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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C10M
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 C10M
管理番号 1236248
審判番号 不服2008-9621  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-17 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 平成 9年特許願第234408号「HFC冷媒を用いた冷凍システム用配管加工用潤滑油」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月16日出願公開、特開平11- 71591〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年8月29日の出願であって、平成19年3月2日付けの拒絶理由通知に対して、指定期間内の平成19年4月18日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたが、平成20年3月11日付けで拒絶査定がなされ、その後、平成20年4月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成20年5月15日付けで手続補正がなされ、平成22年9月2日付けの審尋に対して、指定期間内の平成22年10月14日付けで回答書の提出がなされたものである。

2.平成20年5月15日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成20年5月15日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成20年5月15日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲に記載された請求項1?4の記載を増項して、補正後の請求項1?6の記載に改める補正を含むものであって、このうち補正後の請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載された、
「下記の中から選ばれる少なくとも1種を基油とし、かつHFC冷媒を用いた冷凍システムの冷凍機油に対して低温における相溶性があることを特徴とする、前記HFC冷媒を用いた冷凍システムに使用される配管の加工用潤滑油。
(1)ナフテン系鉱油
(2)ポリオレフィン
(3)アルキルベンゼン」
を、
「HFC冷媒を用いた冷凍システムの冷凍機油と試料油濃度3%で混合した試験油の、冷媒(R410A)との二層分離温度が1℃以下であるナフテン系鉱油を用いることを特徴とするHFC冷媒を用いた冷凍システム用配管の加工用潤滑油。」
に改めるものである。

(2)補正の適否
先ず、上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載されていた「基油」という発明特定事項を削除して、補正後の請求項1の記載に含めない補正を含むものであり、これにより、補正前の請求項1の「ナフテン系鉱油」が「配管の加工用潤滑油」の「基油」として用いられるものに限られていたのに対して、補正後の請求項1においては、必ずしも「基油」として用いられるものに限られず、例えば「微量成分」として用いられている場合をも包含するように変更された。
しかして、特許法第36条第5項の規定により「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」を記載した補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載から、当該「基油」という発明特定事項を削除する補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」との規定に照らして、括弧書きの「請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」に該当せず、「ナフテン系鉱油」が必ずしも「基油」として用いられるものに限定されなくなるという点において「特許請求の範囲の減縮」に該当しないから、同2号に掲げる事項を目的とするものに該当しない。
そして、同4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」との規定に照らしても、補正前の「基油」という発明特定事項に関する記載が「明りようでない記載」に相当すると認めるべき格別の事情は見当たらず、しかも、当該記載に対して拒絶理由通知に係る拒絶の理由が示されていたものでもないことから、同4号に掲げる事項を目的とするものに該当せず、同1号に掲げる「請求項の削除」ないし同3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものにも該当しない。
してみると、補正前の請求項1の記載から「基油」という発明特定事項を削除する補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1?4号に掲げる事項のいずれをも目的とするものではない。

