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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1243037
審判番号 不服2010-6692  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-31 
確定日 2011-09-06 
事件の表示 特願2006- 68741「実物と同じ表現力を持つカラー画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月27日出願公開、特開2007-251318〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年(2006年)3月14日の出願(特願2006-68741号)であって、平成21年5月11日付けで拒絶理由が通知され、同年7月9日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年12月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年3月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成23年1月31日付けで回答書提出の期限を指定して審尋をしたが、当該回答書提出の期限内に回答書は提出されなかった。

第2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「従来の光の3原色の他に、四番目の光として概ね波長460nmから500nmの間の青の錐体と緑の錐体の感度の谷間の単波長あるいは非常に狭い幅の波長の強度も記録する装置。」

第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-327608号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下記「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0001】
本発明は、照明装置、電気光学装置、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、非発光型であるため光源を得る方法として、周囲光を利用する反射型や特定の光源を利用する透過型、これらの両方の特性を備えている半透過反射型等の方法が広く知られている。この中で、透過型、半透過型と呼ばれる液晶ディスプレイは、主としてバックライトを利用して液晶ディスプレイを発光させている。このバックライトに用いられる光源としては、冷陰極管およびLED(Light Emitting Diode)等の発光源が
広く利用され、導光板等と組み合わせたバックライトが種々提案されている。特許文献1には、LED等の点光源からの光を集光し、第1の導光板によって線光源に変換し、この変換した線光源を第2の導光板によって液晶表示面に照射して、点光源による輝度ムラを防止するバックライトが開示されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001-357713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献に開示のバックライトでは、点光源による輝度のムラの発生を回避することは可能であるが、液晶ディスプレイに備わるカラーフィルタの分光特性を全く考慮していないため、十分な発色を得ることが困難であった。すなわち、最終的に液晶表示画面から発光される色は、主としてバックライトの分光特性とカラーフィルタの分光特性との整合(マッチング)が大きく関係している。ところが、上記特許文献に開示のバックライトにおいては、このようなカラーフィルタとの整合性については何等考慮しておらず、液晶表示画面から発光される輝度が低下するという問題があった。さらに、上記特許文献に開示のバックライトでは、R(赤)、G(緑)、B(青)の三原色により色再現を図っている。そのため、昨今さらなる広色域の要求に応じた多色カラーフィルタ(R(赤)、G(緑)、B(青)の3色以上)を用いた液晶表示装置が提案されているにもかかわらず、十分な発色が得られず広色域の色再現および高輝度化を実現することができないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、広色域の色再現および高輝度化を実現することができる照明装置、電気光学装置並びに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、第1光源と、第2光源と、前記第1光源および前記第2光源から射出される光を面発光させる面状導光板とを備え、前記第2光源から射出される光が前記第1光源から射出された光の分光特性のピーク波長とは少なくとも一つ以上異なるピーク波長を有することを特徴とする。
【0006】
このような構成によれば、第1光源の分光特性のピーク波長とは異なるピーク波長を少なくとも一つ以上有する第2光源を設けているため、第1光源から射出される光の分光特性には現れない色のピーク波長を得ることができる。これにより、色再現域が増加し、照明装置の色再現の広色域かつ高輝度化を図ることが可能となる。
【0007】
本発明の照明装置は、前記第2光源が発光ダイオードで構成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、発光ダイオード(以下、LED(Light Emitting Diode)称する)は、R(赤)、G(緑)、およびB(青)その他の色を発光する種々のものがあり、これらのLEDのそれぞれはある所定のピーク波長を有する。従って、第1光源から射出される光の分光特性のピーク波長とは異なるピーク波長を有する第2光源を選択することにより、第1光源においては表現することができない色を発光することが可能となる。これにより、従来の3原色での色再現と比較して、少なくとも4原色以上で色再現を行うことができるため、色再現域が増加し、照明装置の色再現の広色域かつ高輝度化を図ることが可能となる。
【0008】
または、前記第1光源が線発光するものであり、前記第2光源から射出された光を入射させる端面を有する棒状導光板を備えることも好ましい。
例えば、第2光源に上述したLEDを採用した場合、このLEDから射出される光は点発光である。この第2光源から射出された点発光された光を、直接面状導光板に入射させた場合、点発光された光は、面状導光板内部において均一に反射、拡散しないため、部分的に発光するだけであった。このように第2光源の近傍に棒状導光板を設けることによって、LEDから射出される点発光を、棒状導光板によって線発光に変換することが可能となる。よって、主光源から射出される線発光の光と第2光源から射出され棒状導光板によって線発光に変換された光とを整合(マッチング)させることができ、面状導光板内部において均一に反射、拡散させ、輝度ムラを防止することが可能となる。
なお、本実施の形態における棒状導光板の端面とは棒状導光板の短手方向を含む面であり、端面とは棒状導光板の長手方向を含む面である。」

