• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B
審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B
管理番号 1238607
審判番号 不服2009-14118  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-21 
確定日 2011-06-17 
事件の表示 特願2006-333891「衛生用紙」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月19日出願公開、特開2007- 98152〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成10年4月9日に出願した特願平10-135881号を二以上の発明を包含する特許出願とした、特許法第44条第1項の規定によるものとして出願された特願2001-282444号を、更に、二以上の発明を包含する特許出願とした、特許法第44条第1項の規定によるものとして平成18年12月11日(優先権主張、平成9年4月9日)に出願されたものであって、その願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面についての平成20年10月27日付け手続補正がなされた後、平成21年4月13日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたものであって、上記特許請求の範囲等についての平成21年7月22日付け手続補正がなされ、その後、平成22年11月8日付け拒絶理由通知書が発送され、これに対して平成23年1月31日付け意見書が提出されると共に、上記特許請求の範囲等についての同内容の2つの平成23年1月31日付け手続補正がなされている。

2.拒絶理由の内容
平成22年11月8日付け拒絶理由通知書で示した拒絶理由の1つは、概要、以下の拒絶理由Aである。

拒絶理由A;この出願の請求項1に係る本件発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された特開2000-129592号公報に記載された発明に基いて当業者がその出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

ここにおける「特開2000-129592号公報」を、以下、「引用例」という。

3.当審の判断
拒絶理由Aの妥当性について検討する。

3-1.本件の発明
本件審判に係る出願(以下、「本件出願」という。)の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定されるものであって、同項の記載は、以下のとおりのものと認める。

「緑茶、紅茶若しくはウーロン茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を含む茶殻の混合物を、常温水又は常温より高い温度の加熱水により浸出し、浸出残渣を分離して、茶殻抽出液を製造し、この製造された茶殻抽出液をティッシュペーパー、ちり紙又はトイレットペーパーに使用される生理用紙に含浸させて乾燥することにより、夫々、抽出液の乾燥物を含有するティッシュペーパー、ちり紙又はトイレットペーパーに使用される生理用紙とすることを特徴とする衛生用紙の製造方法。」

3-2.分割要件と優先権要件、出願日
本件出願は、以下に述べる理由で、特許法第44条第1項の規定に違反するものであるから、同条第2項の適用を受けられないものである。したがって、本件出願は、現実の出願日である平成18年12月11日に出願されたものと認める。
また、本件出願において、その優先権を主張する根拠出願である特願平9-126202号は平成9年4月9日に出願されたもので、本件出願は、上記根拠出願の出願の日から1年以内にされたものでないから、特許法第41条第1項第1号に掲げる場合に当たり、同条第1項の規定に違反するもので、同条第2項の適用を受けられないものである。

1)本件発明は、衛生用紙の製造方法に係るものであって、「茶殻抽出液をティッシュペーパー、ちり紙又はトイレットペーパーに使用される生理用紙に含浸させて乾燥することにより、夫々、抽出液の乾燥物を含有するティッシュペーパー、ちり紙又はトイレットペーパーに使用される生理用紙とする」との事項(以下、「本件事項」という。)を、いわゆる、発明特定事項として有するものであるが、本件事項を有する衛生用紙の製造方法に係る発明は、特願2001-282444号の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「原出願明細書」という。)に記載はなく、本件発明は、原出願明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入した発明といえる。
以下に、補足する。

2)まずは、本件事項について検討しておく。
「ティッシュペーパー」とは、薄く柔らかい紙であって、本の挿絵の上に挟んだり、美術品などの包装に使ったり、また、化粧紙・塵紙などに用いるものであって(参照文献;広辞苑第五版、第1817頁、1998年11月11日、株式会社岩波書店発行)、一般的には、ティッシュペーパーボックスに収納されたり、フィルム製の袋に収納された、いわゆる、ポケットティッシュとして供されるものであり、また、「ちり紙」とは、一般には、鼻紙や落し紙に用いる紙であり(前出参照文献、第1757頁)、そして、「トイレットペーパー」とは、ちり紙、おとし紙であって、特に、ロール状のものである(前出参照文献、第1867頁)。
その一方で、「生理用紙」とは、月経時における生理的出血の対処という用途に供される紙ということができる。
そして、本件事項は、茶殻抽出液の乾燥物を含有する、上述したような意味である「生理用紙」を、上述したような意味である「ティッシュペーパー」、「ちり紙」又は「トイレットペーパー」に使用するとの技術的事項を有するものといえる。
そこで、検討するに、該技術的事項は、原出願明細書に記載があったとする理由は見当たらない。

