• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1232110
審判番号 不服2007-26013  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-21 
確定日 2011-02-07 
事件の表示 特願2002- 91296「滅菌器と被滅菌物の管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月10日出願公開、特開2003-288413〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一 手続の経緯
本願は、平成14年3月28日の出願であって、平成19年7月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月21日に拒絶査定不服審判が請求され、同年9月21日に手続補正がなされたものである。


第二 平成19年9月21日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年9月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の概要
平成19年9月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲が、
「【請求項1】 管理契約を結んだユーザーの管理対象となる滅菌器と、該滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法であって、
管理会社の管理装置は、
前記滅菌器から直接、若しくは前記ユーザーが所有する情報処理装置を介して、前記滅菌器に対しての管理を要する項目に応じた一又は複数種の滅菌器管理データを受信するとともに、該受信した滅菌器管理データを所定期間、データ蓄積装置に第一の蓄積データとして蓄積保存する第一の処理と、
前記情報処理装置から、該情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを受信するとともに、該受信した被滅菌物管理データを所定期間、前記データ蓄積装置に第二の蓄積データとして蓄積保存する第二の処理と、
定期的又は必要に応じて前記第一の蓄積データ及び/又は前記第二の蓄積データの一部又は全部を加工し報告データを生成するとともに、該生成した報告データを前記ユーザーの前記情報処理装置へ送信する第三の処理と、
を実行することを特徴とする滅菌器と被滅菌物の管理方法。
【請求項2】 管理対象となる滅菌器と、該滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法であって、
前記滅菌器を管理する情報処理装置は、
前記滅菌器から、該滅菌器に対しての管理を要する項目に応じた一又は複数種の滅菌器管理データを収集するとともに、該収集した滅菌器管理データを所定期間、第一の蓄積データとして蓄積保存する第一の処理と、
前記情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを所定期間、第二の蓄積データとして蓄積保存する第二の処理と、
定期的又は必要に応じて前記第一の蓄積データ及び/又は前記第二の蓄積データの一部又は全部を加工し報告データを生成する第三の処理と、
を実行することを特徴とする滅菌器と被滅菌物の管理方法。
【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の滅菌器と被滅菌物の管理方法において、
前記被滅菌物に、該被滅菌物を特定づけるための情報を保持させる
ことを特徴とする滅菌器と被滅菌物の管理方法。」

であったものを、

「【請求項1】 管理契約を結んだユーザーの管理対象となる滅菌器と、該滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法であって、
前記被滅菌物には、該被滅菌物を特定づけるための情報を保持させ、
管理会社の管理装置は、
前記滅菌器から直接、若しくは前記ユーザーが所有する情報処理装置を介して、前記滅菌器に対しての管理を要する項目に応じた一又は複数種の滅菌器管理データを受信するとともに、該受信した滅菌器管理データを所定期間、データ蓄積装置に第一の蓄積データとして蓄積保存する第一の処理と、
前記情報処理装置から、該情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを受信するとともに、該受信した被滅菌物管理データを、前記被滅菌物に保持されている被滅菌物を特定づけるための情報をキーとして、前記第一の蓄積データと関連づけて所定期間、前記データ蓄積装置に第二の蓄積データとして蓄積保存する第二の処理と、
定期的又は必要に応じて前記第一の蓄積データ及び/又は前記第二の蓄積データの一部又は全部を加工し報告データを生成するとともに、該生成した報告データを前記ユーザーの前記情報処理装置へ送信する第三の処理と、
を実行することを特徴とする滅菌器と被滅菌物の管理方法。
【請求項2】 管理対象となる滅菌器と、該滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法であって、
前記被滅菌物には、該被滅菌物を特定づけるための情報を保持させ、
前記滅菌器を管理する情報処理装置は、
前記滅菌器から、該滅菌器に対しての管理を要する項目に応じた一又は複数種の滅菌器管理データを収集するとともに、該収集した滅菌器管理データを所定期間、第一の蓄積データとして蓄積保存する第一の処理と、
前記情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを、前記被滅菌物に保持されている被滅菌物を特定づけるための情報をキーとして、前記第一の蓄積データと関連づけて所定期間、第二の蓄積データとして蓄積保存する第二の処理と、
定期的又は必要に応じて前記第一の蓄積データ及び/又は前記第二の蓄積データの一部又は全部を加工し報告データを生成する第三の処理と、
を実行することを特徴とする滅菌器と被滅菌物の管理方法。」

