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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E02F
管理番号 1236786
審判番号 無効2010-800104  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-06-15 
確定日 2011-04-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3329889号発明「ブルドーザの作業機コントロール装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
出願日 :平成5年6月11日(特願平5-166177号)
特許権の設定登録日:平成14年7月19日(特許第3329889号)
本件審判請求日 :平成22年6月15日
答弁書、訂正請求書提出日:平成22年8月27日:
弁駁書提出日 :平成22年9月29日:
請求人、被請求人の口頭審理陳述要領書提出日:平成23年1月18日
口頭審理及び審理終結日:平成23年2月1日

第2 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、特許第3329889号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、以下の無効理由を主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
(1)無効理由
本件特許の請求項1に係る発明、及び、訂正後の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに甲第3号証ないし甲第5号証に示される従来周知の事項に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(2)無効理由の主張の要点
ア 本件特許発明はブルドーザの作業機コントロール装置であるのに対して、甲第1号証に記載された発明はゲレンデ整備車の排雪ブレードの走査装置である点が相違するが、ブルドーザとゲレンデ整備車とは、いずれも油圧回路を動力源として作業機を操作する作業用車両であり、甲第1号証に記載された発明の操作装置を甲第2号証に記載されているようなブルドーザの作業機コントロール装置に置換することは当業者が容易になしうることである。
イ 電気スイッチで切り換えられる第3系統が、訂正後の本件特許発明は、アングル(左右首振り旋回)であるのに対し、甲第1号証に記載された発明ではピッチング(上下首振り旋回)であるが、操作レバーやスイッチの操作と作業機の動作は必ずしも一致させる必要はなく、操作レバーやスイッチの操作に作業機のどの動作を割り振るかは適宜なしうることであり、甲第1号証記載の発明において、ピッチングシリンダの操作を操作レバーに割り振り、アングルシリンダ用の操作を電気スイッチに割り振るように置換することは、当業者が容易になしうることである。
また、ピッチングシリンダ用の電気スイッチに加え、アングルシリンダ用の電気スイッチを設けること、あるいは、油圧系統を3系統とし、アングルシリンダの操作を電気スイッチで行うことも、適宜なしうることである。
なお、アングルシリンダとピッチングシリンダ用の操作部を置換すると操作と動作が対応しなくなるとしても、操作と動作が対応しない構成は、甲第6号証、甲第7号証、甲第11号証に記載されているように周知であり、置換することは困難ではない。
ウ 訂正後の請求項1に係る発明では、電気スイッチをON,OFF切換弁に接続し、該ON,OFF切換弁をメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設けるものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、ON,OFF切換弁を用いず、電気スイッチからの電気信号をメイン操作弁の左右ソレノイドに入力しているが、電気スイッチをON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換弁をメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設けることは、甲第2号証に記載された発明に示されている他、甲第3号証ないし甲第5号証に示されているように周知技術であり、甲第1号証に記載された発明において、メイン操作弁の切り換え操作を訂正後の請求項1に係る発明のように構成することは当業者が容易になしうることである。
エ チルトとアングルの同時複合操作は必要ではなく、同時複合操作できるとしてもそのような効果は、甲第1号証に記載された発明から予測できる程度のことである。

(3)証拠方法
甲第1号証:実願平1-49641号(実開平2-144019号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特開平1-284623号公報
甲第3号証:特開平4-258508号公報
甲第4号証:特開平4-143334号公報
甲第5号証:特開昭61-236902号公報
甲第6号証:実願平3-15143号(実開平4-105607号)のマイクロフイルム
甲第7号証:実願平2-3730号(実開平3-93847号)のマイクロフイルム
甲第8号証:カタログ「コマツ除雪機械」(1988年発行)
甲第9号証:特開平2-261132号公報
甲第10号証:特開昭64-36827号公報
甲第11号証:特開昭50-102101号公報
甲第12号証:「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用および掘削用)運転技能講習テキスト」第23版 コマツ教習所株式会社 平成8年5月22日発行

2 被請求人の主張
被請求人は、答弁書を提出し、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の無効理由に対して、次のように主張している。

(1)無効理由に対する反論
訂正後の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明および従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)反論の要点
ア 甲第1号証に記載された発明は、アングルシリンダの操作をレバーにより行い、ピッチングシリンダの操作を電気スイッチにより行うものであって、ピッチングの動作はレバーの操作と対応しないために電気スイッチで操作するものであり、ピッチングシリンダとアングルシリンダの操作を置換すると、操作とブレードの動作が対応しないこととなり誤動作の虞があるから、当業者が容易になしうることではない。
また、甲第1号証に記載された発明は、アングルシリンダの操作をレバーの回動で行うことが示されているだけであり、甲第1号証に記載された発明から、アングルシリンダの操作を電気スイッチで行おうとする発想はでてこない。
さらに、甲第1号証に記載された発明はスイッチを少なくしようとするものであるから、ピッチングシリンダ用のスイッチに加えて、さらにアングル用スイッチを設けることには阻害要因がある。
イ 甲第2号証、甲第3号証?甲第5号証に示された油圧制御技術は、アングルスイッチの操作によるものではない。
ウ 訂正後の請求項1に係る発明は、手首をひねることなく、リフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複合操作をすることができる格別の効果を奏する。

第3 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件無効審判の訂正請求は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その内容は、次のとおりである(下線部が訂正箇所)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「ブレードの上げおよび下げの作動に使用されるリフトシリンダと、
ブレードの一側を地面に接触させ他側を上げるように傾斜させる作動に使用されるチルトシリンダとを備え、
前記リフトシリンダおよびチルトシリンダ用のそれぞれのメイン操作弁の方向切換えを1本の操作レバーの前後左右への操作により行うようにしたブルドーザの作業機コントロール装置において、
該操作レバーのノブに、ブレードを車体中心に対して一方は前に出し他方は後に引く作動に使用されるアングルシリンダ用の電気スイッチを内装し、
該電気スイッチをON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換弁をアングルシリンダ用のメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設け、
前記リフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複合操作を可能としたこと
を特徴とするブルドーザの作業機コントロール装置。」
と訂正する。

(2)訂正事項2
本件特許明細書の段落【0005】を、
「【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、ブレードの上げおよび下げの作動に使用されるリフトシリンダと、ブレードの一側を地面に接触させ他側を上げるように傾斜させる作動に使用されるチルトシリンダとを備え、前記リフトシリンダおよびチルトシリンダ用のそれぞれのメイン操作弁の方向切換えを1本の操作レバーの前後左右への操作により行うようにしたブルドーザの作業機コントロール装置において、該操作レバーのノブに、ブレードを車体中心に対して一方は前に出し他方は後に引く作動に使用されるアングルシリンダ用の電気スイッチを内装し、該電気スイッチをON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換弁をアングルシリンダ用のメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設け、前記リフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複合操作を可能としたことを特徴とする。」
と訂正する。

(3)訂正事項3
本件特許明細書の段落【0006】を、
「【0006】
【作用】上記構成によれば、リフトシリンダ,チルトシリンダ用の操作レバーとは別にアングルシリンダ用の電気スイッチを操作レバーのノブに設けたから、アングルシリンダを操作する場合、ノブに設けられた電気スイッチを操作してON,OFF切換弁を切換えることによりアングルシリンダ用メイン操作弁の左右の方向切換えが可能となり、従来できなかったリフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複合操作が容易に行える。」
と訂正する。