3)これに対し、請求人は、平成23年1月31日付け意見書において、原出願明細書の段落【0013】にも記載があったと主張するので検討する。
段落【0013】には、以下のとおりの記載Aが記載されていたと認められる。

A;「本発明において、吸水性の紙層部は、ティシュペーパ、ちり紙、トイレットペーパ、紙おむつ又は生理用ナプキンに使用される生理用紙、タオル用紙などの衛生用紙で形成され、クレープを付して形成されるのが、良好な吸水性を確保できるので好ましい。本発明においては、前記吸水性の紙層部の下面に接して高吸水性樹脂及び吸水性材料粉を混合物として又は混合物としないで含有する吸水性混合層部を設けることができる。この吸水性混合層部には、綿状パルプ層の間に高吸水性樹脂が挟持され、その表裏両面に吸水紙が設けられている所謂ポリマーシートを使用することができる。」

そこで、記載Aを詳しく検討すると、ここには「吸水性の紙層部は、ティシュペーパ、ちり紙、トイレットペーパ、紙おむつ又は生理用ナプキンに使用される生理用紙、タオル用紙などの衛生用紙で形成され、」の記載が認められる。そして、「生理用紙」とは、先に、「2)」で述べたとおりのもので、生理用ナプキンも、月経時における生理的出血の対処という用途に供される物品であることから、また、この記載における読点の振り方からして、ティシュペーパ、ちり紙、トイレットペーパ、生理用紙、及びタオル用紙が、衛生用紙の例示として記載されていると見て取れることから、この記載において、生理用紙が使用される対象として挙げられているのは、生理用ナプキンと解せるものの、少なくとも、ティシュペーパー、ちり紙、及びトイレットペーパーと解すことはできない。
してみると、記載Aには、生理用紙が使用される対象として、ティシュペーパー、ちり紙やトイレットペーパーが記載されていたと解することはできない。
よって、請求人の主張に理由はない。

3-3.引用例との対比判断

3-3-1.引用例の発明

1)引用例には、以下の記載a?eが認められる。

a;「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一種以上のお茶の抽出残留廃液の乾燥物又は一種以上の茶殻の浸出液の乾燥物或いはこれらの二種以上の乾燥物の混合物を含有する薄葉紙で形成されていることを特徴とする衛生用紙。」
b;「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、衛生用紙及び該衛生用紙を使用する衛生シーツに関し、特に、本発明は、有機物廃材を利用した、特に、トイレットペーパ、ティッシュペーパー、紙タオル用紙、テーブルナプキン、紙おむつ、生理用紙、化粧用紙等の衛生用紙及び該衛生用紙を使用する紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パツド及び動物用シーツなどの衛生用品に使用できる衛生シーツに関し衛生用紙、及び寝具用補助シーツ、紙おむつ、衛生シーツ並びにその製造方法に関する。また、本発明は、長時間使用して衛生状態を保持することができる使い捨ての衛生用品に関し、特に、寝具用補助シーツ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パツド及び動物用シーツに使用できる使い捨ての衛生用品及びその製造方法に関する。」
c;「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、缶入りお茶やインスタントティーの製造時に大量に排出されるウーロン茶の茶殻の浸出液が、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を72時間以上に亙って阻害することを発見し、また緑茶の茶殻からの浸出液が、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を72時間に亙って阻害することを発見し、さらにまた、紅茶の茶殻の浸出液が、黄色ブドウ球菌及び連鎖球菌の増殖を72時間に亙って阻害することを発見し、これらウーロン茶の茶殻からの浸出液、緑茶の茶殻からの浸出液又は紅茶の茶殻からの浸出液を含浸後、乾燥したシーツが、何れも緑膿菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌及び連鎖球菌の増殖を72時間以上に亙って阻害することを発見し、本発明に至った。本発明は、抽出残留廃液及び/又は茶殻から抽出したお茶を、吸水性の上部紙層部及び/又は上部紙層部に接する吸水性樹脂及び吸水性材料粉の混合層に含浸させて乾燥して得られる衛生的に優れた衛生シーツ及びその製造方法を提供するものであり、また、缶入りお茶や、インスタントティーの製造業から排出される廃棄物のお茶抽出残留廃物及び茶殻を活用できる、安価な使い捨て衛生シーツ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】即ち、本発明は、一種以上のお茶の抽出残留廃液の乾燥物又は一種以上の茶殻の浸出液の乾燥物或いはこれらの二種以上の乾燥物の混合物を含有する薄葉紙で形成されていることを特徴とする衛生用紙にあり、」
d;「【0009】
【発明の実施の形態】本発明において、衛生用紙は、トイレットペーパー、紙タオル、ナプキン紙、化粧紙、ちり紙、ワッデイング(紙綿)、薄葉紙-等を意味し、」
e;「【0034】例2
緑茶40gを400mlの沸騰水に1分間浸漬して、緑茶を抽出し、その全量を濾過した。濾紙上の緑茶の茶殻は102g(含水率72%)であった。該茶殻106gに80℃の温度の水200mlを加えて、1分間放置して、浸出液の全量を濾過した。浸出液は200mlであった。この緑茶の浸出液中のタンニン量は0.07g/100gであり、また亜鉛の量は22μg/100gであった。このように調製された浸出液に、1m^(2)当たり20gのパルプ繊維製の薄葉紙の80cm×150cmを浸漬して、緑茶の茶殻の浸出液を含有する薄葉紙を作製するのに使用された。」

