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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1241238
審判番号 不服2009-18160  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-28 
確定日 2011-08-03 
事件の表示 特願2004-511897「薄膜トランジスタ基板」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月18日国際公開、WO03/104882、平成17年 9月29日国内公表、特表2005-529360〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
国際特許出願 :平成14年 9月18日
(優先日 平成14年6月7日 大韓民国)
手続補正 :平成17年 9月15日
拒絶理由 :平成20年10月14日
意見及び手続補正:平成21年 4月21日
拒絶査定 :平成21年 5月22日
審判請求 :平成21年 9月28日
手続補正 :平成21年 9月28日
審尋 :平成22年 8月19日
回答書 :平成22年11月24日

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成21年9月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成21年9月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は特許請求の範囲及び明細書を以下のとおり補正するものである。
(1) 本件補正前の請求項1の「前記絶縁基板上に形成されて外部回路との連結のためのパッドを含む複数のゲート線」及び「前記ゲート線と絶縁されて交差され,外部回路との連結のためのパッドを含む複数のデータ線」について,さらに「前記ゲート線及びデータ線は前記パッドを含むパッド部と,画面表示部と,前記パッド部と画面表示部とを連結するファンアウト部と,を含み,前記ファンアウト部で前記ゲート線及び前記データ線は前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど長さが短くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部から両端へ遠ざかるほど長さが長くなり,」という限定を加えて減縮する。
(2) 本件補正前の請求項1の「前記ゲート線と前記データ線のうちの少なくとも一つと重なる導電体パターン」について,さらに「前記ゲート線または前記データ線と,前記導電体パターンは前記ファンアウト部で重なっており」という限定を加えて減縮する。
(3) 本件補正前の請求項1の「前記導電体パターンは,中央部に近づくほど幅が広くなり,前記中央部から遠ざかるほど幅が狭くなるように形成されている」を「前記導電体パターンは,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど幅が広くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの前記中央部から両端へ遠ざかるほど幅が狭くなるように形成されている」と限定して減縮する。
(4) 本件補正後の請求項1と整合するように請求項2及び3を書き改める(本件補正後の請求項1と重複することとなった記載を削除する。)。
(5) 本件補正前の請求項10の「前記絶縁基板上に形成され外部回路との連結のためのパッドを含む複数のゲート線」又は「前記ゲート絶縁膜上に形成され前記ゲート線と交差しており,外部回路との連結のためのパッドを含む複数のデータ線」について,さらに「前記ゲート線または前記データ線は,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど長さが短くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部から両端へ遠ざかるほど長さが長くなり,」という限定を加えて減縮する。
(6) 本件補正前の請求項10の「前記ゲート線及び前記データ線のうちの少なくとも一つと,前記ゲート絶縁膜と前記保護膜のうちの少なくとも一つを介して重なっている導電体パターン」について,さらに「前記導電体パターンは,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど幅が広くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの前記中央部から両端へ遠ざかるほど幅が狭くなるように形成されている」という限定を加えて減縮する。
(7) 特許請求の範囲の記載に対応する明細書の発明の詳細な説明の記載を,特許請求の範囲と整合するように書き改める。

そうしてみると,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下,単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)について,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か,すなわち,本件補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを以下で検討する。

2 本件補正後発明
本件補正後発明は,下記のとおりのものである。



絶縁基板と,
前記絶縁基板上に形成されて外部回路との連結のためのパッドを含む複数のゲート線と,
前記ゲート線と絶縁されて交差され,外部回路との連結のためのパッドを含む複数のデータ線と,
前記ゲート線と前記データ線のうちの少なくとも一つと重なる導電体パターンを含み,
前記ゲート線及びデータ線は前記パッドを含むパッド部と,画面表示部と,前記パッド部と画面表示部とを連結するファンアウト部と,を含み,
前記ファンアウト部で前記ゲート線及び前記データ線は前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど長さが短くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部から両端へ遠ざかるほど長さが長くなり,
前記ゲート線または前記データ線と,前記導電体パターンは前記ファンアウト部で重なっており,
前記ゲート線または前記データ線が前記導電体パターンと重なる長さは前記ゲート線または前記データ線の長さが長くなるほど短くなり,
前記導電体パターンは,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど幅が広くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの前記中央部から両端へ遠ざかるほど幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする,薄膜トランジスタ基板。

