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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1244524 |
審判番号 | 不服2010-11346 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-05-26 |
確定日 | 2011-10-06 |
事件の表示 | 特願2003-356388「フラットディスプレイ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月22日出願公開、特開2004-206076〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願の手続の経緯は、概要次のとおりである。 特許出願 :平成15年10月16日 (特許法第41条に基づく優先権主張の日:平成14年12月10日) 拒絶理由通知(最初):平成21年 8月13日(起案日) 手続補正 :平成21年10月13日 拒絶理由通知(最後):平成21年11月19日(起案日) 手続補正 :平成22年 1月15日 補正の却下の決定 :平成22年 3月17日(起案日) 拒絶査定 :平成22年 3月17日(起案日) 拒絶査定不服審判請求:平成22年 5月26日 手続補正 :平成22年 5月26日 審尋 :平成23年 3月24日(起案日) 回答書 :平成23年 5月10日 第2 平成22年5月26日付け手続補正についての補正の却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成22年5月26日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1 本件補正の目的 本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、その補正は、平成21年10月13日付け手続補正により補正された請求項1の、 「【請求項1】 フラットディスプレイパネルと、前記フラットディスプレイパネルの表示側の基板の表面に透明粘着剤によって貼り付けられ、赤外線吸収および色調補正層と電磁波遮断層とが積層されて形成された光学フィルタとを備えたフラットディスプレイ装置において、 前記透明粘着材の屈折率と、前記基板の屈折率または前記光学フィルタの屈折率との差が、0.2以下であることを特徴とするフラットディスプレイ装置。」 なる記載を、本件補正後の請求項1の、 「【請求項1】 電磁波遮断シート上に赤外線吸収・色調補正シートを積層するとともに前記赤外線吸収・色調補正シート上に外光反射防止シートを積層して光学フィルタを構成し、前記光学フィルタをフラットディスプレイパネルの表示側の基板の表面に透明なフィルタ貼り合わせ用の透明粘着材によって貼着することにより、前記光学フィルタを前記フラットディスプレイパネルの保護シートとして前記フラットディスプレイパネルの前記表示側表面に直貼りしたフラットディスプレイ装置において、 前記光学フィルタの厚さは前記透明粘着材の厚さと合わせて0.5mm以上とするとともに、前記透明粘着材の屈折率は1.4?1.6とし、かつ前記透明粘着材の屈折率と、前記フラットディスプレイパネルの表示側の前記基板の屈折率および前記光学フィルタの屈折率との差が、0.2以下であることを特徴とするフラットディスプレイ装置。」 という記載にすることを含むものである。 本件補正後の請求項1に係る当該補正は、平成21年10月13日付け手続補正により補正された請求項1について、「光学フィルタの厚さ」と「透明粘着材の厚さ」の合計値の下限を「0.5mm以上」と限定し、「透明粘着剤の屈折率」の範囲を「1.4?1.6」限定し、透明粘着材の屈折率と、表示側の基板の屈折率および光学フィルタの屈折率との差を「0.2以下」と限定するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。 そこで、本件補正後の請求項1に記載されている発明特定事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かについて、以下に検討する。 2 本件補正発明 本件補正発明は、上記「1」に記載したとおりのものである。 3 引用例 本願優先日前に頒布された刊行物(平成22年3月17日付け補正の却下の決定で示され、請求の理由で検討対象とされた「引用文献3」)である、特開2002-251144号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の技術的事項の記載がある。 (1a)「【0011】プラズマディスプレイ用フィルタは、ディスプレイと別体に形成し、ディスプレイの前面板として、近赤外線、電磁波遮蔽、表示画面の保護を目的に設置することが考えられる。しかしながら、前面板方式は、その構成部材数・製造工程数が多いためコストが高くなり、薄型・軽量化が困難になる。 【0012】さらに、プラズマディスプレイ表示部の表面反射は一般に低減されておらず、ガラス基板の反射率を有しているので、熱設計等の観点から前面板を表示部と離して設置する場合には、ディスプレイ表面の外光反射と前面板の外光反射により、反射映像が二重以上になってしまい、ディスプレイの視認性を低下させることがある。また、プラズマディスプレイは、画面表面におけるガラスの反射や蛍光体の反射により、明所コントラストが低く、加えて発光の色再現範囲が狭いという特性を有する。 【0013】一方、前面板を除去し、ディスプレイパネル上に光学フィルムを直接貼合わせることが特開平10-156991、特開平10-188822、2000-98131などで提案されている。しかしながら、これらの先行技術はいずれも、透明高分子フィルム全体の合計厚さに対する規定はなく、また耐衝撃性の付与について具体的な言及はなされていない。 【0014】一方、特開平10-2111688では、外部からの衝撃を吸収するために、直接貼合わせ用の光学フィルムを厚さ1mm以上の透明高分子シートに積層して使用するとの提案がある。しかしながら、厚さ1mm以上の透明高分子シートは、ロール形態からの連続貼合わせ工程やディスプレイへの直接貼合わせは実用上困難であり、実施例でも厚さ3mmのアクリルシートに貼合わせていることから、枚葉貼合わせ型の従来前面板型フィルターの改良を意図したものであることは明らかである。」 (1b)「【0021】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、1)プラズマディスプレイから発生する非常に強度な電磁波を遮蔽するには、面抵抗0.01?30Ω/□の透明導電層が必要であること、2)このような透明導電層を備えた電磁波シールド体をプラズマディスプレイ表面に直接形成することによって、電磁波シールド能、近赤外線カット能、画像・視認性・コストに優れるプラズマディスプレイを用いた表示装置が得られること、3)特定の層構成を有し、色素を含有し、且つ、可視光線透過率が30?85%である調光フィルムをディスプレイ表面に直接形成することによって、画像・視認性・コストに優れるディスプレイを用いた表示装置が得られること、4)光学フィルターを構成する透明高分子高分子フィルムの合計厚さを0.3mm以上とし、それをディスプレイ前面に直接貼合わせることで、軽量薄型化とパネル保護性を両立した上に、作業性の向上が得られること、5)電極を形成位置を制限し、例えば長方形の光学フィルターの場合、一組の向かい合う2辺のみに電極を形成すること及び電極の形状を工夫することにより、高い生産効率を有するロールツーロール方式で電極形成を行なうことができること、等を見出し、本発明に至った。」 (1c)「【0022】本発明は、ディスプレイ画面に接着可能で、所定のフィルタ特性を有するディスプレイ用フィルタであって、外気側に設けられ、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)と、ディスプレイ側に設けられ、画面に接着するための透明粘着層(C)と、機能性透明層(A)と透明粘着層(C)との間に基体として設けられた高分子フィルム(B)とを備えることを特徴とするディスプレイ用フィルタである。 【0023】また本発明は、機能性透明層(A)と高分子フィルム(B)との間、及び/又は高分子フィルム(B)と透明粘着層(C)との間に設けられ、0.01?30Ω/□の面抵抗を有する透明導電層(D)を備えることが好ましい。」 (1d)「【0031】また本発明は、機能性透明層(A)、高分子フィルム(B)、透明粘着層(C)、透明導電層(D)、粘着層(E)およびハードコート層(F)のうち少なくとも1つの層に、1種以上の色素が含有されることが好ましい。 【0032】また本発明は、波長570?605nmの範囲に吸収極大を有する色素が含有されることが好ましい。」 (1e)「【0039】また本発明は、フィルタ全体における高分子フィルムの厚さ合計が0.3mm以上であることが好ましい。 【0040】また本発明は、色素が含有可能な厚さ嵩上げ用の高分子フィルムを備えることが好ましい。」 (1f)「【0052】 【発明の実施の形態】本発明に係るディスプレイ用フィルタは、波長570?605nmの範囲に吸収極大を有する色素を含有することによって、ディスプレイ画面の可視光スペクトルを補正するフィルタ特性を有する調光フィルムとして機能する。 【0053】また、本発明に係るディスプレイ用フィルタは、面抵抗0.01?30Ω/□の透明導電層を備えることによって、ディスプレイ画面からの電磁波を遮断するフィルタ特性を有する電磁波シールド体として機能する。 【0054】また、本発明に係るディスプレイ用フィルタは、波長800?1100nmの範囲に吸収極大を有する近赤外線吸収色素が含有することによって、ディスプレイ画面からの近赤外線を遮断するフィルタ特性を有する近赤外線フィルタとして機能する。 【0055】これらの機能を有するディスプレイ用フィルタをプラズマディスプレイ等のディスプレイ表面に直接貼付けることによって、低コスト、軽量薄型化、パネル保護性、不具合発生時の作業性、生産性の向上などの改善を図ることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0057】また、本発明に係る電磁波シールド体は、少なくとも、高分子フィルム(B)の一方の主面上に形成された少なくとも面抵抗0.01?30Ω/□の透明導電層(D)と、高分子フィルム(B)の他方の主面上に形成された機能性透明層(A)とを有し、さらに、該透明導電層(D)上に、導電性粘着層および透明粘着層(C)を有する。 【0058】また、本発明に係る電磁波シールド体は、少なくとも、高分子フィルム(B)、該高分子フィルム(B)の一方の主面上に形成された少なくとも面抵抗0.01?30Ω/□の透明導電層(D)、透明粘着層(C)、高分子フィルム(B)の他方の主面上に形成された機能性透明層(A)、を有する。 【0059】また、本発明に係る調光フィルムは、少なくとも、高分子フィルム(B)、該高分子フィルム(B)の一方の主面上に形成された反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性透明層(A)、該高分子フィルム(B)の他方の主面上に形成された透明粘着層(C)を有し、且つ、色素を含有し、可視光線透過率が55?90%である。」 (1g)「【0116】また、本発明者らは、色素を用いることによって、電磁波シールド体をニュートラルグレーまたはニュートラルブルーに調色するだけではなく、発光色の色純度及びコントラストを下げる原因となる不要発光及び外光反射を低減できることを見出した。特に、赤色発光がオレンジに近いものは顕著であり、その原因である波長580nm?605nmの発光を低減することによって赤色発光の色純度を向上させることができることを見い出した。 【0117】本発明のディスプレイ用フィルタにおいて、不要発光及び外光反射の低減は、波長570nm?605nmに吸収極大を有する色素をシールド体に含有させることによって行うことができる。この際、ディスプレイ用フィルタによって、赤色である発光ピークのある波長615nm?640nmの光線透過を著しく損なってしまわないことが必要である。 【0118】一般に、色素はブロードな吸収範囲を有しており、所望の吸収ピークを有するものも、その裾の吸収により好適な波長の発光まで吸収してしまうことがある。Neによる発光が存在する場合は、オレンジ色発光の低減を行うこともできるため、RGB表示セルからの発光の色純度が向上する。 【0119】また、カラープラズマディスプレイの緑発光はブロードであり、そのピーク位置は、例えば、NTSC方式で要求される緑色より若干長波長側、すなわち黄緑側にあることがある。 【0120】本発明者らは、波長570nm?605nmに吸収極大を有する色素の短波長側の吸収によって、緑色発光の長波長側を吸収して削り、さらに不要発光を削ること、及び/又は、ピークをシフトさせることによって色純度を向上できることを見出した。 【0121】赤色発光、更に加えて緑色発光の色純度向上には、波長570nm?605nmに吸収極大を有する色素を用いることによって、波長570nm?605nmにおける電磁波シールド体の最低透過率が、必要な赤色発光のピーク位置での透過率に対して80%以下であることが好適である。 【0122】青色発光の色純度が低い場合は、赤色発光、緑色発光と同様に、不要発光を低減し、また、そのピーク波長をシフトさせ、青緑発光を吸収する色素を用いれば良い。さらに、色素による吸収は、外光の蛍光体への入射を低減することによって蛍光体での外光反射を低減させることができる。