• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1243961
審判番号 不服2009-24249  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-08 
確定日 2011-09-22 
事件の表示 特願2008-141375「情報処理装置及びその使用開始日記録方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月28日出願公開、特開2010- 20357〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成20年5月29日付けの出願であって、平成21年3月27日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月1日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年9月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月8日に審判請求がなされたものである。
そして、平成23年4月18日付けで当審より拒絶理由通知がなされ、これに対して、同年6月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年6月20日付けでなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「自装置に電源が投入されているか否かによらず、常に日付情報を生成する日付生成部と、
前記自装置に電源投入に伴い起動するオペレーティングシステムと、
前記日付情報を記録する不揮発性の記録部と、
前記オペレーティングシステムのセットアップシーケンスにおけるユーザ情報の登録処理が実行される場合に、前記記録部に前記日付情報が記録されているか否かを判別し、前記日付情報が記録されていないと判別した場合、前記日付生成部で生成される日付情報を前記記録部に記録する記録制御部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。」


第2.当審の拒絶理由
平成22年7月6日付けで当審から通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2004-326148号公報
2.特開2007-066060号公報
3.第2特集 Windows95セットアップ必勝法、日経パソコン、日本、1995.12.04発行、第254号、p.228?245
4.特開2001-238356号公報

・請求項 :1
・引用文献等:1?4
・備考
……(以下、省略)」


第3.引用発明
本願の出願日前に頒布された刊行物であり、当審の拒絶理由に文献1として引用された、特開2004-326148号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、参考のため、当審において付したものである。)。
A.「【請求項4】
最初に動作した日時に関する情報である日時情報を記録する日時情報記録部を具備する電子機器。」

B.「【0012】
【課題を解決するための手段】
……(中略)……
【0013】
また、他の本発明は、保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報、またはソフトウェア識別情報を格納し、最初に動作した日時に関する情報である日時情報を記録する日時情報記録部と、購入者からの出力指示を受け付ける出力指示受付部と、出力指示受付部が出力指示を受け付けた場合に、保証情報の一部または全部、および/または購入者情報の一部または全部、および/または認証情報の一部または全部、および/または日時情報の一部または全部、および/または障害履歴情報の一部または全部、および/またはソフトウェア識別情報の一部または全部を表示する情報表示部、保証情報、または購入者情報、または認証情報、または日時情報、または障害履歴情報、またはソフトウェア識別情報を外部に送信する情報送信部を具備する電子機器である。かかる電子機器によって、購入者は、保証情報、購入者情報、認証情報、日時情報、障害履歴情報、またはソフトウェア識別情報を確認できる。よって、例えば、保証期間が、購入後、初めて電子機器を動作させた日から始まる場合に、購入者は、日時情報からその動作日を得て、保証を受けられる。また、修理を依頼する前に、購入者は、メーカー等に故障内容と動作日を情報処理装置等から送信できるので、修理または交換等が有償か無償かについての回答をメーカー等から受けられる。さらに、かかる回答において、修理または交換等をメーカーまたは販売店のどこで行うかについての情報も、購入者は得られる。」

C.「【0016】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における電子機器100の構成を示すブロック図である。電子機器100は、出力指示受付部101、情報表示部102、情報格納部103を有する。
……(中略)……
【0019】
情報格納部103は、保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報、またはソフトウェア識別情報を格納している。保証情報とは、電子機器の保証に関する情報であり、例えば、保証内容、メーカーの保証期間、販売店の保証期間、メーカー連絡先(例えば、電話番号、IPアドレス、メールアドレス、製造年月日等)、販売店情報(例えば、販売店名、電話番号、メールアドレス、販売年月日等)等を有する。なお、保証情報の定義は、以下同様である。また、購入者情報とは、電子機器の購入者に関する情報であり、例えば、購入者名、住所、電話番号、メールアドレス、顧客ID、識別番号、購入年月日(販売年月日と同じ)等を有する。識別番号とは、個人を識別するユニークな番号である。なお、購入者情報の定義は、以下同様である。また、認証情報とは、電子機器の認証に関する情報である。認証情報とは、例えば、行政官庁が許可する許認可番号、電気通信事業法に基づく技術基準適合の認定を受けたことを示す認証番号、品質保証システムISO9001の認証取得工場で製品が製造されたことを示すISO9001認証登録番号、その他の法令/省令または規格等に適合することを示す認証番号等を有する。なお、認証情報は、例えば、電気通信事業法に基づく技術基準適合の認定を受けたことを示す認証表示マーク、日本工業規格に適合することを示すJISマーク、日本ガス機器検査協会が認証することを示すJIAマーク、正規のメーカーが製造した製品であることを示す正規品マーク等の図形情報を有するものでも良い。なお、認証情報の定義は、以下同様である。また、障害履歴情報は、電子機器の障害の履歴に関する情報であり、例えば、平成○○年△月□日 部品Aを交換、または平成○○年△月□日 水漏れ箇所の修理等の情報を有する。なお、障害履歴情報の定義は、以下同様である。なお、ここで対象になる電子機器には、例えば、テレビやビデオデッキ等のオーディオ機器、または、例えば、冷蔵庫、オーブンレンジ等の家電機器、または、例えば、照明、電話等の建築設備機器、または、例えば、血圧計等の医療用機器、または、例えば、パソコン、プリンタ等のネットワーク機器等その他の電子機器を含む。またソフトウェア識別情報とは、電子機器にインストールされたソフトウェアを識別する情報であり、例えば、シリアル番号等である。なお、ソフトウェア識別情報の定義は、以下同様である。情報格納部103は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも良い。情報格納部103は、例えば、無線タグに内蔵のメモリ、または電子機器に内蔵のフラッシュメモリ等が好適である。」