次に、上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載されていた「冷凍機油に対して低温における相溶性があること」という発明特定事項を削除して、補正後の請求項1の記載に「冷凍機油と試料油濃度3%で混合した試験油の、冷媒(R410A)との二層分離温度が1℃以下である」という発明特定事項を新たに導入する補正を含むものであり、これにより、補正前の請求項1においては、配管の加工用潤滑油ないしその基油が、冷凍機油に対して、低温において相溶性があると規定されていたのに対して、補正後の請求項1においては、冷凍機油でも加工用潤滑油でもない「冷媒(R410A)」に対する、冷凍機油を含む試験油と二層分離温度の条件が規定されることとなったので、補正後の請求項1に記載された発明特定事項が、補正前の請求項1に記載された発明特定事項の下位概念化に相当しないことは明らかである。したがって、当該補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当せず、また、同1号に掲げる「請求項の削除」ないし同3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものにも該当しない。
そして、平成20年3月11日付けの拒絶査定の備考において、補正前の請求項1に記載されていた「冷凍機油に対して低温における相溶性があること」との記載中の「冷凍機油」及び「低温」との記載に対して、その範囲が明確ではないとの指摘がなされていたものの、補正前の冷凍機油と加工用潤滑油用基油との相溶性に関する規定を、補正後の特定の冷媒と試験油(冷凍機油と加工潤滑油用基油との混合物)との二層分離温度の条件に関する規定に置き換えることを趣旨とする当該補正は、発明の骨子を根本から変更しているという点において単なる「釈明」の域を逸脱しているから、同4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当しない。
また、当該補正によって、特許請求の範囲の記載が明確化するか否かについて検討しても、補正後の請求項1に記載された「冷凍機油と試料油濃度3%で混合した試験油の、冷媒(R410A)との二層分離温度が1℃以下であるナフテン系鉱油」という発明特定事項については、当該「冷凍機油」の具体的な内容が明確にされていないので、平成20年3月11日付けの拒絶査定の備考において示された「冷凍機油」という事項に対する釈明になっておらず、補正前の記載よりもむしろ不明確になっているという点からも、同4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当しない。
この点について補足すると、例えば、特開平7-150160号公報(以下、「参考文献A」という。)の段落0002の「冷凍機用潤滑油(冷凍機油)としては、ナフテン系鉱油、パラフィン系鉱油、アルキルベンゼン、ポリグリコール系油およびこれらの混合物…が一般に使用されている。」との記載にあるように、一般に「冷凍機油」の種類としては多種多様なオイルが使用されているのが本願出願時の技術水準として知られているところ、補正後の請求項1に記載された「冷凍機油」が、補正後の本願明細書の段落0072において使用されているポリオールエステル系油を基油としていた場合においては、試験油(冷凍機油97%と試験油3%の混合油)の二層分離温度が1℃以下になり得ても、当該「冷凍機油」が「パラフィン系鉱油」などの他の種類のオイルを基油としていた場合においては、参考文献Aの段落0003の「パラフィン系鉱油…などを基油とした冷凍機油は…HFCとの相溶性をほとんど有していない」との記載にあるように、試験油(冷凍機油97%と試験油3%の混合油)の二層分離温度が必ずしも1℃以下になるとは限らないので、補正後の請求項1の記載によっては、特許を受けようとする発明の範囲ないし内容を明確に認定することができない。
してみると、補正前の請求項1に記載されていた「冷凍機油に対して低温における相溶性があること」という発明特定事項を削除して、補正後の請求項1の記載に「冷媒(R410A)との二層分離温度が1℃以下」という発明特定事項を新たに導入する補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1?4号に掲げる事項のいずれをも目的とするものではない。

(3)まとめ
以上総括するに、本件補正は、目的要件違反があるという点において平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、その余のことを検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成20年5月15日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成19年4月18日付け手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「この出願については、平成19年3月2日付け拒絶理由通知書に記載した理由1?3によって、拒絶をすべきものです。」というものであって、原査定の備考欄には、『上記文献…2…に記載された潤滑油は、…アルキルベンゼンを基油とし、HFC冷媒を用いた冷凍システムに使用される配管の加工用潤滑油である点において「物」として相違しない。…よって、依然として、先の拒絶理由通知書に記載した理由1…は解消していない。』との指摘がなされている。
そして、当該「先の拒絶理由通知書に記載した理由1」とは、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」というものであって、当該「下記の請求項」としては「請求項:1」が指摘され、当該「下記の刊行物」としては「2.特開平06-240272号公報」が「引用文献2」として提示されている。

(3)引用文献2及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願日前に頒布された刊行物である上記「引用文献2」には、次の事項が記載されている。

摘記1a:請求項1
「塩素を含まない弗化炭化水素系冷媒を用いる冷凍サイクルで、ポリオールエステル油を基油とした冷凍機油を有する冷凍装置」

摘記1b:段落0021及び0024
「冷凍装置を構成する圧縮機、凝縮器、各種配管等の構成部品(以下、工程副資材という)…図1において、Aは冷凍装置を構成する冷凍サイクルであり、圧縮機B、凝縮器C、減圧装置D、蒸発器E、乾燥器Fを配管接続して構成される。」

