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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1236356 |
審判番号 | 不服2010-1632 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-01-26 |
確定日 | 2011-05-06 |
事件の表示 | 特願2003-345607「半導体ウエハの加工方法および半導体ウエハ加工用粘着シート」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月28日出願公開、特開2005-116610〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成15年10月3日の特許出願であって、同20年12月10日付けで拒絶の理由が通知され、同21年2月12日に意見書とともに特許請求の範囲及び明細書について第1回目の手続補正書が提出され、さらに、同21年6月5日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同21年8月5日に意見書とともに特許請求の範囲及び明細書について第2回目の手続補正書が提出されたが、同21年10月19日付けで第2回目の手続補正書でした補正が却下されるとともに拒絶をすべき旨の査定がされた。 これに対し、同22年1月26日に本件審判の請求がされるとともに特許請求の範囲及び明細書について第3回目の手続補正書が提出されたものである。 第2 平成22年1月26日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年1月26日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容の概要 本件補正は、特許請求の範囲について補正をするとともにそれに関連して発明の名称、発明の詳細な説明について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (1)補正前 表面に、最大の凹凸差が0.1?350μmである配線パターン及び/又はバンプが形成された半導体ウエハを粘着シートを介して支持体に固定した状態で該半導体ウエハに薄型加工処理を施して半導体ウエハを加工する方法であって、前記粘着シートが半導体ウエハに貼り合わせられる粘着面と支持体に貼り合わせられる粘着面とを有する基材付きタイプの両面粘着シート又は2枚の片面粘着シートの背面同士を貼り合わせて形成される粘着シートであり、支持体に貼り合わせられる粘着面となる粘着剤層が、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させてポリマー分子内の側鎖に炭素-炭素二重結合部を導入した感光性アクリル粘着剤からなるエネルギー線硬化型粘着剤層、又は感圧接着剤と熱膨張性微小球を含む熱剥離型粘着剤層であるとともに、(i)粘着シートの一方の表面が前記エネルギー線硬化型粘着剤層による粘着面となっており、他方の表面が前記感圧接着剤と熱膨張性微小球を含む熱剥離型粘着剤層による粘着面となっているか、又は(ii)粘着シートの半導体ウエハに貼り合わせられる側の表面が非熱剥離型且つ非エネルギー線硬化型のピールによる剥離手段により剥がすことができる粘着剤層による粘着面となっていることを特徴とする半導体ウエハの加工方法。 (2)補正後 表面に、最大の凹凸差が0.1?350μmである配線パターン及び/又はバンプが形成された半導体ウエハを粘着シートを介して支持体に固定した状態で該半導体ウエハに薄型加工処理を施して半導体ウエハを加工する方法であって、前記粘着シートが半導体ウエハに貼り合わせられる粘着面と支持体に貼り合わせられる粘着面とを有する基材付きタイプの両面粘着シート又は2枚の片面粘着シートの背面同士を貼り合わせて形成される粘着シートであり、支持体に貼り合わせられる粘着面となる粘着剤層が、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させてポリマー分子内の側鎖に炭素-炭素二重結合部を導入した感光性アクリル粘着剤からなるエネルギー線硬化型粘着剤層、又は感圧接着剤と熱膨張性微小球を含む熱剥離型粘着剤層であるとともに、粘着シートの一方の表面が前記エネルギー線硬化型粘着剤層による粘着面となっており、他方の表面が前記感圧接着剤と熱膨張性微小球を含む熱剥離型粘着剤層による粘着面となっており、且つ前記粘着シートの基材の素材がポリエチレンテレフタレートであり、前記粘着シートの半導体ウエハに貼り合わせられる粘着面となる粘着剤層が該基材上に弾性率30?1000kPaの中間層を介して形成されており、半導体ウエハの薄型加工処理後に、薄型加工処理が施された面をダイシング用粘着テープ又はシートによりマウントし、先に支持体を該支持体に固定する際に用いられた粘着シートから剥離し、次いで前記粘着シートを半導体ウエハから剥離することを特徴とする半導体ウエハの加工方法。 