とするものであり、

補正前の請求項1の「該受信した被滅菌物管理データを所定期間、前記データ蓄積装置に第二の蓄積データとして蓄積保存する」を「該受信した被滅菌物管理データを、前記被滅菌物に保持されている被滅菌物を特定づけるための情報をキーとして、前記第一の蓄積データと関連づけて所定期間、前記データ蓄積装置に第二の蓄積データとして蓄積保存する」と限定し、補正前の請求項2の「前記情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを所定期間、第二の蓄積データとして蓄積保存する」を「前記情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを、前記被滅菌物に保持されている被滅菌物を特定づけるための情報をキーとして、前記第一の蓄積データと関連づけて所定期間、第二の蓄積データとして蓄積保存する」と限定することを含むものであるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

2 独立特許要件
そこで、本願補正後の請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

1.本願補正発明
本願補正発明は、次のとおりのものである。

「管理対象となる滅菌器と、該滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法であって、
前記被滅菌物には、該被滅菌物を特定づけるための情報を保持させ、
前記滅菌器を管理する情報処理装置は、
前記滅菌器から、該滅菌器に対しての管理を要する項目に応じた一又は複数種の滅菌器管理データを収集するとともに、該収集した滅菌器管理データを所定期間、第一の蓄積データとして蓄積保存する第一の処理と、
前記情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを、前記被滅菌物に保持されている被滅菌物を特定づけるための情報をキーとして、前記第一の蓄積データと関連づけて所定期間、第二の蓄積データとして蓄積保存する第二の処理と、
定期的又は必要に応じて前記第一の蓄積データ及び/又は前記第二の蓄積データの一部又は全部を加工し報告データを生成する第三の処理と、
を実行することを特徴とする滅菌器と被滅菌物の管理方法。」

2.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-175995号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(あ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 滅菌装置1の滅菌作業ごとの滅菌記録を順次蓄積し、蓄積されている滅菌記録のうち選択された滅菌記録を出力することを特徴とする滅菌管理装置。
【請求項2】 前記滅菌記録が、滅菌インジケータの判定結果を含むことを特徴とする請求項1に記載の滅菌管理装置。
【請求項3】 前記滅菌記録が、前記滅菌装置1の滅菌槽内における温度変化または圧力変化のグラフを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の滅菌管理装置。
【請求項4】 請求項3に記載のグラフが、滅菌条件を示す標識線29を含むことを特徴とする滅菌管理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、滅菌装置の滅菌作業ごとの滅菌記録を管理する滅菌管理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】病院や各種研究設備などの施設においては、患者の使用した衣服や手術衣,手術用機器などを滅菌処理することが行われている。この滅菌処理には、たとえば蒸気滅菌装置が用いられる。この蒸気滅菌装置は、被滅菌物を滅菌槽内に密閉収容し、この滅菌槽内に加圧した蒸気(一般には、飽和蒸気)を送り込むことによって滅菌処理するものである。
【0003】近年、滅菌処理の質を高水準に維持するために、各滅菌処理の内容(日付や滅菌条件など)を滅菌記録として保管し、滅菌作業の管理を行うことが推奨されている。そこで、滅菌作業のたびに、滅菌装置に取り付けられている記録計によって、滅菌槽内の温度や圧力の経時変化を記録紙に出力し、この記録紙と滅菌作業の日付や滅菌条件(温度,圧力,時間)などの記録とを滅菌記録として整理し保管している。そのため、滅菌記録の作成やその管理は極めて煩雑な作業となっている。さらに、滅菌記録を作成するために前述の記録紙を収集するには、作業者は、その滅菌装置のところまで行く必要がある。特に複数の滅菌装置が施設内に分散して配置してある場合には、この記録紙の収集の作業は時間を要し、煩雑なものとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、この発明が解決しようとする課題は、滅菌記録の作成と管理を簡単に行うようにすることである。」