このことによってもまた色純度及びコントラストを向上させることができる。 【0123】本発明のディスプレイ用フィルタに色素を含有させる方法としては、(1)透明な樹脂に少なくとも1種類以上の色素を混錬させた高分子フィルム、(2)樹脂または樹脂モノマー/有機系溶媒の樹脂濃厚液に少なくとも1種類以上の色素を分散・溶解させ、キャスティング法により作製した高分子フィルム、(3)樹脂バインダーと有機系溶媒に少なくとも1種類以上の色素を加え、塗料として透明な基体上にコーティングしたもの、(4)少なくとも1種類以上の色素を含有する透明な粘着材、のいずれか一つ以上の形態として用いる方法である。 【0124】本発明でいう含有とは、基材または塗膜等の層または粘着材の内部に含有されることは勿論、基材または層の表面に塗布した状態をも意味する。 【0125】色素は、可視領域に所望の吸収波長を有する一般の染料または顔料で良く、その種類は特に限定されるものではないが、例えば、アントラキノン系、フタロシアニン系、メチン系、アゾメチン系、オキサジン系、アゾ系、スチリル系、クマリン系、ポルフィリン系、ジベンゾフラノン系、ジケトピロロピロール系、ローダミン系、キサンテン系、ピロメテン系等の一般に市販もされている有機色素があげられる。その種類・濃度は、色素の吸収波長・吸収係数、透明導電層の色調及び電磁波シールド体に要求される透過特性・透過率、そして分散させる媒体または塗膜の種類・厚さから決まり、特に限定されるものではない。 【0126】透明導電層(D)に多層薄膜を用いる場合、電磁波シールド能に加え、近赤外線カット能も有しているが、より高い近赤外線カット能が必要であったり、透明導電層が近赤外線カット能を有していない場合に、近赤外線カット能をディスプレイ用フィルターに付与するために、前記色素に近赤外線吸収色素を1種類以上併用しても良い。」 (1h)「【0142】本発明のディスプレイ用フィルタにおいては、前記の色素を含有させる方法(1)?(4)は、色素を含有する高分子フィルム(B)、色素を含有する後述の透明粘着層(C)または第2の透明粘着層、色素を含有する後述の機能性透明層(A)、色素を含有する前述のハードコート層(F)のいずれか1つ以上の層において実施することが出来る。色素を含有する後述の機能性透明層(A)は、色素を含有し且つ各機能を有する膜でも、色素を含有し且つ各機能を有する膜が高分子フィルム上に形成されたものでも、各機能を有する膜が色素を含有する基材に形成されたもの、のいずれでも良い。」 (1i)「【0167】7.機能性透明層(A) 本発明のディスプレイ用フィルタには、ディスプレイへの設置方法や要求される機能に応じて、ハードコート性、反射防止性、防眩性、静電気防止性、防汚性、ガスバリア性、紫外線カット性のいずれか一つ以上の機能を有し、且つ、可視光線を透過する機能性透明層(A)が直接または第2の透明粘着層を介して、透明導電層(D)の上に形成される。1つの機能性透明層(A)が、複数の機能を有していることは好ましいことである。 【0168】本発明における機能性透明層(A)は、上記各機能を一つ以上有する機能膜そのものでも、機能膜を塗布または印刷または従来公知の各種成膜法により形成した透明な基体でも、各機能を有する透明な基体でも良い。 【0169】機能膜そのものの場合は、機能性透明層(A)を形成する透明導電層(D)の主面に塗布または印刷または従来公知の各種成膜法により直接形成する。」 (1j)「【0173】ディスプレイは、照明器具等の映り込みによって表示画面が見づらくなってしまうので、機能性透明層(A)は、外光反射を抑制するための反射防止(AR:アンチリフレクション)性、防眩(AG:アンチグレア)性またはその両特性を備えた反射防止防眩(ARAG)性のいずれかの機能を有していることが必要である。電磁波シールド体表面の可視光線反射率が低いと、前述した通り、プラズマディスプレイの蛍光体への外光入射及び反射が低減し、映り込み防止だけではなく、コントラスト及び色純度向上につながる。 【0174】反射防止(AR)性を有する機能性透明層(A)は、反射防止膜を形成する基体の光学特性を考慮し、光学設計によって反射防止膜の構成要素及び各構成要素の膜厚を決定する。具体的には、可視域において屈折率が1.5以下、好適には1.4以下と低いフッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を基体から見て高屈折率層、低屈折率層の順に2層以上積層したものがある。 【0175】単層形成したものは、製造が容易であるが、反射防止性が2層以上積層したものに比べ劣る。