D.「【0044】
(実施の形態2)
図11は、本実施の形態における電子機器1100と情報処理装置1101の構成を示すブロック図である。電子機器1100は、出力指示受付部101、情報表示部11001、情報格納部103、日時情報記録部11002、情報送信部11003を有する。情報処理装置1101は、情報受信部11011と、図示しないCPU、メモリ、ハードディスク、入力部、出力部、および送受信部等を有する。また、電子機器1100と情報処理装置1101は、例えば、無線通信等を介して接続されている。なお、かかる接続は、他の接続手段でも良い。また、情報処理装置1101は、インターネットを介して、メーカーのサーバー装置1102と販売店のサーバー装置1103と接続している。なお、かかる接続は、他の接続手段でも良い。
【0045】
情報表示部11001は、保証情報の一部または全部、および/または、購入者情報の一部または全部、および/または、認証情報の一部または全部、および/または障害履歴情報の一部または全部、および/または、日時情報の一部または全部、および/またはソフトウェア識別情報の一部または全部を表示する。なお、実現手段は、実施の形態1と同様である。また、実現手段は、他の実施の形態においても同様である。
【0046】
日時情報記録部11002は、日時情報を図示しない記録媒体に記録する。日時情報とは、最初に動作した日時に関する情報であり、例えば、年月日(2003年4月2日等)、または年月日時(2003年4月2日15時等)等である。日時情報記録部11002は、通常、ソフトウェアから構成されるが、ハードウエア(専用回路)により実現しても良い。なお、記録媒体は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも良い。また、日時情報記録部11002は、日時情報を情報格納部103に記録するものでも良い。
【0047】
情報送信部11003は、保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報、または日時情報、またはソフトウェア識別情報を送信する。この送信とは、例えば、放送、無線、有線等を介した送信であり、問わない。情報送信部11003は、ネットワークカードとそのドライバーソフト等で実現できる。また、情報送信部11003は、例えば、無線タグが内蔵する通信手段(通信機能)で実現しても良い。かかる場合、無線タグの記録媒体に、保証情報、購入者情報、認証情報、障害履歴情報、日時情報、またはソフトウェア識別情報のいずれかの情報、または各々の情報が格納されていても良い。なお、無線タグとは、ICチップとアンテナを内部に埋め込み、通信機能をそなえた電子荷札(タグ)である。通信距離により「近接・近傍型(1m以内)」、「マイクロ波型(数メートル)」に分類されている。
【0048】
情報受信部11011は、保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報、または日時情報、またはソフトウェア識別情報を受信する。情報受信部11011は、ネットワークカードとそのドライバーソフト等で実現できる。また、情報送信部11003が無線タグの通信手段で実現される場合は、情報受信部11011は、無線タグリーダーの通信手段で実現されうる。」

E.「【0049】
以下、本実施の形態における電子機器(テレビ1200)と情報処理装置1201の具体的な動作について説明する。図12は、電子機器(テレビ1200)と情報処理装置1201の外観の例を示す図である。図12において、テレビ1200は、テレビ画面12001、無線タグ12002(情報送信部)等を有する。この無線タグ12002には、保証情報、購入者情報および認証情報が予め格納されている(つまり、無線タグは、情報格納部を兼ねている)。情報処理装置1201は、無線タグリーダー(情報受信部)を具備している。また、情報処理装置1201は、テレビメーカーのサーバー装置1202と販売店のサーバー装置1203とインターネットを介して接続されている。
【0050】
購入者が、購入後初めて、リモコン12003の電源ON/OFFボタンを押すと、リモコン12003からテレビ1200に、その信号が送信される。テレビ1200は、その信号に応じて、テレビの電源をONにする(なお、テレビ本体の電源ボタンを押しても良い)。そして、日時情報記録部は、無線タグ12002の記録媒体(例えば、EAROM等)に、日時情報を記録する。この日時情報は、例えば、テレビの電源をONにした時刻と年月日であり、「2003年4月2日15時18分」等である。なお、日時情報記録部は、例えば、テレビ1200が有する時計とカレンダー機能から、テレビの電源をONにした時刻と年月日を取得する。かかる場合、購入後初めて、テレビの電源をONにした場合に、日時情報を取得する日時情報取得ステップ(例えば、時計とカレンダーから各々時刻と年月日の情報を取得するステップ)と、当該日時情報を無線タグの記録媒体(または他の記録媒体)に記録する記録ステップを実行させるプログラムを、テレビ1200に内蔵のROM等に有する。なお、日時情報は、時刻を有しない、例えば、「○○○○年○○月○○日」等でも良く、保証期間または保証内容の設定条件に応じて定めても良い。また、購入者が、日時情報を書き込みするものでも良い。かかる場合、電子機器は、日時情報を書き込みする書き込み手段をさらに有する。
【0051】
Aボタン120031(出力指示受付部)を押すと、情報表示部は、無線タグに記録された保証情報、購入者情報、認証情報および日時情報をテレビ画面12001に表示する。図13は、テレビ画面12001の表示例を示す図である。図13において、メーカー保証期間は、「初期動作後1年間であって、購入後2年以内の期間」であること、販売店保証期間は、「初期動作後2年間であって、購入後3年以内の期間」であることを示す。また、日時情報は、「2003年4月2日15時18分」であることを示す。すなわち、各々の保証期間の「初期動作後○年間」の起算日は、日時情報の「2003年4月2日」であることを意味する。」

