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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B27C
管理番号 1235471
審判番号 不服2009-12802  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-14 
確定日 2011-04-08 
事件の表示 特願2002-302572「下地材加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月13日出願公開、特開2004-136526〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成14年10月17日の特許出願であって、同21年3月17日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月18日に手続補正がなされ、同年6月17日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年7月14日に本件審判の請求とともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、同22年6月21日に審尋がされたが、指定期間内に応答がなかったものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲、及び対応する発明の詳細な説明について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載(当審で改行表記した)は、以下のとおりである。

(1)補正前
「ベース台に固着された支持枠の上部の上部台上に平行に配置された2つの縦レールと、
該縦レールに沿って移動される移動部材と、前記上部台上の一方の縦レールの外側に前記縦レールと平行に配置された第1のサーボモータで回転して前記移動部材を前記縦レールに沿って移動する縦ネジ軸と、
前記移動部材に装着された横レールと前記移動部材に装着された第2のサーボモータで回転される横ネジ軸によって移動されるヘッド台と、
該ヘッド台に装着されたボスに係合され、上部に設けた第3のサーボモータで回転され、かつ前記移動部材の長孔の間を通って下方に突出する柱材とともに移動する縦ネジ軸と、
該縦ネジ軸の下端に装着され、前記第3のサーボモータで上下に移動される加工ヘッドと、
該加工ヘッドに装着されてモータで回転される加工具と、
該加工ヘッドの下方に設置され、先頭位置決めストッパ、上クランプ及び横クランプがそれぞれ装着された第1、第2の材料位置決め台と、
該第1、第2の材料位置決め台と併設されて上クランプ及び横クランプがそれぞれ装着された第3、第4の位置決め台とからなる加工装置と、
該加工装置の前記第1、第2の材料位置決め台に接続された第1、第2の搬入コンベアと、
前記第3、第4の材料位置決めに接続される第1、第2の搬出コンベアとからなり、
前記第1の搬入コンベアで搬入されて前記第1の材料位置決め台で位置決めされた材料を加工している間に、前記第2の搬入コンベアで材料を搬入して前記第2の材料位置決め台で前記材料を位置決めすることを交互に繰り返すようにすることを特徴とする下地材加工装置。」

(2)補正後
「ベース台に固着された支持枠の上部の上部台上に平行に配置された2つの縦レールと、
該縦レールに沿って移動される移動部材と、前記上部台上の一方の縦レールの外側に前記縦レールと平行に配置された第1のサーボモータで回転して前記移動部材を前記縦レールに沿って移動する縦ネジ軸と、
前記移動部材に装着された横レールと前記移動部材に装着された第2のサーボモータで回転される横ネジ軸によって移動されるヘッド台と、
該ヘッド台に装着されたボスに係合され、上部に設けた第3のサーボモータで回転され、かつ前記移動部材の長孔の間を通って下方に突出する柱材とともに移動する縦ネジ軸と、
該縦ネジ軸の下端に装着され、前記第3のサーボモータで上下に移動される1つの加工ヘッドと、
該1つの加工ヘッドに装着されてモータで回転される加工具と、
前記1つの加工ヘッドの下方に設置され、先頭位置決めストッパ、上クランプ及び横クランプがそれぞれ装着された第1、第2の材料位置決め台と、
該第1、第2の材料位置決め台に併設されて上クランプ及び横クランプがそれぞれ装着された第3、第4の位置決め台とからなる加工装置と、
該加工装置の前記第1、第2の材料位置決め台に接続された第1、第2の搬入コンベアと、
前記第3、第4の材料位置決めに接続される第1、第2の搬出コンベアとからなり、
前記第1の搬入コンベアで搬入されて前記第1の材料位置決め台で位置決めされた材料を、前記移動部材の移動と前記移動部材上で前記移動部材に対して直交方向に移動する前記ヘッド第によって、前記1つの加工ヘッドを位置決めし、前記1つの加工ヘッドで加工している間に、前記第2の搬入コンベアで材料を搬入して前記第2の材料位置決め台で前記材料を位置決めし、さらに、前記1つの加工ヘッドを位置決めして前記1つの加工ヘッドで加工することを交互に繰り返すことを特徴とする下地材加工装置。」