「【0019】
[第1の実施の形態]
図1(a)は、本実施の形態におけるバックライト22(照明装置)の概略構成図であり、図1(b)は、(a)のA-A線に沿った断面図である。
図1(a)に示すように、バックライト22は、主光源として使用される冷陰極管10(第1光源)と、補助光源として使用されるLED14(第2光源)と、LEDから射出される光を線発光させる棒状導光板16と、棒状導光板16から線発光される光を拡散させる拡散シート18とを備えている。さらに、バックライト22は、冷陰極管10から放射される光および棒状導光板16から射出される光を面発光させる面状導光板12とを備えている。
【0020】
本実施の形態において主光源として使用される冷陰極管10は、棒状の円柱形状をしており、この円の直径としては例えば1.8mmφ程度である。この冷陰極管10から射出される光の分光特性は、一般的にR(赤)、G(緑)、およびB(青)の波長帯域にピーク波長が現れる。また、冷陰極管10内部の両端部には、それぞれニッケルやタンタル等により構成される電極が設けられている。この冷陰極管10は、電極から放出された電子が、冷陰極管10内の水銀蒸気を励起して紫外線を放出し、冷陰極管10壁の蛍光体に衝突して冷陰極管10外部に光を射出する。なお、本実施の形態においては、主光源として冷陰極管10を使用したが、冷陰極管10の代わりに、熱陰極管、有機EL(Electroluminescence)、Xe放電管(Xe Disharge Lamp)、無電極ランプ等を使用することも好ましい。
【0021】
棒状導光板16は、棒状の角柱形状をしており、冷陰極管10の下部に沿って離間して配置されている。そして、この棒状導光板16の両端面16a側のそれぞれには、後述するLED14の発光部が対向されて配置されている。この棒状導光板16は、LED14から射出される点発光の光を線発光に変換し、面状導光板12に射出する機能を有している。また、棒状導光板16の後述する面状導光板12が配置される側面とは反対側の側面16bには、複数の溝(図省略)が形成されている。この複数の溝は、棒状導光板16の側面16bに微細傾斜面を複数設けることにより形成する。また、棒状導光板16に形成される溝は、LED14に近い領域に形成される場合には粗く、LED14から遠い領域に形成する場合には密に形成する。この溝によりLED14から射出された光を反射させ、LED14から射出された光を面状導光板12に均一に入射させることができる。なお、棒状導光板16に上記複数の溝を形成する代わりに、複数の反射ドットを形成し、LED14から射出された光の入射角を変更させて、面状導光板12に均一した光を射出することも好ましい。
【0022】
LED14は、本実施の形態においては、補助光源として使用され、棒状導光板16の両端部に、それぞれのLED14の発光部を対向させて配置されている。このLED14は、冷陰極管10の分光特性のピーク波長とは異なるピーク波長を有するものを使用する。例えば、冷陰極管10の分光特性は、上述したように、R(赤)、G(緑)、およびB(青)の色の3原色のピーク波長を有するが、LED14は、このピーク波長とは異なるピーク波長、例えばシアンのピーク波長を有するものを使用する。」

「【0027】
そして、LED14から射出され棒状導光板16を通過することによって線発光に変換された光は、冷陰極管10から射出される線発光の光と均一に混ぜ合わされ、拡散シート18に入射する。拡散シート18に入射した光は拡散され、面状導光板12の入射端面全体に均一に入射する。面状導光板12に入射した光は、上述した棒状導光板16と同様に、面状導光板12内部において、全反射を繰り返して直進する。一方、面状導光板12の下側主面には複数の溝が形成されており、全反射を繰り返して直進していた光はこの溝に衝突することによって入射角が変更され、観察者側に射出される。このように、冷陰極管10およびLED14から射出された光が面状導光板12内部を通過することによって、線発光の光が面発光に変換される。
なお、面状導光板12上に拡散シート、レンズシート、偏光分離シートもしくは電磁遮断シート、またはこれらを組み合わせて配置することも好ましい。また、面状導光板12下部に反射シートを配置することも好ましい。
【0028】
図2は、面状導光板12から射出された光の分光特性を示したものである。図2に示すように、面状導光板12から射出された光の分光特性には、4つのピーク波長が現れている。具体的に、一つ目のピーク波長は440nm付近に現れており、このピーク波長はB(青)の波長帯域を示している。二つ目のピーク波長は490nm付近に現れており、このピーク波長はC(シアン)の波長帯域を示している。三つ目のピーク波長は540nm付近に現れており、このピーク波長はG(緑)の波長帯域である。4つめのピーク波長は640nm付近に現れており、このピーク波長はR(赤)の波長帯域を示している。ここで、R(赤)、G(緑)およびB(青)のピーク波長については冷陰極管10から射出される光の分光特性であり、C(シアン)のピーク波長についてはLED14から射出される光の分光特性である。
【0029】
このように、本実施の形態によれば、主光源である冷陰極管10から射出される光の分光特性のピーク波長(R(赤)、G(緑)、(青))とは異なるピーク波長(C(シアン))を有する補助光源10であるLED14を配置することによって、冷陰極管10から射出される光の分光特性には現れない色のピーク波長を得ることができる。これにより、従来の3原色での色再現と比較して、4原色で色再現を行うことができるため、色再現域が増加し、バックライト20の色再現の広色域かつ高輝度化を図ることが可能となる。」

