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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1227426
審判番号 不服2008-11992  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-12 
確定日 2010-11-25 
事件の表示 特願2002-567600「柔軟なパッケージを連続的に成形、密封、充填をするためのシステムと方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月 6日国際公開、WO02/68267、平成16年 8月 5日国内公表、特表2004-523435〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2002年2月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年2月21日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成20年1月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成20年5月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2.原査定
原査定の拒絶理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項1?20に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
1;特表平07-501775号公報
2;特開昭56-113507号公報
3;特開平03-014434号公報
4;特開平04-072104号公報
5;米国特許第5758473号明細書

上記刊行物のうち,特開平04-072104号公報,特表平07-501775号公報及び特開平03-014434号公報を,以下,それぞれ「引用例1」,「引用例2」及び「引用例3」という。

第3.当審の判断
1.本願発明
本願の請求項7に係る発明(以下,「本願発明」という)は,平成19年10月31日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「柔軟なパッケージを連続的に成形し,密封し,液体を充填するためのシステムで,
a)プラスチック・シート材料の連続したウエッブをパッケージ成形装置に供給するための手段,
b)その成形装置から一連の隣接し合った成形されたパッケージを含んでいる連続したパッケージのウエッブを産出するための手段,その成形されたパッケージは閉じた底部,開いた2側部,充填用開口部を形成する開いた上部を有すること,
c)そのパッケージのウエッブを側部接合装置に連続的に通過させる間に開いている側部を密封するための手段,
d)そのパッケージのウエッブを充填装置に連続的に通過させる間に上記の開いている上部を通して液体をパッケージに充填するための手段,
e)そのパッケージのウエッブを上部密封装置に連続的に通過させる間に各パッケージの開いている上部を密封するための手段,
f)それぞれの充填して密封したパッケージをそのウエッブから分離して,それから個々のパッケージを形成するための手段,
g)上記産出するための手段,上記開いている側部を密封するための手段,上記充填するための手段及び上記開いている上部を密封するための手段の周辺で,無菌環境を維持すること,および,
h)上記分離するための手段の周辺で,清浄だが,無菌でない環境を維持するための手段,
が含まれるシステム。」

2.引用例記載の発明
引用例1には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1-a)
「この成形充填包装装置(以下単に包装装置)1は,帯状の容器フィルムfを搬送するコンベア2と,そのコンベアの進行方向に沿って所定の間隔で配置され包装装置のフレーム1aに取り付けられた成形装置3と,容器フィルムfの一部に切れ目すなわちスリットを形成する切断装置4と,容器フィルムの一部を折り曲げると共に一部分だけ仮シールする折曲げ仮シール装置5と,ストローを挿入するストロー挿入装置6と,本体シール装置7と,容器フィルムに形成された容器内に液状の品物を充填する充填装置8と,品物の充填口をシールするボトムシール装置9と,打抜き装置10とを備えている。」(3頁左上欄5?18行)

(1-b)
「なお,容器フィルムにアルミ箔を使用しているため,雄型,雌型によるプレス成形であって,容器フィルムの加熱はしない。」(3頁左上欄19行?同頁右上欄1行)

(1-c)
「本実施例では第2図に示されるように,容器ポケットa4個分のピッチPの間隔で容器フィルムfのほぼ下半分にフィルムの幅方向に伸びる切り目すなわちスリットtを形成できるものであればどのような構成のものでもよい。」(3頁左下欄12?16行)

