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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1235188
審判番号 不服2008-27057  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-23 
確定日 2011-04-11 
事件の表示 特願2003-428403「再生システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月14日出願公開、特開2005-190522〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成15年12月24日の出願であって、平成20年7月22日付け拒絶理由通知に対する応答期間内の同年9月19日付けで手続補正がなされたが、同年10月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月23日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月25日付けで手続補正がなされた。
その後、平成22年9月10日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年11月12日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成20年11月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年11月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正

平成20年11月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)による特許請求の範囲の補正は、本件補正前に、
「【請求項1】
コンテンツデータを記憶する記憶手段と、
上記記憶手段に記憶された上記コンテンツデータを再生し出力信号を生成する再生手段と、
生成された前記出力信号を出力する出力手段と
を有する再生装置と、
上記再生装置から送信される上記コンテンツデータを受信する受信手段と、
上記受信したコンテンツデータを、上記再生装置の再生手段よりも高精度に再生し、出力信号を生成する他の再生手段と
を有する他の再生装置と
を具える再生システム。
【請求項2】
上記再生手段は、暗号化圧縮音楽データでなる上記コンテンツデータに対して、伸長復号処理及びD/A変換処理を施すことにより上記出力信号として音楽信号を生成し、
上記他の再生手段は、上記受信したコンテンツデータに対して上記再生手段の処理精度より高い処理精度で伸長復号処理及びD/A変換処理を施すことにより上記出力信号として音楽信号を生成する
請求項1に記載の再生システム。
【請求項3】
上記再生装置は、ユーザの所定操作に応じて上記他の再生装置と無線接続した後、ユーザにより再生操作が行われると、当該再生操作に応じた上記コンテンツデータを上記他の再生装置へ送信する
請求項1に記載の再生システム。
【請求項4】
上記他の再生装置は、上記再生装置と上記無線接続したとき、当該再生装置に対する認証処理を実行し、
上記再生装置は、上記他の再生装置により上記認証処理が実行されると、上記コンテンツデータからの上記信号の再生に用いる上記再生手段を上記他の再生装置の上記高精度再生手段に切り替える
請求項3に記載の再生システム。
【請求項5】
上記他の再生装置は、上記再生装置が載置される載置部を有し、
上記再生装置は、上記載置部に載置された状態でユーザにより再生操作が行われると、当該再生操作に応じた上記コンテンツデータを上記他の再生装置へ送信する
請求項1に記載の再生システム。
【請求項6】
上記他の再生装置は、上記再生装置が上記載置部に載置されたとき、当該再生装置に対する認証処理を実行し、
上記再生装置は、上記他の再生装置により上記認証処理が実行されると、上記コンテンツデータからの上記信号の再生に用いる上記再生手段を上記他の再生装置の上記高精度再生手段に切り替える
請求項5に記載の再生システム。
【請求項7】
コンテンツデータを記憶する記憶手段と、
上記記憶手段に記憶している上記コンテンツデータから信号を再生する再生手段と、
上記再生手段よりも高精度に上記コンテンツデータから上記信号を再生する高精度再生手段を有する再生装置に対して、上記記憶手段に記憶している上記コンテンツデータを送信する送信手段と
を具える携帯再生装置。
【請求項8】
コンテンツデータを記憶する記憶手段と上記記憶手段に記憶された上記コンテンツデータを再生し出力信号を生成する再生手段とを有する携帯再生装置から送信される上記コンテンツデータを受信する受信手段と、
上記受信した上記コンテンツデータを、上記携帯再生装置の上記再生手段よりも高精度に再生し出力信号を生成する高精度再生手段と
を具える再生装置。
【請求項9】
コンテンツデータを記憶する記憶手段と上記記憶手段に記憶された上記コンテンツデータを再生し出力信号を生成する再生手段とを有する再生装置から送信される上記コンテンツデータを他の再生装置が受信する第1のステップと、
上記受信したコンテンツデータを上記再生装置の再生手段よりも高精度に再生し、出力信号を生成する高精度再生手段を有する上記他の再生装置が、上記高精度再生手段によって、上記受信した上記コンテンツデータを再生する第2のステップと
を具える再生方法。」
とあったところを、