2.補正の適否
本件補正の特許請求の範囲の補正後の請求項1についての補正は、「加工ヘッド」について「1つの」なる事項を付加し、「第1、第2の材料位置決め台と併設」を「第1、第2の材料位置決め台に併設」とし、「材料を加工している間に」を「材料を、前記移動部材の移動と前記移動部材上で前記移動部材に対して直交方向に移動する前記ヘッド第によって、前記1つの加工ヘッドを位置決めし、前記1つの加工ヘッドで加工している間に」とし、「第2の搬入コンベアで材料を搬入して前記第2の材料位置決め台で前記材料を位置決めすることを交互に繰り返すようにすること」を「第2の材料位置決め台で前記材料を位置決めし、さらに、前記1つの加工ヘッドを位置決めして前記1つの加工ヘッドで加工することを交互に繰り返すこと」とするものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明における「前記ヘッド第」、「前記第3、第4の材料位置決めに接続」は正しくは「前記ヘッド台」、「前記第3、第4の位置決め台に接続」であると認められる。
よって、補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、かかる誤記を正した上で、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
ア.刊行物1
これに対し、原査定の拒絶理由で引用された刊行物である特開平11-90905号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)段落0008
「【0008】そこで、本発明は、木材の木口部分をプレカット加工する際の待ち時間を減少させることにより、加工効率を向上させることを目的とする。」

(イ)段落0035?0037
「【0035】
【発明の実施の形態】次に、本発明の一実施の形態を、図面に従って説明する。実施の形態のプレカット加工設備1は、図1の模式的構成図に示す様に、プレカット加工機PCMと、このプレカット加工機PCMの右側に配置される第1のローラコンベア群RC1と、この第1のローラコンベア群RC1の延長線上反対側に配置される第2のローラコンベア群RC2と、この第2のローラコンベア群RC2と同じ側で後方に平行にずれた位置に配置される第3のローラコンベア群RC3と、第2のローラコンベア群RC2から第3のローラコンベア群RC3へと木材を横移動によって受け渡す木材受渡装置S1と、前工程の装置から第1のローラコンベア群RC1上へ横移動によって木材を投入する木材投入装置S2と、第3のローラコンベア群RC3上の木材を横移動によって後工程の装置あるいは木材ストック場所へと運び出す木材搬出装置S3とによって構成されている。
【0036】第1のローラコンベア群RC1は、プレカット加工機PCMの固定ベース2の前方右側に取り付けられた短いローラコンベアRC11(以下、「第1の固定コンベアRC11」と呼ぶ。)と、その右側に別体で設置された長いローラコンベアRC12(以下、「第1のコンベア本体RC12」と呼ぶ。)とによって構成されている。
【0037】第2,第3のローラコンベア群RC2,RC3も同様に、プレカット加工機PCMの固定ベース2に取り付けられた短いローラコンベアRC21,RC31(以下、「第2の固定コンベアRC21、第3の固定コンベアRC31」と呼ぶ。)と、それぞれの左側に別体で設置された長いローラコンベアRC22,RC32(以下、第2のローラコンベア本体RC22、第3のコンベア本体RC32」と呼ぶ。)とによって構成されている。」