(1-d)
「容器フィルムfはコンベア2のチャック23に把持された状態で移動され,形成装置3によりフィルム幅のほぼ中央に折り目形成部mが形成されると同時にその折り目形成部の両側に容器ポケットa,ストロー挿入ポケットb及び充填口ポケットcが成形される。このように各ポケットが成形された容器フィルムfが切断装置4の位置に来ると,その切断装置4によりほぼ下半分に亙りフィルムの幅方向に伸びるスリットtが所定の間隔で形成される。
スリットtが形成された容器フィルムfが折曲げ仮シール装置5の位置に来ると,二つのスリットの間にある容器フィルムの下半分は折曲げ仮シール装置の折曲げアーム53と押さえアーム58の作用により折り目形成部mの位置で折り曲げられ,加熱ブロック54及び56により互いに重ねられたストロー挿入ポケットbの回りで仮シールされる。・・・
ストロー挿入部にストローsが挿入された後容器フィルムが本体シール装置7の位置に来ると,その本体シール装置により第8図でハッチングgで示されるように互いに重ね合わされた容器ポケットa,仮シールされたストロー挿入ポケットb及び充填口ポケットcの回りで容器フィルムは接着シールされる。これによりストローsは第8図に示されるように容器ポケットにより限定される容器の中に完全に収容される。このようにシールされた容器フィルムが充填装置8の位置に来ると,第9図に示されるように一対の吸盤85により充填口ポケットcの部分を吸着してその充填口を広げると共に充填ノズル81が充填口の真上まで横に移動する。その後充填ノズルは降下してその先端が充填口を介して容器ポケットaにより限定される容器内に入り,その容器内への品物の充填を開始する。充填ノズル81は品物を充填しながら上昇し所定量の品物の充填が完了したとき容器の外まで上昇し元の位置に戻る。このように充填ノズルを容器内に入れるのは品物である液体の泡立ちや外部への漏れを防止するためである。
次に品物の充填が完了した容器フィルムがボトムシール装置9の位置に来ると,本体シール装置によりシールされなかった充填口ポケットcの部分hがこのボトムシール装置によりシールされ,容器は完全に密閉シールされる。
その後刻印装置で容器フィルムの外面に刻印されかつ打抜き装置で容器1個ずつ第10図[A]に示される輪郭に沿って打ち抜かれ,包装体rがつくられる。」(5頁右下欄2行?6頁右上欄15行)

上記記載事項(1-a)?(1-d)によれば,引用例1には以下の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明」という)。
「成形装置3,切断装置4,折曲げ仮シール装置5,本体シール装置7,充填装置8,ボトムシール装置9及び打抜き装置10を備え,帯状の容器フィルムから包装体をつくる成形充填包装装置であって,成形装置3において,フィルム幅のほぼ中央に折り目形成部が形成されると共にその両側に容器ポケット,ストロー挿入ポケット及び充填口ポケットが成形され,切断装置4において,フィルムの幅方向の下半分に伸びるスリットが容器ポケット4個分のピッチの間隔で形成され,折曲げ仮シール装置5において,二つのスリットの間にある容器フィルムの下半分が折り目形成部の位置で折り曲げられるとともに重ねられたストロー挿入ポケットの回りで仮シールされ,本体シール装置7において,重ね合わされた容器ポケット,仮シールされたストロー挿入ポケット及び充填口ポケットの回りで容器フィルムが接着シールされ,充填装置8において,充填ノズル81が容器ポケット内に入って液体が充填され,ボトムシール装置9において,充填口ポケットの部分hがシールされ,打抜き装置10において,容器1個ずつ所定の輪郭に沿って打ち抜かれるようにした成形充填包装装置。」

引用例2には,図面とともに次の事項が記載されている。
(2-a)
「柔軟なウエブ材料を加工して個々のパッケージや小袋を製造する多くの製造工程や装置が知られている。これらのパッケージや小袋は製造ラインにおいて充填ステーションや端部シールステーション等を使用して製造される。そのような代表的な機械は,一般的に横型機械と縦型機械とに分類される。さらに,そのような機械は,加工ステーションを通してウエブ材料を連続的に移動させる手段を採用しているか,または,ウエブ材料を間欠的に移動させて,作動と作動との間の休止期において加工工程が行われるように制御されている。」(4頁右上欄22行?同頁左下欄4行)

(2-b)
「熱融着エレメントと切断ダイとを連続作動型のものに取り替えることにより,この工程は,連続的に作動する横型機械に容易に適合させることができる。代表的には,連続作動型の機械においては,加熱バーおよび切断ダイは機械の作動タイミングおよび互いの作動タイミングに応じて回転駆動される。」(10頁右上欄1?5行)

引用例3には,図面とともに次の事項が記載されている。
(3-a)
「近年,無菌チャンバー内で殺菌された包装素材を用い,被充填物を充填した後,密封シールし,無菌包装容器を完成させる無菌充填包装システムが開発されている。このような無菌充填包装機は装置稼働開始前に,チャンバー配管等を殺菌し,無菌な状態にする必要がある。」(1頁左下欄下から2行?同頁右下欄5行)

