成する凹凸(2)を多種類形成することができ、従って金型(1)が極力少なくて済み、しかも金型(1)の形状が非常に単純で金型(1)の製造も安価かつ容易になし得、その効果は著大である。」(3頁右下欄2行?15行) (キ)「第5図は溶融樹脂注入完了時における樹脂成形金型の側断面図」(4頁左上欄1行?3行) (ク) 「 」(4頁第5図) 2.引用文献1に記載された発明 上記摘示事項(ア)?(ク)の記載からみて、引用文献1には、 「合成樹脂シート(3)の表面にUVインキをスクリーン印刷方法により印刷し、その合成樹脂シート(3)を合成樹脂成形品(1)の成形用金型(5)のキャビティ(6)内に装着し、その後キャビティ(6)内に溶融樹脂(10)を供給し、その溶融樹脂(10)の圧力により、合成樹脂成形品(1)の表面に前記インキによる凹凸(2)ができるように、合成樹脂シート(3)を成形用金型(5)内面に接当させ、合成樹脂成形品(1)を、その表面に合成樹脂シート(3)が重合するように成形し、その後下型(8)に合成樹脂シート(3)を残した状態で成形用金型(5)から合成樹脂成形品(1)を取出す合成樹脂成形品(1)の製造方法。」の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されていると認める。 3.本願発明1と引用文献1発明との対比 引用文献1発明における「合成樹脂シート(3)」、「合成樹脂成形品(1)」、「成形用金型(5)のキャビティ(6)内」、「装着」、「キャビティ(6)内に溶融樹脂(10)を供給し」は、それぞれ、本願発明1の「基材フィルム」、「樹脂成形品」、「金型内」、「挿入」、「溶融状態の樹脂を金型内に注入し」に相当している。 そして、引用文献1発明における「キャビティ(6)内に溶融樹脂(10)を供給し、溶融樹脂(10)の圧力により、合成樹脂成形品(1)の表面に前記インキによる凹凸(2)ができるように、合成樹脂シート(3)を成形用金型(5)内面に接当させ、合成樹脂成形品(1)を、その表面に合成樹脂シート(3)が重合するように成形」することは、上記摘示事項(エ)、(カ)、(ク)及び溶融樹脂の注入を型締め後に行うことが技術常識であることから、本願発明1の「型締め後、樹脂を固化させることにより樹脂成形品を形成すると同時にインサートしたフィルムを樹脂成形品に一体密着させ、基材フィルムの表面に形成されている、印刷層の凸型形状を樹脂成形品の表面に凹形状として転写し」たことを意味していることも明らかである。 さらに、引用文献1発明における「下型(8)に合成樹脂シート(3)を残した状態で成形用金型(5)から合成樹脂成形品(1)を取出す」ことは、合成樹脂シートが合成樹脂成形品から剥離されることを意味し、取出す動作が、型開きを伴うものであることは自明な事項である。 また、引用文献1発明における「表面にUVインキをスクリーン印刷方法により印刷」された「合成樹脂シート(3)」が、本願発明1の「印刷フィルム類」に相当することも明らかである。 そうすると、本願発明1と引用文献1発明とを対比すると、 「基材フィルムの表面に印刷層を形成し、当該基材フィルムを金型内に挿入し、型締め後、溶融状態の樹脂を金型内に注入し、樹脂を固化させることにより樹脂成形品を形成すると同時にインサートしたフィルムを樹脂成形品に一体密着させ、型開き後に、フィルムを剥離することで、基材フィルムの表面に形成されている、印刷層の凸形状を樹脂成形品の表面に、凹形状として転写した印刷フィルム類を用いた樹脂成形品の製造方法。」の点で一致し、 以下の点で相違している。 <相違点1> 基材フィルムに関して、本願発明1においては、「基材フィルムとしてポリエステル樹脂より成る」と特定するのに対して、引用文献1発明においては、この点について規定されていない点。 <相違点2> 印刷層の形成に関し、本願発明1においては、「シルク印刷によりUV照射による加工を経て」形成しているのに対して、引用文献1発明においては、「UVインキをスクリーン印刷方法により」形成している点。 <相違点3> 基材フィルムを、本願発明1においては、成形品を取り出し後に剥離しているのに対して、引用文献1発明においては、成形品の取り出し時に剥離している点。 <相違点4> 本願発明1においては、樹脂成形品がゲーム機用装飾パネルであるのに対して、引用文献1発明では、かかる限定が付されていない点。 4.相違点についての検討 (1)相違点1について 上記摘示事項(エ)には、引用文献1発明の合成樹脂シート(本願の「基材フィルム」に相当)をポリエチレンテレフタレートにより構成することが例示されており、ポリエチレンテレフタレートはポリエステル樹脂であることから、相違点1は、実質上の相違点ではない。 (2)相違点2について UVインキを用いた印刷は、印刷後にUV照射による加工を行わなければならないことは自明である。また、スクリーン印刷は、シルク印刷と同義であることから、引用文献1発明における「UVインキをスクリーン印刷方法により」は、「シルク印刷により、UV照射による加工を経て」に相当している。したがって、相違点2は、実質上の相違ではない。 (2)相違点3について 重合一体化されたシートを剥離するにあたり、型からの離型時に行うか、型から成形品を取り出してから行うかは、製造時にその作業性等を考慮して、当業者が適宜選択可能な事項といえる。そして、その効果を検討しても、本願明細書等においては、相違点3にかかる効果に関する記載はなく、当業者において、基材フィルムの剥離時期の転写性に与える影響には、離型時の樹脂温度、型開時の温度条件、樹脂の組成等が大きく影響することが明らかであるところ、これらの条件を特定しない剥離時期の特定と転写性との関連を見いだせないことから、そのことによる効果に格別なものがあるとはいえない。 (3)相違点4について 本願発明1におけるゲーム機用装飾パネルとは、本願明細書等の発明の詳細な説明によれば「本発明はゲーム機用装飾パネルの製造方法に関するものである。」(【0001】)との記載があるのみで、具体的にどのような形状を意味しているものかは特に規定されていない。 一方、引用文献1には、従来技術に「化粧品容器のキャップその他」(摘示事項(ウ))及び実施例として「例えば化粧品容器のキャップとして使用されるもので」(摘示事項エ))の記載があるものの、「成形品(1)の形状は有底円筒状に限定されず、椀状、球状面その他の形状であってよい」(摘示事項(オ))とあり、引用文献1に記載の上記形状がパネル成形品の形状を排除しているとまではいえない。さらに、摘示事項(カ)からみても、引用文献1発明の表面の「凹凸」は、装飾用を意味することも明らかであり、表面に装飾凹凸のある合成樹脂成形品の用途としてゲーム機用装飾パネルは周知慣用されている事項であることから、引用文献1発明における合成樹脂成形品を、装飾凹凸を備えるパネル成形品としてのゲーム機用装飾パネルとすることは、当業者が特に創意工夫を要することなく容易になし得たことと認められる。 そして、そのことによる効果に格別なものがあるとも認められない。 5.審判請求人の主張について 審判請求人は、平成22年8月23日提出の意見書において、 「第1点:基材フィルムはシート状である 拒絶理由通知書では、引用文献1及び2の記載が詳細に検討され、拒絶理由が綿密に構築されていることを強く感ずるが、しかし、基材フィルムの相違点に触れられていないのは疑問なしとしない。 1)本願発明は、相違点2で挙げられているようにゲーム機用として用いられる装飾パネルの製造方法であり、装飾パネルはゲーム機用であることを一つの特徴としている。そして、基材フィルムに関する明細書中の記載、 c.出願当初の段落[0006]に、「印刷されたシートより凹凸を転写するように構成したとあった点、 d.出願当初の段落[0007]に、「ポッティングにより成形用シート上に形成された表面形状」とあった点、 e.出願当初の段落[0008]に、「その他印刷されたシートより」とあった点、 f.図面の簡単な説明に「印刷シート」とある点、 g.図面の全てに描かれた印刷シートがシート状である点、 などから、本願発明に用いられる基材フィルムないし印刷シートはシート状であることが分かる。 2)基材フィルムないし印刷シートがシート状であるため、本願発明の製造方法によって得られる成形品も実質的にシート状であることになり、これは本願発明における重要な点である。これに対して、引用文献1ではシート(3)の表面に硬度の高いインキ(4)を印刷してからそのシート(3)を真空成形により成形品の形状に形成しなければならない点において相違している。本願発明において、実質的にシート状の成形品を得るには基材フィルムないし印刷シートがシート状のまま平坦性を保っていなければならず、平坦性を維持して成形品を型成形する技術は引用文献1の立体的成形品に求められる技術レベルよりも低くはない。しかも、これは本願発明の対象とするゲーム機用の装飾パネルと密接に関係することである。 従って、基材フィルムないし印刷シートが平坦なシート状のまま扱われることは重要な要素であり、これを必要としない引用文献1のものとは明確な相違がある。」と主張する。 