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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05B
管理番号 1228053
審判番号 不服2009-15854  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-28 
確定日 2010-12-08 
事件の表示 特願2006-142742「液吐出ノズル」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月 6日出願公開、特開2007-313385〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年5月23日に特許出願されたものであって、平成21年2月9日付けで拒絶理由が通知され、同年4月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月28日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出され、その後、当審において同年12月21日付けで書面による審尋がなされたものである。

第2.平成21年8月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年8月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容

(1)本件補正の内容
平成21年8月28日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年4月14日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(a)に示す請求項1ないし3を、下記の(b)に示す請求項1へと補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし3
「 【請求項1】
円筒形のバレル(21)と該バレルよりも小径の円筒形の先端部(22)とを具備するシリンジの該バレル(21)に充填された液体に対し制御された圧力を印加することにより該シリンジの先端部(22)に取り付けられた液吐出ノズル(1)から吐出量を制御しつつ液体を下方に吐出するディスペンサにおける、該液吐出ノズル(1)であって、
上方部分に形成され前記シリンジの先端部(22)が嵌合可能な中空円柱を有し該シリンジの先端部(22)に取り付けられたとき該中空円柱の下端が該シリンジの先端部(22)の下端と同じ高さに位置する嵌合開口部(12)と、
下方部分に形成され前記液体を下方に吐出するニードル管(14)と、
前記嵌合開口部(12)と前記ニードル管(14)の間に形成され該嵌合開口部(12)と該ニードル管(14)を連通させる連通開口部(15)と、を備え、
前記液吐出ノズル(1)内の気泡発生を防止するべく、前記シリンジの先端部(22)に取り付けられたとき、前記連通開口部(15)における前記嵌合開口部側の端面開口が、前記嵌合開口部(12)に嵌合した前記シリンジの先端部(22)の開口と段差無く一致することを特徴とする液吐出ノズル。
【請求項2】
前記連通開口部が、前記嵌合開口部側の端面に前記シリンジの先端部を位置合わせする位置合構造を有することを特徴とする請求項1に記載の液吐出ノズル。
【請求項3】
前記位置合構造が、同心円上に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液吐出ノズル。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
円筒形のバレル(21)と該バレルよりも小径の円筒形の先端部(22)とを具備するシリンジの該バレル(21)に充填された液体に対し制御された圧力を印加することにより該シリンジの先端部(22)に取り付けられた液吐出ノズル(1)から吐出量を制御しつつ液体を下方に吐出するディスペンサにおける、該液吐出ノズル(1)であって、
上方部分に形成され前記シリンジの先端部(22)が嵌合可能な中空円柱を有し該シリンジの先端部(22)に取り付けられたとき該中空円柱の下端が該シリンジの先端部(22)の下端と同じ高さに位置する嵌合開口部(12)と、
下方部分に形成され前記液体を下方に吐出するニードル管(14)と、
前記嵌合開口部(12)と前記ニードル管(14)の間に形成され該嵌合開口部(12)と該ニードル管(14)を連通させる連通開口部(15)と、を備え、
前記液吐出ノズル(1)内の気泡発生を防止するべく、前記シリンジの先端部(22)に取り付けられたとき、前記連通開口部(15)における前記嵌合開口部(12)側の端面開口が、前記嵌合開口部(12)に嵌合した前記シリンジの先端部(22)の開口と段差無く一致するように、該連通開口部(15)における該嵌合開口部(12)側の端面開口が、該嵌合開口部(12)よりも小さいことを特徴とする液吐出ノズル。」(なお、下線部は補正箇所を示す。)

2.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲に関し、本件補正後の請求項1においては、本件補正前の請求項1における発明特定事項である「前記連通開口部(15)における前記嵌合開口部側の端面開口」を、「該嵌合開口部(12)よりも小さい」ものに限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.本件補正の適否についての判断

本件補正における請求項1に関する補正事項は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

(1)引用文献の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-503号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。

イ.「従来から、プリント基板に搭載されるチップを仮止めするために、接着剤をプリント基板に定量塗布する塗布装置が知られている。この種の塗布装置が図1に図示されており、同図において、先端に塗布ノズル12を備えたシリンジ10内には、粘性流体等の塗布剤、例えば接着剤11が充填されている。」(公報第2ページ左欄第35ないし40行)