F.「【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、電子機器が保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報、またはソフトウェア識別情報を格納し、または日時情報を記録しており、表示または出力指示に応じて、保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報、またはソフトウェア識別情報、または日時情報等を表示または出力できる。よって、保証情報等を記載した保証書等を紛失しても、かかる表示または出力された保証情報等により電子機器は、保証を受けられる。」


a.Dの「電子機器1100は、出力指示受付部101、情報表示部11001、情報格納部103、日時情報記録部11002、情報送信部11003を有する。」、「日時情報記録部11002は、日時情報を図示しない記録媒体に記録する。日時情報とは、最初に動作した日時に関する情報であり、例えば、年月日(2003年4月2日等)、または年月日時(2003年4月2日15時等)等である。」、「情報送信部11003は、保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報、または日時情報、またはソフトウェア識別情報を送信する。」、及び、「情報受信部11011は、保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報、または日時情報、またはソフトウェア識別情報を受信する。」から、引用文献には、「電子機器1100」が、「最初に動作した」「年月日時」に関する情報である「日時情報」を外部から受信するとともに「記録媒体に記録する」ことが記載されていると同時に、前記「日時情報」を外部に送信するとともに「記録媒体に記録する」ことも記載されている。
そして、Eには、「日時情報記録部は、例えば、テレビ1200が有する時計とカレンダー機能から、テレビの電源をONにした時刻と年月日を取得する。」と記載されていることから、前記の「日時情報」を外部に送信するとともに「記録媒体に記録する」場合、「電子機器1100」は前記「日時情報」を内部で生成していると解され、この場合、前記「電子機器1100」は前記「日時情報」を生成する手段を有すると認められる。
したがって、引用文献には、
電子機器は、当該電子機器が最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報を生成する手段を有する、
ことが記載されていると解される。

b.Cの「情報格納部103は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも良い。情報格納部103は、例えば、無線タグに内蔵のメモリ、または電子機器に内蔵のフラッシュメモリ等が好適である。」、Dの「電子機器1100は、出力指示受付部101、情報表示部11001、情報格納部103、日時情報記録部11002、情報送信部11003を有する。」、「日時情報記録部11002は、日時情報を図示しない記録媒体に記録する。」、「記録媒体は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも良い。」、「情報送信部11003は、保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報、または日時情報、またはソフトウェア識別情報を送信する。…(中略)…かかる場合、無線タグの記録媒体に、保証情報、購入者情報、認証情報、障害履歴情報、日時情報、またはソフトウェア識別情報のいずれかの情報、または各々の情報が格納されていても良い。」、及び、Eの「電子機器(テレビ1200)と情報処理装置1201の外観の例を示す図である。図12において、テレビ1200は、テレビ画面12001、無線タグ12002(情報送信部)等を有する。この無線タグ12002には、保証情報、購入者情報および認証情報が予め格納されている(つまり、無線タグは、情報格納部を兼ねている)。」、「日時情報記録部は、無線タグ12002の記録媒体(例えば、EAROM等)に、日時情報を記録する。」から、引用文献には、
電子機器は、前記日時情報を記録する不揮発性の記録媒体を有する、
ことが記載されている。

c.Aの「最初に動作した日時に関する情報である日時情報を記録する日時情報記録部を具備する電子機器。」、Bの「最初に動作した日時に関する情報である日時情報を記録する日時情報記録部と…(中略)…を具備する電子機器である。かかる電子機器によって、…(中略)…保証期間が、購入後、初めて電子機器を動作させた日から始まる場合に、購入者は、日時情報からその動作日を得て、保証を受けられる。」、Dの「図11は、本実施の形態における電子機器1100と情報処理装置1101の構成を示すブロック図である。電子機器1100は、出力指示受付部101、情報表示部11001、情報格納部103、日時情報記録部11002、情報送信部11003を有する。」及び「日時情報記録部11002は、日時情報を図示しない記録媒体に記録する。日時情報とは、最初に動作した日時に関する情報であり、例えば、年月日(2003年4月2日等)、または年月日時(2003年4月2日15時等)等である。日時情報記録部11002は、通常、ソフトウェアから構成されるが、ハードウエア(専用回路)により実現しても良い。」から、引用文献には、
電子機器の購入後、最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報を記録媒体に記録する日時情報記録部を有する電子機器、
が記載されている。

d.ここで、A及びBの記載は、Dの「最初に動作した日時に関する情報」である「日時情報」を「記録媒体に記録する」ことを特徴とする引用文献の「実施の形態2」を、それぞれ、説明した記載である。
一方、「実施の形態1」を説明したCの「情報格納部103は、保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報、またはソフトウェア識別情報を格納している。保証情報とは、電子機器の保証に関する情報であり、例えば、保証内容、メーカーの保証期間、販売店の保証期間、メーカー連絡先(例えば、電話番号、IPアドレス、メールアドレス、製造年月日等)、販売店情報(例えば、販売店名、電話番号、メールアドレス、販売年月日等)等を有する。なお、保証情報の定義は、以下同様である。……(中略)……障害履歴情報の定義は、以下同様である。なお、ここで対象になる電子機器には、例えば、テレビやビデオデッキ等のオーディオ機器、または、例えば、冷蔵庫、オーブンレンジ等の家電機器、または、例えば、照明、電話等の建築設備機器、または、例えば、血圧計等の医療用機器、または、例えば、パソコン、プリンタ等のネットワーク機器等その他の電子機器を含む。」の記載において、「対象になる電子機器」とは、「情報格納部103」に格納される「保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報」の「対象になる電子機器」の意味であると解される。
そして、Cの前記「定義は、以下同様である。」の各記載から、前記「保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報」の「定義」は、引用文献全体を通して共通のものである。してみれば、前記「保証情報、または購入者情報、または認証情報、または障害履歴情報」の「対象になる電子機器」についても、引用文献のすべての「実施の形態」において、「テレビやビデオデッキ等のオーディオ機器、または、例えば、冷蔵庫、オーブンレンジ等の家電機器、または、例えば、照明、電話等の建築設備機器、または、例えば、血圧計等の医療用機器、または、例えば、パソコン、プリンタ等のネットワーク機器等その他の電子機器を含む」ものであることは、明らかである。
したがって、引用文献には、
前記電子機器はパソコンであること、
が記載されている。

a?dから、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「パソコンが最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報を生成する手段と、
前記日時情報を記録する不揮発性の記録媒体と、
前記パソコンの購入後、前記日時情報を前記記録媒体に記録する日時情報記録部と、
を有することを特徴とするパソコン。」