(ウ)段落0042?0055
「【0042】本実施の形態におけるプレカット加工機PCMは、図2に示す様に、固定ベース2上を移動可能に設けられた加工ヘッドHDと、固定ベース2の右側前方に配置される第1の固定コンベアRC11と、この第1の固定コンベアRC11の反対側に配置される第2の固定コンベアRC21と、第1,第2の固定コンベアRC1,RC2の間を連絡する中間コンベアRC4と、固定ベース2に対して第2の固定コンベアRC21と同じ側で若干後方にずらして配置される第3の固定コンベアRC31とを備えている。(以下略)。
【0043】まず、加工ヘッドHDについて説明する。加工ヘッドHDは、図1?図3のそれぞれに示す様に、固定ベース2上を前後方向に伸びる前後方向レール11,11上を移動可能に設けられる前後方向スライドベース12と、この前後方向スライドベース12上を左右方向に伸びる左右方向レール13,13上を移動可能に設けられる左右方向スライドベース14とを備えている。また、この左右方向スライドベース14上には門形フレーム15が立設されている。そして、加工ヘッドHDは、この門形フレーム15の前面に設けられた上下方向レール16,16(図4参照)にガイドされて昇降する昇降体17と、この昇降体17の前面に回転可能に設けられるターレットモータベース18とを備えている。このターレットモータベース18は、90度ずつ間欠的に回転角度を変更可能なものであり、その前面に木口加工用の複数種類のカッタ刃T1?T4が90度間隔で放射状に装着される(以下略)。
【0044】次に、前後方向スライドベース12、左右方向スライドベース14及び昇降体17の駆動機構について説明する。
【0045】まず、前後方向スライドベース12の駆動源として、図2,図4に示す様に、固定ベース2の後方に第1のACサーボモータM1が取り付けられている。この第1のACサーボモータM1は、図示しないコントローラからの制御信号に基づき、図3に示す様に固定ベース2上を前後方向に伸びる第1のネジ軸21を正逆回転させることにより、この第1のネジ軸21に螺合する第1のナット部材(図示略。前後方向スライドベース12の底面に固定されている。)とによって構成されるネジ送り機構を利用して、前後方向スライドベース12を移動制御する様に構成されている。
【0046】また、左右方向スライドベース14の駆動源として、図2に示す様に、前後方向スライドベース12の右側に第2のACサーボモータM2が取り付けられている。この第2のACサーボモータM2も、図示しないコントローラからの制御信号に基づき、図2,図4に示す様に前後方向スライドベース12上を左右方向に伸びる第2のネジ軸22を正逆回転させることにより、この第2のネジ軸22に螺合する第2のナット部材(こちらも図示略。左右方向スライドベース14の底面に固定されている。)とによって構成されるネジ送り機構を利用して、左右方向スライドベース14を左右方向に移動制御する様に構成されている。
【0047】さらに、昇降体17の駆動源としては、図3,図4に示す様に、門形ガイド15の上部に第3のACサーボモータM3が取り付けられている。この第3のACサーボモータM3も、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて、ネジ軸23を正逆回転させることにより、この第3のネジ軸23に螺合する第3のナット部材(こちらも図示略。昇降体17に固定されている。)とによって構成されるネジ送り機構を利用して、昇降体17を上下方向に移動制御する様になっている。(以下略)。
【0048】(略)。
【0049】次に、第1の固定コンベアRC11の直近左側に設定される第1の加工位置P1に木材Wの左端を臨ませて固定するための機構について説明する。
【0050】図3に示す様に、第1の固定コンベアRC11は、その固定台RC11aに取り付けられているモータM5によって駆動されるチェーンCH2により各ローラを正逆回転可能とされている。また、第1のローラコンベアRC11の側面には、図2において前後方向に接近・離間する横押さえ用クランパ31が備えられている。この横押さえ用クランパ31は、図示省略した油圧駆動装置によって駆動される様になっている。また、図3,図4に示す様に、固定台RC11aの側面には支柱32が取り付けられており、この支柱32の上端部分に、図3に示す様に、油圧シリンダOC1によって上下動される上押さえ用クランパ33が備えられている。(以下略)。
【0051】(略)。
【0052】さらに、第1の固定コンベアRC11の左側には、図2,図4に示す様に、第1の加工位置P1に木材Wの左端を臨ませて停止させるための第1のストッパ41が設けられている。(以下略)。
【0053】この様な機構により、第1の固定コンベアRC11上を右から左へと木材Wを搬送してくるとき、まず、第1のストッパ41を突出状態にしておく。そして、第1のストッパ41に木材を当接させた後も第1の固定コンベアRC11による木材送り動作を続行し、この間に横押さえ用クランパ31及び上押さえ用クランパ33を駆動して木材Wの上下及び側面をクランプして固定する。なお、横押さえ用クランパ31及び上押さえ用クランパ33を、以下、総称して第1のクランパ31,33と呼ぶ。
【0054】次に、第3の固定コンベアRC31の直近右側に設定される第2の加工位置P2に木材Wの右端を臨ませて固定するための機構について説明する。この機構は、前述した第1の加工位置P1に木材Wの左端を臨ませて固定するための機構とほぼ同様である。
【0055】図3に示す様に、第3の固定コンベアRC31も、その固定台RC31aに取り付けられているモータM6によって駆動されるチェーンCH3により各ローラを正逆回転可能とされ、油圧駆動の横押さえ用のクランパ51、支柱52、上押さえ用のクランパ53、遊転ローラ54及びフード55と、油圧シリンダOC2及びエアシリンダAC5とを備えている。(以下略)。」