2 補正の適否 本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、実質上補正前の「又は(ii)粘着シートの半導体ウエハに貼り合わせられる側の表面が非熱剥離型且つ非エネルギー線硬化型のピールによる剥離手段により剥がすことができる粘着剤層による粘着面となっている」という事項を削除し、「且つ前記粘着シートの基材の素材がポリエチレンテレフタレートであり、前記粘着シートの半導体ウエハに貼り合わせられる粘着面となる粘着剤層が該基材上に弾性率30?1000kPaの中間層を介して形成されており、半導体ウエハの薄型加工処理後に、薄型加工処理が施された面をダイシング用粘着テープ又はシートによりマウントし、先に支持体を該支持体に固定する際に用いられた粘着シートから剥離し、次いで前記粘着シートを半導体ウエハから剥離する」という事項を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 (1)補正発明 補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに願書に添付した図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「半導体ウエハの加工方法」であると認める。 (2)刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-75937号公報(以下「刊行物1」という。)並びに、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-203255号公報(以下「刊行物2」という。)及び特開2003-209070号公報(以下「刊行物3」という。)の記載内容は以下のとおりである。 なお、請求人は回答書で、刊行物2は「今回初めて引用された文献」である旨主張するが、独立特許要件の判断にあたり、新たな刊行物を引用することは、適法である。 ア 刊行物1 (ア)刊行物1記載の事項 刊行物1には以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウエハに薄型加工処理を施す方法に関する。」 「【0017】図1(A)の半導体ウエハ1はその表面1aに配線パターンが形成されたものであり、その反対面に裏面1bを有する。表面1aに形成される配線パターンは、常法に従って、所望のパターンが形成されている。 【0018】上記半導体ウエハ1の表面1aには、図1(B)のように、まず両面粘着シート2が貼付けられる。両面粘着シート2は、基材2aおよび粘着層2b_(1)、2b_(2)を有し、粘着層2b_(2)上には離型シート2cを有している。かかる両面粘着シート2は、たとえば、図2、図3に示すように、半導体ウエハ1と同じ形状に打ち抜かれたラベル状のものを離型支持シート2d上に支持されたものから剥がし、半導体ウエハ1と位置合わせを行って貼り付けられる。当該両面粘着シートの貼付け工程では、半導体ウエハ1はチャックテーブル上に固定されている。」 「【0020】両面粘着シート2としては、従来より両面粘着シートの基材として使用されているものを特に制限なく使用することができる。たとえば、基材2aとしてはたとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの一軸または二軸延伸フィルム等があげられる。基材2aの厚さは、通常30?200μm程度である。 【0021】粘着層2b_(1)、2b_(2)を形成する粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の各種粘着剤があげられ、これらはエネルギー線硬化型であってもよく、発泡型であってもよい。前述の通り、半導体ウエハ表面1aに貼り付ける粘着層2b_(1)には、薄型加工処理後に半導体ウエハ表面1aとの接着力を低下させることができる粘着剤、特に熱剥離型粘着剤を用いるのが剥離が容易で好ましい。