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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1229508
審判番号 不服2008-9633  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-17 
確定日 2011-01-05 
事件の表示 特願2001-316866「製造工程管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月25日出願公開、特開2003-122605〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年10月15日の出願であって、平成20年3月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 平成20年4月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔結論〕

平成20年4月17日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕

1.補正内容
平成20年4月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1のとおりに補正する補正事項を含むものである。

<本件補正前の特許請求の範囲の請求項1>
「【請求項1】
各種工程データの入力を行うデータ入力部及び各種工程データの出力を行うデータ出力処理部を有する製造端末部と、前記製造端末部とネットワークを介して接続された前記各種工程データの通信制御を行う通信制御装置と、前記ネットワークに接続された各種工程データを集中して蓄積し出力するサーバ装置と、前記サーバ装置に蓄積された各種工程データに対してネットワークを介して読み出し要求を行うデータ参照端末部と、からなる製造工程管理システムにおいて、
前記製造端末部は、前記製造端末部内にリアルタイム若しくは所定期間毎又は所定数量毎に製造ラインに流れる製品を検査又は調整する設備制御プログラムを有し、前記設備制御プログラムから出力された各種工程データを受け取るデータ入力部及び各種工程データ出力をリアルタイムで前記通信制御装置へ出力するデータ出力処理部とからなるデータ転送部を有し、
前記通信制御装置は、前記製造端末部から出力された各種工程データをバッファリング装置上にバッファリングするデータ入力処理部と、前記バッファリング装置上にバッファリングした各種工程データを前記サーバ装置に順次出力するデータ出力処理部とを具備するデータ管理部を有し、
前記サーバ装置は、前記通信制御装置から出力される各種工程データを保存するデータベースと、前記データベースに各種工程データを入力処理するデータ入力処理部と、前記データ参照端末部からの読み出し要求に応じて前記データベースに蓄積された各種工程データを加工し出力する処理を前記データ入力処理部によるデータ入力処理より優先して行うデータ出力処理部とを具備するデータ処理部とを有すること、を特徴とする製造工程管理システム。」

<本件補正後の特許請求の範囲の請求項1>
「【請求項1】
各種工程データの入力を行うデータ入力部及び各種工程データの出力を行うデータ出力処理部を有する製造端末部と、前記製造端末部とネットワークを介して接続された前記各種工程データの通信制御を行う通信制御装置と、前記ネットワークに接続された各種工程データを集中して蓄積し出力するサーバ装置と、前記サーバ装置に蓄積された各種工程データに対してネットワークを介して読み出し要求を行うデータ参照端末部と、からなる製造工程管理システムにおいて、
前記製造端末部は、前記製造端末部内にリアルタイム若しくは所定期間毎又は所定数量毎に製造ラインに流れる製品を検査又は調整する設備制御プログラムを有し、前記設備制御プログラムから出力される前記製品の検査又は調整に関する各種工程データを受け取るデータ入力部及び各種工程データ出力をリアルタイムで前記通信制御装置へ出力するデータ出力処理部とからなるデータ転送部を有し、
前記通信制御装置は、前記製造端末部から出力された各種工程データをバッファリング装置上にバッファリングするデータ入力処理部と、前記バッファリング装置上にバッファリングした各種工程データを前記サーバ装置に順次出力するデータ出力処理部とを具備するデータ管理部を有し、
前記サーバ装置は、前記通信制御装置から出力される各種工程データを保存するデータベースと、前記データベースに各種工程データを入力処理するデータ入力処理部と、前記データ参照端末部からの読み出し要求に応じて前記データベースに蓄積された各種工程データを加工し出力する処理を前記データ入力処理部によるデータ入力処理より優先して行うデータ出力処理部とを具備するデータ処理部とを有すること、
を特徴とする製造工程管理システム。」

2.本件補正に対する判断

本件補正のうちの上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記設備制御プログラムから出力された各種工程データ」を、「前記設備制御プログラムから出力される前記製品の検査又は調整に関する各種工程データ」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。
2-1.本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.」の<本件補正後の特許請求の範囲の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。
ただし、同欄に転記した請求項1の文脈から見て、同請求項1中の「各種工程データ出力をリアルタイムで前記通信制御装置へ出力するデータ出力処理部」なる記載における「各種工程データ出力」は「各種工程データ」のことを指していると認められるので、該「各種工程データ出力」は「各種工程データ」の意味に解釈した。