(エ)段落0059
「【0059】なお、本実施の形態では、図2,図4から理解される様に、第1の加工位置P1でプレカット加工を行っている最中に、第2の加工位置P2への木材Wの搬入及び固定が可能であり、かつ、第2の加工位置P2でプレカット加工を行っている最中に、中間コンベアRC4を連絡位置へ移動すると共に第1の加工位置P1への木材Wの搬入及び固定が可能となる様に、第1,第2の加工位置P1,P2の位置関係を設定してある。」

(オ)図2?3
平行に配置された2つの前後方向レール11,11があること、
ターレットモータベース18は1つであること、
第1の固定コンベアRC11に接続された第1の固定コンベア本体RC12、第2の固定コンベアRC21、第3の固定コンベアRC31に接続される第2の固定コンベア本体RC22、第3の固定コンベア本体RC32があること、
が看取できる。

これら事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「固定ベース2上に平行に配置された2つの前後方向レール11,11と、
該前後方向レール11,11に沿って移動される前後方向スライドベース12と、
前記固定ベース2上の後方に前記前後方向レール11,11と平行に配置された第1のACサーボモータM1で回転して前記前後方向スライドベース12を前記前後方向レール11,11に沿って移動する第1のネジ軸21と、
前記前後方向スライドベース12に装着された左右方向レール13,13と前記前後方向スライドベース12に装着された第2のACサーボモータM2で回転される第2のネジ軸22によって移動される左右方向スライドベース14と、
第3のナット部材に螺合され、左右方向スライドベース14上に立設した門形フレーム15の上部に設けた第3のACサーボモータM3で回転される第3のネジ軸23と、
該第3のナット部材に固定され、前記第3のACサーボモータM3で上下に移動される昇降体17に設けた1つのターレットモータベース18と、
該1つのターレットモータベース18に装着されるカッタ刃T1と、
第1のストッパ41、上押さえ用クランパ33及び横押さえ用クランパ31が装着された第1の固定コンベアRC11と、
該第1の固定コンベアRC11の反対側に配置される第2の固定コンベアRC21、上押さえ用クランパ53及び横押さえ用クランパ51が装着された第3の固定コンベアRC31とからなる加工装置と、
該加工装置の前記第1の固定コンベアRC11に接続された第1の固定コンベア本体RC12と、前記第2の固定コンベアRC21、第3の固定コンベアRC31に接続される第2の固定コンベア本体RC22、第3の固定コンベア本体RC32とからなり、
前記第1の固定コンベア本体RC12で搬入されて前記第1の固定コンベアRC11で位置決めされた材料を、前記前後方向スライドベース12の移動と前記前後方向スライドベース12上で前記前後方向スライドベース12に対して直交方向に移動する前記左右方向スライドベース14によって、前記1つのターレットモータベース18を位置決めし、前記1つのターレットモータベース18で材料の左端をプレカット加工している最中に、材料の右端を加工するために、第3の固定コンベアRC31への材料の搬入及び固定を可能とした木材の加工装置。」

イ.刊行物2
同じく実願昭59-3307号(実開昭60-117102号)のマイクロフイルム(以下「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)明細書第1ページ第13?15行
「本考案は、木工用ルータ機などの加工機における被加工物固定用並列テーブルに関するものである。」