第4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「パソコン」は、本願発明の「情報処理装置」に相当する。

引用発明の「パソコンが最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報」は、「パソコンが最初に動作した」時点の、「年月日」すなわち日付情報と、「時」すなわち時刻情報とを含む情報である。
したがって、引用発明の「パソコンが最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報を生成する手段」と、本願発明の「自装置に電源が投入されているか否かによらず、常に日付情報を生成する日付生成部」とは、いずれも、日付情報を生成する日付生成部である点で共通する。
そして、引用発明の「前記日時情報を記録する不揮発性の記録媒体」と、本願発明の「前記日付情報を記録する不揮発性の記録部」とは、いづれも、日付情報を記録する不揮発性の記録部である点で共通する。

引用発明の電子機器は「パソコン」である。そして、前記「パソコン」がオペレーティングシステムを搭載すること、前記「パソコン」の電源投入に伴い前記オペレーティングシステムが起動することは、引用発明の電子機器が「パソコン」である以上、当然に有する構成である。
したがって、引用発明の当該「パソコン」の電源投入に伴い起動するオペレーティングシステムは、本願発明の「前記自装置に電源投入に伴い起動するオペレーティングシステム」とに相当する。

さて、前記「第3.引用発明」の項のEに、「日時情報記録部は、例えば、テレビ1200が有する時計とカレンダー機能から、テレビの電源をONにした時刻と年月日を取得する。かかる場合、購入後初めて、テレビの電源をONにした場合に、日時情報を取得する日時情報取得ステップ(例えば、時計とカレンダーから各々時刻と年月日の情報を取得するステップ)と、当該日時情報を無線タグの記録媒体(または他の記録媒体)に記録する記録ステップを実行させるプログラムを、テレビ1200に内蔵のROM等に有する。」と記載され、引用文献には、電子機器がテレビである場合は、「日時情報記録部」が「購入後」、「最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報」の「記録媒体」への「記録」をどのように行うかについて記載されている。しかしながら、引用文献において、電子機器が「パソコン」である場合は前記「日時情報」の「記録媒体」への「記録」をどのように行うか、不明である。
したがって、引用発明の「前記パソコンの購入後、前記日時情報を前記記録媒体に記録する日時情報記録部」と、本願発明の「前記オペレーティングシステムのセットアップシーケンスにおけるユーザ情報の登録処理が実行される場合に、前記記録部に前記日付情報が記録されているか否かを判別し、前記日付情報が記録されていないと判別した場合、前記日付生成部で生成される日付情報を前記記録部に記録する記録制御部」とは、いずれも、前記日付生成部で生成される日付情報を前記記録部に記録する記録制御部である点で共通する。


以上から、引用発明と本願発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
日付情報を生成する日付生成部と、
自装置に電源投入に伴い起動するオペレーティングシステムと、
前記日付情報を記録する不揮発性の記録部と、
前記日付生成部で生成される日付情報を前記記録部に記録する記録制御部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。

(相違点1)
本願発明の「日付生成部」は「自装置に電源が投入されているか否かによらず、常に日付情報」を生成するのに対して、引用発明の「日時情報を生成する手段」は「パソコンが最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報を生成する」点。

(相違点2)
本願発明の「不揮発性の記録部」は「前記日付情報を記録する」のに対して、引用発明の「不揮発性の記録媒体」は「前記日時情報を記録する」点。

(相違点3)
本願発明の「記録制御部」は「前記オペレーティングシステムのセットアップシーケンスにおけるユーザ情報の登録処理が実行される場合に、前記記録部に前記日付情報が記録されているか否かを判別し、前記日付情報が記録されていないと判別した場合」に「前記日付生成部で生成される日付情報を前記記録部に記録する」のに対して、引用発明の「日時情報記録部」は「前記パソコンの購入後、前記日時情報を前記記録媒体に記録する」が、前記「記録」をどのように行うかは不明である点。

第5.判断
上記の相違点1ないし相違点3について検討する。

(1)当業者の通常の技術知識
a.引用発明においては、対象となる電子機器は「パソコン」、すなわち、コンピュータである。
ここで、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-230044号公報には、図面と共に、以下の記載がある(下線は、参考のため、当審において付したもので、以降の他の刊行物についても同様である。)。
ア.「【0004】記録の際は、撮像信号を圧縮するため、DSP15に接続されているメインCPU20でスケールファクターが計算され、DSP15内のJPEG部で圧縮され、カードメモリー17へ送られ記録される。メインCPU20に接続されているサブCPU23は、主にユーザーとのインターフェースを司る。サブCPU23に接続されているリアルタイムクロックIC(以下「RTC」という)25は、時間情報を管理するもので、サブCPU23に比しても消費電流が少ないため、一般的に用いられることが多い。
【0005】これらのICには、メインバッテリー28からDC/DCモジュール27を通して、必要な電圧値に変換後、各ICに電圧が供給される。ただし、RTC25には、専用のサブバッテリー29を持たせることが多い。これは、メインバッテリー28の電力がなくなったとき、あるいはメインバッテリー28が抜かれたときでも、ある程度の期間、時間情報を保持するために必要だからである。以上が、従来のデジタルスチルカメラの構成、および信号の流れの一例である。
……(中略)……
【0007】このようなことを極力避けるため、一度設定した日付・時刻情報を、メインバッテリーがなくなった後も保持できるような回路が、デジタルスチルカメラ本体内部に設けられている。よく使用される方法として、RTCと、RTC動作用の補助電池(以下「サブバッテリー」と呼ぶ)とを、デジタルスチルカメラ内部に持たせる方法が挙げられる。RTCは、時間のカウント機能を有していて、日時、時刻を一度設定すると、設定後所定の信号が入力されることにより、現在の日付・時刻情報を出力するデジタルIC装置である。」