2-2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-6190号公報(以下、「引用例」と呼ぶ。)には、以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生産設備の稼働状態の検出および記録に適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、製品を製造する生産現場では、原価低減、工完短縮、歩留向上による生産性の向上が常に求められており、これを達成するために、設備能力の向上が最重点課題となっている。したがって、生産設備の稼働状況を正確に把握して現状分析を行い、稼働率を引き下げている要因を突き止めて改善していくことが必要である。そして、そのためのツールとして、稼働状態計測装置が用いられている。
【0003】この稼働状態計測装置としては、たとえば特開平6-282718号公報に記載されているように、生産設備のプログラマブルコントローラ(以下、単に「コントローラ」という。)に直接接続し、生産設備の稼働状態や停止要因等をコントローラから自動で収集、計測する装置が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この従来の稼働状態計測装置(以下「従来装置」という。)は、コントローラを有する生産設備については有効であるが、コントローラを持たない生産設備に適用する場合、以下のような問題がある。
【0005】すなわち、従来装置をコントローラを持たない生産設備に適用するには、コントローラに代わるインターフェイスを作成する必要がある。このインターフェイスは、従来装置への入力信号を生成するために必要となる信号を生産設備から全て取り込む必要がある。そのため、生産設備の型式等が異なれば、信号の電気的特性や信号を取り込む部位および取り込み信号数が異なり、生産設備毎に専用のインターフェイスを製作しなければならない、という問題である。このようなインターフェイスは停止要因を生産設備からの信号取り込みにより判断するために内部回路が非常に複雑となり、高価なものになってしまう。
【0006】さらに、従来装置では生産設備やコントローラからの入力信号で停止要因を判断する構成のため、そのままでは準備作業や待ち時間といった人的な装置停止要因(以下「人的停止要因」という。)を収集することができない、という問題である。また、装置故障であっても、故障個所が具体的に把握されないと高精度な稼働状況管理は不可能になる。
【0007】そこで、本発明の目的は、コントローラを持たない生産設備の稼働状況を容易に計測することのできる技術を提供することにある。
【0008】本発明の他の目的は、生産設備の人的および機械的停止要因を具体的に記録することのできる技術を提供することにある。」

「【0015】図1は、本発明の一実施の形態である設備稼働状態記録装置および信号加工装置が用いられた設備稼働監視システムであり、オンラインでリアルタイムに設備稼働状態の監視が行われるようになっている。この監視システムは、ホストコンピュータ(状況集計部)1、データベース2、端末31 ?3n 、LAN(LocalArea Network)4、中継端末5、マルチプレクサ6、設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n) 、インターフェイス34_(1) ?34_(n) 、生産設備8_(1 )?8_(n )、RS-232C回線10、RS-232C回線11_(1) ?11_(n )、プリンタ12とから構成されている。なお、RS-232C回線とはEIA(Electronic Industries Association -米国電子工業会)にて規格化された接続コネクタおよび配線ケーブルからなる回線であり、広くOA機器の接続に用いられているものである。
【0016】このような構成の監視システムにおいて、データベース2はホストコンピュータ1で管理されている。また、ホストコンピュータ1、端末3_(1) ?3_(n )、中継端末5、プリンタ12はそれぞれLAN4を介して相互に接続されている。さらに、中継端末5とマルチプレクサ6とはRS-232C回線10で、マルチプレクサ6と設備稼働状態記録装置7_(1) ?7_(n) とはRS-232C回線11_(1) ?11_(n)でそれぞれ接続されており、これらとインターフェイス34_(1 )?34_(n) 、生産設備8_(1) ?8_(n) でデータ収集系9を構成している。なお、データ収集系9はLAN4上に複数設けることができる。
【0017】設備稼働状態記録装置7_(1 )?7_(n )は各々に接続された生産設備8_(1) ?8_(n )の稼働状態をモニタして内部メモリに稼働データを記録する。また、中継端末5は多重化装置であるマルチプレクサ6を介して定期的に各設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n) が記録した稼働データを取得し、LAN4を介してホストコンピュータ1へ転送する。そして、ホストコンピュータ1は中継端末5から転送された稼働データをデータベース2に保存する。なお、端末3_(1) ?3_(n) および中継端末5では、データベース2からLAN4を介して各生産設備8_(1) ?8_(n) の稼働データを取得してデータの集計・分析が行えるようになっているのみならず、表示された稼働データにより生産設備81 ?8_(n) の集中監視が行えるようになっている。」