本件補正後、
「【請求項1】
圧縮符号化されたコンテンツデータを記憶する第1の記憶手段と、
上記第1の記憶手段に記憶された上記コンテンツデータを読み出して復号、伸長、及びD/A変換処理をして出力する再生手段と、
上記第1の記憶手段に記憶された上記コンテンツデータを読み出して送信信号として送信する送信手段と
を有する再生装置と、
上記再生装置の上記送信手段から送信される上記送信信号を受信する受信手段と、
当該受信した上記送信信号から上記コンテンツデータを得て記憶する第2の記憶手段と、
上記第2の記憶手段に記憶された上記コンテンツデータを読み出して、上記再生手段の処理精度より高い処理精度で、復号、伸長、及びD/A変換処理をして出力する他の再生手段と
を有する他の再生装置と
を具える再生システム。
【請求項2】
上記再生手段は、圧縮符号化された音楽データでなる上記コンテンツデータに対して、復号、伸長、及びD/A変換処理を施すことにより音楽信号を出力し、
上記他の再生手段は、上記受信したコンテンツデータに対して上記再生手段の復号、伸長、及びD/A変換処理精度より高い処理精度で復号、伸長、及びD/A変換処理を施すことにより上記再生手段から得られる音楽信号より品質の良い音楽信号を生成する
請求項1に記載の再生システム。
【請求項3】
上記再生装置は、ユーザの所定操作に応じて上記他の再生装置と無線接続した後、ユーザにより再生操作が行われると、当該再生操作の応じた上記コンテンツデータを上記他の再生装置へ送信する
請求項1に記載の再生システム。
【請求項4】
上記他の再生装置は、上記再生装置と上記無線接続したとき、当該再生装置に対する認証処理を実行し、
上記再生装置は、上記他の再生装置により上記認証処理が実行されると、上記コンテンツデータからの信号の再生に用いる手段を上記再生手段から上記他の再生装置の高い処理精度の上記他の再生手段に切り替える
請求項3に記載の再生システム。
【請求項5】
上記他の再生装置は、上記再生装置が載置される載置部を有し、
上記再生装置は、上記載置部に載置された状態でユーザにより再生操作が行われると、当該再生操作に応じた上記コンテンツデータを上記他の再生装置へ送信する
請求項1に記載の再生システム。
【請求項6】
上記他の再生装置は、上記再生装置が上記載置部に載置されたとき、当該再生装置に対する認証処理を実行し、
上記再生装置は、上記他の再生装置により上記認証処理が実行されると、上記コンテンツデータからの信号の再生に用いる手段を上記再生手段から上記他の再生装置の高い処理精度の上記他の再生手段に切り替える
請求項5に記載の再生システム。
【請求項7】
圧縮符号化されたコンテンツデータを記憶する記憶手段と、
上記記憶手段に記憶している上記コンテンツデータを復号、伸長、及びD/A変換処理して出力する再生手段と、
上記コンテンツデータを上記再生手段よりも高い処理精度で復号、伸長、及びD/A変換処理して出力する高い処理精度の他の再生手段を有する他の再生装置に対して、上記記憶手段に記憶している上記コンテンツデータを送信する送信手段と
を具える携帯再生装置。
【請求項8】
圧縮符号化されたコンテンツデータを記憶する記憶手段と上記記憶手段に記憶された上記コンテンツデータを復号、伸長、及びD/A変換処理して出力する再生手段とを有する携帯再生装置から送信される上記コンテンツデータを受信する受信手段と、
上記受信した上記コンテンツデータを、上記携帯再生装置の上記再生手段よりも高い処理精度で復号、伸長、及びD/A変換処理して出力する高い処理精度の他の再生手段と
を具える再生装置。
【請求項9】
圧縮符号化されたコンテンツデータを記憶する記憶手段と上記記憶手段に記憶された上記コンテンツデータを復号、伸長、及びD/A変換処理して出力する再生手段とを有する再生装置から送信される上記コンテンツデータを他の再生装置が受信する第1のステップと、
上記受信したコンテンツデータを上記再生装置の再生手段よりも高い処理精度で復号、伸長、及びD/A変換処理して出力する高い処理精度の他の再生手段を有する上記他の再生装置が、上記他の再生手段によって、上記受信した上記コンテンツデータを再生する第2のステップと
を具える再生方法。」
とするものである。