また、薄型加工処理後に、除去した支持ウエハ3から両面粘着シート2を剥離して再利用を容易に行うことができることから、粘着層2b_(2)も粘着層2b1 と同様に、支持ウエハ3との接着力を低下させることができる粘着剤、特に熱剥離型粘着剤を用いるのが好ましいが、粘着層2b_(1)、2b_(2)のいずれも熱剥離型粘着剤を用いる場合には、粘着層2b_(1)よりも後工程で剥離される粘着層2b_(2)には粘着層2b_(1)より高温で熱剥離するものを用いるのが好ましい。粘着層2b_(1)、2b_(2)の厚さは、通常20?100μm程度である。熱剥離型粘着シートとしては、たとえば、日東電工 (株)製のリバアルファ(商品名)を例示できる。 【0022】次いで、離型シート2cを剥がし、図1(C)のように、粘着層2b_(2)上に位置合わせを行った支持ウエハ3を貼り合わせて補強ウエハを作製する。」 「【0026】次いで、図1(D)に示すように、半導体ウエハ1の位置を上下反転し、補強ウエハの支持ウエハ3をチャッキングして半導体ウエハ裏面1bの薄型加工を行う。薄型加工は、常法を採用できる。薄型加工機4としては、研削機(バックグラインド)、CMPパッド等があげられる。薄型加工は、半導体ウエハ1が所望の厚さになるまで行われる。 【0027】薄型加工処理が完了した補強ウエハは、半導体ウエハ1の位置を上下反転し、引き続くダイシング工程に移送される。ダイシング工程では、まず、図1(E)のように補強ウエハの裏面1bにダイシング用粘着テープ5を貼付け、ウエハマウントフレームを作製する。ダイシング用粘着テープの基材5a、粘着剤5bは従来より知られているものを特に制限なく使用できる。 【0028】次いで、図1(F)のように半導体ウエハ1から支持ウエハを取り除き、続いて、図1(G)のダイシング工程により、半導体ウエハをチップ1′に分割する。」 「【0034】また、半導体ウエハに両面粘着シートで支持ウエハを貼付けているので、その取外しが簡単かつ確実に行われる。そして、半導体ウエハから取外された支持ウエハより両面粘着シートを剥離除去することで、支持ウエハを再利用することができる。通常、ウエハの片面は鏡面仕上げされているので、支持ウエハの鏡面側に両面粘着シートを貼り付けて支持ウエハを利用することることにより、剥離が容易で糊残りがなく、支持ウエハの再利用に有利である。」 (イ)刊行物1記載の発明 刊行物1記載の事項を補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。 表面1aに配線パターンが形成された半導体ウエハ1を粘着シート2を介して支持ウエハ3に固定した状態で該半導体ウエハ1に薄型加工処理を施して半導体ウエハ1を加工する方法であって、前記粘着シート2が半導体ウエハ1に貼り合わせられる粘着面と支持ウエハ3に貼り合わせられる粘着面とを有する基材2a付きタイプの両面粘着シート2であり、支持ウエハ3又は半導体ウエハ1に貼り合わせられる粘着面となる粘着剤層2b_(1)、2b_(2)が、エネルギー線硬化型粘着剤層、又は熱剥離型粘着剤層であるとともに、且つ前記両面粘着シート2の基材2aの素材がポリエチレンテレフタレートであり、半導体ウエハ1の薄型加工処理後に、薄型加工処理が施された面1bをダイシング用粘着テープ5によりマウントし、支持ウエハ3が両面粘着シート2に貼り付けられた状態で両面粘着シート2を半導体ウエハ1から剥離し、次いで支持ウエハ3より両面粘着シート2を剥離除去する半導体ウエハ1の加工方法。 イ 刊行物2 刊行物2には以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えばシリコンやガリウム-ヒ素などの半導体ウエハの加工時に使用される半導体ウエハ保持保護用粘着シートに関する。より詳細には、半導体ウエハの回路パターン形成面(以下、単に「パターン面」と称する場合がある)の裏面を研磨研削するバックグラインド工程において、パターン面に貼り付けてパターン面を保護し、同時に研磨研削により薄肉化した半導体ウエハを保持するための半導体ウエハ保持保護用粘着シート、およびウエハを1つ1つのパターン毎に切断し、半導体素子として分割するダイシング工程においてウエハを保持保護するために用いる半導体ウエハ保持保護用粘着シートに関する。 【0002】 【従来の技術】半導体ウエハの回路パターン形成面の反対側の面に研磨研削加工を施すバックグラインド工程、またウエハを個々のチップに切断するダイシング工程では、パターン面が損傷したり研削くずや研削水などにより汚染されるのを防止するため、パターン面を保護しておく必要がある。また、半導体ウエハ自体が肉薄で脆いのに加え、半導体ウエハのパターン表面が凹凸状であるため、わずかな外力によっても破損しやすいという問題がある。」 「【0004】しかし、近年、半導体ウエハのパターン表面の凹凸の差が大きくなってきている。