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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B28C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B28C |
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管理番号 | 1232471 |
審判番号 | 不服2007-34970 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-27 |
確定日 | 2011-02-18 |
事件の表示 | 特願2002-265340「生コンクリートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004- 98548〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は,平成14年9月11日の出願であって,平成19年11月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,期間内の平成20年1月24日付けで手続補正がなされたものである。その後,平成22年8月9日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が通知され,これに対する回答書が同年10月15日に提出された。 II.平成20年1月24日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年1月24日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正により,平成19年8月3日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1が次のように補正された。 「【請求項1】 コンクリート塊の破砕物と水とセメントと砂とからなる生コンクリートの製造方法であって,一回分の生コンクリートを製造するのに必要な量のコンクリート破砕物全量と水とセメントとを,骨材としてコンクリート破砕物を用いない普通のコンクリートの骨材と水とセメントとの配合割合と同じ配合割合でもって混練部内に投入して混練する工程と,この混練中に,混練物のワーカビリティーの良否を逐次検知しながら混練物に砂を少量宛,添加する工程と,混練物が所定のワーカビリティーとなったときに,上記混練物への砂の添加を停止する工程とからなることを特徴とする生コンクリートの製造方法。」 2.上記補正については,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「混練物のワーカビリティーの良否を検知する工程」と,「混練物が所定のワーカビリティーとなるまで上記混練部に砂を添加する工程」について,「この混練中に,混練物のワーカビリティーの良否を逐次検知しながら混練物に砂を添加する工程」と,「混練物が所定のワーカビリティーとなったときに,上記混練物への砂の添加を停止する工程」に限定するとともに,「砂を添加する」ことについて,さらに「砂を少量宛,添加する」との限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下検討する。 3.独立特許要件について 3-1.引用例の記載事項 (1)引用例1:特開2001-150426号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1) (ア)「【請求項1】 コンクリート塊を破砕する破砕部と,該破砕部により破砕された破砕物と別途供給されるセメントと水とを練混ぜる混練部とからなる生コンクリートの製造装置。」(【特許請求の範囲】) (イ)「なお,上記の図1は,同一強度の廃コンクリートを同一の刃巾条件で複数個粉砕したときの各粉砕物間の粒度のばらつきをみたものであり,・・・この図をみれば,各粉砕物間の粒度のばらつきはなく,同一強度の廃コンクリートを同一の刃巾条件で粉砕すれば,一定の粒度が得られ,安定した品質の粉砕物を供給できることが判る。また,粒度の分布も大径から小径にわたってまんベんなく分布しており,骨材として適した材料であることが判る。」(段落【0010】) (ウ)「この生コンクリートの製造装置1においては,クラッシャー3で破砕された破砕物は,全量,ミキサー4に投入されるため,ミキサー4で攪拌されて破砕物は粗粒分から細粒分までまんべんなく分布した状態を保つことができ,コンクリートの混合材料として骨材(細骨材,粗骨材)の代わりに用いることができる。」(段落【0012】) (エ)「クラッシャー3とミキサー4との間に破砕物計量のための計重用ホッパー(破砕物計量部)5を設けておけば,廃コンクリートを必要量だけ破砕することができる。