摘記1c:段落0028?0031及び0039
「密閉容器1内の底部には、トリメチロールプロパンやペンタエリスリトール等の3価以上のポリオールと、直鎖又は側鎖のアルキル系脂肪酸とを無触媒で重合した…ポリオールエステル油のオイル18が貯溜されている。…このポリオールエステル油には、長期保存下の酸化劣化を防止する目的で…2,6ジターシャリブチルパラプレソール(DBPC)のフェノール系酸化防止剤…、加水分解を防止する目的で…エポキシ系添加剤…、必要に応じて5ppmのベンゾトリアゾール(BTA)の銅不活性化剤、及び1wt%のトリクレジルフォスフェート(TCP)の極圧添加剤が添加される。…
冷凍サイクルAには、塩素を含まない弗化炭化水素系冷媒、例えばR134aが封入されている。…冷媒はポリオールエステル系油のオイル18との相溶性のあるR134aで形成されている。」

摘記1d:段落0050及び0057?0058
「請求項4の構成により、工程副資材の加工や洗浄には134aに溶解し易いアルキルベンゼンハード油(HAB)やエステル油を使用し、HABを使用した場合には、その使用量を制限したため、工程副資材の残留塩素量を大幅に低減でき、冷凍サイクルA中の蒸発器E等に固化するのを防止して、冷凍能力の低下や機器B,C,D,E,Fの損傷を未然に防止できる。…本実施例では塩素を含まない弗化炭化水素系冷媒としてR134aを例に説明したが、これに限定されるものではなく、他のHFCの冷媒に対しても本発明のポリオールエステル系油は優れた相溶性を発揮し、これらの冷媒に対しても適用できる。…この発明によれば、…工程副資材の加工洗浄工程に使用する油に、アルキルベンゼンハード油…を使用したり…することにより、…良好な冷凍装置を得ることができる。」

(4)引用文献2に記載された発明
摘記1aの「弗化炭化水素系冷媒を用いる冷凍サイクルで、ポリオールエステル油を基油とした冷凍機油を有する冷凍装置」との記載、摘記1bの「冷凍装置を構成する…各種配管等の構成部品(以下、工程副資材という)」との記載、摘記1cの「ペンタエリスリトール等の3価以上のポリオールと…アルキル系脂肪酸とを…重合した…ポリオールエステル油のオイル18が貯溜され…冷媒はポリオールエステル系油のオイル18との相溶性のあるR134aで形成されている。」との記載、及び摘記1dの「工程副資材の加工や洗浄には134aに溶解し易いアルキルベンゼンハード油(HAB)やエステル油を使用し、…他のHFCの冷媒に対しても本発明のポリオールエステル系油は優れた相溶性を発揮し、これらの冷媒に対しても適用できる。…この発明によれば、…工程副資材の加工洗浄工程に使用する油に、アルキルベンゼンハード油…を使用したり…することにより、…良好な冷凍装置を得ることができる。」との記載からみて、引用文献2には、
『HFCの冷媒を用いる冷凍サイクルで、ポリオールエステル油を基油とした冷凍機油を有する冷凍装置において、冷媒はポリオールエステル油との相溶性があるR134aで形成され、冷凍装置を構成する各種配管等の構成部品の加工にR134aに溶解し易いアルキルベンゼンハード油やエステル油を使用する冷凍装置。』についての発明が記載されているとともに、当該「冷凍装置」の構成部品の加工に使用されるオイルの発明として、
『HFCの冷媒を用いる冷凍装置の配管等の構成部品の加工に使用されるアルキルベンゼンハード油。』についての発明(以下、「引用発明」という。)も記載されている。

(5)対比
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と、引用発明とを対比する。
引用発明の「HFCの冷媒を用いる冷凍装置の配管等の構成部品の加工に使用される…油」は、例えば上記参考文献Aの段落0048の「本発明の潤滑油は、冷凍機油のほか、…金属加工油、…その他工業用潤滑油としても好ましく使用することができる。」との記載にあるように、一般に「加工油」は「潤滑油」の一種として認識されるのが普通であることから、本願発明の「HFC冷媒を用いた冷凍システムに使用される配管の加工用潤滑油」に相当する。
また、引用発明の「アルキルベンゼンハード油」は、同じく上記参考文献Aの段落0014の「使用する分岐型アルキルベンゼンとしては、…ハード型アルキルベンゼンが、安価に入手できるので好ましい。」との記載、同段落0052の「<比較例1>実施例1の分岐型アルキルベンゼンの代わりに直鎖型アルキルベンゼン(ソフト型)」との記載、及び同段落0055の「実施例1の潤滑油(分岐型側鎖)はHFC134aと高い相溶性を示す。しかし比較例1(直鎖型側鎖)の試料油は溶解性が低く、潤滑油として使用することができない。」との記載にあるように、一般に「ハード型アルキルベンゼン」は「アルキルベンゼン」の下位概念にある潤滑油成分ないし化学物質として普通に知られており、その「ハード油」という用語でさらに特定されていたとしても、アルキルベンゼンを主成分とする潤滑油を意味していることに変わりはないから、本願発明の「(3)アルキルベンゼン」から選ばれる「基油」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明は、『アルキルベンゼンを基油とする、HFC冷媒を用いた冷凍システムに使用される配管の加工用潤滑油。』に関するものである点において一致し、
配管の加工用潤滑油が、本願発明においては「HFC冷媒を用いた冷凍システムの冷凍機油に対して低温における相溶性がある」のに対して、引用発明においては冷凍機油に対する相溶性について直接的な記載がない点においてのみ一応相違する。