3 引用例
本願の優先日よりも前に頒布された刊行物である特開2000-56724号公報(拒絶理由通知の引用文献1,以下「引用例」という。)には,各図とともに以下の事項が記載されている。

記載事項ア
「【0021】【発明の実施の形態】図4は本発明の一実施例になるアクティブマトリクス型の液晶表示装置10Bを概略的に示す。図5は図4中,円101で囲んだ部分のゲート引出し線を拡大して示す。図6は図5中,VI-VI 線に沿う拡大断面図である。図4乃至図6中,図1及び図2に示す構成部分には添字「B」を付した同一符号を付す。
【0022】液晶表示装置10Bは,大略,下側ガラス板11Bと,これに重なっている上側ガラス板12Bと,左端(X2方向端)に沿って並んでいる第1乃至第4の走査用駆動ICチップ13B-1?13B-4と,上端(Y1方向端)に沿って並んでいる複数の信号用駆動ICチップ14とよりなる。第1乃至第4の走査用駆動ICチップ13B-1?13B-4は夫々第1乃至第4のTAB15B-1?15B-4の中央に実装してある。信号用駆動ICチップ14BはTAB16Bの中央に実装してある。下側ガラス板11B上には,走査線20Bと信号線21Bとが交差して形成してある。走査線20BはX1,X2方向に延在しており,Y1,Y2方向に並んでいる。信号線21BはY1,Y2方向に延在しており,X1,X2方向に並んでいる。隣合う走査線20Bと隣合う信号線21Bとで囲まれた部分が一つの画素22Bを形成し,各画素22B毎にトランジスタ23Bが作り込まれている。25Bは画素領域であり,多数の画素22Bがマトリクス状に並んでいる。
【0023】11Baはフレーム部であり,下側ガラス板11Bのうち画素領域25Bより外側の部分であり,図1中,液晶表示装置10Bの左端(X2方向端である走査側)に沿う走査線側フレーム部11Ba1と,液晶表示装置10Bの上端(Y1方向端である信号側)に沿う信号線側フレーム部11Ba2とよりなり,逆L字形状を有している。
【0024】走査線側フレーム部11Ba1について見ると,左端側にTAB15B-1?15B-4の一端側が実装されるTAB実装領域30Bを有し,TAB実装領域30Bと画素領域25Bとの間にゲート引出し線形成領域31Bを有する。TAB実装領域30Bには,第1乃至第4の端子群部32B-1,32B-2(他は図示せず)が間隔をおいて形成してあり,ゲート引出し線形成領域31Bには,各端子群部32B-1,32B-2(他は図示せず)の各端子33Bとこれに対応する走査線20Bとを結ぶゲート引出し線34Bが形成してある。ゲート引出し線34Bが特許請求の範囲の欄記載の「配線」に対応する。
【0025】走査線側フレーム部11Ba1のTAB実装領域30Bには,各TAB15B-1?15B-4の一端側が各端子群部32B-1,32B-2(他は図示せず)に接続されて実装してある。各TAB15Bの他端側は,ゲートドライバ用プリント基板35Bに接続されている。ゲートドライバ用プリント基板35Bの長さが下側ガラス板11BのY1,Y2方向の長さより短い理由で,並んでいる4つのTAB15B-1?15-4Bが中央に偏っており,第1乃至第4の端子群部32B-1,32B-2(他は図示せず)が中央に偏って配されている。
【0026】信号線側フレーム部11Ba2についてみると,走査線側フレーム部11Ba1と同じく,端子群部を有し,且つ,端子群部と画素領域25Bとの間に各端子とこれと対応する信号線とをむすぶゲート引出し線40B(当審注:「ゲート引出し線40B」は「信号引き出し線40B」の誤記である。)が形成してある。TAB16Bの一端側が信号線側フレーム部11Ba2の端子群部と接続してあり,他端側がプリント基板41Bに接続されている。
【0027】液晶表示装置10Bは,走査線20Bの並び方向(Y1,Y2方向)が第1乃至第4の4つのTABブロック50B-1?50B-4に分割されており,画素領域25は4つの走査区画部51B-1?51B-4に分割されている。走査用駆動ICチップ13Bと信号用駆動ICチップ14Bとが動作することによって,液晶表示装置10は,各走査区画部51B-1?51B-4毎に動作して,画素領域25Bに画像が表示される。」