2.本件補正の適否
<限定的減縮の違反>
本件補正に関して、請求人は、審判請求の理由(平成20年12月24日付けの請求の理由の手続補正書の「3.(2)補正の根拠」)において、「別途平成20年11月25日付け手続補正書によって補正した特許請求の範囲の訂正事項は、本願明細書の段落番号〔0058〕?〔0060〕、〔0065〕?〔0067〕の記載に基づくものである」旨主張している。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明について検討する。
(1)補正前の請求項1における「生成された前記出力信号を出力する出力手段」を削除し、補正後「上記第1の記憶手段に記憶された上記コンテンツデータを読み出して送信信号として送信する送信手段」とし、また、(2)新たに「当該受信した上記送信信号から上記コンテンツデータを得て記憶する第2の記憶手段」との構成を追加したものであり、これらは発明を特定するために必要な事項を変更ないし拡張するものである。
なお、審判請求人は、審尋に対する回答書において、上記(2)に関し、『ここで、当該第2の記憶手段の記憶動作は、実質上データの一時記憶動作をするもので、これによりコンテンツデータの処理を、再生手段固有の処理精度の処理系から、他の再生手段固有の処理精度の処理系に切り換えることになる。この処理精度を切り換える構成は、上記補正前の請求項1においても、「受信したコンテンツデータを、上記再生装置の再生手段よりも高精度に再生し」の構成要件に内在しているもので、補正後の請求項1の構成要件は、補正前の請求項1を減縮したと言って良い。』旨、主張している。
しかしながら、本願明細書には、「やがてこの認証処理が正常に終了した後、携帯再生装置3から暗号化圧縮音楽データが送信されると、メインコントローラ41は無線接続部40を介してこれを受信し、受信した暗号化圧縮音楽データを一時的にメモリ43へ記憶しながら(いわゆるバッファリング)、これを復号化部44へ順次送出する。」(段落【0057】)、「そしてこの認証処理が正常に終了した後、例えば携帯再生装置3の操作部33に対して再生操作が行われることにより当該携帯再生装置3から暗号化圧縮音楽データが送信されると、メインコントローラ51は接続部50を介してこれを受信し、受信した暗号化圧縮音楽データをハードディスクドライブ53へ一時的に記憶しながら(バッファリングに相当する)、これを復号化部54へ順次送出する。」(段落【0064】)、「この時携帯再生装置3のメインコントローラ31は、再生専用オーディオ機器5から認証処理結果が通知されたタイミングで暗号化圧縮音楽データからの音楽信号の再生に用いるデコーダ部36及び音楽データ処理部37を当該再生専用オーディオ機器5のデコーダ部45及び音楽データ処理部46に切り替えるように設定する。」(段落【0073】)、「このとき携帯再生装置3のメインコントローラ31は、オーディオ機器6から認証処理結果が通知されたタイミングで暗号化圧縮音楽データからの音楽信号の再生に用いるデコーダ部36及び音楽データ処理部37を当該オーディオ機器6のデコーダ部55及び音楽データ処理部57に切り替えるように設定する。」(段落【0084】)、「さらに上述の実施の形態においては、携帯再生装置3のメインコントローラ31が、再生専用オーディオ機器5やオーディオ機器6から認証処理結果が通知されたタイミングで暗号化圧縮音楽データからの音楽信号の再生に用いるデコーダ部36及び音楽データ処理部37を、当該再生専用オーディオ機器5のデコーダ部45及び音楽データ処理部46やオーディオ機器6のデコーダ部55及び音楽データ処理部57に切り替えるように設定する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、携帯再生装置3が再生専用オーディオ機器5やオーディオ機器6とのデータ通信を開始したタイミング、また携帯再生装置3がステーション7の挿入孔HLに差し込まれた旨を検知したタイミング等のように、この他種々のタイミングで、暗号化圧縮音楽データからの音楽信号の再生に用いるデコーダ部36及び音楽データ処理部37を、当該再生専用オーディオ機器5のデコーダ部45及び音楽データ処理部46やオーディオ機器6のデコーダ部55及び音楽データ処理部57に切り替えるように設定するようにしても良い。」(段落【0116】)と記載され、携帯再生装置3のメインコントローラ31がデコーダ部36及び音楽データ処理部37を再生専用オーディオ機器5やオーディオ機器6のデコーダ部及び音楽データ処理部に切り替えており、「メモリ」や「ディスクドライブ」の記憶動作が再生手段の処理系を切り替えているものではないので、請求人の上記主張は採用できない。
結局、補正後の請求項1に係る発明は、発明を特定するために必要な事項を減縮するものでないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、同条第4項の他の各号に規定する請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。