さらに、本願出願前に頒布された刊行物である特表2005-519366号公報には、図面と共に、以下の記載がある。
イ.「【0007】
図1Bは、いわゆる“RTC(リアルタイムクロック)バッテリウェル内蔵式”のバッテリ113による予備バッテリを含むサウスブリッジ112の一形態を示す。サウスブリッジ112は、サウスブリッジ(SB)RAM126とクロック回路128を有し、これらはいずれもRTCバッテリウェル125内にある。SB RAM126は、CMOSとRTC RAM126Bを含む。RTC RAM126Bは、クロックデータ129とチェックサムデータ127を含む。サウスブリッジ112はまた、RTCバッテリウェル125の外部にCPUインターフェース132,電源及びシステム管理ユニット133,種々のバスインターフェースロジック回路134も含む。」

同様に、本願出願前に頒布された刊行物である特開2007-140555号公報には、図面と共に、以下の記載がある。
ウ.「【0069】
また、前記管理サーバ60は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、CRT、液晶ディスプレイ等の表示手段、キーボード等の入力手段、通信インターフェイス等を備えるコンピュータであり、機能の観点から、入出力インターフェイス61、ディスプレイ62、キーボード63、リアルタイムクロック64、制御部65及び記憶部66を有し、プリンタ30から総印刷枚数を取得し、印刷の許可及び不許可の制御を行う。
【0070】
そして、前記入出力インターフェイス61は、ネットワーク10を介してプリンタ30に命令を送信したり、データを受信したりする。また、前記ディスプレイ62は、後述される印刷可能枚数設定画面70及びプリンタ設定画面80の表示を行う。また、前記キーボード63は、数字を入力するための数字キー、ドットを入力するためのドットキー、一文字削除するための削除キー、及び、入力可能な欄を移動するためのタブキーを備え、印刷可能枚数設定画面70及びプリンタ設定画面80の入力を行う。さらに、前記リアルタイムクロック64は、時間をカウントし、問い合わせを受けると現在の日付及び時刻を返信する。また、前記リアルタイムクロック64は、バッテリーを内蔵し、管理サーバ60の電源がオフにされていても、時間のカウントを行うことができる。」

前記ア?ウから、
CPUを有する装置、すなわち、コンピュータに、当該コンピュータに電源が投入されているか否かによらず、常に、現在の日付及び時刻の情報を生成するリアルタイムクロックを設けることは、本願の出願時において、周知慣用の常套手段であった。

b.前述のとおり、引用発明において、対象となる電子機器は「パソコン」である。
ここで、当審の拒絶理由通知において「文献2」として引用した刊行物である特開2007-066060号公報には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
エ.「【0015】
《第1実施形態》
図1から図4の図面に基づいて本発明の第1実施形態に係る情報処理装置1(本発明の電子機器に相当)を説明する。図1は、情報処理装置1のシステム構成図である。この情報処理装置1は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータとして実現される。……(以下、省略)」
オ.「【0026】
このようにして、CPU11は、初回起動時には、ACアダプタ21の接続を確認し、ACアダプタ端子17に電力が供給されていない場合に、ユーザに、ACアダプタ21を介して交流電源20から電力を供給するように促す。すなわち、CPU11は、ディスプレイ13に、所定のメッセージを表示し、ユーザに対しACアダプタ21によって情報処理装置1を交流電源20に接続するように促す。この処理を実行するCPU11とディスプレイ13とが本発明の報知部に相当する。
【0027】
図2に、その場合のメッセージの例を示す。すなわち、このメッセージでは、”初めて電源を入れるときには、必ずACアダプタを取り付けて下さい。ACアダプタを接続するか、<F1>キーを押すと継続します。ACアダプタを取り付けていないと、OSのセットアップ中にバッテリの残量がなくなり、OSのセットアップに失敗することがあります。”との表示がなされる。
【0028】
したがって、ユーザは、工場出荷後の情報処理装置1を入手し、電源スイッチSWを操作することにより初めて電源と投入し、システムを起動したときに、必ず、ACアダプタ21を通じて電源が供給されていることを確認するようになる。すなわち、ACアダプタ21を通じて電源が供給されていない場合には、ユーザは、ACアダプタ21を交流電源20に接続し、さらに、ACアダプタ21をACアダプタ端子17に接続する。
【0029】
その結果、工場出荷後、最初にユーザが情報処理装置1を立ち上げた後に実行されるセットアップ処理において、確実にバッテリ16以外の外部電源(図1の交流電源20等)からの電源供給がなされる可能性が高まる。そして、セットアップ作業では、(1)ライセンス契約書の確認(2)OSへの各種情報の登録(3)コンピュータ名の登録(4)ユーザ名の登録(5)選択可能なアプリケーションのインストール(6)ドメインへの参加作業(7)インターネットへの接続作業(8)メーカウェブサイトへのユーザ登録等がバッテリの充電不足による電源遮断なく、実行されることになる。」
カ.「【0040】
工場出荷後のセットアップ処理では、(1)ライセンス契約書の確認(2)OSへの各種情報の登録(3)コンピュータ名の登録(4)ユーザ名の登録(5)選択可能なアプリケーションのインストール(6)ドメインへの参加作業(7)インターネットへの接続作業(8)メーカウェブサイトへのユーザ登録等が実行される。このため、この処理の途中で電源が遮断すると、情報処理装置1の再立ち上げが困難になるなど、深刻な問題が生じることが多い。本実施形態の情報処理装置1によれば、そのような問題を回避する可能性を高めることができる。」