(い)「0009】
【発明の実施の形態】この発明は、滅菌装置の滅菌管理装置として実施される。この滅菌管理装置は、滅菌装置と有線または無線による信号線で接続されるものである。この滅菌管理装置には、1台の滅菌装置のみならず、複数台の滅菌装置を接続することができる。また、この滅菌管理装置は、滅菌装置に一体的に組み込むこともできる。
【0010】この滅菌管理装置は、入出力部,表示部,記憶部および演算処理部を備えている。この入出力部には、前述の信号線が接続され、この信号線を介して滅菌装置の滅菌作業のデータが入力される。また、この入出力部には、キーボード,マウス,表示機能を備えた入力素子(いわゆるタッチパネル)などの入力機器が接続され、この入力機器によって、滅菌作業のデータや滅菌記録の各処理(収集,分類,記憶,選択,出力など)の指示が入力される。さらに、この入出力部には、表示部や、プリンタなどの出力機器が接続される。記憶部は、滅菌作業のデータを収集、分類して滅菌記録を作成する処理,この滅菌記録を順次蓄積する処理,蓄積されている滅菌記録から選択された所望の滅菌記録を表示部やプリンタなどへ出力する処理などの処理手順をソフトウェアとして記憶する。前述の滅菌記録の選択は、蓄積されている滅菌記録のうちから1つの滅菌記録を選択するだけでなく、複数の滅菌記録を選択したり、全ての滅菌記録を選択する場合を含む。また、記憶部は、前述の滅菌作業ごとの滅菌記録を順次蓄積する。演算処理部は、入出力部からの入力信号と記憶部の記憶内容とから所定の処理手順を実行する。ここで、前述の滅菌記録は、滅菌装置側で作成し、この滅菌記録を滅菌管理装置において順次蓄積する構成とすることもできる。
【0011】前述の表示部には、記憶部に蓄積されている滅菌記録を出力する滅菌記録画面を表示させる。この滅菌記録画面には、蓄積されている滅菌記録から所望の滅菌記録を選択して出力する。さらに、この滅菌記録画面は、蓄積されている滅菌記録の全てを出力したり、滅菌装置ごと,年ごと,月ごとに分類して出力する構成とすることもできる。この滅菌記録は、現在までに行った滅菌作業の実施日や時間帯(開始時刻,終了時刻を含む),滅菌装置の識別,運転モード,滅菌条件(設定温度,設定時間,設定圧力など),乾燥時間などを含む。さらに、この滅菌記録には、設定温度に対する実際の滅菌槽内における温度の偏差や、滅菌作業時に滅菌インジケータを使用した場合における滅菌インジケータの判定結果を含めることもできる。ここで、前述の運転モードは、予め滅菌条件を複数設定してある場合の各滅菌条件を実行する運転モード(標準滅菌モード,高温滅菌モード,高速滅菌モードなど)や、滅菌作業の各工程のうちの特定の工程(暖気,乾燥など)を運転する運転モードを含む。
【0012】さらに、滅菌記録画面には、滅菌槽内の温度変化や圧力変化を数値で表示するほか、経時的変化を示すグラフとして表示させる構成とすることもできる。そして、このグラフには、滅菌条件として設定した滅菌温度(または圧力)を標識線として表示する。前述のグラフに標識線を表示させると、滅菌槽内の温度(または圧力)が滅菌条件に対してどのように変化しているかを容易に判断することができる。
【0013】さらに、この滅菌記録画面は、蓄積されている全ての滅菌記録を一覧表示する画面(以下、「滅菌記録一覧画面」という)と、各滅菌作業ごとの滅菌記録を個別に表示する画面(以下、「個別滅菌記録画面」という)とに分けて表示させることもできる。この場合、滅菌記録一覧画面では、滅菌記録のうちの主要な項目のみを表示するように構成し、この滅菌記録一覧画面に表示された滅菌記録から特定の滅菌記録を指定することで、個別滅菌記録画面を呼び出して滅菌記録を詳細に表示するように構成する。ここで、滅菌記録画面(滅菌記録一覧画面,個別滅菌記録画面を含む)については、表示部に表示させるほか、入出力部に接続したプリンタなどの出力機器から出力させる構成とすることもできる。」