(4)訂正事項4
本件特許明細書の段落【0009】を、
「【0009】操作レバ-1は油圧パイロット式、あるいは電気レバ-+電気比例減圧弁でもよいが、本実施例ではパイロット圧比例制御弁の場合で説明する。パイロット圧比例制御弁は第1系統(リフト)用1Aと第2系統(チルト)用1Bとからなり、パイロットポンプ8の吐出油は回路10により第1系統用1Aと第2系統用1Bの両方の制御弁に導かれ、使用しない場合には戻りの回路11によりタンク12に戻される。第1系統用1Aと第2系統用1Bは、何れも1本の操作レバ-ノブ1aを例えば、前後に動かすと第1系統用1Aが操作され左右に動かすと第2系統用1Bが操作されるようになっている。そして第1系統用1AのR側とメイン操作弁2のR側ポ-トとはパイロット回路13により連結され、1AのL側とメイン操作弁2のL側ポ-トとはパイロット回路14により連結されている。また、第2系統用1BのR側とメイン操作弁3のR側ポ-トとはパイロット回路15により連結され、1BのL側とメイン操作弁3のL側ポ-トとはパイロット回路16により連結されている。前記電気スイッチ4が内蔵されているノブ1aの形式は図2に示すように(a)押しボタン17a,17bのものや(b)シ-ソ18の何れか一方を押すとONとなるものがあり、操作パタ-ンは理解しやすいように図6,および図7と同じ名称に示してある。電気スイッチ4と電磁弁5,6とは電気回路19,20により接続され、電磁弁5,6は第3系統(アングル)用アクチュエ-タのメイン操作弁7の左右の方向切換えポ-ト7a,7bとそれぞれパイロット回路21,22により連結され、回路21,22の途中には操作を円滑にする絞り23,23がそれぞれ設けられている。さらに電磁弁5,6は前記パイロットポンプ8と回路10,および11の分岐した回路9および24によりそれぞれ連結されている。図中、25はリリ-フ弁、26はバッテリである。なお、本実施例では各メイン操作弁2,3,7にオイルを供給するメインポンプ、およびこれらメイン操作弁から各シリンダに至る回路は省略してあるが、この関係の油圧回路については図8を参照されたい。」と訂正する。

(5)訂正事項5
本件特許明細書の段落【0016】を、
「【0016】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、リフトシリンダおよびチルトシリンダ用のそれぞれのメイン操作弁の方向切換えを1本の操作レバ-により行うようにしたブルド-ザの作業機コントロ-ル装置において、該操作レバ-のノブにアングルシリンダ用の電気スイッチを内装し、該電気スイッチをON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換弁をアングルシリンダ用のメイン操作弁の左右の方向切換えポ-トと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設けたから、3系統以上のアクチュエ-タを誤操作なく、かつ少ない労力で、しかも操作レバ-ノブから手を離すことなくこれまで不可能だった同時の複合操作ができることにより、オペレ-タの疲労を軽減すると同時に整地作業が容易で正確に行える。」
と訂正する。

(6)訂正事項6
本件特許明細書の段落【符号の説明】を、
「【符号の説明】
1 操作レバ-
1a ノブ
2 第1系統(リフト)用アクチュエータのメイン操作弁
3 第2系統(チルト) 〃 〃
4 電気スイッチ
5,6 電磁切換弁
7 第3系統(アングル)用アクチュエ-タのメイン操作弁
8 パイロットポンプ
27,28 電磁比例減圧弁
32 比例スイッチ」
と訂正する。

2 訂正の目的、新規事項、特許請求の範囲の拡張、変更の有無
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「第1系統」、「第2系統」及び「第3系統」を、それぞれ「リフト」、「チルト」、「アングル」用であるものに限定し、「第1系統のアクチュエータ」、「第2系統のアクチュエータ」及び「第3系統のアクチュエータ」を、「リフトシリンダ」、「チルトシリンダ」、「アングルシリンダ」に限定するとともに、これら、「リフトシリンダ」、「チルトシリンダ」、「アングルシリンダ」の作用を具体的に明記したものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0002】【0015】の記載、及び図2の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2ないし6について
訂正事項2ないし6は、訂正前の発明の詳細な説明の記載を、訂正された特許請求の範囲に整合させるための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3 むすび
したがって、上記訂正事項1ないし6は、第134条の2第1項ただし書きに適合し、特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項及び4項の規定に適合するから、当該訂正を認める。

第4 本件特許発明
上記のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められ、これを構成要件で分説すると次のとおりである。

A ブレードの上げおよび下げの作動に使用されるリフトシリンダと、
ブレードの一側を地面に接触させ他側を上げるように傾斜させる作動
に使用されるチルトシリンダとを備え、
前記リフトシリンダおよびチルトシリンダ用のそれぞれのメイン操作弁 の方向切換えを1本の操作レバーの前後左右への操作により行うようにし たブルドーザの作業機コントロール装置において、
B 該操作レバーのノブに、ブレードを車体中心に対して一方は前に出し他 方は後に引く作動に使用されるアングルシリンダ用の電気スイッチを内装 し、
C 該電気スイッチをON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換 弁をアングルシリンダ用のメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パ イロットポンプとを接続する油圧回路途中に設け、
D 前記リフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複
合操作を可能としたこと
E を特徴とするブルドーザの作業機コントロール装置。

第5 無効理由についての判断
1 甲号各証の記載内容
(1)甲第1号証(実願平1-49641号(実開平2-144019号)のマイクロフィルム)には、次の記載が認められる。
(1a)「(1)車両本体の前部に中央ブレードの左右に翼板が連設されて成る排雪ブレードが装着され、車両本体内の運転室内に設けられ桿部の上端に横方向に延びる操作グリップを有し各方向の傾動及び桿部の軸の回りの操作グリップの回動が可能な操作レバーを有し、上記操作レバーの倒動操作、操作グリップの回動操作及び操作グリップの表面に設けられたスイッチの押圧操作の諸操作に対応させて上記排雪ブレードの昇降、左右傾斜、左右首振り旋回、上下首振り旋回、翼板の開閉の各動作を行なわせるようにしたゲレンデ整備車の翼板付排雪ブレードの操作装置において、
上記操作グリップに押込式スイッチを設け、該押込式スイッチを押込まずに行なう、上記操作レバーの倒動操作、グリップの回動操作、シーソースイッチの押圧操作に対応させて排雪ブレードの昇降、左右傾斜、左右首振り旋回、上下首振り旋回動作を行なわせ、
上記押込式スイッチを押込んで行なう上記操作レバーの倒動操作、グリップの回動操作、上記のシーソースイッチの押圧操作に対応させて、排雪ブレードの両側翼板の各種態様の開閉動作を行なわせる
ことを特徴とする排雪ブレードの操作装置。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)
(1b)「(3)上記の操作レバーは軸の回りの360°あらゆる方向への往復倒動操作が可能な如く設けられ、操作レバーの前後方向倒動、左右方向倒動、グリップの左右回動、シーソースイッチの押圧に対応する排雪ブレードの昇降、左右傾斜、左右首振り旋回、上下首振り旋回が、対応する操作の組合せにより複数動作を同時に行ないうるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のゲレンデ整備車の排雪ブレードの操作装置。」(実用新案登録請求の範囲の請求項3)
(1c)「上述の如く、被駆動部材が種々の方向に移動、倒動、回動、傾動するような場合の操作装置としては、一本のレバーの上端に横方向に延びる操作グリップが取付けられ、各方向への傾動及びレバーの軸の回りの回動が可能な操作レバーを被駆動部材の動作と概ね同方向に操作するとともに、操作グリップの表面に設けたスイッチをグリップを握る手の指で押圧操作して各操作に対応させて被駆動部材の動作を行なわせる、・・・いわゆるジョイスティック方式の操作装置がよく知られている。
実開昭59-121019号公報には、この方式の操縦桿による整雪用雪上車における排雪板操縦装置が開示されている。・・・」(明細書4頁18行?5頁11行)
(1d)「この公開公報に開示された操縦装置では、操作桿の操作と、排雪板の動作は第1表のように対応している。