ここで、上記記載事項を引用例の各図面と技術常識に照らせば、以下のことがいえる。
(1)段落【0015】等でいう「インターフェイス34_(1 )?34_(n)」は、「生産設備8_(1) ?8_(n)」からのデータの入力を行う「データ入力部」と呼び得る部分と、「設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n)」に対してデータの出力を行う「データ出力処理部」と呼び得る部分とからなる「データ転送部」と呼び得る部分を有しており、該「インターフェイス34_(1 )?34_(n)」に入力されるデータとそこから出力されるデータは、いずれも「製造工程に関するデータ」と呼び得るものである。
(2)同段落【0015】等でいう「設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n)」は、上記「製造工程に関するデータ」を「中継端末5」へ伝送するための通信制御機能をも有するものである。
(3)上記「設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n)」における「内部メモリ」は、「バッファリング装置」とも呼び得るものであり、上記「設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n)」は、上記「インターフェイス34_(1) ?34_(n)」からのデータを上記「バッファリング装置」とも呼び得る「内部メモリ」上にバッファリングする「データ入力処理部」と呼び得る部分と、バッファリングしたデータを「中継端末5」へ順次出力する「データ出力処理部」と呼び得る部分を含む、「データ管理部」と呼び得る部分を有している。
(4)同段落【0015】等でいう「ホストコンピュータ1」は、「データベース2」に上記「中継端末5」からのデータを入力処理する「データ入力処理部」と呼び得る部分と、「端末3_(1 )?3_(n)」からの読み出し要求に応じて上記「データベース2」に蓄積されたデータを出力する処理を行う「データ出力処理部」と呼び得る部分を含む、「データ処理部」と呼び得る部分を有している。
したがって、引用例には次の発明(以下、「引用例記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。
「製造工程に関するデータの入力を行うデータ入力部及び製造工程に関するデータの出力を行うデータ出力処理部を有するインターフェイス34_(1) ?34_(n)と、前記インターフェイス34_(1) ?34_(n)と接続された前記製造工程に関するデータの通信制御を行う設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n)と、ネットワークに接続された製造工程に関するデータを集中して蓄積し出力するホストコンピュータ1と、前記ホストコンピュータ1に蓄積された製造工程に関するデータに対してネットワークを介して読み出し要求を行う端末3_(1 )?3_(n)と、からなる設備稼働監視システムにおいて、
前記インターフェイス34_(1) ?34_(n)は、製造工程に関するデータを受け取るデータ入力部及び製造工程に関するデータを前記設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n)へ出力するデータ出力処理部とからなるデータ転送部を有し、
前記設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n)は、前記インターフェイス34_(1) ?34_(n)から出力された製造工程に関するデータをバッファリング装置上にバッファリングするデータ入力処理部と、前記バッファリング装置上にバッファリングした製造工程に関するデータを前記ホストコンピュータ1に順次出力するデータ出力処理部とを具備するデータ管理部を有し、
前記ホストコンピュータ1は、前記設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n)から出力される製造工程に関するデータを保存するデータベースと、前記データベースに製造工程に関するデータを入力処理するデータ入力処理部と、前記端末3_(1) ?3_(n)からの読み出し要求に応じて前記データベースに蓄積された製造工程に関するデータを出力する処理を行うデータ出力処理部とを具備するデータ処理部とを有する、
設備稼働監視システム。」