2)引用例には、記載aによれば、「一種以上の茶殻の浸出液の乾燥物を含有する薄葉紙で形成されている、衛生用紙」についての発明が記載されていると認められる。
そこで、更に、引用例の記載を検討すると、その記載bには、上記発明における「衛生用紙」として生理用紙が具体例として記載されていることが見て取れ、また、その記載cには、上記発明における「一種以上の茶殻の浸出液」として緑茶の茶殻の浸出液が具体例として記載され、この具体例の製造方法としての記載でもあることが明らかな記載eには、緑茶の茶殻を80℃の温度の水により浸出し、濾過された茶殻浸出液を製造し、この茶殻浸出液を薄葉紙に含浸させることが見て取れる。
以上の検討を踏まえると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

「緑茶の茶殻を、80℃の温度の水により浸出し、濾過された茶殻浸出液を製造し、この製造された茶殻浸出液を生理用紙に含浸させて乾燥することにより、茶殻浸出液の乾燥物を含有する生理用紙とする、衛生用紙の製造方法。」

3-3-2.対比判断

1)本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「緑茶の茶殻」は、本件発明の「緑茶、紅茶若しくはウーロン茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を含む茶殻の混合物」に相当している。
また、引用発明において、茶殻浸出液は、濾過されたものとして製造されているが、これは、本件発明の「浸出残渣を分離して、茶殻抽出液を製造し、」に対応している。
そして、以上の検討を踏まえると、本件発明は、引用発明とは、

「緑茶、紅茶若しくはウーロン茶の茶殻又はこれら二種以上の茶殻を含む茶殻の混合物を、常温水又は常温より高い温度の加熱水により浸出し、浸出残渣を分離して、茶殻抽出液を製造し、この製造された茶殻抽出液を生理用紙に含浸させて乾燥することにより、抽出液の乾燥物を含有する生理用紙とする、衛生用紙の製造方法。」である点で一致し、

以下の相違点Aにおいて相違していると認められる。

相違点A;本件発明は、生理用紙が「ティッシュペーパー、ちり紙又はトイレットペーパーに使用される」点。

2)相違点Aについて検討する。
生理用紙、更には、ティッシュペーパー、ちり紙及びトイレットペーパーは、先に「3-2.」の「2)」で述べたとおりのものであって、後者のティッシュペーパー等も、生理用紙と同様に、人体からの生理的排出物に対処する物品であること。
また、引用例には、先に「3-3-1.」の「2)」で述べたように、引用発明が記載されているのであるが、更に、先に「3-3-1.」の「1)」で摘示した記載b及びdを見ると、引用発明において、ここにおける生理用紙を、これに代えて、ティッシュペーパー、ちり紙又はトイレットペーパーとすること、要すれば、茶殻浸出液の乾燥物を含有させるものとして、これらティッシュペーパー等が生理用紙と同等のものとして記載されていること。
以上のことから、引用発明の生理用紙を、ティッシュペーパー、ちり紙又はトイレットペーパーに使用されるものとすることは、容易に為し得るものといえ、相違点Aは容易に想到し得るものである。

3-3-3.まとめ
本件発明は、引用発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、拒絶理由Aは、相当である。

4.結び
拒絶理由Aは、相当であって、原査定は、妥当である。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-28 
結審通知日 2011-03-22 
審決日 2011-04-06 
出願番号 特願2006-333891(P2006-333891)
審決分類 P 1 8・ 03- WZ (A41B)
P 1 8・ 121- WZ (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渋谷 善弘森藤 淳志久島 弘太郎  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 千馬 隆之
熊倉 強
発明の名称 衛生用紙  
代理人 滝口 昌司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