「【0043】
以下に、本実施の形態における液晶表示装置68の概略構成について図6を参照して簡単に説明する。
図6は、上述したバックライトを用いて製造した液晶表示装置68の分解斜視図を示したものである。図6に示す液晶表示装置68は、スイッチング素子に薄膜ダイオード(Thin Film Diode, 以下、TFDと称する)を使用したアクティブマトリクス型である。
【0044】
図6に示すように、液晶表示装置68は、アレイ基板54とこの基板に対向して配置された対向基板64とがシール材によって貼り合わされ、このシール材によって区画された領域内に液晶(不図示)が封入、保持されている。
アレイ基板54の対向基板64側(内側)には、複数の走査線と複数のデータ線とがマトリクス状に交差して形成され、この走査線とデータ線との交点にはそれぞれスイッチング素子であるTFDが形成され、このTFDは画素電極と接続されている。このように、画素56はTFDと画素電極とから構成され、さらに1画素56は3つのサブ画素から構成されている。
【0045】
また、対向基板64のアレイ基板54側(内側)には、カラーフィルタ62が形成されている。カラーフィルタは、上記した各サブ画素に対応してR(赤)、G(緑)およびB(青)の3色から構成されている。また、このカラーフィルタ上には保護膜が形成され、さらに、その保護膜上には透明共通電極60(ITO;Indium Tin Oxide)が形成されている。
また、アレイ基板54の外側には偏光板52が配置され、対向基板64の外側には偏光板52と直交して偏光板66が配置されている。そして、アレイ基板54の外側に配置された偏光板52の下部には、上記実施の形態において説明したバックライト50が配置されている。」

「【図1】



「【図2】



2 引用例1に記載された発明の認定
上記記載(図面の記載も含む)から、引用例1には、
「R(赤)、G(緑)およびB(青)のピーク波長を有する分光特性の光を放出する冷陰極管10からなる主光源と、ピーク波長が490nm付近に現れている分光特性の光を放出するLED14からなる補助光源を備えたバックライトを用いた液晶表示装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

第4 本願発明と引用発明の対比、及び、当審の判断
1 対比
(1)ここで、本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「冷陰極管10」が放出する「光」のピーク波長に対応する「R(赤)、G(緑)およびB(青)」が、本願発明の「従来の光の3原色」に相当する。
引用発明の「LED14」が放出する「ピーク波長が490nm付近に現れている分光特性の光」が、本願発明の「四番目の光」に相当する。
引用発明の「490nm付近に現れている」「ピーク波長」が、本願発明の「青の錐体と緑の錐体の感度の谷間」の「波長」に相当する。
引用発明の「液晶表示装置」は、「バックライト」の分光特性(強度に関連する成分の波長に対する分布)の光を(用いて)表示面に表示(記録)する装置であること、及び、本願の明細書の発明の詳細な説明を参酌すれば本願発明の「記録する」は「表示面に表示する」ことも含むものであるといえることを踏まえれば、引用発明の「液晶表示装置」が「波長の強度も記録する装置」に相当する。

(2)本願発明と引用発明の一致点及び相違点
したがって、本願発明と引用発明とは、「従来の光の3原色の他に、四番目の光として青の錐体と緑の錐体の感度の谷間の波長の強度も記録する装置。」の発明である点で一致し、上記の「四番目の光における青の錐体と緑の錐体の感度の谷間の波長」について、本願発明は「概ね波長460nmから500nmの間」の「単波長あるいは非常に狭い幅の波長」であるのに対して、引用発明においては「ピーク波長が490nm付近に現れている分光特性」のもの(波長)である点で相違する。

2 当審の判断
(1)相違点の検討
引用発明において、四番目の光である「ピーク波長が490nm付近に現れている分光特性」の光を放出しているのは「LED」であるところ、LEDは、一般に、波長の幅が狭いランプ(光源)であることは周知の技術的事項である。そして、本願発明の四番目の光の波長は概ね460nmから500nmの間の概ね「幅40nm」にあるのであるが、「490nm」を含む幅40nm程度以下の特定の波長範囲の青緑(シアン)色の光を発光するLEDは周知である(例えば、特開2005-19997号公報(【0010】)、特開2006-32491号公報(【請求項10】)参照)。
引用発明においても、上記の周知の技術的事項を採用し、四番目の光を放出する「LED」を非常に狭い幅の波長のものとし、さらには、概ね「490nm」を含む幅40nm程度の「460nmから500nmの間」の波長の青緑(シアン)色の光を発光するLEDとすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)そして、本願発明によってもたらされる、自然に近い色彩を再現することができるという効果は、引用発明及び周知の技術的事項から当業者が予測し得る程度のものである。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 結言
以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-21 
結審通知日 2011-06-28 
審決日 2011-07-11 
出願番号 特願2006-68741(P2006-68741)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 吉喜横井 巨人  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 森林 克郎
伊藤 幸仙
発明の名称 実物と同じ表現力を持つカラー画像表示装置  

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