例えば、ポリイミド膜付きのウエハでは、前記凹凸の差が1?20μm程度である。また、不良半導体チップを認識するための不良マーク(バッドマーク)は高低差10?70μm程度の凹凸を有している。さらに、パターン状の電極に形成されるバンプの高さは20?200μm程度である。そのため、従来公知の粘着シートを用いる方法では、これらの凹凸に対してシートが追従できず、粘着剤とウエハ表面との間の接着が不十分となる。その結果、ウエハ加工時において、シートの剥離、パターン面への研削水や異物の浸入、加工ミス、ディンプルの発生、チップ飛びなどが起きたり、さらにはウエハが破損する場合もある。」 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の目的は、ウエハ表面の凹凸の差が大きくても、その凹凸に追従できる半導体ウエハ保持保護用粘着シートを提供することにある。本発明の他の目的は、ウエハ表面からの剥離性に優れ、しかもウエハに対する保持性及び補強性の高い半導体ウエハ保持保護用シートを提供することである。」 「【0008】すなわち、本発明は、半導体ウエハ加工時において、半導体ウエハ表面に貼り付けて半導体ウエハを保持保護するための粘着シートであって、基材層(3)の片面に弾性率が30?1000kPaでありかつゲル分が20%以下の中間層(1)が設けられ、該中間層(1)の表面に粘着剤層(2)が形成されていることを特徴とする半導体ウエハ保持保護用粘着シートを提供する(請求項1)。」 刊行物2記載の事項を補正発明に照らして整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認める。 半導体ウエハの回路パターン形成面の裏面を研磨研削するバックグラインド工程において、パターン面に貼り付けてパターン面を保護し、同時に研磨研削により薄肉化した半導体ウエハを保持するために用いられる半導体ウエハ保持保護用粘着シートにおいて、ウエハ表面の凹凸の差が大きくても、その凹凸に追従できるようにするために、粘着シートの半導体ウエハに貼り合わせられる粘着面となる粘着剤層が基材上に弾性率30?1000kPaの中間層を介して形成されていること。 ウ 刊行物3 刊行物3には以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤(A)層からなる面と粘着剤(B)層からなる面とを有する支持テープを介して、ウエハを支持板に固定する工程、前記支持テープを介して前記ウエハを前記支持板に固定した状態で研磨する工程、研磨した前記ウエハにダイシングテープを貼り付ける工程、前記粘着剤(A)層に前記刺激を与えて前記ウエハから前記支持テープを剥離する工程、及び、前記ウエハのダイシングを行う工程を有するICチップの製造方法であって、前記支持テープを介して前記ウエハを前記支持板に固定する工程において、前記粘着剤(A)層からなる面と前記ウエハとを貼り合わせ、前記粘着剤(B)層からなる面と前記支持板とを貼り合わせるものであり、前記粘着剤(A)層に刺激を与えて前記ウエハから前記支持テープを剥離する工程において、前記ウエハ全体を前記ダイシングテープ側から均一に減圧吸引しながら、前記ウエハから前記支持テープを剥離することを特徴とするICチップの製造方法。 【請求項2】 ウエハから支持テープを剥離する工程を行う前に、ウエハ全体をダイシングテープ側から均一に減圧吸引しながら、予め前記支持テープから支持板を剥離することを特徴とする請求項1記載のICチップの製造方法。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ウエハを厚さ50μm程度まで極めて薄くした場合においても、ウエハの破損等を防止し、取扱い性を改善し、良好にICチップへの加工が行えるICチップの製造方法に関する。」 「【0043】また、ウエハから支持テープを剥離する工程を行う前に、ウエハ全体を上記ダイシングテープ側から均一に減圧吸引しながら、予め上記支持テープから支持板を剥離してもよい。上記粘着剤(B)として刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤を用いた場合には、粘着剤(B)層に刺激を与え粘着力を低下させたうえで、上述したようにウエハ全体をダイシングテープ側から均一に減圧吸引しながら、支持テープから支持板を剥離すれば、可とう性を有する支持テープはめくりながら剥離でき、より一層効果的にウエハの破損や変形を防止できる。なお、工程数が増えるので表面に壊れやすい回路が形成されているウエハからICチップを製造する場合に行うことが好ましい。」 