ロ.「CPU17により電磁弁13が開放され、エア源14より圧縮空気がチューブ21を介してシリンジ10に供給され、接着剤11が塗布ノズル12から排出され、基台16に配置されたプリント基板15に定量塗布される。」(同第2ページ左欄第49行ないし右欄第3行)

ハ.「上述した従来の塗布装置において、塗布ノズル12から接着剤を吐出させるときは、まずシリンジ10に入っている接着剤11が塗布ノズル12に充填される。この状態が図3(A)に図示されており、シリンジ内がエア源14により加圧されると、図3(B)に図示したように、接着剤11が塗布ノズル12から吐出されるようになる。しかしながら、従来の塗布装置では、シリンジ10と塗布ノズル12に空気の逃げる場所がないので、どのような加圧条件で接着剤を充填させても、塗布ノズル12内の空間Sの部分に空気が残存する、という問題がある。このように、塗布ノズル12に空気が残存していると、塗布中に残存している空気が接着剤とともに排出され接着剤が塗布されなかったり、あるいはS部分の空気が圧縮、膨張することにより吐出量が多くなり、それにより吐出タイミングが遅れたりすることにより、吐出の際不良となる糸引き、飛びなどが発生する、という問題があった。」(同第3ページ右欄第11行ないし第27行)

上記イ.ないしハ.及び図面の記載から、次のことがわかる。

a.上記ロ.の、電磁弁の開放をCPUが行うとの記載から、塗布剤に対し制御された圧力が印加されることがわかる。また、接着剤が定量塗布されるとの記載から、吐出量を制御しつつ吐出が行われることがわかる。

b.図1は、図中に「Z軸昇降」との記載があることからみても、図面下方を下方として描かれていることが明らかであるから、上記(ロ)の記載及び図1から、塗布剤の吐出が下方に行われることがわかる。

c.上記イ.の記載及び図2から、シリンジ10がバレルとバレルよりも小径の先端部とを具備するものであり、バレルに塗布剤が充填されることが読み取れる。

d.図1は、上記b.で述べたように図面下方を下方として描かれていることが明らかであるから、図1及び3から、塗布ノズルの上方部分にシリンジの先端部が嵌合可能な上方部位が存在し、下方部分に塗布剤を吐出する下方部位が存在し、その中間に該上方部位と下方部位とを連通する中間部位が存在することがわかる。

以上、イ.ないしハ.及びa.ないしd.並びに図面の記載を総合すると、引用文献には、次の発明が記載されているといえる(以下、「引用文献に記載の発明」という。)。

「バレルとバレルよりも小径の先端部とを具備するシリンジ10の該バレルに充填された粘性流体等の塗布剤に対し制御された圧力を印加することにより該シリンジ10の先端部に取り付けられた塗布ノズル12から吐出量を制御しつつ塗布剤を下方に吐出する塗布装置における塗布ノズル12であって、
上方部分に形成され前記シリンジ10の先端部が嵌合可能な中空部を有する上方部位と、
下方部分に形成され塗布剤を下方に吐出する下方部位と、
上方部位と下方部位との間に形成され上方部位と下方部位とを連通させる中間部位とを備え、
塗布ノズル12内のシリンジ10先端部付近の空間に空気が残存する、塗布ノズル12。」