当審の拒絶理由通知において「文献3」として引用した刊行物である
第2特集 Windows95セットアップ必勝法、日経パソコン、日本、1995.12.04発行、第254号、p.228?245
には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
キ.「11月23日,Window95日本語版が発売された。同時にパソコン・メーカ一各社もいっせいにWindows95のプリインストール・マシンを発売。96年のパソコン出荷台数は600万?700万台と予測されており,このうちかなりの台数がWindows95をプリインストールしたものになる。……(中略)……この記事では,これらについて,Windows95購入前の段階から,セットアップ終了後まで,順を追って解説していく。」(第228頁の左欄第1行?右欄末行)
ク.「Windows95のセットアップで問題が起こりやすいのは,ハードウエア関連の部分である。……(中略)……個別のハードウエアとの相性のせいでWindows95が動かない場合や,BIOS(基本入出力システム)やソフトウエアの設定を変更しないとWindows95が動かない場合など,製品の個別事情にかかわる障害については,既にメーカー自身が明らかにしている情報が数多くある。メーカ?からの最新情報を必ず入手するようにしたい。こうした情報をきちんと入手するためにも,ユーザー登録は必ずしておこう。」(第229頁の左欄第8行?右欄第10行)
ケ.「メニュー・ソフトの互換性を確認しよう
……(中略)……
そこで注意しておきたいのは,Windows95をセットアップした時に,メニュー・ソフトにユーザーが登録した内容がWindows95のスタート・メニューにも自動的に登録されるかどうかである。」(第232頁右欄第11?22行)

前記エ?ケから、
パソコンの購入後にユーザが当該パソコンに最初に実行させる動作は、ユーザ情報の登録処理を含む、オペレーティングシステムのセットアップシーケンスの実行であり、このユーザ情報の登録処理を含む前記セットアップシーケンスを正常に実行させないと、その後の前記パソコンの利用に大きな支障が生じること、
すなわち、
パソコンの購入後にユーザが当該パソコンに最初に実行させる動作は、ユーザ情報の登録処理を含む、オペレーティングシステムのセットアップシーケンスの実行であること、
は本願出願時において技術常識であったと認められる。

c.引用発明において、対象となる電子機器は「パソコン」である。
そして、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-169622号公報には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
コ.「0002】
【従来の技術】従来、パーソナルコンピュータ等のソフトウエアは、いわゆる「パッケージ販売」により一般消費者に販売されることが一般的であった。」
サ.「【0040】この表示例では、このソフトウエアがキー機能を利用した場合のみ課金される旨と、初回の使用時にはユーザ登録が必要であるので必要項目を記入するように促すメッセージが表示されている。メッセージの下には、氏名、住所、電話番号、e-mailをそれぞれ入力するためのテキストボックス50a?50dが表示されている。
【0041】また、その下には、支払い方法を選択するための表示がなされており、クレジットカードによる決済を行う場合には、カード会社名とカード番号をテキストボックス50e,50fにそれぞれ入力する。
【0042】また、口座引き落としの場合には金融機関名と口座番号を、テキストボックス50g,50hにそれぞれ入力する。このような画面において、必要な項目を入力した後、送信ボタン50iが押圧されると、入力された内容が取得され、クライアント12からサーバ10に向けて送信されることになる。
【0043】サーバ10では、受信した情報から支払いに関する情報を抽出し、該当するクレジットカード会社または金融機関に対して問い合わせを行うことにより、与信処理を実行する。その結果、与信処理に成功した場合には、サーバ10は、カードまたは口座が有効であるとしてユーザIDとパスワードを発行する。そして、発行されたこれらの情報を添付した電子メールを作成し、先に取得したユーザのe-mailアドレスを宛先として送信する。」
シ.「【0050】キー機能の実行を許可する情報を受信したクライアント12では、印刷対象となる文書データをプリンタ13に出力して印刷させる。3回目以降も同様の処理が実行され、キー機能が実行される度に、サーバ10に対してユーザIDとパスワードが送信され、認証された場合には、キー機能の実行が許可されるとともに、サーバ10の課金情報が更新される。」