刊行物3記載の事項を整理すると刊行物3には以下の事項が記載されていると認める。 表面に壊れやすい回路が形成されているウエハからICチップを製造する方法において、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤(A)層からなる面と粘着剤(B)層からなる面とを有する支持テープを介して、ウエハを支持板に固定し、前記支持テープを介して前記ウエハを前記支持板に固定した状態で研磨し、研磨した前記ウエハにダイシングテープを貼り付け、ウエハ全体をダイシングテープ側から均一に減圧吸引しながら、予め前記支持テープから支持板を剥離し、次いでウエハから支持テープを剥離すること。 (3)対比 補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると以下のとおりである。 刊行物1記載の発明の「支持ウエハ3」は、補正発明の「支持体」に相当することが明らかである。 また、刊行物1記載の発明において、支持体が両面粘着シート2に貼り付けられた状態で両面粘着シート2を半導体ウエハ1から剥離することは、粘着シートを半導体ウエハから剥離するという限りで、補正発明と共通している。 したがって、補正発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点で一致している。 [一致点] 表面に配線パターンが形成された半導体ウエハを粘着シートを介して支持体に固定した状態で該半導体ウエハに薄型加工処理を施して半導体ウエハを加工する方法であって、前記粘着シートが半導体ウエハに貼り合わせられる粘着面と支持体に貼り合わせられる粘着面とを有する基材付きタイプの両面粘着シートであり、支持体に貼り合わせられる粘着面となる粘着剤層が、エネルギー線硬化型粘着剤層、又は熱剥離型粘着剤層であるとともに、且つ前記粘着シートの基材の素材がポリエチレンテレフタレートであり、半導体ウエハの薄型加工処理後に、薄型加工処理が施された面をダイシング用粘着テープによりマウントし、前記粘着シートを半導体ウエハから剥離する半導体ウエハの加工方法。 そして、補正発明と刊行物1記載の発明とは、以下の4点で相違している。 ア 相違点1 補正発明では、半導体ウエハの表面に「最大の凹凸差が0.1?350μmである配線パターン及び/又はバンプが形成」されているのに対して、刊行物1記載の発明では、半導体ウエハの表面に配線パターンが形成されているものの、どの程度の凹凸差を有するものであるのか明らかでない点。 イ 相違点2 補正発明では、エネルギー線硬化型粘着剤層が、「2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させてポリマー分子内の側鎖に炭素-炭素二重結合部を導入した感光性アクリル粘着剤からなる」ものであり、熱剥離型粘着剤層が、「感圧接着剤と熱膨張性微小球を含む」ものであって、「粘着シートの一方の表面が前記エネルギー線硬化型粘着剤層による粘着面となっており、他方の表面が前記感圧接着剤と熱膨張性微小球を含む熱剥離型粘着剤層による粘着面となって」いるのに対して、刊行物1記載の発明では、エネルギー線硬化型粘着剤層及び熱剥離型粘着剤層がそれぞれどのような組成のものであるのか明らかでなく、また、エネルギー線硬化型粘着剤層及び熱剥離型粘着剤層が補正発明のように配置されているのかどうか明らかでない点。 ウ 相違点3 補正発明では、「粘着シートの半導体ウエハに貼り合わせられる粘着面となる粘着剤層が基材上に弾性率30?1000kPaの中間層を介して形成されて」いるのに対して、刊行物1記載の発明では、そのようになっていない点。 エ 相違点4 粘着シートを半導体ウエハから剥離するに当たって、補正発明では、「先に支持体を該支持体に固定する際に用いられた粘着シートから剥離し、次いで前記粘着シートを半導体ウエハから剥離する」のに対して、刊行物1記載の発明では、支持体が両面粘着シートに貼り付けられた状態で粘着シートを半導体ウエハから剥離し、次いで支持体より粘着シートを剥離除去している点。 (4)相違点の検討 ア 相違点1について 半導体ウエハの表面に形成される配線パターン及び/又はバンプ等の突起物の凹凸差を補正発明で特定する0.1?350μmの範囲内とすることは、上記(2)のイに摘記したように刊行物2の段落【0004】に記載されているほか、拒絶理由で引用した特開2000-8010号公報の【請求項1】等に記載されているように周知であり、この周知の事項を刊行物1記載の発明に適用して、半導体ウエハの表面に形成される配線パターン及び/又はバンプの最大の凹凸差を0.1?350μmとすることに格別の困難性はない。 