(う)「【0027】さて、以下に、前記滅菌管理装置3による滅菌記録の作成と管理とについて説明する。まず、前記各滅菌装置1と前記滅菌管理装置3とに電源を供給し、両者を起動させておく。この状態から後は、前記信号線2によって前記各滅菌装置1の運転状態のデータが前記滅菌管理装置3に入力される。前記各滅菌装置1のうち、運転を開始したものがあると、前記滅菌管理装置3は、運転中の滅菌装置1からの運転状態のデータを収集し、この滅菌作業に関する滅菌記録を作成する。
【0028】そして、滅菌装置1の滅菌作業が終われば、前記滅菌管理装置3は、滅菌記録を前記記憶部8に蓄積する。前記滅菌管理装置3は、複数台の滅菌装置1が滅菌作業を行っている場合においても、それぞれの滅菌記録を作成する。以下、前記滅菌管理装置3は、前記各滅菌装置1の滅菌作業ごとに滅菌記録を作成し、前記記憶部8に順次蓄積していく。
【0029】前記滅菌管理装置3は、前述の滅菌記録の作成や蓄積の処理を行っている間においても、前記記憶部3にすでに蓄積されている滅菌記録を出力することができる。すなわち、前記滅菌記録一覧画面選択ボタン22の操作により、前記滅菌記録一覧画面15を表示させ、所望の滅菌記録を、1日単位,月単位で一覧表示させたり、この一覧表示された滅菌記録を前記印刷ボタン19の操作によって前記プリンタ13から出力させることができる。また、各滅菌作業ごとの詳細な滅菌記録を出力する場合には、前記滅菌記録表示部17から所望の滅菌記録を選択した後、前記個別表示ボタン18を操作して前記個別滅菌記録画面21を表示させることによって行う。前記個別滅菌記録画面21に表示された滅菌記録は、前述同様に前記印刷ボタン30を操作することにより、前記プリンタ13から出力させることができる。
【0030】以上のように、前記滅菌管理装置3によれば、前記各滅菌装置1の滅菌作業ごとの滅菌記録を一括して作成し、蓄積することができ、さらにこの蓄積されている滅菌記録から所望の滅菌記録を選択して前記ディスプレイ装置12に表示させたり、前記プリンタ13から出力させたりすることができる。そのため、前記滅菌管理装置3によれば、従来のように滅菌装置から記録紙を収集したり、この記録紙と滅菌作業の日付や滅菌条件などの記録とを滅菌記録として整理し保管する必要が無くなり、滅菌記録の管理が簡単に行える。また、前記滅菌管理装置3によれば、記録紙の収集や、滅菌作業の日付,滅菌条件などの記録を作業者が行う必要が無くなるため、滅菌記録の作成や管理に費やす時間を大幅に省略することができる。
【0031】さて、以上の滅菌管理装置3は、蓄積した滅菌記録を分類して表示するための画面として、前記滅菌記録一覧画面15および前記個別滅菌記録画面21を備えるものとして説明したが、前記滅菌管理装置3は、これらの画面のほかに、前記各滅菌装置1の運転状態や、滅菌記録のうちの滅菌槽内の温度や圧力の変化を監視するための画面を設けることもできる。たとえば、図5に示すような遠隔監視画面32や、図6に示すような運転モニタ画面33である。そして、前記運転モニタ画面33は、前記遠隔監視画面32から呼び出すように構成する。」