そのため,廃コンクリートを粉砕した粉砕物と水・セメントの配合計画が可能となり,所望の性状のコンクリートを安定的に製造することができる。」(段落【0013】) (オ)「・・・ミキサー4に投入した廃コンクリートの破砕物の全量に対応した配合量の他の材料(水,セメント,混和剤)をミキサー4に投入して所定時間練混ぜる。混練によって所望の性状の生コンクリートが製造できたらミキサー4から排出し,・・・所望の場所に運搬する。」(段落【0021】) (2)引用例2:特公昭49-5153号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2) (ア)「コンクリートの配合設計は所要のワーカビリチー,強度,耐久性,均一性等をもつたコンクリートが最も経済的に得られるように,セメント,水,骨材及び必要に応じて混和材料を選定して行われるもので,最終的には水に対するセメントの比率とスランプ値(ワーカビリチー即ち施工軟度)が設定される。この場合,実際のコンクリート調合管理を行なうには,ある水とセメント量との比率の範囲内でスランプ値を一定にするように制御する手段が一般にとられている。」(第1頁第1欄29行?同頁第2欄1行) (イ)「混練り中のコンクリートのスランプを自動的に所定のスランプ状態にあるか否か判定し,これにより所定のスランプになるように水又は砂を自動的に所定量投入するコンクリートの混練り制御装置」(第1頁第2欄28?33行) (3)引用例3:特開昭62-92810号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3) (ア)「(1)水を吸った骨材に水硬性粉体を加え混練し・・・混練を継続しながら・・・スランプ値を検出し,・・・スランプ値が所望の値と異なるときは,・・・予じめ求められた・・・スランプ値に対応する量の・・・流動性増加剤を加える・・・ことにより・・・スランプ値を所望の値に調整することを特徴とする,水硬性硬化原料の製造法」(特許請求の範囲) (4)引用例4:社団法人日本コンクリート工学協会編「コンクリート便覧(第二版)」技報堂出版,1996年2月15日,2版1刷発行,第57?58頁(原査定の拒絶の理由に引用された周知文献) (ア)「2.3.3 粒度および最大寸法 骨材の大小粒が混合している程度を粒度という.粒度を具体的に知るため・・・粒度分布を求めて,図-2.8のような粒度曲線を描く. 細骨材の粒度は,コンクリートの品質,特にワーカビリティーに大きくかかわる.大小粒が適当に混合している粒度の良好な細骨材を用いると,粒の揃った単粒に近い粒度や細粒に偏った粒度に比べ,骨材間の空隙が少なく,より小さな単位水量や単位セメント量で,所要のワーカビリティーを有するコンクリートが経済的に得られる.粗骨材の粒度は,細骨材ほどコンクリートのワーカビリティーに影響を及ぼさないが,骨材間の空隙を少なくしてコンクリートの品質や経済性を確保するため,同様に適切な粒度が望まれる. 骨材の理想的な粒度については,空隙率が最小となるものがよいなどの見解が示されている.しかし,コンクリートのワーカビリティー,分離抵抗性,経済性などをすべて満たす絶対的な理想粒度はなく,・・・そのため,骨材の粒度に関しては,規定を設けず,経験や実験などから,経済的で所要の品質を有するコンクリートが得られる粒度の範囲を示すのが,現実的対応となる. 土木・建築学会やJISでは,このような粒度分布の標準的な範囲を与えており,表-2.6は,JIS A 5308(・・・)に示されている砂利および砂の標準粒度である.図-2.4のように,標準粒度範囲を示し,実測した粒度曲線がこの範囲内に収まっていれば,普通の場合,この骨材を用いて,ワーカビリティーなどの所要の品質を有するコンクリートが経済的に得られると考える.範囲から大きく外れる骨材に関しては,他の骨材を混合し,標準粒度となるよう粒度調整して用いるのがよい.」(第57頁右欄9行?第58頁左欄10行)。 3-2.対比・判断 引用例1には,摘記事項(ア)に「コンクリート塊を破砕する破砕部と,該破砕部により破砕された破砕物と別途供給されるセメントと水とを練混ぜる混練部とからなる生コンクリートの製造装置。」と記載され,摘示事項(オ)に「・・・ミキサー4に投入した廃コンクリートの破砕物の全量に対応した配合量の他の材料(水,セメント,混和剤)をミキサー4に投入して所定時間練混ぜる。混練によって所望の性状の生コンクリートが製造できたらミキサー4から排出し,・・・所望の場所に運搬する。」と記載されている。これらの記載によれば,引用例1には「コンクリート塊の破砕物と水とセメントとを混練して生コンクリートを製造する方法において,廃コンクリートの破砕物の全量に対応した配合量の水,セメント,混和剤をミキサーに投入して所定時間練混ぜる」ことが記載されているといえる。 また,上記記載の「廃コンクリートの破砕物の全量」については,摘記事項(エ)に「破砕物計量のための計重用ホッパー・・・を設けておけば,廃コンクリートを必要量だけ破砕することができる」と記載されていることから,「計重用ホッパーを設けて製造した必要量だけのコンクリート破砕物の全量」とみることができる。 