イ 相違点2について エネルギー線硬化型粘着剤を、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させてポリマー分子内の側鎖に炭素-炭素二重結合部を導入した感光性アクリル粘着剤からなるものとすることは、例えば、最後の拒絶理由で引用した特開2000-355678号公報の段落【0043】に示されているように周知である。 また、熱剥離型粘着剤を、感圧接着剤と熱膨張性微小球を含むものとすることは、例えば、最後の拒絶理由で引用した特開2003-206451号公報の段落【0021】、【0022】に示されているように、周知である。 刊行物1記載の発明におけるエネルギー線硬化型粘着剤層及び熱剥離型粘着剤層として、それぞれ周知である上記のものを採用することは当業者が格別の創意を要することなく容易に想到するところである。 そして、両面粘着テープの粘着剤層として、刊行物1記載の発明のように、エネルギー線硬化型粘着剤層、又は熱剥離型粘着剤層を採用する場合に粘着剤層をどのように配置するかは、上記(2)のアに摘記したように刊行物1の段落【0021】に「粘着層2b_(1) 、2b_(2)のいずれも熱剥離型粘着剤を用いる場合には、・・・・」と記載されていることからも窺うことができるように、粘着シートの両面を熱剥離型粘着剤層とする場合のほかに、粘着シートの両面をエネルギー線硬化型粘着剤層とする場合、粘着シートの一方の表面をエネルギー線硬化型粘着剤層とし、他方の表面を熱剥離型粘着剤層とする場合が考えられる。 そうしてみると、粘着シートの一方の表面がエネルギー線硬化型粘着剤層による粘着面となっており、他方の表面が感圧接着剤と熱膨張性微小球を含む熱剥離型粘着剤層による粘着面となるように構成することは、粘着剤層としてそれぞれ周知である上記のものを採用するに当たって、必要に応じて適宜なし得る選択事項にすぎない。 ウ 相違点3について 上記(2)のイのとおり、刊行物2記載の事項は、「半導体ウエハの回路パターン形成面の裏面を研磨研削するバックグラインド工程において、パターン面に貼り付けてパターン面を保護し、同時に研磨研削により薄肉化した半導体ウエハを保持するために用いられる半導体ウエハ保持保護用粘着シートにおいて、ウエハ表面の凹凸の差が大きくても、その凹凸に追従できるようにするために、粘着シートの半導体ウエハに貼り合わせられる粘着面となる粘着剤層が基材上に弾性率30?1000kPaの中間層を介して形成されていること。」である。 刊行物1記載の発明と刊行物2記載の事項とは、いずれも半導体ウエハを保持するために用いられる粘着シートに関する技術であり、かかる中間層により追従性の向上が期待できることを考慮すると、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用して、相違点3における補正発明のように構成することに格別の困難性は見当たらない。 エ 相違点4について 上記(2)のウのとおり、刊行物3記載の事項は「表面に壊れやすい回路が形成されているウエハからICチップを製造する方法において、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤(A)層からなる面と粘着剤(B)層からなる面とを有する支持テープを介して、ウエハを支持板に固定し、前記支持テープを介して前記ウエハを前記支持板に固定した状態で研磨し、研磨した前記ウエハにダイシングテープを貼り付け、ウエハ全体をダイシングテープ側から均一に減圧吸引しながら、予め前記支持テープから支持板を剥離し、次いでウエハから支持テープを剥離すること。」である。 刊行物3記載の事項における「支持テープ」及び「支持板」は、それぞれ補正発明の「粘着シート」及び「支持体」に対応するものであることが明らかである。 そして、上記(2)のウに摘記したように、刊行物3の段落【0043】には、ウエハから支持テープを剥離する工程を行う前に、予め上記支持テープから支持板を剥離してもよいことが記載されている。 しかも、刊行物1記載の発明において、支持板は、最上部に配置されているところ、上から順に剥離することは、ごく自然なことである。 そうしてみると、刊行物3記載の事項を刊行物1記載の発明に適用して、支持体が両面粘着シートに貼り付けられた状態で粘着シートを半導体ウエハから剥離し、次いで支持体より粘着シートを剥離除去することに代えて、先に支持体を該支持体に固定する際に用いられた粘着シートから剥離し、次いで前記粘着シートを半導体ウエハから剥離するように構成することに格別の困難性は見当たらない。 