さて、上記の操縦装置では、・・・操作グリップ31の上に掌を置いてグリップを握った手の中指で上下方向に配置されたシーソースイッチの上下の押圧部を選択して押圧することはかなりむつかしい。
又、制御するべき排雪板の動作の種類が多いので操縦桿の各種方向への倒動、回動操作だけでは制御し切れず、シーソースイッチを操作グリップに3個設けており、・・・これらのシーソースイッチは左右方向に設けられているので、グリップを握った手の人差し指と薬指とを左右にずらせて行なうことになるが、この操作もかなりやりづらい。
左右の翼板は・・・その場合2つのシーソースイッチを順次押圧して別々に動かすよりも2つの翼板を同時に操作することができれば作業効率は向上する。しかし左右のシーソースイッチを同時に押圧操作することは極めて困難であり、かりに行ったとしても誤操作が多くなるおそれがある。」 (6頁10行?8頁17行)
(1e)「本考案は、操縦桿方式のゲレンデ整備車の翼板付排雪ブレード操縦装置の上記の従来のものの上述の欠点にかんがみ、スイッチの数を極力少くして、しかも排雪ブレード翼板の左右夫々単独及び同時操作が可能となり、最少限に設けられた押込みスイッチ及びシーソースイッチは押動操作がし易いような位置及び方向に設けられた排雪ブレードの操作装置を提供することを課題とする。」(8頁19行?9頁6行)
(1f)「この実施例の装置の、操縦レバー(当審注:「操作レバー」の誤記)の操作と、排雪ブレードの動作の対応は次の第2表のとおりである。

押込スイッチ・オフ時の操作レバーの前後方向倒動、左右方向倒動、グリップ左右回動、シーソースイッチの押動の動作を同時に2つ以上組合せて行なうことにより、対応する排雪ブレードの動作を同時に行なうことができるようにされている。上記の、操縦レバー、スイッチの各操作により排雪ブレードを対応して動作させる制御駆動回路を第3図に示す。
操作レバー3の倒動により作動するスイッチ7,8,9,10、操作グリップ4の回動により作動するスイッチ11,12押込スイッチ6、シーソースイッチ15(当審注:「シーソースイッチ5」の誤記)のオン・オフ信号はマイクロコンピュータ5(当審注:「マイクロコンピュータ15」の誤記)に入力され、操作レバー等の各操作に対応する排雪ブレードの動作を行なわせる方向制御信号を各動作を行なう電磁方向切換弁16,17に入力して油圧回路を切換え油圧ポンプ18,18’の油圧を夫々の動作を行なう油圧アクチュエータに導き、作動させる。」(14頁5行?16頁18行)
(1g)「又、操縦グリップの形状、これに設けるスイッチの位置、形状を人間工学に適ったものとしたので、操作が楽になり、誤動作の防止にも効果が得られる。」(17頁20行?18頁3行)
(1h)第3図には、油圧アクチュエータとして昇降シリンダ、チルトシリンダ、アングリングシリンダ、左右のウィングシリンダ、チップバックシリンダが設けられることが示されている。

上記記載によれば、排雪ブレードの上昇下降の作動は「昇降シリンダ」により、排雪ブレードの左右肩を上下する作動は「チルトシリンダ」により、排雪ブレードを左右方向に首振旋回する作動は「アングリングシリンダ」により、左右翼板の開閉は「ウィングシリンダ」により行われていることは明らかであり、「チップバックシリンダ」は上下首振り旋回用シリンダと認められるから、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「a 排雪ブレードの上昇下降の作動に使用される昇降シリンダと
排雪ブレードの左右肩を上下する作動に使用されるチルトシリンダと
排雪ブレードを左右方向に首振旋回する作動に使用されるアングリングシリンダとを備え、
前記昇降シリンダ、チルトシリンダ、アングリングシリンダ用のそれぞれの方向切換えを1本の操作レバーの前後方向、左右方向及び回動操作により行うようにしたゲレンデ整備車の翼板付排雪ブレード操作装置において、
b 該操作レバーのノブに上下首振り旋回用シリンダ用のシーソースイッチを内装し、
c 該シーソースイッチからの信号をマイクロコンピュータで処理して方向制御信号を電磁比例制御弁に出力して油圧回路を切り換え、油圧ポンプの油圧を上下首振り旋回用シリンダに導くようにし、
d 前記昇降シリンダ、チルトシリンダ、アングリングシリンダおよび上下首振り旋回用シリンダの同時複合操作を可能とした
e ゲレンデ整備車の翼板付排雪ブレード操作装置。」(以下、「甲1発明」という。)

(2)甲第2号証(特開平1-284623号公報)には次の記載が認められる。
(2a)「特許請求の範囲
左、右側アングル・チルトシリンダでアングルチルト2自由度のブレード姿勢を制御するブレード姿勢制御装置において、ブレードの操作終了後ブレードの姿勢を検出し、このブレード姿勢の誤差(アングル量もしくはチルト量)が一定値以上となった場合にブレード姿勢を修正し、アングル量もしくはチルト量を所定の目的位置に戻す制御手段を備えたことを特徴とするブレード姿勢制御装置。」(1頁左下欄4行?13行)
(2a)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、ブルドーザのブレード姿勢制御装置に関するものである。」(1頁左下欄15行?17行)
(2c)「チルト角度センサ15及びアングル角度センサ16はコントローラ17の入力側に接続してある。
ブレードコントロールレバー18の出力側はコントローラ17の入力側に接続してある。
第3図にブレード操作油圧回路を示す。同図中20はリフトシリンダ用油量制御弁、21は左側アングル・チルトシリンダ用流量制御弁、22は右側アングル・チルトシリンダ用流量制御弁である。
左側アングル・チルトシリンダ用油量制御弁21のポンプポートP1は管路23を介して左側アングル・チルトシリンダ9のボトム側に接続してあり、また他のポンプポートP2は管路24を介して左側アングル・チルトシリンダ9のロッド側に接続してある。そして、前記管路23に第1ポペツト弁PV1とチェック弁CV1とが設けてあり、また、前記管路24には第3ポペツト弁PV3とチェック弁CV2とが設けてある。
前記左側アングル・チルトシリンダ9のボトム側戻り管路25とベット側(当審注:「ヘッド側」の誤記)戻り管路26とは合流管路27を介してタンクポートTに接続してあり、ボトム側戻り管路25に第4ポペット弁PV4が設けてあり、ヘッド側戻り管路26に第2ポペット弁PV2が設けてある。
前記第1、第2ポペット弁PV1、PV2の制御回路27に第1電磁弁EV1が設けてあり、第3、第4ポペット弁PV3、PV4の制御回路28に第2電磁弁EV2が設けてある。
前記右側アングル・チルトシリンダ用流量制御弁22及びリフトシリンダ用流量制御弁20は上記した左側アングル・チルトシリンダ用流量制御弁21と同構成である。」(2頁左下欄3行?右下欄16行)
(2d)「前記コントローラ17の出力信号は前記第1、第2、第3電磁弁EVI、EV2、EV3の各ソレノイドに入力されるものである。」(3頁左上欄11行?13行)
(2e)「左側アングル・チルトシリンダ9を伸長させる場合について、第3図に基づいて説明する。
コントーラ17から流量指令値VLが第1電磁弁EV1のソレノイドに加えられる。これによって第1電磁弁EV1のスプール位置が移動し、絞りCFおよび第1電磁弁EV1のスプール位置に応じた油圧が第1ポペツト弁PV1に加わり、この第1ポペツト弁PV1はその油圧に応じた流量、すなわち指令流量を逆止弁CV1を介して左側アングル・チルトシリンダ9のボトム側に加える。
一方、この左側アングル・チルトシリンダ9のロッド側の管路24の圧力は上昇し、これに対し第1電磁弁EV1を介して管路r_(3)が戻り管路27に接続されるため、管路r_(3)の圧力が低下し、その結果第2ポペツト弁PV2か開き、左側アングル・チルトシリンダ9のロッド側の圧油が戻り管路27を介してタンク44に流れる。
以上のようにして、第1電磁弁EV1によって第1、第2ポペツト弁PV1、PV2が制御され、第1電磁弁EV1のソレノイドに印加される流量指令値V_(L)に応じた流量が左側アングル・チルトシリンダ9のボトム側に加えられて左側アングル・チルトシリンダ9を伸長させる。」(4頁左上欄19行?左下欄3行)
(2f)「また、リフトシリンダ6の伸縮操作も、左、右側アングル・チルトシリンダ9,10の場合と同様にリフトシリンダ用流量制御弁20を作動させて行われる。」(4頁左下欄20行?右下欄3行)