引用例1の上記記載(あ)?(う)及び図面図1?図6の記載から、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「滅菌装置の滅菌作業ごとの滅菌記録を順次蓄積し、蓄積されている滅菌記録のうち選択された滅菌記録を出力する滅菌管理装置による管理方法であって、
該滅菌管理装置は、滅菌装置と有線または無線による信号線で接続され、
入出力部,表示部,記憶部および演算処理部を備え、
該記憶部は、滅菌作業のデータを収集、分類して滅菌記録を作成する処理,この滅菌記録を順次蓄積する処理,蓄積されている滅菌記録から選択された所望の滅菌記録を表示部やプリンタなどへ出力する処理などの処理手順をソフトウェアとして記憶し、
また、該記憶部は、前述の滅菌作業ごとの滅菌記録を順次蓄積し、
該演算処理部は、入出力部からの入力信号と記憶部の記憶内容とから所定の処理手順を実行し、
該表示部は、記憶部に蓄積されている滅菌記録を出力する滅菌記録画面を表示させ、
該滅菌記録画面には、蓄積されている滅菌記録から所望の滅菌記録を選択して出力し(蓄積されている滅菌記録の全てを出力したり、滅菌装置ごと,年ごと,月ごとに分類して出力すること)、
この滅菌記録は、現在までに行った滅菌作業の実施日や時間帯(開始時刻,終了時刻を含む),滅菌装置の識別,運転モード,滅菌条件(設定温度,設定時間,設定圧力など),乾燥時間などを含み、該運転モードは、予め滅菌条件を複数設定してある場合の各滅菌条件を実行する運転モード(標準滅菌モード,高温滅菌モード,高速滅菌モードなど)や、滅菌作業の各工程のうちの特定の工程(暖気,乾燥など)を運転する運転モードを含み、
また、該滅菌記録画面には、滅菌槽内の温度変化や圧力変化を数値で表示するほか、経時的変化を示すグラフとして表示させる構成とすることもでき、
該滅菌記録画面は、蓄積されている全ての滅菌記録を一覧表示する画面(以下、「滅菌記録一覧画面」という)と、各滅菌作業ごとの滅菌記録を個別に表示する画面(以下、「個別滅菌記録画面」という)とに分けて表示させることもできる
管理方法。」


(2)引用例2
また、原査定の拒絶の理由に引用された、河井敏博他,“手術器械管理システムの試作”,医科器械学,日本医科器械学会,1996年10月1日,第66巻,第10号,p.541-542(以下、「引用例2」という。)には、図表とともに以下の記載がある。

(え)「1.はじめに
滅菌コンテナシステムは器械展開時の時間の短縮、洗浄、セット組の簡素化、滅菌維持の長期間化など看護業務の省力化に貢献することから導入する施設が増えている。しかし滅菌されてコンテナに入っている手術器械まで管理するのは種類も多く、容易ではなかった。
我々は運用状況を把握するためバーコードラベルをコンテナに張り付け、滅菌ログを執って解析を行いコンテナ数の最適化を行ってきた。また内視鏡と動力器械のコンテナについては、手術器械の構成をデータベース化し毎回器械リストが出力できるシステムを試作してきた。今回このシステムのにつき検討したので報告する。
2.コンテナ数の最適化
バーコードを貼って滅菌ログを執り始めた1994年10月の時点では168種類のコンテナで493個あった。1995年1月から1995年6月までの6ヵ月間のデータを解析して、コンテナが複数セットあるもので使用回数が週平均1回未満のものと全く使用されなかったコンテナを運用から外し、セット数を減らした。その結果、使用されなかった4種のコンテナを含み減らしたコンテナ数は146個、新規追加器械のため追加したコンテナは6種6コンテナ、診療科持ち込み器械のための5種6コンテナ合わせて11種、12コンテナとなり、全部で175種、総計359個となった。
この見直しによりコンテナ内の手術器械は1,191種,20,175個から2,044種,13,833個に減少した。コンテナも手術器械も種類はわずかに増えたもののコンテナ総数では27.2%,手術器械では31.4%減少させることができた。」(541頁左欄1行?右欄8行)