(3-b)
「この無菌充填包装機は,巻取り1より送り出される包装素材3は包装素材殺菌部4により過酸化水素等の殺菌液に浸漬され,包装素材に付着している汚れ,付着菌等の殺菌がなされる。殺菌された包装素材3は無菌チャンバー14内に送り込まれる。」(2頁右上欄12?17行)

(3-c)
「三角ガイド7はダンサローラ6から供給されてきた包装素材3をその流れの方向に沿って中心部から折り込むようになっている。」(2頁左下欄3?8行)

(3-d)
「縦シール部11では,高周波シールによって包装素材3を筒状に成形するようになっている。縦シール部11の近傍には,筒状に成形された包装素材3内に被充填物を充填する充填ノズル28を設けている。充填ノズル28には,被充填物を送液する送液パイプ27が接続されている。送液パイプ27の先端部には,包装素材3中に充填された被充填物の液面レベル上方を陽圧に保つための無菌エアーノズル19が取りつけられている。縦シール部11に下方には,被充填物の入った包装素材3を所定の一箇分に相当する大きさで密閉シールする横シール部12が設けられている。横シール部12の下方には,包装素材3を密閉シール部の中央部で切断して個々の容器に分割する切断部13が設けられている。
また,この無菌充填包装機は,第2図に示すように無菌エアーにより満される無菌チャンバー14により覆われており,無菌チャンバーには無菌エアー移送システム,及び装置殺菌用殺菌液ライン等が設けられている。この無菌エアー移送システムは,無菌エアー用ブロアー16と無菌エアーとするためのフィルター17と無菌エアーを加温するヒーター18とこの無菌エアーを各所に移送する移送ライン19及び無菌エアーと薬液ミストの吸引を行う排気ライン21と排気処理装置22とで構成されている。配管及び無菌チャンバー内には装置稼働前の装置の殺菌を行うための殺菌液スプレーノズル26が設けられている。」(2頁左下欄11行?同頁右下欄18行)

(3-e)
第2図を参照すると,無菌エアー移送システムによる無菌チャンバー14内外の無菌エアーの流れが示されており,無菌チャンバー14内では,三角ガイド7,縦シール部11,充填ノズル28及び横シール部12の近傍に無菌エアーが供給されることがみてとれる。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「帯状の容器フィルム」は,本願発明の「シート材料の連続したウエッブ」に相当する。
引用発明において,帯状の容器フィルムは,フィルム幅のほぼ中央に折り目形成部が形成されると共にその両側に容器ポケット,ストロー挿入ポケット及び充填口ポケットが成形され,次に,フィルムの幅方向の下半分に伸びるスリットが所定の間隔で形成され,その後,二つのスリット間にある容器4個分に相当する容器フィルムの下半分が折り目形成部の位置で折り曲げられるとともに重ねられたストロー挿入ポケットの回りで仮シールされるが,この時点の容器フィルム,すなわち,成形装置3,切断装置4及び折曲げ仮シール装置5を経た直後の容器フィルムは,折り目形成部の位置で折り曲げられているから閉じた底部を有し,隣り合うスリットの箇所で開いているから開いた2側部を有し,上部も開いていて各充填口ポケットにつながっており,容器単位でみても,同様に,閉じた底部,開いた2側部及び開いた上部を有するといえる。したがって,成形装置3,切断装置4及び折曲げ仮シール装置5を経た直後の容器フィルムは,本願発明の「一連の隣接し合った成形されたパッケージを含んでいる連続したパッケージのウエッブ」に相当し,引用発明の「成形装置3,切断装置4及び折曲げ仮シール装置5」は,本願発明の「パッケージ成形装置」及び「パッケージのウエッブを産出するための手段」に相当する。
また,引用発明において,重ね合わされた容器ポケット,仮シールされたストロー挿入ポケット及び充填口ポケットの回りで容器フィルムが接着シールされると,側部は密封されることになるから,引用発明の「本体シール装置7」は,本願発明の「開いている側部を密封するための手段」もしくは「側部接合装置」に相当する。
さらに,引用発明の「充填装置8」は,本願発明の「開いている上部を通して液体をパッケージに充填するための手段」もしくは「充填装置」に相当し,引用発明の「ボトムシール装置9」は,本願発明の「開いている上部を密封するための手段」もしくは「上部密封装置」に相当し,引用発明の「打抜き装置10」は,本願発明の「充填して密封したパッケージをそのウエッブから分離して,それから個々のパッケージを形成するための手段」に相当する。