(6)判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、摘記1dの「134aに溶解し易いアルキルベンゼンハード油」との記載にあるように、冷媒であるR134aに対して相溶性のあるオイルを加工油として用いるものであり、引用発明の「冷凍装置」は、摘記1cの「冷媒はポリオールエステル系油のオイル18との相溶性のあるR134aで形成され」との記載、及び摘記1dの「他のHFCの冷媒に対しても本発明のポリオールエステル系油は優れた相溶性を発揮し」との記載にあるように、冷媒であるR134aに対して相溶性のあるオイルを冷凍機油として用いるものである。
してみると、引用発明ないし引用文献2に記載された技術思想における加工油と冷凍機油のオイルの性質は、両者ともに同一の物質(R134a)に対して相溶性があるものと規定されていることから、引用発明の「アルキルベンゼンハード油」という加工油は、その冷凍機油に対して、その冷凍装置の使用温度域において相溶性があるものと解するのが自然である。
また、引用文献2には、加工油のオイルとして、冷凍機油の「ポリオールエステル油」と同種の「エステル油」を使用する場合が記載されており、同種のオイル同士に相溶性があることは自明であるところ、引用文献2に記載された技術思想は、相溶性の観点から加工油と冷凍機油の両方のオイルの性質が同質ないし酷似するものが望ましいという発想に立脚しているものと解されることから、引用発明の「アルキルベンゼンハード油」という加工油についても、その冷凍機油に対して、その冷凍装置の使用温度域において相溶性があるものと解するのが自然である。
そして、摘記1cの「トリメチロールプロパンやペンタエリスリトール等の3価以上のポリオールと、直鎖又は側鎖のアルキル系脂肪酸とを無触媒で重合した…ポリオールエステル油」との記載、及び本願明細書の段落0072の「冷凍機油(ペンタエリスリトールと2-メチルヘキサン酸および2-エチルヘキサン酸の混合脂肪酸(50:50、重量比)とのテトラエステルを基油とするもの)」との記載からみて、引用発明と本願発明の両者が想定する「冷凍機油」の具体的なオイルの種類は、両者ともに、ポリオール(ペンタエリスリトールなど)と、側鎖のアルキル系脂肪酸(2-エチルヘキサン酸など)とのエステルを基油とした「ポリオールエステル油」であるという点で共通するから、本願発明の「配管の加工用潤滑油」と引用発明の「配管等…の加工に使用される…油」は、その具体的な使用形態において相違がなく、両者は『アルキルベンゼンを基油とする、HFC冷媒を用いた冷凍システムに使用される配管の加工用潤滑油。』である点において「物」としての相違もないから、配管の加工用潤滑油について「HFC冷媒を用いた冷凍システムの冷凍機油に対して低温における相溶性がある」という「機能・特性等」による特定の有無によって、両者に実質的な相違が構成されているとは認められない。
したがって、本願発明と引用発明は実質的に同一である。

(7)まとめ
以上総括するに、本願発明は、刊行物2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-03 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-23 
出願番号 特願平9-234408
審決分類 P 1 8・ 574- Z (C10M)
P 1 8・ 113- Z (C10M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂井 哲也  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 木村 敏康
小出 直也
発明の名称 HFC冷媒を用いた冷凍システム用配管加工用潤滑油  
代理人 加藤 宗和  
代理人 秋元 輝雄  

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