以上の記載事項を本願補正発明に則して整理すると,引用例1には,「コンクリート塊の破砕物と水とセメントとを混練して生コンクリートを製造する方法であって,計重用ホッパーを設けて製造した必要量だけのコンクリート破砕物の全量と当該全量に対応した配合量の水とセメントと混和剤をミキサー内に投入して混練して生コンクリートを製造する方法」の発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 そこで,本願補正発明と引用例1発明を比較すると, 引用例1発明の「ミキサー」及び「計重用ホッパーを設けて製造した必要量だけのコンクリート破砕物の全量」は,本願補正発明の「混練部」及び「一回分の生コンクリートを製造するのに必要な量のコンクリート破砕物全量」に相当し,引用例1発明の「コンクリート塊の破砕物と水とセメントとを混練して生コンクリートを製造する方法」は,本願補正発明の「コンクリート塊の破砕物と水とセメントと砂とからなる生コンクリートの製造方法であって,・・・混練する工程と,・・・からなる・・・生コンクリートの製造方法。」と「コンクリート塊の破砕物と水とセメントとを含む生コンクリートの製造方法であって、混練する工程を有する生コンクリートの製造方法」で共通している。 以上のことから,両者は,「コンクリート塊の破砕物と水とセメントとを含む生コンクリートの製造方法であって,一回分の生コンクリートを製造するのに必要な量のコンクリート破砕物全量と水とセメントとを混練部内に投入して混練する工程を有する生コンクリートの製造方法」に係る発明である点で一致し,次の点で相違する。 相違点a:本願補正発明は,「生コンクリート」が,「コンクリート塊の破砕物と水とセメントと砂とからなる生コンクリート」であるのに対し,引用例1発明は,「生コンクリート」が砂を含むことについて特定されていない点 相違点b:本願補正発明は,コンクリート破砕物全量と水とセメントとを「骨材としてコンクリート破砕物を用いない普通のコンクリートの骨材と水とセメントとの配合割合と同じ配合割合でもって混練部内に投入して」いるのに対し,引用例1発明は,コンクリート破砕物全量と当該全量に対応した配合量の水とセメントの配合割合としている点 相違点c:本願補正発明は,「混練中に,混練物のワーカビリティーの良否を逐次検知しながら混練物に砂を少量宛,添加する工程と,混練物が所定のワーカビリティーとなったときに,上記混練物への砂の添加を停止する工程」を備えているのに対し,引用例1発明は,かかる工程を有していない点 そこで,これらの相違点a?cについて,いずれも骨材と水とセメントの配合調整に関連し合うことから併せて検討する。 骨材と水とセメントの配合調整に関しては,引用例2の記載事項(ア)に「コンクリートの配合設計は所要のワーカビリチー,強度,耐久性,均一性等をもつたコンクリートが最も経済的に得られるように,セメント,水,骨材及び必要に応じて混和材料を選定して行われるもので,最終的には水に対するセメントの比率とスランプ値(ワーカビリチー即ち施工軟度)が設定される。この場合,実際のコンクリート調合管理を行なうには,ある水とセメント量との比率の範囲内でスランプ値を一定にするように制御する手段が一般にとられている。」ことが記載され,引用例4の記載事項(ア)に「骨材の理想的な粒度については,空隙率が最小となるものがよいなどの見解が示されている.しかし,コンクリートのワーカビリティー,分離抵抗性,経済性などをすべて満たす絶対的な理想粒度はなく,・・・そのため,骨材の粒度に関しては,規定を設けず,経験や実験などから,経済的で所要の品質を有するコンクリートが得られる粒度の範囲を示すのが,現実的対応となる.」と記載されている。 これらの記載によれば,骨材と水とセメントの配合調整は一般的に,水に対するセメントの比率とスランプ値が設定され,実際のコンクリート調合管理は,水とセメント量との比率の範囲内でスランプ値を一定にするように制御する手段がとられ,骨材の粒度については現実的対応として経験や実験などによるものとみることができる。 そして,引用例1発明は,引用例1の記載事項(イ)によれば「同一強度の廃コンクリートを同一の刃巾条件で粉砕すれば,一定の粒度が得られ,安定した品質の粉砕物を供給できること」を前提にしたものであり,コンクリート廃材が種々な強度や組成を有するものであることを考えると,必ずしも引用例1発明の「コンクリート破砕物全量と当該全量に対応した配合量の水とセメントの配合割合としている」ことが常に所望の性状のコンクリートが製造できるのか明らかであるとはいえない。 してみると,上記一般的な配合調整に照らし,引用例1の「破砕物は,全量,ミキサー4に投入されるため,・・・コンクリートの混合材料として骨材(細骨材,粗骨材)の代わりに用いることができる」(摘記事項(ウ))との記載を勘案すれば,引用例1発明の「コンクリート破砕物全量と当該全量に対応した配合量の水とセメントの配合割合」は,普通のコンクリートの骨材と水とセメントの配合割合と同じ配合割合とみれなくもない。