2-3.本願補正発明と引用例記載発明との対比
本願補正発明と引用例記載発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(1)引用例記載発明の「製造工程に関するデータ」と本願補正発明の「各種工程データ」とは、「製造工程に関するデータ」である点で共通する。
(2)引用例記載発明の「インターフェイス34_(1 )?34_(n)」は、本願補正発明の「製造端末部」に相当する。
(3)引用例記載発明の「設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n)」は、本願補正発明の「通信制御装置」に相当する。
(4)引用例記載発明の「ホストコンピュータ1」は、本願補正発明の「サーバ装置」に相当する。
(5)引用例記載発明の「端末3_(1) ?3_(n)」は、本願補正発明の「データ参照端末部」に相当する。
(6)引用例記載発明の「設備稼働監視システム」は、「製造工程管理システム」とも呼び得るものである。

したがって、本願補正発明と引用例記載発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「製造工程に関するデータの入力を行うデータ入力部及び製造工程に関するデータの出力を行うデータ出力処理部を有する製造端末部と、前記製造端末部と接続された前記各種工程データの通信制御を行う通信制御装置と、ネットワークに接続された製造工程に関するデータを集中して蓄積し出力するサーバ装置と、前記サーバ装置に蓄積された製造工程に関するデータに対してネットワークを介して読み出し要求を行うデータ参照端末部と、からなる製造工程管理システムにおいて、
前記製造端末部は、製造工程に関するデータを受け取るデータ入力部及び製造工程に関するデータを前記通信制御装置へ出力するデータ出力処理部とからなるデータ転送部を有し、
前記通信制御装置は、前記製造端末部から出力された製造工程に関するデータをバッファリング装置上にバッファリングするデータ入力処理部と、前記バッファリング装置上にバッファリングした製造工程に関するデータを前記サーバ装置に順次出力するデータ出力処理部とを具備するデータ管理部を有し、
前記サーバ装置は、前記通信制御装置から出力される製造工程に関するデータを保存するデータベースと、前記データベースに製造工程に関するデータを入力処理するデータ入力処理部と、前記データ参照端末部からの読み出し要求に応じて前記データベースに蓄積された製造工程に関するデータを出力する処理を行うデータ出力処理部とを具備するデータ処理部とを有する、
製造工程管理システム。」
である点。

(相違点1)
本願補正発明の「通信制御装置」は、「製造端末部」とネットワークを介して接続されているのに対し、引用例記載発明の「通信制御装置(設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n))」は、「製造端末部(インターフェイス34_(1 )?34_(n))」とネットワークを介して接続されているわけではない点。

(相違点2)
本願補正発明の「製造端末部」は、「リアルタイム若しくは所定期間毎又は所定数量毎に製造ラインに流れる製品を検査又は調整する設備制御プログラム」を有しており、本願補正発明の「製造工程に関するデータ」は、該「設備制御プログラム」から出力される「製品の検査又は調整に関する各種工程データ」であるのに対し、引用例記載発明の「製造端末部(インターフェイス34_(1 )?34_(n))」は、「リアルタイム若しくは所定期間毎又は所定数量毎に製造ラインに流れる製品を検査又は調整する設備制御プログラム」を有しておらず、それに伴い、引用例記載発明の「製造工程に関するデータ」は、該「設備制御プログラム」から出力される「製品の検査又は調整に関する各種工程データ」ではない点。

(相違点3)
本願補正発明の「製造端末部」の「データ転送部」の「データ出力処理部」は、製造工程に関するデータを「リアルタイムで」前記通信制御装置へ出力するのに対し、引用例記載発明の「製造端末部(インターフェイス34_(1) ?34_(n))」の「データ転送部」の「データ出力処理部」は、製造工程に関するデータを「リアルタイムで」前記通信制御装置(設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n))へ出力するとは限らない点。

(相違点4)
本願補正発明の「サーバ装置」の「データ処理部」の「データ出力処理部」は、データベースに蓄積された製造工程に関するデータを「加工して」出力するのに対し、引用例記載発明の「サーバ装置(ホストコンピュータ1)」の「データ処理部」の「データ出力処理部」は、データベースに蓄積された製造工程に関するデータを「加工して」出力するとは限らない点。