記載事項イ
「【0031】しかし、このまま(図7(B)に示す状態)では、以下の理由によって、走査区画部51B-1と走査区画部51B-2との境界の部分に輝度むらが現れる。ゲート引出し線34B-n、34B-(n-1),34B-(n-2)…等が直線であるため、第1のTABブロック50B-1と第2のTABブロック50B-2との境界に沿うゲート引出し線34B-nの長さLBnとゲート引出し線34B-(n+1)の長さLBn+1との間には、ΔLB(約15mm)の差がある。各ゲート引出し線34B-n、34B-(n+1)等は、クロム製であり、厚さが1500Åであり、幅が17μmである。ゲート引出し線34B-nの電気抵抗R_(n )とゲート引出し線34B-(n+1)の電気抵抗R_(n+1 )間には、R_(1 )=1.41kΩの電気抵抗差がある。即ち、第1のTABブロック50B-1と第2のTABブロック50B-2との境界に沿うゲート引出し線34B-nとゲート引出し線34B-(n+1)とは断継ぎとなっている。
【0032】図7(B)に示すように、端子33B-nと端子33B-(n+1)とに矩形パルス信号200を入力させた場合の、矩形パルス信号は線を伝わるにつれてなまる。端子33B-nに入力された矩形パルス信号200は、最初にゲート引出し線34B-nを通過し、符号201で示す波形となり、次いで、走査線20B-nを伝わり、符号202で示す波形となる。
【0033】端子33B-(n+1)に入力された矩形パルス信号200は、最初にゲート引出し線34B-(n+1)を通過し、符号201aで示す波形となり、次いで、走査線20B-(n+1)を伝わり、符号202aで示す波形となる。走査線20B-n及び走査線20B-(n+1)の同じ位置における波形を比べてみると、走査線20B-n上の波形202はなまりの程度は小さいのに対して、走査線20B-(n+1)上の波形202aはなまりの程度が大きい。よって、波形202と波形202aとの差が目立つ程大きい。よって、これが原因で、走査区画部51B-1と走査区画部51B-2との境界の部分に輝度むらが現れる。」

記載事項ウ
「【0036】図4中,60,61は静電容量形成用電極パターンであり,夫々,第1のTABブロック50B-1のゲート引出し線形成領域31Bと第4のTABブロック50B-4のゲート引出し線形成領域31Bとに形成してある。図5及び図6に示すように,静電容量形成用電極パターン60は,ゲート引出し線34B-nからゲート引出し線34B-mにかけての領域に,ゲート引出し線34B-n?34B-mを覆うように形成してある。静電容量形成用電極パターン60とゲート引出し線34B-n?34B-mとの間には,絶縁層62が存在している。絶縁層62は,厚さが4000ÅのSiN膜である。SiN膜は,誘電率ε=7.0である。静電容量形成用電極パターン60は,引出しパターン62を経て,補助電位Csに接続してある。これによって,図7(A)に示すように,ゲート引出し線34B-nには,配線負荷としての静電容量C_(1 )が付加されている。」

