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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A01M
管理番号 1243091
判定請求番号 判定2011-600018  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2011-10-28 
種別 判定 
判定請求日 2011-05-17 
確定日 2011-09-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第2619209号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件説明書及び図面に示す「獣害防止用電気柵」は、特許第2619209号の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
判定請求人は,判定請求書の「5.請求の理由」欄において,特許第2619209号の請求項1に係る発明のみを対象に請求の理由を述べていることから,本件判定請求の趣旨は,イ号物件説明書及び図面に示す「獣害防止用電気柵」は,特許第2619209号の請求項1に係る発明(以下,「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属しない,との判定を求めるものである。


第2 本件特許発明

1 本件特許発明の構成
本件特許発明は,特許明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり,その発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。

1)猿の侵入を防止すべき境界線に沿って所定間隔で立設された支柱と,
2)これらの支柱間に張設されたネットと,
3)このネットの上部に架設され前記支柱により垂直ないし斜め方向に所定間隔を隔てて電気的に絶縁された状態で支持された少なくとも2本の裸電線と,
4)同裸電線に衝撃電流を流す電源装置と
5)を備えた猿害防止装置。
(以下,各構成要件を「構成要件1)」等という。)

2 本件特許発明の作用
本件特許発明の作用について,特許明細書には以下の記載がある。
「【0013】以上の構成の猿害防止装置において,猿が内部に侵入しようとしてネット8をよじ上り,柵を越えようとして一方の手を裸電線13Aまたは13Cに,他方の手を裸電線13Bまたは9にかけると,電源装置1で発生し,出力コード4で伝達された高電圧パルスが猿の体に加わり,その電気的衝撃により思わず手を放し,体重の支えを失ってネット8の外側に落下する。これに懲りずに再度試みても同じように電撃を受けるので,もはや侵入しようとする意欲を失い,退散する。一度そのような経験をすると,その猿はもうネット8を登る気がしなくなり,近寄ることもなくなる。」


第3 イ号物件
イ号物件説明書には「従来,三獣(サル・イノシシ・シカ)を対象とする電気柵においては,下部に網,上部には細く剛性の乏しい裸電線を配する構造が主流であった。」(1ページ17,18行),「たとえば,サルが侵入しようとすれば,必ずこの第二網に触れなければ侵入できなくなり,通電により電撃を印加することがより確実となる」(2ページ9?11行)と記載されており,イ号物件の獣害防止用電気柵は猿の侵入を防止するものと認められる。
そうすると,請求人が提出したイ号物件説明書及び図面の記載からみて,イ号物件は,次に分説するとおりのものと特定される。

a)所定の間隔で地表に立設された支柱1と,
b)これらの支柱1間に張設された導電材からなる網2と
c)上記支柱1上端から,支持体固定具5を介設して垂直上方へ設けられた絶縁材からなる支持体3により支持される,以下なる構成を有する第二網4と,
・導電材からなる構成。
・縦および横部材の節点が剛結され,網目状に形成された構成。
・網目状を有する縦部材の上下部が,横部材より突設されおり,この先端が尖鋭状をなしている構成。
・上下部を忍び返し方向に斜方へ折曲した構成。
・支柱1間に適合する長さを有した単体であり,支柱部において支持体3に重合および結合される構成。
・記柵体Aと電気的に絶縁された状態で支持体3に配設される構成。
d)この第二網4に衝撃電圧を印加する電源装置と
e)から構成されたことを特徴とする猿の侵入を防止する獣害防止用電気柵。
(以下,分説した各構成を「構成a)」等という。)


第4 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は,本件特許発明の衝撃電流を印加するものは裸電線であり,ネットは明らかに非導電性のものであると斟酌されるが,イ号物件においては,構成b)「導電材からなる網2」に限定しており,下部の導電材からなる網2と上部の第二網4とにおいて通電構成をなすという通電機能の構築において,上部の裸電線のみで通電機能の構築をなすとする本件特許発明の構成要件2)とは明らかに相違し,また,第二網4は構成c)に記載のとおりの構成を有しており,構成要件3)の裸電線とは明らかに相違するから,イ号物件は本件特許発明の技術範囲に属しない旨主張している。

2 被請求人の主張
被請求人は判定請求答弁書を提出していない。


第5 対比・判断
イ号物件が本件特許発明に係る前記分説した各構成要件1)?5)を充足するか否かについて,以下に対比・判断をする。

1 構成要件1),2),4),5)の充足性について
構成e)の「猿の侵入を防止する獣害防止用電気柵」は構成要件5)の「猿害防止装置」に相当するから,イ号物件の構成e)は本件特許発明の構成要件5)を充足する。そうすると,構成a)の支柱1は猿の侵入を防止すべき境界線に沿って立設されるものと認められるから,イ号物件の構成a)は本件特許発明の構成要件1)を充足する。
また,構成b)の「網2」は構成要件2)の「ネット」に相当するから,イ号物件の構成b)は本件特許発明の構成要件2)を充足する。
なお,請求人は構成b)が構成要件2)と相違する旨主張しているが,構成要件2)のネットは導電性のないものと限定されていない。
そして,構成d)の電源装置は衝撃電圧を印加するから,イ号物件の構成d)は本件特許発明の構成要素4)を充足する。

2 構成要件3)の充足性について
ネットの上部に設けられ衝撃電流を流すものが,イ号物件では,構成c)の縦および横部材の節点が剛結され,網目状に形成された第二網4であるが,本件特許発明では,構成要件3)の電気的に絶縁された状態で支持された少なくとも2本の裸電線である点で相違している。
そして,イ号物件は構成b)?d)により,導電材からなる網2と第二網4の間に電圧を印加して猿の侵入を防止するのに対して,本件特許発明は構成要件3),4)によりネットとは別体の少なくとも2本の裸電線に衝撃電流を流すことによって猿の侵入を防止するものであって,上記した「第2 2」によれば,2つの裸電線に手を掛けると高電圧パルスが猿の体に加わるものである。
したがって,構成c)の第二網4は,電気的に絶縁された少なくとも2つの裸電線を有していないから,イ号物件の構成c)は本件特許発明の構成要件3)を充足しない。


第6 むすび
以上のとおり,イ号物件は本件特許発明の構成要件3)を充足しないから,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2011-09-05 
出願番号 特願平5-308332
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (A01M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 山口 由木
宮崎 恭
登録日 1997-03-11 
登録番号 特許第2619209号(P2619209)
発明の名称 猿害防止装置  
代理人 小堀 益  
代理人 堤 隆人  

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