3.補正についてのむすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明

1.本願発明

平成20年11月25日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1ないし9に係る発明は、平成20年9月19日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、上記「第2 [理由]1.本件補正前」の請求項1に記載されたとおりのものである。

2.引用例

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-373484号公報(平成14年12月26日公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポータブルオーディオ機器及び車載オーディオ機器に係わり、特に、ポータブルオーディオ機器の所有者が車両に乗り込んだとき、あるいは、車両より降りたとき、両機器を連携させてオーディオデータを連続再生することができるポータブルオーディオ機器と車載オーディオ機器に関する。」

(2)「【0008】
【発明の実施の形態】(A)ポータブルオーディオ機器及び車載オーディオ機器
(a)ポータブルオーディオ機器
図1はポータブルオーディオ機器の構成図であり、11は各曲のオーディオデータを記憶するメモリ、12はメモリよりオーディオデータを読み出す読出制御部、13は車載オーディオ機器に設けられている無線送受信部と双方向に通信可能な無線送受信部(例えば、Bluetooth送受信部)、14は入力したオーディオデータに基づいてオーディオ音を再生するオーディオ再生部、15はオーディオ音を放射する内蔵スピーカまたはヘッドフォン、16はポータブルオーディオ機器全体を制御する制御部、17は電源オン/オフ回路、18は制御データ解読・作成部であり、無線通信により車載オーディオ機器から送られてくる制御データを解読して制御部16に入力すると共に、制御部16からの指示により車載オーディオ機器に送出する制御データを作成する。19は各種操作指示を入力する操作部、20は出力切替部であり、メモリ11から読出されたオーディオデータをオーディオ再生部14あるいは無線送受信部13(車載オーディオ機器)に入力するもの、21は入力切替部であり、メモリから読出されたオーディオデータと無線送受信部13(車載オーディオ機器)から入力するオーディオデータの一方を選択してオーディオ再生部14に入力する。
【0009】(b)車載オーディオ機器
図2は車載オーディオ機器の構成図であり、31はオーディオ再生部であり、ディジタルのオーディオデータをアナログ信号にDA変換し、しかる後、適宜音質制御、音量制御、増幅制御を施してスピーカ32よりオーディオ音を放射する。33はポータブルオーディオ機器(図1)に設けられている無線送受信機13と双方向に通信可能な無線送受信部(例えば、Bluetooth送受信部)、34はCDプレーヤ、ミニディスク装置などの車載のオーディオソース、35は車載オーディオ機器全体を制御する制御部、36は制御データ解読・作成部であり、無線通信によりポータブルオーディオ機器から送られてくる制御データを解読して制御部35に入力すると共に、制御部35からの指示によりポータブルオーディオ機器に送出する制御データを作成する。
【0010】37は各種操作指示を入力する車載オーディオ機器の操作部、38は各部に電圧を供給する電源回路であり、アクセサリースイッチACC SW、操作部上の電源ボタンによりオン/オフする。39はアクセサリースイッチACC SWのオン/オフを検出するACC ON/OFF検出部、40は出力切替部であり、オーディオソース34から出力するオーディオデータをオーディオ再生部31あるいは無線送受信部33(ポータブルオーディオ機器)に入力するもの、41は入力切替部であり、オーディオソースから出力するオーディオデータと無線送受信部33を介してポータブルオーディオ機器から入力するオーディオデータの一方を選択してオーディオ再生部31に入力する。」