記載事項エ
「【0040】よって,走査査線20B-n上の輝度と走査線20B-(n+1)上の輝度とは同じくなり,走査区画部51B-1と走査区画部51B-2との境界の部分に輝度むらは現れない。静電容量形成用電極パターン60は,ゲート引出し線34B-nからゲート引出し線34B-mにかけての領域に設けてあり,Y1方向に向かって先細の細長い三角形状である。よって,静電容量C_(1 )は,ゲート引出し線34B-nの隣のゲート引出し線34B-(n-1),34B-(n-2)…にも,形成され,静電容量C_(1 )の値は,順次小さくなっている。よって,走査線20B-(n-1)上の波形は走査線20B-n上の波形に略一致したものとなり,走査線20B-(n-2)上の波形は走査線20B-(n-1)上の波形に略一致したものとなる。走査線20B-(n-3)以降走査線20B-mまでの各走査線についても,走査線上の波形は一つY2方向側の走査線上の波形と略一致する。
【0041】よって,走査区画部51B-1のうち走査区画部51B-2との境界に近い部分についても輝度むらは現れない。同じく,静電容量形成用電極パターン61を設けたことによって,走査区画部51B-4のうち走査区画部51B-3との境界の部分及び境界に近い部分にも輝度むらは現れない。」

また,図5からは,ゲート引き出し線(34B-n?34B-m)が静電容量形成用電極パターン(60)と重なる長さはゲート引き出し線(34B-n?34B-m)の長さが長くなるほど短くなる様子が見て取れる。

これら記載事項及び各図を考慮して引用例に記載された発明を分説して記載すると,下記のとおりとなる(以下,この発明を「引用発明」といい,また,分説された構成を「構成要件A」などという。)。



A アクティブマトリクス型の液晶表示装置(10B)であって,
B 下側ガラス板(11B)上には,走査線(20B)と信号線(21B)とが交差して形成してあり,
C 下側ガラス板(11B)のうち画素領域(25B)より外側の部分は,液晶表示装置(10B)の左端に沿う走査線側フレーム部(11Ba1)と,液晶表示装置(10B)の上端に沿う信号線側フレーム部(11Ba2)とよりなり,
D 走査線側フレーム部(11Ba1)は,TAB実装領域(30B)と画素領域(25B)との間にゲート引出し線形成領域(31B)を有し,
E TAB実装領域(30B)には,端子群部(32B-1)が間隔をおいて形成してあり,
F ゲート引出し線形成領域(31B)には,端子群部(32B-1)の各端子(33B)とこれに対応する走査線(20B)とを結ぶゲート引出し線(34B)が形成してあり,
G 信号線側フレーム部(11Ba2)は,走査線側フレーム部(11Ba1)と同じく端子群部を有し,端子群部と画素領域(25B)との間に各端子とこれと対応する信号線とを結ぶ信号引出し線(40B)が形成してあり,
H 液晶表示装置(10B)は,走査線(20B)の並び方向が第1ないし第4のTABブロック(50B-1?50B-4)に分割されており,画素領域(25)は4つの走査区画部(51B-1?51B-4)に分割されており,
I 静電容量形成用電極パターン(60)を第1のTABブロック(50B-1)のゲート引出し線形成領域(31B)に形成し,
J ゲート引き出し線(34B-n?34B-m)が静電容量形成用電極パターン(60)と重なる長さはゲート引き出し線(34B-n?34B-m)の長さが長くなるほど短くなり,
K 走査区画部(51B-1)と走査区画部(51B-2)との境界の部分,及び,走査区画部(51B-1)のうち走査区画部(51B-2)との境界に近い部分について,輝度むらが現れないようにした,
L アクティブマトリクス型の液晶表示装置(10B)。