(イ)明細書第3ページ第14行?第4ページ末行
「第2図は本考案のテーブルを木工用ルータ機に使用した状態を示す図で、並列に配した機台1,1′の両側よりコラム10を立設し、該コラム10にはビーム11を横設して前記機台1,1′上に跨設し、該ビーム11には一側に配設したサーボモータ12によつて回動する螺杆13を横設すると共に、螺杆13によつて左右に摺動する基盤14を摺嵌し、基盤14に、サーボモータ15によつて上下動する支承盤16を摺嵌して、下向きに切削工具17を装着した加工用モータ18を並設したものである。
本考案は(略)サーボモータMを起動することにより、一方のテーブル4上に載置固定した被加工物Wの加工を行なつている間に、他方のテーブル4′に次の被加工物を供給若くは加工後の製品を搬出し、これを交互に繰返す(以下略)。
本考案によれば作業時間の短縮により能率は向上し、かつ大形被加工物でも何等の支障なく加工できる。」

これらの記載事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら整理すると、刊行物2には以下の発明(以下、「刊行物2事項」という。)が記載されていると認める。

「並列に配した一方のテーブル4、他方のテーブル4′と、加工用モータ18に装着される切削工具17とを有し、
一方のテーブル4上に載置固定した被加工物Wの加工を行なっている間に、他方のテーブル4′に次の被加工物を供給若くは加工後の製品を搬出し、これを交互に繰返すことにより、作業時間を短縮し能率を向上させた
木工用ルータ機。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを、技術常識を踏まえ、対比する。
刊行物1発明の「固定ベース2」は補正発明の「上部台」に相当し、同様に「前後方向レール11,11」は「縦レール」に、「前後方向スライドベース12」は「移動部材」に、「第1のACサーボモータM1」は「第1のサーボモータ」に、「第1のネジ軸21」は第1のサーボモータで回転する「縦ネジ軸」に、「左右方向レール13,13」は「横レール」に、「第2のACサーボモータM2」は「第2のサーボモータ」に、「第2のネジ軸22」は「横ネジ軸」に、「左右方向スライドベース14」は「ヘッド台」に、「第3のACサーボモータM3」は「第3のサーボモータ」に、「第3のネジ軸23」は柱材とともに移動する「縦ネジ軸」に、「昇降体17に設けた1つのターレットモータベース18」は「加工ヘッド」に、「カッタ刃T1」は「加工具」に、「第1のストッパ41、上押さえ用クランパ33及び横押さえ用クランパ31が装着された第1の固定コンベアRC11」は「先頭位置決めストッパ、上クランプ及び横クランプが装着された第1の材料位置決め台」に、「第1の固定コンベアRC11の反対側に配置されて」は「第1の材料位置決め台に併設されて」に、「第2の固定コンベアRC21」は「第3の位置決め台」に、「上押さえ用クランパ53及び横押さえ用クランパ51が装着された第3の固定コンベアRC31」は「上クランプ及び横クランプがそれぞれ装着された第4の位置決め台」に、「第1の固定コンベア本体RC12」は「第1の搬入コンベア」に、「第2の固定コンベア本体RC22、第3の固定コンベア本体RC32」は「第1、第2の搬出コンベア」に、「材料の左端をプレカット加工している最中」は「加工している間」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明の「第3のナット部材に螺合され、左右方向スライドベース14上に立設した門形フレーム15の上部に設けた第3のACサーボモータM3で回転される第3のネジ軸23と、該第3のナット部材に固定され、前記第3のACサーボモータM3で上下に移動される昇降体17に設けた1つのターレットモータベース18」と、補正発明の「ヘッド台に装着されたボスに係合され、上部に設けた第3のサーボモータで回転され、かつ前記移動部材の長孔の間を通って下方に突出する柱材とともに移動する縦ネジ軸と、縦ネジ軸の下端に装着され、前記第3のサーボモータで上下に移動される1つの加工ヘッド」とは、「上下ネジ軸と第3のサーボモータとを用い、ヘッド台に対して上下に移動される1つの加工ヘッド」である限りにおいて一致する。