本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-252315号公報には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
ス.「【0025】
本発明によれば、ソフトウェア使用前提としてユーザ登録を行うことにより、ユーザ登録が未登録の状態でのソフトウェア使用を防ぐことができる。また、メーカはソフトウェアを使用する顧客の最新属性情報の収集やソフトウェアの使用実態の把握を行うことができる。そのことから、新製品情報やユーザ事例紹介など必要な情報を提供することができ
、効率的な営業活動やマーケティング活動の支援を行うことができる。しかも、アプリケーションプログラムの販売別ID(例えば、アプリケーションCDシリアルNo)とユーザ端末の販売別ID(例えば、パソコン固有番号)とからなるユーザコードをWebサーバ内のデータベースで管理することにより、正規に認証された端末のみに実行禁止解除又は実行制限のための解除キーが発行されるため、ソフトウェアの不正使用を確実に防止可能なユーザ管理システムを提供することができる。」
セ.「【0041】
ユーザ端末のインストール処理(ステップ201、図1の動作[1])のフローチャートが図4に示されている。同図に示されるように、ユーザ端末11のCD-ROMドライブ1304にソフトウェアインストールCD10が挿入されると、ユーザ端末11のOSは、ソフトウェアインストールCD10に含まれているインストーラの読み込みを開始する。読み込まれたインストーラは端末のRAMに一時記憶される(ステップ401)。一時記憶されたインストーラが実行されると、ソフトウェアインストールCDに含まれているアプリケーションプログラムとユーザ管理プログラムとが、ユーザ端末11のROM1311にインストールされる(ステップ402)。
【0042】
各プログラムのインストール後、指定されたアプリケーションプログラムが実行されると、同時にユーザ管理プログラムが実行され、ユーザ登録処理が開始される(ステップ202)。なお、どのアプリケーションプログラムを起動するかは、ユーザ端末11内に保存された設定ファイルで指定される。上述のユーザ登録処理が完了すると(後述するように、プロテクト解除キーをユーザ端末11に登録することを含む)、ユーザは、ソフトウェアメーカからソフトウェアの使用が認められ(ステップ203)、ソフトウェアメーカが設定した使用期限が到来するまで、該当ソフトウェアを使用することができる(ステップ204NO)。ソフトウェアメーカが設定した使用期限が到来した場合には(ステップ204YES)、ソフトウェアの使用期限を延長させる必要がある。使用期限を延長する場合には(ステップ205有)、再度ユーザ登録を行い、更新する必要がある(ステップ202)。」

前記コ?セから、
パソコンで利用するソフトウェアの購入後、ユーザは、まずユーザ情報の登録処理を実行させること、このユーザ情報の登録処理を正常に実行させないと、ユーザは、当該ソフトウェア自体あるい当該ソフトウェアの特定の機能を利用できないこと、
すなわち、
前記パソコンで利用するソフトウェアの購入後にユーザは、必ず、まず、ユーザ情報の登録処理を実行させること、
も本願出願時において技術常識であったと認められる。

(2)各相違点の検討
さて、当審の拒絶理由通知において「文献4」として引用した刊行物であって、本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-238356号公報には以下の事項が記載されている。
ソ.「【0006】すなわち、インテリジェント電池等の2次電池には所定の保証期間(例えば1年間)があるが、ポータブルPCや家電等がユーザに届き、2次電池を実際に使い始めた日付を知る手段がないため、当該2次電池が保証期間内のものであるか否かを判断することができずに無償交換せざるを得なかった。」
タ.「【0042】図3には、メイン電池64Aの構成と、メイン電池64Aと他のコンポーネントとの接続状態が示されている。同図に示されるように、本第1実施形態に係るメイン電池64Aは、メイン電池64A全体の動作を司るCPU102、各種データを記憶するためのメモリ104、定格電圧4.2Vのリチウム・イオン電池を3本直列接続して構成された電池106、電池106の温度を検知するためのサーミスタ108、及び4つの外部端子T1、T2、T3、T4を含んで構成されている。なお、メモリ104としては、EPROM、EEPROM、フラッシュEEPROM等の読み書き可能で、かつ不揮発性のメモリを適用することができる。」
チ.「【0050】ここで、図4を参照して、本実施の形態に係るメモリ104の記憶内容について説明する。同図に示すように、メモリ104には、一例として当該電池の「製造者名」、「出荷日」、「使用開始日付」、「シリアル・ナンバ」、「バーコード・ナンバ」、「電池名」、「電池の種類」、「定格容量」、及び「定格電圧」の各々を示すデータを記憶するための領域が予め定められており、製造者によって当該電池の出荷時に「使用開始日付」以外のデータが対応する領域に記憶される。同図に示す例では、例えば、製造者名として‘IBM’が、出荷日として‘2000/08/20’が、各々出荷時に記憶される。なお、「使用開始日付」は、当該電池を実際にユーザが使用を開始した日付を記憶するための領域であり、本実施の形態ではデフォルトとして0(零)が記憶されている。」
ツ.「【0065】次のステップ206では、上記ステップ204で取得した「使用開始日付」領域のデータが正常であるか否かを判定し、正常でない場合(否定判定の場合)はステップ208に移行する。本実施の形態では、日付データが16進数の‘0000’である場合には正常でないと判定し、それ以外である場合には正常であると判定する。
【0066】ステップ208では、メイン電池64Aのメモリ104における「使用開始日付」領域に上記ステップ200で記憶しておいた日付を示すデータに対応する日付データを記憶させた後にステップ210へ移行する。この際、エンベデッド・コントローラ80は、前述の(1)式により日付を示すデータが示す日付を16ビットの日付データに変換した後に、CPU102に対しコマンドとして「0x3fwrite hex‘日付データ’」を送信する。これによって、メモリ104の「使用開始日付」領域には、電源投入時、又はメイン電池64A接続時の日付が記憶されることになる。」
テ.「【0099】また、本発明に係る電源制御装置及び電源制御方法によれば、本発明の電源装置に備えられたメモリに使用開始情報が記憶されていない場合に該使用開始情報を記憶するように制御しているので、ユーザやメーカはメモリに記憶された使用開始情報を読み出すことにより、当該電源装置の実際の使用開始時期を知ることができると共に、本発明によればメモリに使用開始情報が既に記憶されている場合には使用開始情報を記憶する動作は行われないので、使用開始情報が不正に書き換えられることを防止することができる、という優れた効果を有する。」