引用例に記載のものは、ポータブルオーディオ機器と車載オーディオ機器とを連携させてオーディオデータを再生しており、両機器を再生システムとして捉えることができることを踏まえて、上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「オーディオデータを記憶するメモリと、
上記メモリから読み出されたオーディオデータに基づいてオーディオ音を再生するオーディオ再生部14と、
上記オーディオ音を放射する内蔵スピーカと
を有するポータブルオーディオ機器と、
無線送受信部と、
上記無線送受信機を介してポータブルオーディオ機器から入力するオーディオデータに基づいてオーディオ音を再生するオーディオ再生部31と
を有する車載オーディオ機器と
を具える再生システム。」

3.対比

そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「オーディオデータ」及び「メモリ」は、本願発明の「コンテンツデータ」及び「記憶手段」にそれぞれ相当する。
(2)引用発明の「オーディオ音」及び「オーディオ再生部14」は、本願発明の「出力信号」及び「再生手段」にそれぞれ相当する。
(3)引用発明の「内蔵スピーカ」は、本願発明の「出力手段」に相当する。
(4)引用発明の「ポータブルオーディオ機器」は、本願発明の「再生装置」に相当する。
(5)引用発明の「無線送受信部」は、ポータブルオーディオ機器から送信されるオーディオデータを受信していることは明らかであるから、本願発明の「受信手段」に相当する。
(6)引用発明の「オーディオ再生部31」は、「上記無線送受信機を介してポータブルオーディオ機器から入力するオーディオデータに基づいてオーディオ音を再生する」ものであるから、本願発明の「上記受信したコンテンツデータを」「再生し、出力信号を生成する他の再生手段」と共通する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>
「コンテンツデータを記憶する記憶手段と、
上記記憶手段に記憶された上記コンテンツデータを再生し出力信号を生成する再生手段と、
生成された前記出力信号を出力する出力手段と
を有する再生装置と、
上記再生装置から送信される上記コンテンツデータを受信する受信手段と、
上記受信したコンテンツデータを、再生し、出力信号を生成する他の再生手段と
を有する他の再生装置と
を具える再生システム。」

そして、次の点で相違する。

<相違点>
「他の再生手段」について、本願発明は、「上記再生装置の再生手段よりも高精度」に再生し、出力信号を生成するものであるのに対し、引用発明は、高精度とするか特定されていない点。

4.判断

携帯用小型記録再生機器においては、筐体面積や容量等が制限されるため、内部に設けられる回路や機能が制限されることは周知(必要であれば,特開平8-111067号公報の【従来の技術】の記載等参照)である。
引用発明において、ポータブルオーディオ機器は携帯型小型機器であること、また、ポータブルオーディオ機器及び車載オーディオ機器のオーディオ再生部14、31はそれぞれの機器に応した回路設計を行うのが極普通であるから、オーディオ再生部31(他の再生手段)がオーディオ再生部14(再生手段)よりも高精度に再生されるように構成することは当業者が容易に想到できたものである。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用例及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。
4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-03 
結審通知日 2011-02-10 
審決日 2011-02-23 
出願番号 特願2003-428403(P2003-428403)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 573- Z (G11B)
P 1 8・ 571- Z (G11B)
P 1 8・ 572- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下林 義明小林 大介  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 早川 学
石川 正二
発明の名称 再生システム  
代理人 田辺 恵基  

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