(相違点5)
本願補正発明の「サーバ装置」の「データ処理部」の「データ出力処理部」は、データベースに蓄積された製造工程に関するデータを出力する処理を、「データ入力処理部によるデータ入力処理より優先して行う」のに対し、引用例記載発明の「サーバ装置(ホストコンピュータ1)」の「データ処理部」の「データ出力処理部」は、データベースに蓄積された製造工程に関するデータを出力する処理を「データ入力処理部によるデータ入力処理より優先して行う」とは限らない点。

2-4.判断

(1)(相違点1)について
一般に、複数の装置をネットワークを介して接続するか、ネットワークを介することなく直接接続するかは、当業者が必要に応じて適宜決定すべき事項であること、引用例記載発明の「通信制御装置(設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n))」と「製造端末部(インターフェイス34_(1 )?34_(n))」についても、ネットワークを介して接続するようにできない理由はないこと、等の事情にかんがみれば、引用例記載発明の「通信制御装置(設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n))」を、「製造端末部(インターフェイス34_(1) ?34_(n))」とネットワークを介して接続するようにすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

(2)(相違点2)について
下記ア.?ウ.の事情を勘案すると、引用例記載発明の「製造端末部(インターフェイス34_(1) ?34_(n))」を「リアルタイム若しくは所定期間毎又は所定数量毎に製造ラインに流れる製品を検査又は調整する設備制御プログラム」と呼び得るプログラムを有するものとし、引用例記載発明の「製造工程に関するデータ」を該「設備制御プログラム」と呼び得るプログラムから出力される「製品の検査又は調整に関する各種工程データ」と呼び得るものとすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

ア.「データベースに製造工程に関するデータを蓄積するようにした、『設備稼働監視システム』ないし『製造工程管理システム』と呼び得るシステムであって、『製造端末部』と呼び得る部分に、『リアルタイム若しくは所定期間毎又は所定数量毎に製造ラインに流れる製品を検査又は調整する設備制御プログラム』と呼び得るプログラムを有し、データベースに蓄積する『製造工程に関するデータ』が、該『設備制御プログラム』と呼び得るプログラムから出力される『製品の検査又は調整に関する各種工程データ』と呼び得るものとされているもの」(以下、「周知システム」と呼ぶ。)は、本願明細書の段落【0002】に【従来の技術】として引用されるとともに平成19年12月6日付けの拒絶理由通知においても「引用文献3」として引用された特開平11-320348号公報の段落【0009】の「各種製造データを所定期間毎又は所定数量毎に出力する製造端末部」なる記載、同公報の段落【0014】の「前記各種製造データは、工程名、ロット番号、処理数、払出数、欠陥品数、日付、使用した工作機械番号、品質データ、検査データ、その他種々のデータ項目が含まれる。」なる記載、引用例の段落【0003】に【従来の技術】として引用された特開平6-282718号公報の段落【0013】の「端末4_(1)?4_(N)は、接続された設備5_(1)?5_(N)から生産管理データを品種毎に区分けして取得する。生産管理データには、設備の稼働/停止、停止要因、不良要因、生産数、不良品検出等のデータが含まれる。また、製品(処理対象物)の品種やロット番号等の製品データも含まれる。」なる記載、同公報の段落【0015】の「各並列端子X1?X20には、設備5に取り付けられたプログラマブルコントローラ(PLC)22の出力端子が接続される。」なる記載、等からみて、本願出願前に当業者に周知であったと認められる。

イ.引用例記載発明においても、その「製造工程に関するデータ」として、上記周知システムにおける「『設備制御プログラム』と呼び得るプログラムから出力される『製品の検査又は調整に関する各種工程データ』と呼び得るもの」が望まれる場合があることは当業者に自明であり、引用例記載発明の「製造工程に関するデータ」をそのようなものとすることができない理由はない。

ウ.上記ア.、イ.の事情は、取りも直さず、引用例記載発明の「製造端末部(インターフェイス34_(1) ?34_(n))」を「リアルタイム若しくは所定期間毎又は所定数量毎に製造ラインに流れる製品を検査又は調整する設備制御プログラム」と呼び得るプログラムを有するものとし、引用例記載発明の「製造工程に関するデータ」を該「設備制御プログラム」と呼び得るプログラムから出力される「製品の検査又は調整に関する各種工程データ」と呼び得るものとすることが、当業者にとって容易であったことを意味する。