これらの記載によれば、甲第2号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「リフトシリンダと、チルトとアングリングをさせる左右のアングルチルトシリンダとを備えたブルドーザの作業機のコントロール装置において、
ブレードコントロールレバーからの電気信号を電磁弁EV1、EV2に接続し、該電磁弁EV1、EV2を、リフトシリンダ、左右のアングルチルトシリンダ用の流量操作弁20、21、22を構成する左右のポペット弁PV1、PV4又はポペット弁PV2、PV3に接続するコントロール装置。」(以下、「甲2発明」という。)

(3)甲第3号証(特開平4-258508号公報)には、建設機械の油圧駆動装置に関して、次の記載が認められる。
(3a)「【0002】
【従来の技術】従来公知の一般的な油圧駆動装置の回路例を図9に示す。この油圧駆動装置は、・・・可変容量油圧ポンプ2からの圧油によって駆動されるアクチュエータ5a,5bと、可変容量油圧ポンプ2からアクチュエータ5a,5bに供給される圧油を制御する流量制御弁4a,4bと、可変容量油圧ポンプ2のレギュレータ3の駆動およびアクチュエータ5a,5bの駆動を指令する操作レバー7a,7bと、レギュレータ3の駆動制御および流量制御弁4a,4bの駆動制御を行う制御装置6が備えられている。」
(3b)「【0009】
【実施例】図1に本発明の実施例の制御回路を示す。図9に示した従来例と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
(3c)「【0010】エンジン1により駆動される可変容量油圧ポンプ2、流量制御弁4a,4b、操作レバー7a,7bについては、図9に示した従来例と同様であるが、後述する制御装置8と、流量制御弁4a,4bのストローク(開口面積)を制御する電磁弁9a,9b,9c,9dと、・・・流量制御弁4a,4bの駆動源となる油圧ポンプ11が備えられている。
【0011】前記制御装置8は、記憶,演算および論理判断機能を有し、設定手段,演算手段,判断手段および出力手段を含む制御装置であって、該制御装置8の入力側には、操作レバー7a,7bおよび圧力センサ10a,10b,10c,10dが接続され、出力側には、電磁弁9a,9b,9c,9dの駆動部、レギュレータ3の駆動部がそれぞれ接続されている。
【0012】前記制御装置8の設定手段としては「操作レバーストロークθと電気信号Eθとの関係」(図2)、「操作レバー電気信号Eθ と流量制御弁の要求流量Qとの関係」(図3)、「レギュレータへの電気信号EPとポンプ吐出量QP との関係」(図4)および「流量制御弁の開口面積Aと電磁弁への電気信号EC との関係」(図5)を含んでいる。」

これらの記載及び図面の記載によれば、甲第3号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「電磁弁9a,9b,9c,9dを油圧アクチュエータ5a,5bの流量制御弁4a,4bの左右の方向切換えポートと油圧ポンプ11とを接続する油圧回路途中に設け、操作レバー7a,7bからの電気信号を制御装置8を介して電磁弁9a,9b,9c,9dに出力して、流量制御弁4a,4bを切り換える技術。」

(4)甲第4号証(特開平4-143334号公報)には、次の記載が認められる。
(4a)「第5図は、従来技術の油圧制御装置を示す要部回路図である。図において、1は電気ジョイスティック、2はコントローラ、3及び4はそれぞれ電磁比例減圧弁、5及び6は電磁比例減圧弁3及び4のそれぞれソレノイド、7はパイロット圧油圧源、8は油圧アクチュエータ、9は油圧アクチュエータ8制御用のパイロット切換弁、10及び11はパイロット切換弁9のそれぞれパイロット圧受圧部、・・・である。
次に、従来技術の油圧制御装置を第5図について述べる。電気ジョイスティック1の操作レバー17を中立位置よりイ位置方向又はロ位置方向に操作することにより、その操作量に応じて電気信号がコントローラ2に出力される。コントローラ2では上記電気信号にもとづいて判断し、ソレノイド5又は6に対して電気信号を出力する。ソレノイド5又は6は通電するので、電磁比例減圧弁3又は4は作動する。パイロット圧圧力源7からのパイロット圧は、電磁比例減圧弁3又は4を介してパイロット圧受圧部11又は12に作用する。パイロット切換弁9は、ハ位置方向又はニ位置方向に切換作動する。メインポンプ15からのメインポンプ圧油は、パイロット切換弁9のハ位置又はニ位置を経て油圧アクチュエータに供給される。」(1頁右下欄13行?2頁左上欄17行)
(4b)「第1図は、この発明にかかる油圧制御装置を示す要部回路図である。図において、従来技術と同一構成要素を使用するものに対しては同符号を付す。」(3頁右上欄3?6行)
(4c)第1図には、電磁比例制御弁3,4を油圧アクチュエータ8のパイロット切換弁9の左右の方向切換えポートとパイロットポンプ7とを接続する油圧回路途中に設けることが示されている。

これらの記載によれば、甲第4号証には、次の技術が記載されていると認められます。
「電磁比例制御弁3,4を油圧アクチュエータ8のパイロット切換弁9の左右の方向切換えポートとパイロットポンプ7とを接続する油圧回路途中に設け、ジョイスティック1からの電気信号をコントローラ2を介して電磁比例制御弁3,4に出力して、パイロット切換弁9を切り換える技術。」

(5)甲第5号証(特開昭61-236902号公報)には、次の記載が認められる。
(5a)「第1図は、本発明の実施例装置の使用状態の接続関係を示した接続図である。油圧シリンダ30は、シリンダ室31、32を有し、シリンダ室31に接続された配管401は電気式比例制御弁40の主弁43のXポートに、シリンダ室32に接続された配管402は、電気式比例制御弁40の主弁43のYポートに接続されている。・・・又主弁43を駆動するためのパイロット油圧を導入するパイロット管路94が配設されており、その管路には、主弁43を駆動するポペット弁41、42が設けられている。主弁43は、4ポート3位置切換バルブであり、パイロット圧によって切換バルブの位置が制御される。ポペット弁41、42は、それらのソレノイド410、420に電気式比例制御弁制御装置(以下単に[制御装置」という)50からデユーティ制御信号V2,V3を入力して、連続的にパイロット圧を発生するように制御される。制御装置50は、操作ボックス61の操作レバー62の位置を検出し、その位置に応じたデユーティの制御信号を出力している。」(2頁右下欄8行?3頁左上欄13行)