4層積層したものは、広い波長領域にわたって反射防止能を有し、基体の光学特性による光学設計の制限が少ない。」 (1k)「【0182】本発明のディスプレイ用フィルタは、透明粘着層(C)を介してディスプレイ表示部に貼合わせるため、表示部表面の基板ガラス反射が無くなる。従って、さらに加えて、ARまたはARAGの機能を有する機能性透明層(A)を形成したフィルタは、その表面の反射も低く、ディスプレイのコントラスト及び色純度をさらに向上させることが出来る。ARまたはARAGの機能を有する機能性透明層(A)の表面における可視光線反射率は2%以下、好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。」 (1l)「【0196】さらには、透明高分子フィルムの厚さ合計を上げることによって耐衝撃性も向上する。透明高分子フィルムの厚さ合計が大きいほど、その耐衝撃性は向上するが、フィルムの積層枚数が多くなると生産効率が低くなる、その剛性が大幅増加することによりディスプレイへの直接貼合わせが困難になる。従って透明高分子フィルムの厚さ合計については特に指定はないが、0.3?1.0mmが好ましく、さらに好ましくは、0.4mm?0.8mmである。また、透明高分子フィルムの積層枚数についても特に指定はないが、2?6枚が好ましく、さらに好ましくは2枚?4枚である。」 (1m)「【0236】本発明に係る表示装置の製造方法は、主として以下の(1)?(10)の方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。 ・・・(中略)・・・ 【0242】方法(5):機能性透明層(A)/高分子フィルム(B)/透明導電層(D)/透明粘着層(C)および導電性粘着層からなる電磁波シールド体を、表示装置の少なくとも表示部に透明粘着層(C)を貼合わせ面にし、且つ、表示装置の少なくともアース部に導電性粘着層を貼合わせ面にして貼合わせる。」 (1n)「【0246】本発明の電磁波シールド体は、透過特性、透過率、可視光線反射率が優れているため、プラズマディスプレイに形成することにより、プラズマディスプレイの輝度を著しく損なわずに、その色純度及びコントラストを向上させることができる。さらにまた、プラズマディスプレイから発生する健康に害をなすといわれている電磁波を遮断する電磁波シールド能に優れ、さらに、プラズマディスプレイからでる800?1100nm付近の近赤外線を効率よくカットするため、周辺電子機器のリモコン、伝送系光通信等が使用する波長に悪影響を与えず、それらの誤動作を防ぐことができる。また、耐候性・耐環境性に優れ、反射防止性及び/または防眩性、耐擦傷性、防汚性、帯電防止性等を兼ね備えており、低コストに提供できる。本発明の電磁波シールド体を具備せしめることにより、優れた特性を有するプラズマディスプレイを提供できる。」 (1o)「【0260】酢酸エチル/トルエン(50:50wt%)溶剤に有機色素を分散・溶解させ、アクリル系粘着剤の希釈液とした。アクリル系粘着剤/色素入り希釈液(80:20wt%)を混合し、コンマコーターにより透明積層体1の高分子フィルム(B)側の面に乾燥膜厚25μmに塗工の後、乾燥、粘着面に離型フィルムをラミネートして、離型フィルムと透明積層体の高分子フィルム(B)に挟み込まれた透明粘着層(C)(粘着材1) を形成した。なお、粘着材1の屈折率は1.51、消光係数は0であった。」 (1p)「【0275】(実施例3)実施例1と同様に高分子フィルム(B)/透明導電層(D)積層体を作製した。さらにロール状に巻き取られた上記PETフィルム/透明導電層のPETフィルムの反対側主面に、機能性透明層(A)として次の機能性透明膜1をロール・ツー・ロールで連続的に形成した。すなわち、多官能メタクリレート樹脂に光重合開始剤を加え、さらにITO微粒子(平均粒径:10nm)を分散させたコート液をグラビアコーターにて塗工し、紫外線硬化によって導電性ハードコート膜(膜厚:3μm)を形成し、その上に含フッ素有機化合物溶液をマイクログラビアコーターにて塗工・90℃乾燥・熱硬化させ、屈折率1.4の反射防止膜(膜厚:100nm)を形成し、ハードコート性(JIS K5400準拠の鉛筆硬度:2H)、反射防止性(表面のRvis :0.9%)、帯電防止性(表面抵抗:7×109 Ω/□)、防汚性を有する機能性透明層(A)を形成した。上記のロール状の機能性透明層(A)/高分子フィルム(B)/透明導電層(D)を970mm×570mmの大きさに裁断し、ガラス製支持板に透明導電層(B)面を上にして固定した。