刊行物1発明の「材料の右端を加工するために、第3の固定コンベアRC31への材料の搬入及び固定を可能とした」と、補正発明の「第2の搬入コンベアで材料を搬入して前記第2の材料位置決め台で前記材料を位置決めし、さらに、前記1つの加工ヘッドを位置決めして前記1つの加工ヘッドで加工することを交互に繰り返す」とは、「他の位置での材料を搬入、位置決めを可能とした」である限りにおいて一致する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「ベース台に固着された支持枠の上部の上部台上に平行に配置された2つの縦レールと、
該縦レールに沿って移動される移動部材と、前記上部台上の一方の縦レールの外側に前記縦レールと平行に配置された第1のサーボモータで回転して前記移動部材を前記縦レールに沿って移動する縦ネジ軸と、
前記移動部材に装着された横レールと前記移動部材に装着された第2のサーボモータで回転される横ネジ軸によって移動されるヘッド台と、
上下ネジ軸と第3のサーボモータとを用い、ヘッド台に対して上下に移動される1つの加工ヘッドと、
該1つの加工ヘッドに装着される加工具と、
先頭位置決めストッパ、上クランプ及び横クランプが装着された第1の材料位置決め台と、
該第1の材料位置決め台に併設された、第3の位置決め台と、上クランプ及び横クランプが装着された第4の位置決め台とからなる加工装置と、
該加工装置の前記第1の材料位置決め台に接続された第1の搬入コンベアと、
前記第3、第4の位置決め台に接続される第1、第2の搬出コンベアとからなり、
前記第1の搬入コンベアで搬入されて前記第1の材料位置決め台で位置決めされた材料を、前記移動部材の移動と前記移動部材上で前記移動部材に対して直交方向に移動する前記ヘッド台によって、前記1つの加工ヘッドを位置決めし、前記1つの加工ヘッドで加工している間に、他の位置での材料を搬入、位置決めを可能とした加工装置。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:上部台について、補正発明では「ベース台に固着された支持枠の上部」に設けられるが、刊行物1発明は明らかでない点。
相違点2:縦ネジ軸の位置について、補正発明では「上部台上の一方の縦レールの外側」であるが、刊行物1発明では「上部台上の後方」である点。
相違点3:「上下ネジ軸と第3のサーボモータとを用い、ヘッド台に対して上下に移動される1つの加工ヘッド」について、補正発明では「ヘッド台に装着されたボスに係合され、上部に設けた第3のサーボモータで回転され、かつ前記移動部材の長孔の間を通って下方に突出する柱材とともに移動する縦ネジ軸と、縦ネジ軸の下端に装着され、前記第3のサーボモータで上下に移動される1つの加工ヘッド」であるが、刊行物1発明では「第3のナット部材に螺合され、左右方向スライドベース14上に立設した門形フレーム15の上部に設けた第3のACサーボモータM3で回転される第3のネジ軸23と、該第3のナット部材に固定され、前記第3のACサーボモータM3で上下に移動される昇降体17に設けた1つのターレットモータベース18」である点。
相違点4:加工具について、補正発明は「モータで回転され」るものであるが、刊行物1発明は明らかでない点。
相違点5:材料位置決め台について、補正発明は「1つの加工ヘッドの下方に設置され」、「第2の材料位置決め台」をも有するが、刊行物1発明は「第2の材料位置決め台」を有さない点。
相違点6:第3の位置決め台について、補正発明は「上クランプ及び横クランプがそれぞれ装着された」ものであるが、刊行物1発明はそのようなものではない点。
相違点7:「他の位置での材料を搬入、位置決めを可能とした」について、補正発明は「第2の搬入コンベアで材料を搬入して前記第2の材料位置決め台で前記材料を位置決めし、さらに、前記1つの加工ヘッドを位置決めして前記1つの加工ヘッドで加工することを交互に繰り返す」ものであるが、刊行物1発明はそのようなものでない点。
相違点8:加工装置について、補正発明は「下地材」加工装置であるが、刊行物1発明は「木材の」加工装置である点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
刊行物1発明において、上部台は、何らかの部材により支持されていることは明らかである。いかなる部材により支持するかは、適宜選択すべき事項にすぎないから、「ベース台に固着された支持枠の上部」とすることに、困難性は認められない。

相違点2について検討する。
縦ネジ軸は、加工ヘッドの上下移動を実現できれば良い。
また、補正発明のごとく「上部台上の一方の縦レールの外側」とすることにより格別の技術的意義が生じるとも認められない。
よって、その位置については、設計的事項にすぎない。