(2)対比
本願補正発明と引用文献に記載の発明とを対比するに、引用文献に記載の発明における「バレルとバレルよりも小径の先端部とを具備するシリンジシリンジ10」は、その機能及び形状からみて、本願補正発明における「円筒形のバレルと該バレルよりも小径の円筒形の先端部とを具備するシリンジ」に、「バレルとバレルよりも小径の先端部とを具備するシリンジ」である限りにおいて相当する。
また、引用文献に記載の発明における「粘性流体等の塗布剤」、「塗布ノズル12」及び「空気が残存」は本件補正発明の「液体」、「液吐出ノズル」及び「気泡発生」に、引用文献に記載の発明における「上方部位」、「下方部位」及び「中間部位」はそれぞれ、その位置及び機能から見て、本願補正発明の「嵌合開口部」、「ニードル管」及び「連通開口部」にそれぞれ相当する。
してみると、本願補正発明と引用文献に記載の発明とは、
「バレルと該バレルよりも小径の先端部とを具備するシリンジの該バレルに充填された液体に対し制御された圧力を印加することにより該シリンジの先端部に取り付けられた液吐出ノズルから吐出量を制御しつつ液体を下方に吐出するディスペンサにおける、該液吐出ノズルであって、
上方部分に形成され前記シリンジの先端部が嵌合可能な中空を有する嵌合開口部と、
下方部分に形成され前記液体を下方に吐出するニードル管と、
前記嵌合開口部と前記ニードル管の間に形成され該嵌合開口部と該ニードル管を連通させる連通開口部と、
を備える液吐出ノズル。」である点で一致し、以下の1)及び2)の2点において相違又は一応相違する。
〈相違点〉
1)バレル、先端部、及び先端部が嵌合可能な中空の形状に関し、本願補正発明においてはそれぞれ「円筒形」、「円筒形」及び「円柱」であるのに対して、引用文献に記載の発明においてはどのような形状であるのかが明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

2)本願補正発明においては、嵌合開口部が「該シリンジの先端部に取り付けられたとき該中空の下端が該シリンジの先端部の下端と同じ高さに位置」し、「前記液吐出ノズル内の気泡発生を防止するべく、前記シリンジの先端部に取り付けられたとき、前記連通開口部における前記嵌合開口部側の端面開口が、前記嵌合開口部に嵌合した前記シリンジの先端部の開口と段差無く一致するように、該連通開口部における該嵌合開口部側の端面開口が、該嵌合開口部よりも小さい」のに対し、引用文献に記載の発明においては、シリンジの先端部に取り付けられたときの嵌合開口部の中空の下端の高さが不明であり、また、液吐出ノズル内のシリンジ先端部付近の空間において、気泡発生するものの、連通開口部における嵌合開口部側の端面開口がシリンジの先端部の開口と段差無く一致するように嵌合開口部よりも小さいものとしてはいない点(以下、「相違点2」という。)。

(3)判断
相違点1)及び2)について検討する。
1)相違点1について
一般に、液吐出ノズルの技術分野において、バレル、先端部、及び先端部が嵌合可能な中空の形状は、引用文献の図4(A)や図6(C)及び(D)(上記引用文献に記載の発明とは別の発明の説明図)にも示されているように、円筒あるいは円柱形状とするのが通常であることから、上記引用文献に記載の発明においてバレル、先端部、及び先端部が嵌合可能な中空の形状について明記されていないとしても、これらの形状は実質的に円筒あるいは円柱形状であり、この点は実質的な相違点ではない。

2)相違点2について
一般に、流体の流路が段差を有すると、流体が滞留するため、これを防止する目的で、流路が段差を有しないようにすることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2004-50013号公報[特に、【0027】及び【0029】の記載]及び特開2004-301197号公報[特に【0002】の記載]を参照。以下、「周知の技術事項」という。)。
したがって、引用文献に記載の発明において、液吐出ノズル内のシリンジ先端部付近の空間における気泡発生に対応する目的で、上記周知の技術事項を考慮して、相違点2に係る本願補正発明のように特定することは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明を全体としてみても、引用文献に記載の発明及び上記周知の技術事項から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

よって、本願補正発明は、引用文献に記載の発明及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.手続の経緯及び本願発明
平成21年8月28日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成21年4月14日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.の[理由]1.(1)の(a)に記載したとおりのものである。

2.引用文献
引用文献に記載の発明は、前記第2.の[理由]3.(1)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.の[理由]1.(2)で検討したように、本願補正発明から「前記連通開口部(15)における前記嵌合開口部側の端面開口」を、「該嵌合開口部(12)よりも小さい」ものとするとの限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、前記第2.の[理由]3.(1)ないし(3)に記載したとおり、引用文献に記載の発明及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献に記載の発明及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前日本国内において頒布された引用文献に記載の発明及び前述した周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-17 
結審通知日 2010-09-28 
審決日 2010-10-15 
出願番号 特願2006-142742(P2006-142742)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05B)
P 1 8・ 575- Z (B05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田口 傑加藤 昌人  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 加藤 友也
西山 真二
発明の名称 液吐出ノズル  
代理人 小島 高城郎  

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