(お)「3.コンテナの流れ
(1)手術終了後、器械カウントが終わって回収された器械は洗浄される。その後、事前に出力された器械リストにもとづいてセット組を行う。器械と共にコンテナに納めて材料部に滅菌に出す。
(2)滅菌されてクリーンホールに帰ってきたコンテナは保管し、手術予定に従い、手術前日の準備時に予約登録を行う。また臨時に使用するコンテナはそのつど随時予約登録を行う。
(3)この使用行程の間でのデータの入力は、クリ-ンホールの予約時と、使用のため器械を展開した時の2回になる。
4.メニュー画面
ローカルエリアネットワーク上で稼働するこのシステムではクリンホール、洗浄室、婦長室、ME室、部長室など必要とする端末からアクセスが可能となっている。メニューは理解がしやすいよう、予約・滅菌登録などの通常業務は左側、保守業務は右側に分けている。入力操作をできるだけ簡略にするため、ポインティングデバイスのマウスの使用、メニューの階層が深くならないよう診療科を選択すると関係するコンテナがプルダウンメニューにリスト表示され、最小限のデータが自動入力されるなど、マンマシンインターフェースに配慮した。(図2)
5.コンテナ毎の管理レポート
手術手技の変化に伴いコンテナの使用頻度も変わってくるので、半年に1度は管理資料の使用履歴を基に運用するコンテナ数の最適化を目的に管理支援情報を出力する。
この表3のコンテナ0020105は、1995年1月10日に滅菌した後、最下段の1995年6月29日までの170日間に33回使用し、平均サイクル5日間で滅菌・保管・使用を繰り返している。使用間隔は一定していないものの運用の平均サイクルは理想的な状態にある。このように術式の変更に伴うコンテナの使用頻度の変化は記録を解析して初めて明確になってくる。特に手術器械が常に目に触れなくなるコンテナでは、この解析は最適化診断の有力な方法である。」(541頁右欄9行?542頁左欄末行)

(か)「6.まとめ
(1).コンテナと器械をコード化しコンテナをバーコードで管理する事で、クリーンホールの在庫量の最適化や手術手技の変化に対応できるシステムの試作・試用を行った。
(2).コンテナの運用データペースと器械マスターをリンクさせることで、器械の種類毎の稼働状況が判りやすくなった。
(3).滅菌ログを解析する事によって、コンテナシステム運用開始時の493個のコンテナから359個へと27%のコンテナを減少させることができた。
(4).コンテナの運用履歴や器械の状態表示など管理支援情報の出力によって、多数の手術器械も比較的容易に管理できるようになった。
7.終わりに
手術器械がコンテナで運用されると個々の器械が常時目に触れないことから全体がわかりにくくなってきた。しかし、比較的簡単な本管理システムでもコンテナ・器械の管理が可能な事を示すことができた。」(542頁右欄1行?末行)


3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「滅菌装置」、「滅菌管理装置」及び「滅菌記録」は、本願補正発明の「滅菌器」、「情報処理装置」及び「蓄積データ」に相当する。
引用発明において、「滅菌装置」は、管理対象となるものであり、「滅菌管理装置」は該「滅菌装置」を管理するものといえる。
引用発明の「滅菌記録」は、現在までに行った滅菌作業の実施日や時間帯(開始時刻,終了時刻を含む),滅菌装置の識別,運転モード,滅菌条件(設定温度,設定時間,設定圧力など),乾燥時間などを含み、該運転モードは、予め滅菌条件を複数設定してある場合の各滅菌条件を実行する運転モード(標準滅菌モード,高温滅菌モード,高速滅菌モードなど)や、滅菌作業の各工程のうちの特定の工程(暖気,乾燥など)を運転する運転モードを含むものであり、引用発明の「滅菌作業のデータ」を収集、分類して該「滅菌記録」を作成するものであり、該「滅菌記録」は、滅菌作業ごとに「記憶装置」に順次蓄積されるものであるから、引用発明の「滅菌作業のデータ」は、本願補正発明の「滅菌器に対しての管理を要する項目に応じた一又は複数種の滅菌器管理データ」に相当し、また、引用発明の「滅菌作業のデータ」は、「滅菌記録」として、所定期間、蓄積保存する処理が実行されるといえる。
また、「滅菌作業のデータ」は、滅菌装置と有線または無線による信号線で接続された「滅菌管理装置」に収集されるものであるから、当然、「滅菌管理装置」に受信される処理が実行されているものといえる。
引用発明の「表示部」は、記憶部に蓄積されている「滅菌記録」を出力する滅菌記録画面を表示させるものであり、該滅菌記録画面には、蓄積されている滅菌記録から所望の滅菌記録を選択して出力し(蓄積されている滅菌記録の全てを出力したり、滅菌装置ごと,年ごと,月ごとに分類して出力すること)、滅菌槽内の温度変化や圧力変化を数値で表示するほか、経時的変化を示すグラフとして表示させる構成とすることもでき、蓄積されている全ての滅菌記録を一覧表示する画面(以下、「滅菌記録一覧画面」という)と、各滅菌作業ごとの滅菌記録を個別に表示する画面(以下、「個別滅菌記録画面」という)とに分けて表示させることもできるものであるから、「滅菌記録」の一部又は全部を加工し滅菌記録画面という「データ」を生成する処理が実行されているものといえる。本願補正発明の「報告データ」は、上位概念化すると「データ」といえる。
してみると、本願補正発明と引用発明とには、以下の一致点、相違点1?3がある。