なお、上記点に関し、審判請求人は、平成20年2月15日付けの意見書において、「引用文献1(審決注:本審決でいう「引用例」)に記載されている設備稼働状態記録装置は、設備の稼動状況により、停止要因入力手段から、人の判断により停止原因を特定して入力する必要があります。そのため、引用文献1の発明においては、製造工程に流れる製品の検査又は調整の結果を含む各種工程データを扱うことは不可能であり、単に設備の稼働状況のデータを扱うのみであります。」と主張しており、引用例の特許請求の範囲に記載された発明については、その主張が妥当するかもしれないが、引用例の発明の詳細な説明の記載から当業者が把握可能な、上記「2-2.」の欄で認定した引用例記載発明については、該主張は妥当しない。

(3)(相違点3)について
引用例記載発明、あるいは、引用例記載発明に上記(1)、(2)に従って上記(相違点1)、(相違点2)に係る本願補正発明の構成を採用したものにおいては、「製造工程に関するデータ」は、「通信制御装置(設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n))」でバッファリングされるのであるから、そこまでのデータ転送がリアルタイムで行われるべきことは当業者に自明であり、そのようにできない理由はない。
したがって、引用例記載発明、あるいは、引用例記載発明に、上記(1)、(2)に従って上記(相違点1)、(相違点2)に係る本願補正発明の構成を採用したものにおいて、「製造端末部(インターフェイス34_(1 )?34_(n))」の「データ転送部」の「データ出力処理部」を、製造工程に関するデータを「リアルタイムで」前記通信制御装置(設備稼働状態記録装置7_(1)?7_(n))へ出力するものとすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

(4)(相違点4)について
一般に、データベースに蓄積されたデータを出力する際に所要の加工を施すことは、必要に応じて当業者が適宜なし得ることであり、引用例記載発明、あるいは、引用例記載発明に上記(1)?(3)に従って上記(相違点1)?(相違点3)に係る本願補正発明の構成を採用したものにおいて、「サーバ装置(ホストコンピュータ1)」の「データ処理部」の「データ出力処理部」を、データベースに蓄積された製造工程に関するデータを「加工して」出力するものとすることも、当業者が適宜なし得たことである。

(5)(相違点5)について
一般に、データベースに蓄積されたデータを端末から参照するようにしたものにおいて、データベースの更新処理と読み出し処理のいずれを優先させるかは、データの鮮度を重視するか参照要求に対する応答速度を重視するか等に応じて、当業者が適宜決定すべき事項であり、引用例記載発明、あるいは、引用例記載発明に上記(1)?(4)に従って上記(相違点1)?(相違点4)に係る本願補正発明の構成を採用したものにおいても、その事情は何ら変わらない。
したがって、引用例記載発明、あるいは、引用例記載発明に上記(1)?(4)に従って上記(相違点1)?(相違点4)に係る本願補正発明の構成を採用したものにおいて、「サーバ装置(ホストコンピュータ1)」の「データ処理部」の「データ出力処理部」を、データベースに蓄積された製造工程に関するデータを出力する処理を「データ入力処理部によるデータ入力処理より優先して行う」ものとすることも、当業者が適宜なし得たことである。

(6)本願補正発明の効果について
本願補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用例記載発明及び周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

(7)まとめ
以上によれば、本願補正発明は、引用例記載発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成20年2月15日付けの手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものである。
そして、その平成20年2月15日付けの手続補正書の請求項1に記載された事項は、上記「第2」の「1.」の<本件補正前の特許請求の範囲の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「第2」の「2.」の「2-2.」の項に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、「前記設備制御プログラムから出力された各種工程データ」を、「前記設備制御プログラムから出力される前記製品の検査又は調整に関する各種工程データ」に限定する限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記「第2」の「2.」の項に記載したとおり、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-09 
結審通知日 2010-11-11 
審決日 2010-11-24 
出願番号 特願2001-316866(P2001-316866)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上嶋 裕樹  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 加内 慎也
田口 英雄
発明の名称 製造工程管理システム  
代理人 奈良 武  

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