しかし、引用文献1発明の合成樹脂シート(本願発明1の「基材フィルム」に相当)もシート状の基材フィルムといえ、さらに、本願明細書等の記載からみて、本願発明1は、基材フィルムを金型内に挿入するに際して、該フィルムが平坦性を保つことを限定したものとは解されないから、出願人が主張する基材フィルムがシート状のまま扱われる点は相違点とはいえず、上記主張は失当である。 また、同意見書において 「第2点:ゲーム機用の装飾パネルである 1)ここで便宜上、<相違点2>として拒絶理由通知書に記載されているゲーム機用の装飾パネルについて説明すると、このゲーム機とは添付した資料1に「アミューズメント・ゲーム機の装飾パネル」として記載されている所のものである。その装飾パネルとしては特許文献の資料2の特開平11-47350号「ゲーム機のパネル取り付け装置」の透光性を有するパネル16等に記載されているものを指摘することができる。 ゲーム機としては携帯用の小型ゲーム機も普及しているが、当業界においてゲーム機といえば営業用を主とする大型のもののことであり、それ故、いわゆる集客性をそなえるために装飾パネルを装備する必要性があるのである。これらのことから、当業者間では、ゲーム機用の装飾パネルといえば、シート状であること、透光性を有すること、照明光とともに用いられることなどがイメージされることになる。 2)拒絶理由通知書の<相違点2>では、「本願発明1においては、樹脂成形品が装飾パネルであるのに対して、引用文献1の発明では、かかる限定が付されていない点。」を挙げながら、格別なものがあるとも認められないと結論されている。しかしながら、ゲーム機用の装飾パネルには上記のような一定の概念があるのである。本願発明はシート状であること、透光性を有すること、照明光とともに用いられることなどが必要不可欠であり、これに対して、引用文献1は化粧品容器のキャップ等を対象とすることから、これらを必要としないのであって、本願発明と引用文献1とでは、求める技術的成果の全く異なることが分かる。 本願発明1と引用文献1の発明とは、既に、目的、技術的構成においても相違していることが明確になっている。即ち、引用文献1のものは、第1にキャップ類を成形する技術である点、第2に予め立体に成形したシート本体(3)を用いる点、第3に下型(8)に樹脂シート(3)を残した状態で樹脂成形用金型(5)から合成樹脂成形品(1)を取り出すこと、において本願発明と相違している。 従って、本件拒絶理由における相違点2は本質的相違であり、ゲーム機用の装飾パネルという限定は格別のものである。」と主張する。 しかし、ゲーム機用装飾パネルが「シート状であること」、「透光性を有すること」、「照明光と共に用いられること」は、本願発明1には特定されていない。また、ゲーム機用装飾パネルが「シート状であること」、「透光性を有すること」、「照明光と共に用いられること」は、本願明細書等においても全く言及されていない事項であると共に、ゲーム機用装飾パネルには、多種多様なゲーム機用装飾パネルが包含されることは明らかであって、本願発明1の「ゲーム機用装飾パネル」が、一義的に「営業用を主とする大型のもののこと」を意味し、「シート状であること」、「透光性を有すること」、「照明光と共に用いられること」を備えたものを意味しているとは認められない。したがって、ゲーム機用装飾パネルが特定の性質を有するものであることに基づく上記審判請求人の主張は、本願明細書等の記載に基づかない主張であって、採用できない。 また、本願明細書等の【0012】によれば、本願発明の効果は、「金型を加工するのではなく、基材フィルムをインサートする事によって、加工そのものが簡単で費用も掛らず、小ロットでの製品制作が容易に出来るようになった」と認められ、ゲーム機用装飾パネルにおいて格別に発揮されるものともいえないし、引用文献1発明の効果も、引用文献1の摘示事項(カ)からみて、金型に凹凸を刻設しておく必要がなくなり、単にシート(3)を変えることにより同一の金型(5)で合成樹脂成形品(1)の表面に凹凸(2)を多種類形成することができ、金型の製造も安価かつ容易になるものであることから、同様な効果を奏するものといえ、「化粧品容器のキャップ等を対象とする引用文献1発明は求める技術的成果が全く異なる」との主張は失当である。 また、請求人は、引用文献1発明は、「キャップ類を成形する技術である」とも主張しているが、引用文献1の摘示事項(ア)において、合成樹脂成形品と規定されていること、摘示事項(イ)で「表面に凹凸を有する合成樹脂成形品」に関するものであるとの記載があること、さらに表面に凹凸のある合成樹脂成形品をキャップ類に限定して解釈する理由がないことからみて、引用文献1の記載を該主張のとおり限定的に解釈することは、失当である。