4 対比
本件発明と引用発明を対比すると以下のとおりとなる。
(1) 絶縁基板,薄膜トランジスタ基板
引用発明の「下側ガラス板(11B)」は本件補正後発明の「絶縁基板」に相当する。また,引用発明の「アクティブマトリクス型の液晶表示装置(10B)」が本件補正後発明の「薄膜トランジスタ基板」に相当する構成を備えることは技術的に見て明らかである。

(2) ゲート線,データ線
構成要件B及びF並びに技術常識からみて,引用発明の「走査線(20B)」から「ゲート引き出し線(34B)」を介して「端子(33B)」に至る線(以下「X方向線」という。)と本件補正後発明の「ゲート線」とは,「前記絶縁基板上に形成されて外部回路との連結のためのパッドを含む複数のゲート線」の点で一致する。
同様に,構成要件B及びG並びに技術常識からみて,引用発明の「信号線(21B)」から「信号引き出し線(40B)」を介して「(構成要件Gの端子群部の)端子」に至る線(以下「Y方向線」という。)と本件補正後発明の「データ線」とは,「前記ゲート線と絶縁されて交差され,外部回路との連結のためのパッドを含む複数のデータ線」の点で一致する。

(3) パッド部,画面表示部,ファンアウト部
本件補正後発明の「前記ゲート線及びデータ線は前記パッドを含むパッド部と,画面表示部と,前記パッド部と画面表示部とを連結するファンアウト部と,を含み,」という構成は,「前記ゲート線及びデータ線は,それぞれ,前記パッドを含むパッド部,画面表示部,及び,前記パッド部と画面表示部とを連結するファンアウト部の各領域に跨って配線されており,」という態様を表すものである。
そうしてみると,引用発明の「X方向線」及び「Y方向線」と本件補正後発明の「ゲート線及びデータ線」は,「前記ゲート線及びデータ線は前記パッドを含むパッド部と,画面表示部と,前記パッド部と画面表示部とを連結するファンアウト部と,を含み,」という構成の点で一致する。

(4) 導電体パターン
構成要件Iからみて,引用発明の「静電容量形成用電極パターン(60)」と本件補正後発明の「導電体パターン」とは,「前記ゲート線と前記データ線のうちの少なくとも一つと重なる導電体パターン」の点で一致する。
また,構成要件I及びJからみて,引用発明と本件補正後発明とは,「前記ゲート線または前記データ線と,前記導電体パターンは前記ファンアウト部で重なっており,前記ゲート線または前記データ線が前記導電体パターンと重なる長さは前記ゲート線または前記データ線の長さが長くなるほど短くなり,」という構成の点で一致する。

そうしてみると,本件補正後発明と引用発明は,
「 絶縁基板と,
前記絶縁基板上に形成されて外部回路との連結のためのパッドを含む複数のゲート線と,
前記ゲート線と絶縁されて交差され,外部回路との連結のためのパッドを含む複数のデータ線と,
前記ゲート線と前記データ線のうちの少なくとも一つと重なる導電体パターンを含み,
前記ゲート線及びデータ線は前記パッドを含むパッド部と,画面表示部と,前記パッド部と画面表示部とを連結するファンアウト部と,を含み,
前記ゲート線または前記データ線と,前記導電体パターンは前記ファンアウト部で重なっており,
前記ゲート線または前記データ線が前記導電体パターンと重なる長さは前記ゲート線または前記データ線の長さが長くなるほど短くなる,
薄膜トランジスタ基板。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)
本件補正後発明は,「前記ファンアウト部で前記ゲート線及び前記データ線は前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど長さが短くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部から両端へ遠ざかるほど長さが長くなり」,「前記導電体パターンは,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど幅が広くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの前記中央部から両端へ遠ざかるほど幅が狭くなるように形成されている」のに対して,引用発明はこれとは構成が異なる点。