オ 補正発明の効果について 請求人は、回答書で補正発明による効果を主張するが、かかる効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、刊行物3記載の事項及び上記従来周知の各事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。 したがって、補正発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、刊行物3記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本件出願の発明について 1 本件出願の発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成21年2月12日付手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「半導体ウエハの加工方法」である。 2 刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1は上記第2の2(2)に示したとおりであり、また、その記載内容は、同じく(2)のアに示したとおりである。 3 対比 本件出願の発明と刊行物1記載の発明とを対比すると以下のとおりである。 [一致点] 表面に配線パターンが形成された半導体ウエハを粘着シートを介して支持体に固定した状態で該半導体ウエハに薄型加工処理を施して半導体ウエハを加工する方法であって、前記粘着シートが半導体ウエハに貼り合わせられる粘着面と支持体に貼り合わせられる粘着面とを有する基材付きタイプの両面粘着シートであり、支持体に貼り合わせられる粘着面となる粘着剤層が、エネルギー線硬化型粘着剤層、又は熱剥離型粘着剤層である半導体ウエハの加工方法。 そして、本件出願の発明と刊行物1記載の発明とは、以下の2点で相違している。 ア 相違点A 本件出願の発明では、半導体ウエハの表面に最大の凹凸差が0.1?350μmである配線パターン及び/又はバンプが形成されているのに対して、刊行物1記載の発明では、半導体ウエハの表面に配線パターンが形成されているものの、どの程度の凹凸差を有するものであるのか明らかでない点。 イ 相違点B 本件出願の発明では、エネルギー線硬化型粘着剤層が、「2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させてポリマー分子内の側鎖に炭素-炭素二重結合部を導入した感光性アクリル粘着剤からなるものであり、熱剥離型粘着剤層が、感圧接着剤と熱膨張性微小球を含むものであって、(i)粘着シートの一方の表面が前記エネルギー線硬化型粘着剤層による粘着面となっており、他方の表面が前記感圧接着剤と熱膨張性微小球を含む熱剥離型粘着剤層による粘着面となっているか、又は(ii)粘着シートの半導体ウエハに貼り合わせられる側の表面が非熱剥離型且つ非エネルギー線硬化型のピールによる剥離手段により剥がすことができる粘着剤層による粘着面となっている」のに対して、刊行物1記載の発明では、エネルギー線硬化型粘着剤層及び熱剥離型粘着剤層がそれぞれどのような組成のものであるのか明らかでなく、また、エネルギー線硬化型粘着剤層及び熱剥離型粘着剤層が補正発明のように配置されているのかどうか明らかでなく、さらに、粘着シートの半導体ウエハに貼り合わせられる側の表面が本件出願の発明のような粘着面となっていない点。 4 相違点の検討 ア 相違点Aについて 相違点Aは、上記第2の2(3)アに示す相違点1と同じであり、(4)アで検討したとおりである。 イ 相違点Bについて 本件出願の発明は、(i)に示す事項と(ii)に示す事項とが択一的事項であることから、(i)に示す事項を選択すると、結局、相違点Bは、上記第2の2(3)イに示す相違点2と同じであり、(4)イで検討したとおりである。 5 むすび したがって、本件出願の発明は、刊行物1記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件出願の請求項2ないし7に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-02 |
結審通知日 | 2011-03-08 |
審決日 | 2011-03-22 |
出願番号 | 特願2003-345607(P2003-345607) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼辻 将人 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 遠藤 秀明 |
発明の名称 | 半導体ウエハの加工方法 |
代理人 | 後藤 幸久 |