加えて、引用文献1発明においては「予め立体に成型したシート本体を用いる」との主張については、本願発明1においても、「基材フィルムを金型内に挿入し」との規定によって、基材フィルムの成形後に挿入するものも、基材フィルムを成形せずに挿入するものも包含しているから、請求項の記載に基づかない主張であり採用できない。更に付言すれば、基材フィルムを成形せずに金型内に挿入することは周知技術であって、基材フィルムの挿入時に、(真空)成形後の基材フィルムを挿入するか、成形していない基材フィルムを挿入するかは、具体的な成形品形状等に基いて当業者が適宜選択しうる事項すぎない。 さらに、「第3点:成形品を取り出し後にフィルムを剥離する 1)拒絶理由通知書では、<相違点1>として、「フィルムを、本願発明1においては、成形品を取り出し後に剥離しているのに対して、引用文献1発明においては成形品の取り出し時に剥離している点」を挙げている。 2)本願発明では、基材フィルムないし印刷シートは平坦であることから成形時に成形品と強く一体化している。このことが、表面に形成した印刷層の微細な凹凸構造を、成形品表面に明確に転写することを可能にする一つの要素になっている。これに対して引用文献1では、成形品のみ取り出すことができシート(3)は下型(8)に残るのであるから、フィルム等の取り出し時期に関して両発明の構成は明確に相違している。 3)この点に関し拒絶理由通知書では、重合一体化されたシートを剥離するにあたり、型からの離型時に行うか、型から成形品を取り出した後で行うかは、製造時にその作業性を考慮して、その発明の属する技術分野における通常の知識を有するものが適宜選択可能な事項と言える、と結論付けている。しかし、本願発明の場合、基材フィルムないし印刷シートは平坦であることから成形時に成形品と強く一体化させることで、成形品を取り出すと同時に、基材フィルムないし印刷シートも取り出されるものとなり、後から剥離することができるのである。このように、本願発明において、フィルムを、成形品を取り出し後に剥離することは、基材フィルムの表面に形成された印刷層の微細な凹凸構造を、成形品表面に明確に転写する効果と因果関係を以って結びついており、これは否定することができないのであって、従って、その効果を検討しても格別のものがないという拒絶理由通知書の認定は、適切とは言えない。」と主張している。 しかし、審判請求人が主張する「基材フィルムの表面に形成された印刷層の微細な凹凸構造を、成形品表面に明確に転写する効果」に関しては、本願明細書等には、全く記載されていない効果であり、取り出し後の剥離と前記「基材フィルムの表面に形成された印刷層の微細な凹凸構造を、成形品表面に明確に転写する効果」についての関係についても本願明細書等には全く記載されていない。加えて、当業者において、基材フィルムの剥離時期の転写性に与える影響には、離型時の樹脂温度、型開時の温度条件、樹脂の組成等が大きく影響することが明らかであるところ、これらの条件を特定しない剥離時期の特定と転写性との関連を見いだせない。 したがって、上記審判請求人の主張は、失当であり、採用できない。 6.まとめ よって、本願発明1は、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないもである。 第5.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての当審において通知した平成22年6月16日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-15 |
結審通知日 | 2010-09-21 |
審決日 | 2010-09-28 |
出願番号 | 特願2002-183673(P2002-183673) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(B29C)
P 1 8・ 121- WZ (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須藤 康洋 |
特許庁審判長 |
渡辺 仁 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 内田 靖恵 |
発明の名称 | 印刷フィルム類を用いた装飾パネルの製造方法 |
代理人 | 井澤 洵 |