(一致点)
「管理対象となる滅菌器の管理方法であって、
前記滅菌器を管理する情報処理装置は、
前記滅菌器から、該滅菌器に対しての管理を要する項目に応じた一又は複数種の滅菌器管理データを収集するとともに、該収集した滅菌器管理データを所定期間、第一の蓄積データとして蓄積保存する処理と、
定期的又は必要に応じて前記蓄積データの一部又は全部を加工し「データ」を生成する処理と、
を実行することを特徴とする滅菌器の管理方法」である点。

(相違点1)
本願補正発明は、「管理対象となる滅菌器と、該滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法」であるのに対して、引用発明では「管理対象となる滅菌器の管理方法」である点。

(相違点2)
本願補正発明は、「前記被滅菌物には、該被滅菌物を特定づけるための情報を保持させ」、「前記情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを、前記被滅菌物に保持されている被滅菌物を特定づけるための情報をキーとして、前記第一の蓄積データと関連づけて所定期間、第二の蓄積データとして蓄積保存する第二の処理」を実行するのに対して、引用発明はそのような処理を実行しない点。

(相違点3)
本願補正発明は、「定期的又は必要に応じて前記第一の蓄積データ及び/又は前記第二の蓄積データの一部又は全部を加工し報告データを生成する第三の処理」を実行するのに対して、引用発明は「前記蓄積データの一部又は全部を加工しデータを生成する処理」を実行する点。

4.判断
そこで、上記相違点1?3について検討する。
(相違点1)について
上記したように引用例1には、管理対象となる滅菌器の管理方法の発明が記載されており、また、滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法は、引用例2に記載されている。
また、滅菌での品質管理には、滅菌器の管理に被滅菌物の管理を加え、これらを総合して管理することが有用であることは技術常識である。
してみると、引用発明の「管理対象となる滅菌器の管理方法」に、上記引用例2に記載された「滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法」を採用し、「管理対象となる滅菌器と、該滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法」とすることは、当業者が、容易に想到したことである。