これらの記載によれば、甲第5号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「ポペット弁41,42を油圧シリンダ30の主弁43の左右の方向切換えポートとパイロット油圧源とを接続する油圧回路途中に設け、操作レバー62からの電気信号を制御装置50を介して左右切換ポペット弁41,42に出力して、主弁43を切り換える技術。」

(6)甲第6号証(実願平3-15143号(実開平4-105607号)のマイクロフイルム)には、次の記載が認められる。
「【0003】図6(A)は、このような制御方式における操作レバーの標準的な操作パターンお平面的に示したものである。左側の操作レバー12で旋回とアーム、また、右側の操作レバー10でブームとバケットの作動を制御する。しかし、この操作パターンは、機械のメーカや型式によって数種類の方式があり、図6(B)のように、(A)と比べて左右の操作レバー及びそれぞれのレバーの前後、左右の移動に対応する機能が全く異なるパターンも存在する。」
(6b)図6(A)には、「ブーム上げ」「ブーム下げ」が右側操作レバーの前後方向の回動により操作されることが、図6(B)には、「ブーム上げ」「ブーム下げ」が左側操作レバーの左右方向の回動により操作されることが示されている。

(7)甲第7号証(実願平2-3730号(実開平3-93847号)のマイクロフイルム)には、ブルドーザの作業機操作レバー装置に関して、次の記載が認められる。
(7a)「第2図は従来のブルドーザのブレードおよびリッパの操作レバーの操作パターンを示す平面図である。」(13頁19行?14頁1行)
(7b)第2図の下図には、操作レバーの前後方向の回動によりリッパの上げ下げ操作を行い、左方向回動によりリッパの爪の角度を車両本体に対して内側に向ける「チルトイン」操作、右方向回動によりをリッパの爪の角度を車両本体に対して外側に向ける「チルトバック」操作を行うことが示されている。

(8)甲第8号証は、請求人の製造した除雪機械のカタログである。

(9)甲第9号証(特開平2-261132号公報)には、建設機械、特に油圧パワーシャベルの制御方法に関して、次の記載が認められる。
(9a)「・・・そして、これらのアクチエータに対する指令は電気レバーからなる走行操作レバー17、作業機操作レバー18の操作による出力信号コントローラ19から前記パイロット弁に指令されるようになっており、走行単独時は、両ポンプ2,3による左右走行モータ4,5への独立回路によって、夫々の油圧ポンプが左右走行モータを駆動するようになっている。
・・・
また、走行と作業機の同時操作時は、一方の油圧ポンプ2の吐出油圧により、左右走行モータ4,5を駆動すると共に、他方の油圧ポンプ3の吐出油圧で作業機アクチエータを作動させるようになっている。・・・」(2頁左上欄14行?右上欄13行)
(9b)「・・・単独走行から作業機との同時操作に切換えたとき、或いは逆に同時操作から走行単独に切換えると、先に操作している側の速度が低下し、また切換えによるショックが生じるために吊り作業時に補助作業員との連携がうまくできず、しかもオペレータの意図に反して早く、或いは遅く作動して危険が生じるという問題があった。・・・」(2頁左下欄10行?16行)。

(10)甲第10号証(特開昭64-36827号公報)には、建設機械の走行制御装置に関して、次の記載が認められる。
(10a)「このため走行しながら例えばブームを動作すべく作業機操作弁iを操作すると、リヤ可変モータcの吐出圧の一部がブームシリンダ側へと供給されるため、車両の直進性が損なわれる不具合が生じる。」(2頁左上欄10行?14行)
(10b)「一方走行レバーをフル操作した状態でブームをファインコントロールすべくブーム操作レバーを僅かに操作すると、右走行モータ13はレバー操作量に応じた流量配分でパイロット弁19によりメータアウト側パイロット制御弁I6の開き量0_(2)が決定され、左走行モータ10はパイロット弁18及びパイロット弁34によりメータアウト側パイロット制御弁14の開き量・・・が決定されるようになる。」(3頁左下欄5行?14行)

(11)甲第11号証(特開昭50-102101号公報)には、アングルチルトドーザに関して、次の記載が認められる。
(11a)「・・・ブレード上下操作弁11に直列に接続されたアングルチルト操作弁12は中立時に各リフトシリンダ6のボトム側とヘッド側を互に並列に接続する連通ポジション12_(1)及び12_(3)と、操作レバ16を第6図に示すチルト位置に操作した時に各リフトシリンダ6のヘッド側とボトム側を直列に接続するチルトポジション12_(2)及び12_(4)と、操作レバ16をアングル位置に操作した時に各リフトシリンダ6をチルト時と同様に直列に接続するアングルポジション12_(2)及び12_(5)とを夫々具えている。・・・」(2頁右上欄13行?左下欄3行)

(12)甲第12号証には、ブルドーザにより、転石の除去作業、開墾作業、倒木作業を行う際の、ブレードの操作方法が記載されていると認められる。

2 本件特許発明と甲1発明との対比
本件特許発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「昇降シリンダ」は、本件特許発明の「リフトシリンダ」に相当し、以下、同様に「アングリングシリンダ」は「アングルシリンダ」に、「シーソースイッチ」は「電気スイッチ」に、「電磁方向切換弁」は「メイン操作弁」に相当する。
また、甲1発明において、シーソースイッチで操作される「上下首振り旋回用シリンダ」と、本件特許発明において、電気スイッチで操作される「アングルシリンダ」とは、「(リフトシリンダ及びチルトシリンダとは異なる)第3系統のアクチュエータ」である点で共通する。
さらに、甲1発明における「ゲレンデ整備車」と本件特許発明における「ブルドーザ」とは「油圧回路を動力源とする作業用車両」である点で共通し、甲1発明における「翼板付排雪ブレードの操作装置」と、本件特許発明における「作業機コントロール装置」とは、「作業機コントロール装置」である点で共通する。

したがって、両者は、次の一致点及び相違点を有すると認められる。
[一致点]
A’ブレードの上げおよび下げの作動に使用されるリフトシリンダと、
ブレードの一側を地面に接触させ他側を上げるように傾斜させる作動に 使用されるチルトシリンダとを備え、
前記リフトシリンダおよびチルトシリンダ用のそれぞれのメイン操作弁 の方向切換えを1本の操作レバーの前後左右への操作により行うようした 油圧回路を動力源とする作業用車両の作業機コントロール装置において、
B’該操作レバーのノブに、リフトシリンダ及びチルトシリンダとは異なる 第3系統のアクチュエータ用の電気スイッチを内装し、
C’該電気スイッチからの信号により第3系統のアクチュエータ用のメイン 操作弁を切り換えるように構成し、
D’リフトシリンダ、チルトシリンダと第3系統のアクチュエータとの同時 複合操作を可能とした
E’油圧回路を動力源とする作業用車両の作業機コントロール装置。
[相違点1]構成要件AおよびEに関して、
本件特許発明は、「作業用車両」が「ブルドーザ」であり、「作業機」が「ブルドーザの作業機」であるのに対して、甲1発明は、「作業用車両」が「ゲレンデ整備車」であり、「作業機」が「翼板付排雪ブレード」である点。