その上で,水とセメント量との比率の範囲内でスランプ値を一定にするように骨材の粒度を制御しようとすることは当業者であれば容易に想到し得ることといえる。 そして,斯かる骨材の制御として,引用例4の記載事項(ア)の「細骨材の粒度は,コンクリートの品質,特にワーカビリティーに大きくかかわる.大小粒が適当に混合している粒度の良好な細骨材を用いると,粒の揃った単粒に近い粒度や細粒に偏った粒度に比べ,骨材間の空隙が少なく,より小さな単位水量や単位セメント量で,所要のワーカビリティーを有するコンクリートが経済的に得られる.粗骨材の粒度は,細骨材ほどコンクリートのワーカビリティーに影響を及ぼさないが,骨材間の空隙を少なくしてコンクリートの品質や経済性を確保するため,同様に適切な粒度が望まれる.」との記載から,当業者であれば細粒の砂を添加で調整制御することは容易に想起できる。 また,コンクリートの調整を,所要の特性を有すると予想される組成を仮に設定してコンクリートを調整し,得られた特性をチェックしつつ,また,成分を添加しつつ,行うことは,コンクリートの調整における普通の現実的手段であるといえる上に,引用例2には,摘記事項(イ)に「混練り中のコンクリートのスランプを自動的に所定のスランプ状態にあるか否か判定し,これにより所定のスランプになるように水又は砂を自動的に所定量投入するコンクリートの混練り制御装置」が記載され,引用例3にも,摘記事項(ア)に「水を吸った骨材に水硬性粉体を加え混練し・・・混練を継続しながら・・・スランプ値を検出し,・・・スランプ値が所望の値と異なるときは,・・・予じめ求められた・・・スランプ値に対応する量の・・・流動性増加剤を加える・・・ことにより・・・スランプ値を所望の値に調整する・・・水硬性硬化原料の製造法」と記載され,混練り中の水硬性硬化原料のスランプに基づいて,添加成分の制御を行うことが示され,特に,引用例2の前記摘記事項(イ)は,その「スランプ」が「ワーカビリティー」に相当するものであることを考慮すると,混練り中のコンクリートのワーカビリティーを検知しながら砂を自動的に投入し,所定のワーカビリティーになったときに砂の投入を停止することを示しているといえることから,上記した「砂を添加する」に際して,混練り中のコンクリートのワーカビリティーを検知しながら少量宛の砂を自動的に投入し,所要のワーカビリティーになったときに砂の投入を停止するとすることに格別な困難性も見出せない。 引用例1には,その摘記事項(イ)に,粗粒分から細粒分までまんべんなく分布した状態を保つことができる旨が記載されているといえるものの,粒度の具体的な記載はなく,コンクリート破砕物全量の粒度は不明であり,粉砕条件により粒度が変化することを考えると,その粒度がJISに規定された骨材の標準粒度であるか否かは不明であるといわざるをえず,標準粒度でないことも十分に考えられるといえるところ, 引用例4には,その摘記事項(ア)に「経済的で所要の品質を有するコンクリートが得られる粒度の範囲を示すのが,現実的対応となる。土木・建築学会やJISでは,このような粒度分布の標準的な範囲を与えており,表-2.6は,JIS A 5308(・・・)に示されている砂利および砂の標準粒度である。・・・実測した粒度曲線がこの範囲内に収まっていれば,普通の場合,この骨材を用いて,ワーカビリティーなどの所要の品質を有するコンクリートが経済的に得られると考える。範囲から大きく外れる骨材に関しては,他の骨材を混合し,標準粒度となるよう粒度調整して用いるのがよい。」と記載され,ワーカビリティーなどの所要の品質を有するコンクリートを経済的に得るには,骨材の粒度をJIS A 5308(・・・)に示されている砂利および砂の標準粒度とすることが有効であり,標準粒度から外れる場合には,他の骨材を混合して標準粒度とすることが有効であることが示されているといえる。 してみると,引用例1発明における生コンクリートをワーカビリティーなどの品質が所要のものとなるようにするべく,他の骨材を添加して「コンクリート破砕物全量」の粒度を標準粒度とすることは当業者が困難なく想起できることといえる。 以上のことから,引用例1発明の「コンクリート破砕物の全量と当該全量に対応した配合量の水とセメント」の配合割合として「骨材としてコンクリート破砕物を用いない普通のコンクリートの骨材と水とセメントの配合割合と同じ配合割合」として,これらを混練させ,該混練中に,混練物のワーカビリティーの良否を逐次検知しながら混練物に砂を添加させ,混練物が所定のワーカビリティーとなったときに,上記混練物への砂の添加を停止させること,そのことに伴って,砂を配合材料として特定することは,当業者が容易に為し為し得ることといえる。なお,「砂を少量宛」添加することは,配合調整する際の常套手段ともいえ,設計的な技術事項にすぎないものである。 そして,これら相違点a?cに係る本願補正発明の特定事項を採ることによって奏する本願明細書に記載の効果も,引用例1?4及び周知技術から予測し得ることであるから,これを格別であるとすることはできない。 