(相違点2)について
引用例2には、「被滅菌物」であるコンテナ(入っている手術器械を含む)を特定づけるための情報(コンテナID)をコンテナに保持すること(バーコードラベル)が記載されている。
また、引用例2には、手術器械管理システムの試作について、「運用状況を把握するためバーコードラベルをコンテナに張り付け、滅菌ログを執って解析を行いコンテナ数の最適化を行ってきた。」とコンテナの「滅菌ログを執る」ことが記載され、表3のコンテナ管理レポートに項目として「コンテナID」、「滅菌日」、「時刻」があることから、該手術器械管理システムは、入力された被滅菌物であるコンテナに関する一又は複数種のコンテナ管理データを所定時間、蓄積データとして蓄積保存することが開示されているといえる。
品質管理の一手法である、追跡処理(トレーサビリティ)の手法においては、管理対象となる機器のデータに、該機器により処理される被処理物の特定づけをするためのIDを関連づけることは周知な技術事項であるから、該品質管理の一手法である、追跡処理(トレーサビリティ)の手法を滅菌の技術分野に適用することは、当業者が格別困難無くなし得ることである。
また、引用発明の滅菌器に対して行われるデータ処理を、被滅菌物に対しても行うことは、当業者が、普通になし得る技術事項である。
してみると、引用発明の「管理対象となる滅菌器の管理方法」に、上記引用例2に記載された「滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法」を採用するに際し、上記諸事項を勘案して、「前記被滅菌物には、該被滅菌物を特定づけるための情報を保持させ」ること、及び「前記情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを、前記被滅菌物に保持されている被滅菌物を特定づけるための情報をキーとして、前記第一の蓄積データと関連づけて所定期間、第二の蓄積データとして蓄積保存する第二の処理」を実行することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点3)について
引用発明は「前記蓄積データの一部又は全部を加工したデータを生成する処理」を実行するものであり、該「データ」は、技術常識的には、必要に応じ生成されるものといえる。
また、引用例2に記載された蓄積データの一部又は全部を加工したデータであるコンテナ管理レポートは、半年に1回という定期的に、レポートという一般に報告書形式といえるものとして生成されるものである。
また、引用発明の滅菌装置に対して行われるデータを生成する処理を、被滅菌物に対しても行うこと、及び、その逆に、引用例2に記載された被滅菌物(コンテナ)に対して行われるレポートを生成する処理を、滅菌装置に対しても行うことは、当業者が、普通になし得る技術事項である。
してみると、引用発明の「管理対象となる滅菌器の管理方法」に、上記引用例2に記載された「滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法」を採用するに際し、上記諸事項を勘案して、「定期的又は必要に応じて前記第一の蓄積データ及び/又は前記第二の蓄積データの一部又は全部を加工し報告データを生成する第三の処理」を実行することは、当業者が容易になし得たことである。

また、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知の技術事項から、当業者が予想可能な範囲内のものであって、格別のものであるとはいえない。

5.まとめ
よって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第三 補正却下の決定を踏まえた検討
1 本願発明
平成19年9月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成19年5月11日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、該請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「管理対象となる滅菌器と、該滅菌器により処理される被滅菌物の管理方法であって、
前記滅菌器を管理する情報処理装置は、
前記滅菌器から、該滅菌器に対しての管理を要する項目に応じた一又は複数種の滅菌器管理データを収集するとともに、該収集した滅菌器管理データを所定期間、第一の蓄積データとして蓄積保存する第一の処理と、
前記情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを所定期間、第二の蓄積データとして蓄積保存する第二の処理と、
定期的又は必要に応じて前記第一の蓄積データ及び/又は前記第二の蓄積データの一部又は全部を加工し報告データを生成する第三の処理と、
を実行することを特徴とする滅菌器と被滅菌物の管理方法。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第二」「2 」「2.」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、「前記被滅菌物には、該被滅菌物を特定づけるための情報を保持させ、」を削除し、そして、その発明特定事項である「前記情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを、前記被滅菌物に保持されている被滅菌物を特定づけるための情報をキーとして、前記第一の蓄積データと関連づけて所定期間、第二の蓄積データとして蓄積保存する」において、「前記被滅菌物に保持されている被滅菌物を特定づけるための情報をキーとして、前記第一の蓄積データと関連づけて」との限定部分を省き、「前記情報処理装置に入力された前記被滅菌物に関する一又は複数種の被滅菌物管理データを所定期間、第二の蓄積データとして蓄積保存する」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに構成要件の一部を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第二」「2 」「4.」に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-16 
結審通知日 2010-12-17 
審決日 2010-12-24 
出願番号 特願2002-91296(P2002-91296)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 幸一  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 池田 聡史
長島 孝志
発明の名称 滅菌器と被滅菌物の管理方法  
代理人 大塚 明博  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