[相違点2]構成要件BおよびDに関して
電気スイッチで操作される「第3系統のアクチュエータ」が、本件特許発明では「アングルシリンダ」であるのに対し、甲1発明では、「上下首振り旋回用シリンダ」であり、甲1発明において、アングルシリンダは、操作レバーの左右回動によって操作される点。

[相違点3]構成要件Cに関して、
本件特許発明では、第3系統のアクチュエータであるアングルシリンダ用の電気スイッチを、ON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換弁をメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設けているのに対して、甲1発明では、ON,OFF切換弁を用いず、第3系統のアクチュエータである上下首振り旋回用シリンダの電気スイッチからの電気信号をマイクロコンピュータを介してメイン操作弁(電磁方向切換弁)に直接出力し、油圧回路を切り換えている点。

3 判断
(1)相違点1について
ブルドーザとゲレンデ整備車とは、いずれも油圧回路を動力源として作業機を操作する作業用車両である点で共通するものであり、甲2発明には、ブルドーザの作業機に設けられたブレードの上げおよび下げ(リフト)、ブレードの一側を地面に接触させ他側を上げるように傾斜させる作動(チルト)、ブレードを車体中心に対して一方は前に出し他方は後に引く作動(アングル)の操作を操作レバーにより行うことが示されている。
そうすると、甲1発明のゲレンデ整備車の翼板付排雪ブレードのコントロール装置を、甲2発明のようなブルドーザの作業機のコントロ-ル装置に適用して、相違点1に係る本件特許発明の構成とすることは当業者に容易になしうることである。

(2)相違点2について
ア 甲1発明においては、操作レバーの前後方向の操作が、ブレードのリフトシリンダの上下動に対応し、操作レバーの左右方向の動きがチルトシリンダの左右に傾斜させる動きに対応し、操作レバーの左右の回動が、ブレードの一方を前に他方を後ろに引く動作に対応し、電気スイッチであるシーソスイッチ(実施例では上下方向に設けられている)を操作することが、ブレードの上下首振り旋回動作に対応しており、このように操作部を操作レバー又はスイッチに割り振ることで、人間工学に適ったものとなり、操作が楽で誤動作が防止できるものとなっているものであり、アングルシリンダの操作部を操作レバーのノブに設けた電気スイッチとする動機付けはない。

イ 請求人は、操作レバーやスイッチの操作に作業機のどの動作を割り振るかは適宜なしうることであり、操作と動作が対応しない構成は周知であり、アングルシリンダの操作部と上下首振り旋回シリンダ(ピッチングシリンダ)の操作部を置換することは困難ではないと主張する。
たしかに、操作レバー及び電気スイッチで各種のアクチュエータの操作を行う場合に、どのアクチュエータの操作を操作レバー及び電気スイッチのどの操作に割り振るかは適宜設計できることであるが、甲第1号証に「操作レバーを被駆動部材の動作と概ね同方向に操作する」(記載事項(1c)参照)と記載されているように、通常は誤動作のないように無理のない割り振りを行うのが普通であり、人間工学に適った、操作が楽で誤動作が防止できる割り振りとなっている甲1発明において、あえて、操作と作業機の動作が対応しなくなるような割り振りに置換することには阻害要因があるというべきである。

ウ また、請求人は、上下首振り旋回シリンダ用の電気スイッチに加え、アングルシリンダ用の電気スイッチを設けることは適宜なしうると主張するが、甲第1号証には、スイッチを複数設けると操作がしづらくなる問題点が挙げられており(記載事項(1d)参照)、上下首振り旋回動作用の電気スイッチに加えて、さらに、アングルシリンダの操作用電気スイッチを設けることが当業者が容易になしうるとすることもできない。

エ 請求人は、さらに、油圧系統を3系統とし、すなわち上下首振り旋回シリンダを省略し、アングルシリンダの操作を電気スイッチで行うことも適宜なしうると主張するが、甲1発明は、リフト、チルト、アングル、上下首振りの4系統の油圧系統を設けることを前提としたものであり、上下首振り操作をできないものとすることは、当業者が容易になしうることではない。
仮に、甲1発明において、上下首振り操作の必要がないものとなったとしても、その場合は、電気スイッチ(シーソースイッチ)を省略するのが自然であり、アングルシリンダの操作を操作レバーのノブに設けた電気スイッチに置換することを、当業者が容易に想到しうるということはできない。

オ また、相違点2に係る本件特許発明の構成要件については、甲2発明にも、甲第3号証ないし甲第12号証のいずれにも示されていない。
すなわち、甲2発明は、チルトとアングルの操作を左右のアングルチルトシリンダにより行うものであって、独立したアングルシリンダ及びその操作部を有しておらず、また、左右のアングルチルトシリンダはブレードコントロールレバーにより操作するものであって、電気スイッチで操作することは示されていない。
甲第3号証ないし甲第12号証には、油圧駆動される作業機が記載されているが、操作レバーのノブに設けた電気スイッチで、ブレードのアングルシリンダを操作することは、いずれにも示されていない。

カ したがって、相違点2に係る本件特許発明の構成要件は、甲1発明、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易になしうることではない。

(3)相違点3について
甲第3号証ないし甲第5号証には、操作レバーやジョイスティックにより操作される電気スイッチをON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換弁をアクチュエータ用のメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設けることが示されており、このような油圧制御技術は本件特許の出願前周知の技術であったと認められる。
そうすると、操作レバーのノブに設けた電気スイッチにより、油圧アクチュエータを油圧制御する際に、上記周知技術を適用し、電気スイッチをON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換弁を第3系統のアクチェータ用のメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設けることは当業者が容易になしうることといえる。
しかしながら、上記(2)で検討したとおり、操作レバーのノブに設けた電気スイッチによりアングルシリンダを操作することは、当業者が容易になしうることではないから、操作レバーのノブに設けた電気スイッチに接続されるON,OFF切換弁をアングルシリンダ用のメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設けることは、当業者が容易になしうることではない。

(4)作用効果について
そして、本件特許発明は、手首をひねることなく、リフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複合操作をすることができる本件特許明細書記載の格別の作用効果を奏するものと認められる。
すなわち、甲1発明においては、リフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複合操作をすることができるが、手首をひねる動作が必要となる問題点があり、また、本件特許明細書の図7には、操作レバーのノブの押しボタン43を押した上で、操作レバーを操作してアングルシリンダを操作するものが記載され、この従来技術では手首をひねることなくアングルシリンダを操作することができるが、リフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複合操作をすることができない問題点があるのに対し、本件特許発明は、これらの問題点を解消できるものである。

なお、請求人は、チルトとアングルの同時複合操作は必要ではなく、同時複合操作できるとしてもそのような効果は、甲1発明から予測できると主張するが、作業によりチルトとアングルの同時複合操作が必要な場合が生じるものと認められる。
また、甲第1号証において、アングルシリンダの操作を手首をひねることなく行うことは想定されていないから、本件特許発明の上記作用効果は、甲1発明から予測できることではない。