5 判断
引用例に記載された一実施例(図4)において,静電容量形成用電極パターンは走査側の2カ所に設けられ,他の箇所,すなわち,「前記ファンアウト部で前記ゲート線及び前記データ線は前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど長さが短くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部から両端へ遠ざかるほど長さが長くなり」の要件を満たす箇所には設けられていない。
しかしながら,引用例の【0031】ないし【0033】及び【図7】において説明されているような配線の長さの差による波形なまりの差が走査線側及び信号線側のすべての箇所で発生することは,原理的にみて明らかである。したがって,万全を期す当業者は走査線側及び信号線側のすべての箇所において配線の長さの差による波形なまりの差を補償するはずであり,例えば,特開平10-339880号公報,特開2002-139741号公報,特開平8-297291号公報では「ゲート線及びデータ線は外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど長さが短くなり,外部回路との連結のためのパッドの中央部から両端へ遠ざかるほど長さが長くなり」という構成のファンアウト部の各配線において配線の長さの差による波形なまりの差を補償している。
そうしてみると,引用発明において,走査側の2カ所のみならず「前記ファンアウト部で前記ゲート線及び前記データ線は前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど長さが短くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部から両端へ遠ざかるほど長さが長くなり」の要件を満たす他の箇所に対しても静電容量形成用電極パターンを設けることは当業者が容易にできることであり,また,この場合の静電容量形成用電極パターンは必然的に「前記導電体パターンは,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど幅が広くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの前記中央部から両端へ遠ざかるほど幅が狭くなるように形成されている」構成を備えたものとなる。
以上のとおりであるから,引用発明において静電容量形成用電極パターンを他の箇所にも設けて本件補正後発明の構成とすることは,当業者が容易にできることである。
また,本件補正後発明の作用効果は引用発明から当業者が予測できる範囲内のものである。

6 小括
本件補正後発明は引用発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
平成21年9月28日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年4月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,下記のものである。



絶縁基板と,
前記絶縁基板上に形成されて外部回路との連結のためのパッドを含む複数のゲート線と,
前記ゲート線と絶縁されて交差され,外部回路との連結のためのパッドを含む複数のデータ線と,
前記ゲート線と前記データ線のうちの少なくとも一つと重なる導電体パターンを含み,
前記ゲート線または前記データ線が前記導電体パターンと重なる長さは前記ゲート線または前記データ線の長さが長くなるほど短くなり,
前記導電体パターンは,中央部に近づくほど幅が広くなり,前記中央部から遠ざかるほど幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする,薄膜トランジスタ基板。

2 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は,「第2 補正の却下の決定」の「3 引用例」に記載したとおりである。

3 対比及び判断
本願発明は,(1)本件補正後発明から「前記ゲート線及びデータ線は前記パッドを含むパッド部と,画面表示部と,前記パッド部と画面表示部とを連結するファンアウト部と,を含み,前記ファンアウト部で前記ゲート線及び前記データ線は前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど長さが短くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部から両端へ遠ざかるほど長さが長くなり,」という発明特定事項,及び,「前記ゲート線または前記データ線と,前記導電体パターンは前記ファンアウト部で重なっており」という発明特定事項を削除するとともに,(2)本件補正後発明の「前記導電体パターンは,前記外部回路との連結のためのパッドの中央部に近づくほど幅が広くなり,前記外部回路との連結のためのパッドの前記中央部から両端へ遠ざかるほど幅が狭くなるように形成されている」を「前記導電体パターンは,中央部に近づくほど幅が広くなり,前記中央部から遠ざかるほど幅が狭くなるように形成されている」に拡張してなるものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正後発明が「第2 補正の却下の決定」で述べた理由により引用発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから,本願発明も同様に,引用発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

4 小括
以上のとおり,本願発明は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 総括
したがって,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-04 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-23 
出願番号 特願2004-511897(P2004-511897)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横井 巨人北川 創  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 樋口 信宏
今関 雅子
発明の名称 薄膜トランジスタ基板  
代理人 小野 由己男  
代理人 稲積 朋子  

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