相違点3について検討する。
加工ヘッドは、その機能からみて、ヘッド台に対して上下に移動できるものであれば良く、そのために、刊行物1発明、補正発明、いずれも上下ネジ軸と第3のサーボモータとを用いている。
「柱材」は、支持案内部材として格別なものではない。
移動機構において、各構成部材のいずれを固定側とし、いずれを移動側とするかは、適宜選択すべき事項であるから、補正発明のごとく「柱材」、「縦ネジ軸」を移動側とすることは、設計的事項にすぎない。
上下移動に支障がないようにすることは当然であるから、補正発明のごとく「移動部材の長孔の間を通って下方に突出する」ようにすることに困難性は認められない。

相違点4について検討する。
加工具が「モータで回転され」ることは、周知である。
また、刊行物2事項の「切削工具17」は、「加工用モータ18に装着」されるから、モータで回転されることが示唆されている。

相違点5及び7について検討する。
刊行物2事項は、上記のとおりであり、刊行物1発明同様、木材加工に関するもので、「作業時間を短縮し能率を向上」させるものである。
刊行物1発明においても、能率向上は当然の課題であるから、刊行物2事項の適用を試みることは自然である。
刊行物1発明は、材料の右端加工と左端加工との関係で効率向上を図るものであり、刊行物2事項は、材料の同一端同士の加工で効率向上を図るものである。
刊行物1発明において、右端加工、左端加工は、加工内容により、搬入、位置決めを含む加工所要時間は異なることがありうるから、刊行物1発明における右端加工と左端加工との関係よりも、刊行物2事項を踏まえ、同一端同士の加工の効率を向上させたほうが、一層の効率向上がなされることはありうる。
そこで、刊行物2事項を刊行物1発明の「左端同士」の加工に適用することを試みると、刊行物2事項は「一方のテーブル4、他方のテーブル4′」の2組を有するから、刊行物1発明が有する「第1の材料位置決め台」、「第1の搬入コンベア」に加え、「第2の材料位置決め台」、「第2の搬入コンベア」を有するものとし、第1の材料位置決め台で位置決めされた材料を1つの加工ヘッドで加工している間に、「第2の材料位置決め台で前記材料を位置決めし、さらに、1つの加工ヘッドを位置決めして1つの加工ヘッドで加工することを交互に繰り返す」ものとすることに困難性は認められない。
また、刊行物1発明の「加工ヘッド」は、上下に移動するから、材料位置決め台を「1つの加工ヘッドの下方に設置」することは、自然な設計である。
よって、刊行物1発明に刊行物2事項を適用することにより、相違点5及び7は格別なものではない。

相違点6について検討する。
相違点5及び7の検討における「左端同士」とは逆に、刊行物2事項を刊行物1発明の「右端同士」の加工に適用することを試みると、刊行物1発明における第3の位置決め台についても、第4の位置決め台と同様の機能が必要となるから、「上クランプ及び横クランプがそれぞれ装着された」ものとすることは、必要に応じてなしうる事項にすぎない。

相違点8について検討する。
「下地材」は「木材」として周知であり、単なる用途の特定にすぎない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

請求人は、審判請求理由で、刊行物1発明と補正発明は加工態様が「全く異なる」旨、主張するが、相違点5及び7とした検討したとおり、採用できない。
なお、請求項1に記載がなく、補正発明において特定されているものではないが、補正発明の「実施例」においては、第1の材料位置決め台における左端加工と第3の位置決め台における右端加工との関係、第2の材料位置決め台における左端加工と第4の位置決め台における右端加工との関係においても、一方で位置決めを行い、他方で加工を行っている。
仮に、この点を考慮したとしても、刊行物1発明、刊行物2事項は、ともに「一方位置で加工している間に、他の位置での材料を搬入、位置決めを可能」とするものであるから、かかる技術思想を、一層の効率向上のため、様々な関係への適用を試みることに困難性は認められない。
以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、刊行物2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし4に係る発明は、平成21年5月18日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の際にあげられた刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するものである。
そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物1発明、刊行物2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-08 
結審通知日 2011-02-09 
審決日 2011-02-22 
出願番号 特願2002-302572(P2002-302572)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B27C)
P 1 8・ 575- Z (B27C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼辻 将人  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 長屋 陽二郎
千葉 成就
発明の名称 下地材加工装置  
代理人 鈴木 和夫  

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