(5)判断のまとめ
したがって、本件特許発明は、甲1発明、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第8 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許発明を、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ブルドーザの作業機コントロール装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ブレードの上げおよび下げの作動に使用されるリフトシリンダと、
ブレードの一側を地面に接触させ他側を上げるように傾斜させる作動に使用されるチルトシリンダとを備え、
前記リフトシリンダおよびチルトシリンダ用のそれぞれのメイン操作弁の方向切換えを1本の操作レバーの前後左右への操作により行うようにしたブルドーザの作業機コントロール装置において、
該操作レバーのノブに、ブレードを車体中心に対して一方は前に出し他方は後に引く作動に使用されるアングルシリンダ用の電気スイッチを内装し、
該電気スイッチをON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換弁をアングルシリンダ用のメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設け、
前記リフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複合操作を可能としたこと
を特徴とするブルドーザの作業機コントロール装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はブルド-ザの作業機コントロ-ル装置に係り、特に3系統以上の複数のアクチュエ-タを誤操作なく、少ない労力で1本のレバ-から手を離すことなしに同時複合操作を可能としたブルド-ザの作業機コントロ-ル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にブルド-ザの前方作業機のブレ-ドにはリフトシリンダ、チルトシリンダおよびアングルシリンダ等が装着されており、リフトシリンダはブレ-ドの上げおよび下げの作動に使用され、チルトシリンダはブレ-ドの一側を地面に接触させ、他側を上げるように傾斜させる作動に使用され、また、アングルシリンダはブレ-ドを車体中心に対して一方は前に出し他方は後に引くように上から見て車体に対して傾斜させる作動に使用されるようになっている。このようにブレ-ドを操作するには操作レバ-とシリンダに供給するオイルを切換えるバルブとをメカニカルリンケ-ジにより連結してあり、したがって操作レバ-を操作するとバルブが切換えられてシリンダが伸縮し、これによりブレ-ドが種々の動作をするようになっている。この場合、作業機コントロ-ル装置として例えば、図6に示すように1本の操作レバ-のノブ41を中立位置から後方向に操作するとブレ-ド上げ、前方向に操作するとブレ-ド下げ、さらに前方向に操作するとブレ-ド浮きの状態となる。また、左方向に操作すると、ブレ-ドが左チルト、右方向に操作すると右チルトとなり、さらに右に回転させると右アングルとなり、左方向に回転させると左アングルとなるようにしたものである。これに対して図7に示すように同じく1本の操作レバ-のノブ42を中立位置から後方向に操作するとブレ-ド上げ、前方向に操作するとブレ-ド下げ、さらに前方向に操作するとブレ-ド浮きの状態となり、左右方向に操作するとそれぞれ、左チルト、右チルトする点は同じであるが、ノブ42に押しボタン43が設けてあり、この押しボタン43を押して左に倒すと括弧で示すように左アングル、右に倒すと括弧で示すように右アングルとなるようにしたものがある。その具体的切換え構造は図8に示すようになっている。すなわち、メインポンプ44の吐出量をメイン操作弁45(例えばチルト・アングル用)を経て2つのシリンダ(チルト用)46,(アングル用)47の何れかに供給する場合、メイン操作弁45とシリンダ46,47に至る2つの回路48,49途中にそれぞれ電磁切換弁50,51を設け、この電磁切換弁50,51を切換えない場合は、メイン操作弁45からの吐出油はチルト用シリンダ46に供給され、切換えた場合はアングル用シリンダ47に供給するようになっている。そしてこの切換えは図6の押しボタン43を押すと電磁弁が切換えられて、これまでのチルト回路がOFFとなり、アングル回路がONとなる。図中、52はリフト等のメイン操作弁、53はリリ-フ弁、54はタンクである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前者はリフト、チルト、アングルの同時複合操作が可能であるが、メカニカルリンケ-ジを介してのバルブ直引操作のため、操作力が重く、また、アングルの場合はひねり操作のため手首の動きだけでは操作しづらい欠点がある。これに対して後者はアングルの場合、押しボタン操作+レバ-操作のため、前者のひねり操作に比して手の動きは少なくてすむが、チルトとアングルの同時複合操作ができないと云う欠点があった。
【0004】本発明はこれに鑑み、3系統以上の複数のアクチュエ-タを誤操作なく、少ない労力で1本のレバ-から手を離すことなしに同時に複合操作を可能としたブルド-ザの作業機コントロ-ル装置を提供して従来技術の持つ欠点の解消を図ることを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明はブレードの上げおよび下げの作動に使用されるリフトシリンダと、ブレードの一側を地面に接触させ他側を上げるように傾斜させる作動に使用されるチルトシリンダとを備え、前記リフトシリンダおよびチルトシリンダ用のそれぞれのメイン操作弁の方向切換えを1本の操作レバーの前後左右への操作により行うようにしたブルドーザの作業機コントロール装置において、該操作レバーのノブに、ブレードを車体中心に対して一方は前に出し他方は後に引く作動に使用されるアングルシリンダ用の電気スイッチを内装し、該電気スイッチをON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換弁をアングルシリンダ用のメイン操作弁の左右の方向切換えポートと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設け、前記リフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複合操作を可能としたことを特徴とする。
【0006】
【作用】上記構成によれば、リフトシリンダ,チルトシリンダ用の操作レバーとは別にアングルシリンダ用の電気スイッチを操作レバーのノブに設けたから、アングルシリンダを操作する場合、ノブに設けられた電気スイッチを操作してON,OFF切換弁を切換えることによりアングルシリンダ用メイン操作弁の左右の方向切換えが可能となり、従来できなかったリフトシリンダ、チルトシリンダとアングルシリンダとの同時複合操作が容易に行える。
【0007】
【実施例】図1は本発明にかかるブルド-ザの作業機コントロ-ル装置の第1実施例の油圧および電気回路図、図2(a),(b)は図1の操作レバ-のノブ部分の実施例、図3は本発明にかかるブルド-ザの作業機コントロ-ル装置の第2実施例の油圧および電気回路図、図4は本発明にかかるブルド-ザの作業機コントロ-ル装置の第3実施例の油圧および電気回路図、図5(a),(b)は図2を発展させた4系統操作レバ-の握り部分の実施例の実施例である。
【0008】本発明は図1に示すように図示しない第1,第2系統のアクチュエ-タ用のそれぞれのメイン操作弁2,3の方向切換えを1本の操作レバ-1により行うようにしたブルド-ザの作業機コントロ-ル装置において、該操作レバ-1のノブ1aに第3系統用の電気スイッチ4を内装し、該電気スイッチ4をON,OFF2位置を有する電磁切換弁5,6に接続して、該電磁切換弁5,6を第3系統のアクチュエ-タ用のメイン操作弁7の左右の方向切換えポ-ト7a,7bと、パイロットポンプ8とを接続する油圧回路途中に設けたもので構成されている。