したがって,本願発明と引用発明は,本願発明の表記にしたがえば,
「柔軟なパッケージを連続的に成形し,密封し,液体を充填するためのシステムで,
a)シート材料の連続したウエッブをパッケージ成形装置に供給するための手段,
b)その成形装置から一連の隣接し合った成形されたパッケージを含んでいる連続したパッケージのウエッブを産出するための手段,その成形されたパッケージは閉じた底部,開いた2側部,充填用開口部を形成する開いた上部を有すること,
c)開いている側部を密封するための手段,
d)開いている上部を通して液体をパッケージに充填するための手段,
e)各パッケージの開いている上部を密封するための手段,
f)それぞれの充填して密封したパッケージをそのウエッブから分離して,それから個々のパッケージを形成するための手段,
が含まれるシステム。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明のシート材料はプラスチック・シート材料であるのに対して,引用発明の容器フィルムはプラスチックであることが特定されていない点。

(相違点2)
本願発明では,パッケージのウエッブを側部接合装置に連続的に通過させる間に開いている側部を密封し,パッケージのウエッブを充填装置に連続的に通過させる間に開いている上部を通して液体を充填し,パッケージのウエッブを上部密封装置に連続的に通過させる間に開いている上部を密封するのに対して,引用発明では,本体シール装置7,充填装置8及びボトムシール装置9の各動作は,容器フィルムを搬送しながら行うものではない点。

(相違点3)
本願発明は,パッケージのウエッブを産出するための手段,開いている側部を密封するための手段,充填するための手段及び開いている上部を密封するための手段の周辺で,無菌環境を維持し,分離するための手段の周辺で,清浄だが,無菌でない環境を維持する手段を備えるのに対して,引用発明はそのような手段を備えない点。

相違点1について検討する。引用例1には,容器フィルムとしてアルミ箔を用いることが記載されている(記載事項(1-b)参照)が,これは容器フィルムの一つの例が示されているに過ぎない。引用発明において,容器フィルムとして適当なプラスチック材料を選択することに何ら支障はなく,相違点1は,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。

相違点2について検討する。引用例2に示されるように,柔軟なウエブ材料を加工して個々のパッケージや小袋を製造する工程において,ウエブ材料を連続的に移動させながら行うことも,ウエブ材料を間欠的に移動させて行うことも,従来からよく知られた技術であり(記載事項(2-a)及び(2-b)参照),そのいずれの技術を採用するかは,当業者が適宜決定し得る事項に過ぎない。したがって,相違点2は,この周知技術を参酌することにより,当業者が容易になし得たことである。

相違点3について検討する。無菌環境下あるいは高清浄度の環境下で,飲料等の充填,密封を行い包装容器を完成することは,引用例3に示されるように従来からよく知られている(記載事項(3-a)?(3-e)参照)。充填,密封の後に個々の容器に分離する場合,無菌状態あるいは高清浄度が要求されるのは密封工程までであって,個々の容器に分離する工程においては,容器内に菌が侵入する可能性は低いから,無菌環境あるいは高清浄度の環境は特に必要とされないことは明らかである。したがって,相違点3は,この周知技術を参酌することにより,当業者が容易になし得たことである。
なお,引用例3において,第2図及び記載事項(3-d)中の「包装素材3中に充填された被充填物の液面レベル上方を陽圧に保つための無菌エアーノズル19」を参酌すると,記載事項(3-e)の「無菌エアーの流れ」は,充填,密封シール等が行われる装置の稼働時におけるものであると解するのが自然である。

以上のことから,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-31 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-08-26 
出願番号 特願2002-567600(P2002-567600)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武内 大志  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 佐野 健治
村山 禎恒
発明の名称 柔軟なパッケージを連続的に成形、密封、充填をするためのシステムと方法  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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