以上のとおりであるから,本願補正発明は,本出願前に頒布された刊行物である引用例1?4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3-3.むすび 以上のとおりであるから,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 平成20年1月24日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された発明は,平成19年8月3日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,そのうちの請求項1に記載された発明(以下,「本願発明1」という。)は,次のとおりである。 「【請求項1】 コンクリート塊の破砕物と水とセメントと砂とからなる生コンクリートの製造方法であって,一回分の生コンクリートを製造するのに必要な量のコンクリート破砕物全量と水とセメントとを,骨材としてコンクリート破砕物を用いない普通のコンクリートの骨材と水とセメントとの配合割合と同じ配合割合でもって混練部内に投入して混練する工程と,この混練物のワーカビリティーの良否を検知する工程と,混練物が所定のワーカビリティーとなるまで上記混練部に砂を添加する工程とからなることを特徴とする生コンクリートの製造方法。」 IV.原査定の拒絶理由 原査定の拒絶理由は,「この出願は,平成19年5月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって,拒絶すべきものである。」であり,備考において、周知文献を提示した。そして、平成19年5月24日付け拒絶理由通知書に記載の理由1は「この出願の請求項1,2に係る発明は,その出願前に頒布された刊行物である引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2001-150426号公報 引用文献2:特公昭49-5153号公報 引用文献3:特開昭62-92810号公報 というものである。 V.引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1?3、及び周知文献は,上記「II.3」の引用例1?3及び4であり,それらの記載事項は,「II.3.3-1.(1),(2)」に記載したとおりである。 そして,引用例1発明は,「II.3.3-2.」に記載したとおり,「コンクリート塊の破砕物と水とセメントとを混練して生コンクリートを製造する方法であって,計重用ホッパーを設けて製造した必要量だけのコンクリート破砕物の全量と当該全量に対応した配合量の水とセメントと混和剤をミキサー内に投入して混練して生コンクリートを製造する方法」というものである。 VI.対比・判断 本願発明1は,上記「II.」で検討した本願補正発明における「この混練中に,混練物のワーカビリティーの良否を逐次検知しながら混練物に砂を少量宛,添加する工程と,混練物が所定のワーカビリティーとなったときに,上記混練物への砂の添加を停止する工程とからなる」が「この混練物のワーカビリティーの良否を検知する工程と,混練物が所定のワーカビリティーとなるまで上記混練部に砂を添加する工程とからなる」である点に相違があるが,他の構成は,本願補正発明と同じである。そして,この相違については,本願発明1は、本願補正発明の上位の概念である、混練物のワーカビリティーの良否を検知すること,混練物が所定のワーカビリティーとなるまで混練部に砂を添加することを実質的に限定したものとみることができる。 してみると,本願発明1の特定事項を実質的に全て含み上記の点で減縮した本願補正発明が前記「II.3.3-2.」でみた理由により,引用例1?4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も本願補正発明と同様の理由により当業者が容易に発明することができたものである。 VII.むすび 以上のとおりであるから,本願発明1は,出願前に頒布された刊行物である引用例1?4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして,本願は,その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-13 |
結審通知日 | 2010-12-21 |
審決日 | 2010-12-28 |
出願番号 | 特願2002-265340(P2002-265340) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B28C)
P 1 8・ 121- Z (B28C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 増山 淳子、相田 悟 |
特許庁審判長 |
大黒 浩之 |
特許庁審判官 |
深草 祐一 中澤 登 |
発明の名称 | 生コンクリートの製造方法 |
代理人 | 山本 拓也 |