【0009】操作レバ-1は油圧パイロット式、あるいは電気レバ-+電気比例減圧弁でもよいが、本実施例ではパイロット圧比例制御弁の場合で説明する。パイロット圧比例制御弁は第1系統(リフト)用1Aと第2系統(チルト)用1Bとからなり、パイロットポンプ8の吐出油は回路10により第1系統用1Aと第2系統用1Bの両方の制御弁に導かれ、使用しない場合には戻りの回路11によりタンク12に戻される。第1系統用1Aと第2系統用1Bは、何れも1本の操作レバ-ノブ1aを例えば、前後に動かすと第1系統用1Aが操作され左右に動かすと第2系統用1Bが操作されるようになっている。そして第1系統用1AのR側とメイン操作弁2のR側ポ-トとはパイロット回路13により連結され、1AのL側とメイン操作弁2のL側ポ-トとはパイロット回路14により連結されている。また、第2系統用1BのR側とメイン操作弁3のR側ポ-トとはパイロット回路15により連結され、1BのL側とメイン操作弁3のL側ポ-トとはパイロット回路16により連結されている。前記電気スイッチ4が内蔵されているノブ1aの形式は図2に示すように(a)押しボタン17a,17bのものや(b)シ-ソ18の何れか一方を押すとONとなるものがあり、操作パタ-ンは理解しやすいように図6,および図7と同じ名称に示してある。電気スイッチ4と電磁弁5,6とは電気回路19,20により接続され、電磁弁5,6は第3系統(アングル)用アクチュエ-タのメイン操作弁7の左右の方向切換えポ-ト7a,7bとそれぞれパイロット回路21,22により連結され、回路21,22の途中には操作を円滑にする絞り23,23がそれぞれ設けられている。さらに電磁弁5,6は前記パイロットポンプ8と回路10,および11の分岐した回路9および24によりそれぞれ連結されている。図中、25はリリ-フ弁、26はバッテリである。なお、本実施例では各メイン操作弁2,3,7にオイルを供給するメインポンプ、およびこれらメイン操作弁から各シリンダに至る回路は省略してあるが、この関係の油圧回路については図8を参照されたい。
【0010】つぎに作動を説明する。第1および第2系統用のメイン操作弁2,3については公知のようにレバ-ノブ1aを前後または左右に操作すると、パイロット回路の油圧がメイン操作弁2,3の左右の何れかに作用して、メイン操作弁を中立位置から作動位置に切換え、その結果、図示しないアクチュエ-タが作動する。これを具体的に説明すると、例えば操作レバ-ノブ1aを後に倒すと第1系統用1Aのパイロット圧比例制御弁が操作され、パイロット回路13によりメイン操作弁2のR側ポ-トにパイロット圧が作用してメイン操作弁2を中立位置から作動位置に切換えられる。また、このような操作とは別に押しボタン17aを押すと電気スイッチ4はONとなり、これにより電気回路19は通電して電磁弁5をOFF(戻り回路11に通ずる回路24)からON(吐出回路10に通ずる回路9)に切換えられる。したがって第3系統用のメイン操作弁7の方向切換えポ-ト7aにはパイロット回路21に回路9よりの油圧が作用してメイン操作弁7は中立位置から作動位置に切換えられ、図示しない第3系統用のアクチュエ-タが作動することになる。ここで押しボタン17aを離すと、電気スイッチ4がOFFとなり、電気回路19は遮断され、したがって電磁弁5はONからOFFに切換えられ、メイン操作弁7は中立位置に戻る。また、押しボタン17bを押した場合は電気回路20が通電して電磁弁6がOFFからONに切換えられ、メイン操作弁7は前述の場合と逆方向に切換えられる。この場合、前記絞り23はアクチュエ-タの起動・停止を円滑にするために使用される。
【0011】図3および図4は本発明の第2および第3の実施例を示すもので、図1と共通する部品には図1と同一符号を付して説明を省略し、異なる部分のみ説明する。第2の実施例は図3に示すように図1との違いは図1の電磁弁5,6の代わりに電磁比例減圧弁27,28を設け、絞り23を廃止して電気回路19,20の間にコントロ-ラ29を設け、コントロ-ラ29に第1系統操作信号30,第2系統操作信号31を入力するようにした点である。
【0012】つぎに第2の実施例の作動を説明する。電気スイッチ4のONで電磁比例減圧弁27,28の何れかに電流を出力して第3系統用のメイン操作弁7を切換え、アクチュエ-タを作動させる。このときコントロ-ラ29は他の同時操作の有無等の流量制御情報に応じて出力電流値を加減する。すなわち、第1、または第2系統の操作と第3系統の操作とは同時に行えるから、コントロ-ラ29は同時操作を双方の圧力を調整して行えるようにしている。また、起動・停止時にはモジュレ-ションをかけてショックを軽減するようにする。
【0013】第3の実施例は図4に示すように図3との違いは第3系統用の電気スイッチ4を比例スイッチ32とした点である。比例スイッチ32は図4のポテンショメ-タのほか、感圧抵抗素子であっても良い。
【0014】つぎに第3の実施例の作動を説明する。コントロ-ラ29は比例スィッチ32の出力に応じて電磁比例減圧弁27,28の何れかに電流を出力し、第3系統用のメイン操作弁7を切換えて、アクチュエ-タを作動させる。この場合、コントロ-ラ29は第2の実施例と同様に他の流量制御情報に応じて出力電流値を加減する。
【0015】図5は上述の3系統(リフト、チルト、アングル)用の操作に1系統(例えばブレ-ドの上下の傾きを前・後に可変するピッチ動作等を)追加して4系統用に発展させた場合のレバ-ノブ1a(握り部)を示すもので、(a)は押しボタンスイッチ33a,33bを設けたもの、(b)はシ-ソスイッチ34を設けた例を示す。この場合は当然のことながら、第4系統用のメイン操作弁、電磁比例減圧弁、油圧回路および電気回路が新たに必要となる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、リフトシリンダおよびチルトシリンダ用のそれぞれのメイン操作弁の方向切換えを1本の操作レバ-により行うようにしたブルド-ザの作業機コントロ-ル装置において、該操作レバ-のノブにアングルシリンダ用の電気スイッチを内装し、該電気スイッチをON,OFF切換弁に接続して、該ON,OFF切換弁をアングルシリンダ用のメイン操作弁の左右の方向切換えポ-トと、パイロットポンプとを接続する油圧回路途中に設けたから、3系統以上のアクチュエ-タを誤操作なく、かつ少ない労力で、しかも操作レバ-ノブから手を離すことなくこれまで不可能だった同時の複合操作ができることにより、オペレ-タの疲労を軽減すると同時に整地作業が容易で正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるブルド-ザの作業機コントロ-ル装置の第1実施例を示す油圧および電気回路の説明図である。
【図2】図1の操作レバ-ノブ(握り部)の実施例を示し、(a)は押しボタンスイッチ、(b)はシ-ソスイッチ(c)はひねりスイッチの場合の説明図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す油圧および電気回路の説明図である。
【図4】本発明の第3実施例を示す油圧および電気回路の説明図である。
【図5】図1の操作レバ-ノブ(握り部)から発展した他の実施例を示し、(a)は押しボタンスイッチ、(b)はシ-ソスイッチの場合の説明図である。
【図6】従来の操作レバ-ノブによる操作パタ-ンの第1例の説明図である。
【図7】従来の操作レバ-ノブによる操作パタ-ンの第2例の説明図である。
【図8】図7の油圧回路の説明図である。
【符号の説明】
1 操作レバ-
1a ノブ
2 第1系統(リフト)用アクチュエ-タのメイン操作弁
3 第2系統(チルト) 〃 〃
4 電気スイッチ
5,6 電磁切換弁
7 第3系統(アングル)用アクチュエ-タのメイン操作弁
8 パイロットポンプ
27,28 電磁比例減圧弁
32 比例スイッチ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-02-28 
出願番号 特願平5-166177
審決分類 P 1 113・ 121- YA (E02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 久夫大森 伸一  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 山本 忠博
伊波 猛
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3329889号(P3329889)
発明の名称 ブルドーザの作業機コントロール装置  
代理人 竹田 稔  
代理人 津田 幸宏  
代理人 木村 耕太郎  
代理人 黒川 恵  
代理人 小林 浩  
代理人 早水 浩一  
代理人 黒川 恵  
代理人 早水 浩一  
代理人 津田 幸宏  
代理人 服部 謙太朗  
代理人 小林 浩  

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