以上、ソ?テから、
CPUを備えたインテリジェント電池、すなわち、コンピュータにおいて、前記インテリジェント電池が保証期間内にあるかどうかの基準日となる、ユーザが前記インテリジェント電池を実際に使い始めた日付情報を不揮発性メモリの所定の領域に記憶させるに際して、前記不揮発性メモリの所定の領域にアクセスして、前記所定の領域に前記日付情報が記憶されていなければ、ユーザが前記インテリジェント電池を実際に使い始めた日付情報を前記所定の領域に記憶させることで、
ユーザやメーカが前記インテリジェント電池の実際の使用開始時期を知ることができるようにするとともに、既に前記日付情報が記憶されているときは前記記憶動作を禁止することで前記日付情報の不正な書き換えを防止する、
ことは、本願出願前において、既に、公知技術であった。

さて、前記「第4.対比」の項で述べたように、電子機器が「パソコン」である場合、すなわち、引用発明において、前記「パソコン」は当該「パソコンが最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報を生成する手段」を有しているものの、「日時情報記録部」が「前記パソコンの購入後、前記日時情報」をどのように「前記記録媒体に記録する」のか、不明である。

しかしながら、
インテリジェント電池であるコンピュータにおいて、前記コンピュータが保証期間内にあるかどうかの基準日となる、ユーザが前記コンピュータを実際に使い始めた日付情報を不揮発性メモリの所定の領域に記憶させるに際して、前記不揮発性メモリの所定の領域にアクセスして、前記所定の領域に前記日付情報が記憶されていなければ、ユーザが前記コンピュータを実際に使い始めた日付情報を前記所定の領域に記憶させることで、
ユーザやメーカが前記インテリジェント電池の実際の使用開始時期を知ることができるようにするとともに、既に前記日付情報が記憶されているときは前記記憶動作を禁止することで前記日付情報の不正な書き換えを防止する、
ことは、前述のとおり、公知技術であった。
そして、「第3.引用発明」の項のBに「保証期間が、購入後、初めて電子機器を動作させた日から始まる場合に、購入者は、日時情報からその動作日を得て、保証を受けられる。」と記載されるように、引用発明において、「パソコンの購入後」に前記「パソコンが最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報」は、当該「パソコン」の保証期間の起算日となる情報であるから、その不正な書き換えを防止しようとすることは、引用発明が当然に有する課題であると認められる。してみれば、同様にコンピュータの購入後に最初に動作した日付の情報を不揮発性メモリに記憶させる技術に関する、引用発明に、前記公知技術を適用しようと想起することは、当業者であれば容易になし得たと認められる。

このとき、前記「(1)当業者の通常の技術知識」の項で述べたように、
a.CPUを有する装置、すなわち、コンピュータにおいて、当該コンピュータに電源が投入されているか否かによらず、常に、現在の日付及び時刻の情報を生成するリアルタイムクロックは、本願の出願時において、周知慣用の常套手段であり、
b.パソコンの購入後にユーザが当該パソコンに最初に実行させる動作は、ユーザ情報の登録処理を含む、オペレーティングシステムのセットアップシーケンスの実行であることは、本願出願時において技術常識であり、
c.パソコンで利用するソフトウェアの購入後にユーザは、必ず、まず、ユーザ情報の登録処理を実行させることも、本願出願時において技術常識であった。
d.さらに、前述のとおり、引用発明の「パソコンの購入後」に前記「パソコンが最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報」は、当該「パソコン」の保証期間の起算日となる情報であるが、前記保証期間は通常は日付によって管理することは常識である、
ことを考慮すれば、
引用発明において、
「パソコンが最初に動作した年月日時に関する情報である日時情報を生成する手段」を、前記「パソコン」に電源が投入されているか否かによらず、常に、現在の日付及び時刻の情報を生成するリアルタイムクロックで実現し、
「パソコンの購入後」の「最初」の「動作」として、ソフトウェアの一つであるオペレーティングシステムを当然に搭載する引用発明の「パソコン」において、ユーザが前記「パソコン」の「購入後」に当該「パソコン」に最初に実行させる動作の一つである、前記オペレーティングシステムのセットアップシーケンスにおけるユーザ情報の登録処理を選択し、
このユーザ情報の登録処理の際に、前記公知技術のように、「不揮発性の記録媒体」に「日時情報」が記録されているか否かを判別し、前記「日時情報」が記録されていないと判別した場合に、
前記リアルタイムクロックが生成した現在の日付及び時刻の情報から、日付の情報を選択して前記「不揮発性の記録媒体」に記録させること、
は、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

よって、相違点1ないし相違点3は、格別のものではない。

(3)審判請求人の主張
審判請求人は、平成23年6月20日付けの意見書において、
「即ち、実施例としてテレビを用いて説明され、更に様々な電子機器を想定している文献1に、パーソナルコンピュータについて記載している文献2及び3を組み合わせることには明らかに阻害要因があり、このような恣意的な引用文献の組み合わせをもって本願の進歩性を否定する拒絶理由は不当である。」、
と主張している。

しかしながら、引用文献には、その段落【0019】に、前記様々な電子機器には「パソコン」が含まれることが記載されている。そして、引用発明は前記「パソコン」についての発明である。
そして、「パソコン」についての発明である引用発明に、前記「パーソナルコンピュータについて記載している文献2及び3」に記載の技術を組み合わせることに、阻害要因があるとは、認められない。
したがって、審判請求人の前記主張は当を得ていない。

(4)小括
以上、検討したように、各相違点は格別のものではなく、また、本願発明によってもたらされる効果も、引用発明及び公知技術に基づいて当業者であれば予期し得たものにすぎず、格別のものとは認められない。
したがって、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2011-07-21 
結審通知日 2011-07-22 
審決日 2011-08-02 
出願番号 特願2008-141375(P2008-141375)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北川 純次  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 吉田 美彦
赤川 誠一
発明の名称 情報処理装置及びその使用開始日記録方法  
代理人 堀口 浩  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