酢酸エチル/トルエン(50:50wt%)溶剤に有機色素を分散・溶解させ、アクリル系粘着剤の希釈液とした。アクリル系粘着剤/色素入り希釈液(80:20wt%)を混合し、バッチ式ダイコーターにより透明導電層(D)上に、周縁部22mmを除いて、乾燥膜厚25μmに塗工の後、乾燥させ、透明粘着層(C)として粘着材1を形成した。なお、粘着材1の屈折率は1.51、消光係数は0であった。」 〔引用例1に記載された発明〕 これらの記載事項からして、引用例1には、 「透明導電層(D)を備えたディスプレイ用フィルタをプラズマディスプレイ表面に直接形成することによって、電磁波シールド能、近赤外線カット能、画像・視認性・コストに優れるプラズマディスプレイを用いた表示装置が得られ、 前記ディスプレイ用フィルタは、 外気側に設けられ、反射防止性を有する機能性透明層(A)と、ディスプレイ側に設けられ、画面に接着するための透明粘着層(C)と、機能性透明層(A)と透明粘着層(C)との間に基体として設けられた高分子フィルム(B)とを備え、高分子フィルム(B)と透明粘着層(C)との間に設けられ、0.01?30Ω/□の面抵抗を有する透明導電層(D)を備えており、 透明粘着層(C)を介してディスプレイ表示部に貼合わせるため、表示部表面の基板ガラス反射が無くなり、 面抵抗0.01?30Ω/□の透明導電層(D)を備えることによって、ディスプレイ画面からの電磁波を遮断するフィルタ特性を有する電磁波シールド体として機能し、 前記高分子フィルム(B)の層に、1種以上の色素が含有され、波長570?605nmの範囲に吸収極大を有する色素が含有されており、ディスプレイ画面の可視光スペクトルを補正するフィルタ特性を有する調光フィルムとして機能し、 波長800?1100nmの範囲に吸収極大を有する近赤外線吸収色素が含有することによって、ディスプレイ画面からの近赤外線を遮断するフィルタ特性を有する近赤外線フィルタとして機能し、ディスプレイ用フィルタに色素を含有させる方法としては、透明な樹脂に少なくとも1種類以上の色素を混錬させた高分子フィルム(B)の形態として用い、透明導電層(D)が近赤外線カット能を有していない場合、近赤外線カット能をディスプレイ用フィルターに付与するために、前記色素に近赤外線吸収色素を1種類以上併用し、 これらの機能を有するディスプレイ用フィルタをディスプレイ表面に直接貼付けることによって、低コスト、軽量薄型化、パネル保護性、不具合発生時の作業性、生産性の向上などの改善を図ることができ、 高分子フィルム(B)の厚さ合計が大きいほど、その耐衝撃性は向上するが、フィルムの積層枚数が多くなると生産効率が低くなり、その剛性が大幅増加することによりディスプレイへの直接貼合わせが困難になるので、高分子フィルム(B)の厚さ合計については、0.3?1.0mmが好ましいプラズマディスプレイを用いた表示装置。」 の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 4 本件補正発明と引用発明1との対比 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 <対応関係A> 引用発明1の「反射防止性を有する機能性透明層(A)」、「ディスプレイ用フィルタ」、「プラズマディスプレイ」、「基板ガラス」、「透明粘着層(C)」及び「プラズマディスプレイを用いた表示装置」は、それぞれ本件補正発明の「外光反射防止シート」、「光学フィルタ」、「フラットディスプレイパネル」、「基板」、「透明粘着材」及び「フラットディスプレイ装置」に相当する。 <対応関係B> 引用発明1の「ディスプレイ画面からの電磁波を遮断するフィルタ特性を有する電磁波シールド体として機能」させる「面抵抗0.01?30Ω/□」の「透明導電層(D)」は、本件補正発明の「電磁波遮断シート」に相当する。 <対応関係C> 引用発明1の「高分子フィルム(B)」は、「波長800?1100nmの範囲に吸収極大を有する近赤外線吸収色素が含有することによって、ディスプレイ画面からの近赤外線を遮断するフィルタ特性を有する近赤外線フィルタとして機能し、ディスプレイ用フィルタに色素を含有させる方法としては、透明な樹脂に少なくとも1種類以上の色素を混錬させた高分子フィルム(B)の形態として用い、透明導電層が近赤外線カット能を有していない場合、近赤外線カット能をディスプレイ用フィルターに付与するために、前記色素に近赤外線吸収色素を1種類以上併用」するものであり、かつ、「1種以上の色素が含有され、波長570?605nmの範囲に吸収極大を有する色素が含有されており、ディスプレイ画面の可視光スペクトルを補正するフィルタ特性を有する調光フィルムとして機能」するものであるから、本件補正発明の「赤外線吸収・色調補正シート」に相当する。 <対応関係D> 引用発明1の「ディスプレイ用フィルタをディスプレイ表面に直接貼付けることによって・・・パネル保護性・・・の改善を図る」ことは、本件補正発明の「光学フィルタをフラットディスプレイパネルの保護シートとして前記フラットディスプレイパネルの前記表示側表面に直貼」りすることに相当する。 <対応関係E> 引用発明1の「高分子フィルム(B)の厚さ合計が大きいほど、その耐衝撃性は向上するが、フィルムの積層枚数が多くなると生産効率が低くなり、その剛性が大幅増加することによりディスプレイへの直接貼合わせが困難になるので、高分子フィルム(B)の厚さ合計については、0.3?1.0mmが好ましい」ことと、本件補正発明の「フラットディスプレイパネルの保護シートとして前記フラットディスプレイパネルの前記表示側表面に直貼り」して用いる「光学フィルタの厚さは前記透明粘着材の厚さと合わせて0.5mm以上とする」こととは、本願明細書の段落【0037】等の記載を踏まえると、「直貼りする光学フィルタによって、外部からの衝撃に対する緩衝性を保持する」点で共通する。 <対応関係F> 引用発明1の「透明粘着層(C)を介してディスプレイ表示部に貼合わせるため、表示部表面の基板ガラス反射が無くな」ることと、本件補正発明の「透明粘着材の屈折率は1.4?1.6とし、かつ前記透明粘着材の屈折率と、フラットディスプレイパネルの表示側の基板の屈折率および光学フィルタの屈折率との差が、0.2以下であること」とは、本願明細書の段落【0034】の記載を踏まえると、「透明粘着材が、フラットディスプレイパネルの表示側の基板と光学フィルタとの界面における反射を抑制する特性を有する」点で共通する。 以上の対応関係からして、本件補正発明と引用発明1とは、 「電磁波遮断シート上に赤外線吸収・色調補正シートを積層するとともに前記赤外線吸収・色調補正シート上に外光反射防止シートを積層して光学フィルタを構成し、前記光学フィルタをフラットディスプレイパネルの表示側の基板の表面に透明なフィルタ貼り合わせ用の透明粘着材によって貼着することにより、前記光学フィルタを前記フラットディスプレイパネルの保護シートとして前記フラットディスプレイパネルの前記表示側表面に直貼りしたフラットディスプレイ装置において、 直貼りする光学フィルタによって、外部からの衝撃に対する緩衝性を保持するとともに、前記透明粘着材が、フラットディスプレイパネルの表示側の基板と光学フィルタとの界面における反射を抑制する特性を有するフラットディスプレイ装置。」 の点で一致し、以下の各点で相違する。 (相違点1) 「直貼りする光学フィルタによって、外部からの衝撃に対する緩衝性を保持する」ための手段に関して、本件補正発明は「透明粘着材の厚さと合わせて0.5mm以上」としているのに対して、引用発明1はディスプレイ用フィルタを構成する「高分子フィルム(B)の厚さ合計が大きいほど、その耐衝撃性は向上するが、フィルムの積層枚数が多くなると生産効率が低くなり、その剛性が大幅増加することによりディスプレイへの直接貼合わせが困難になるので、高分子フィルム(B)の厚さ合計については、0.3?1.0mmが好ましい」としている点。 (相違点2) 「透明粘着材が、フラットディスプレイパネルの表示側の基板と光学フィルタとの界面における反射を抑制する特性」に関して、本件補正発明は「透明粘着材の屈折率は1.4?1.6とし、かつ前記透明粘着材の屈折率と、前記フラットディスプレイパネルの表示側の前記基板の屈折率および前記光学フィルタの屈折率との差が、0.2以下である」としているのに対して、引用発明1は「透明粘着層(C)を介してディスプレイ表示部に貼合わせるため、表示部表面の基板ガラス反射が無くな」ることは示しているものの、それが「透明粘着層(C)」のどのような特性によるものかを示していない点。 5 検討・判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用発明1において、高分子フィルム(B)の厚さ合計が大きいほど、ディスプレイ用フィルタの耐衝撃性が向上し、生産効率や直接貼り合わせの困難性を考慮すると0.3?1.0mmまでの厚さが好ましいことが示されているから、耐衝撃性を高めるために、ディスプレイ用フィルタを構成する高分子フィルム(B)の厚さ合計を0.5mm以上とすることは、当業者であれば容易に想到することである。 そして、ディスプレイ用フィルタを構成する高分子フィルム(B)の厚さ合計を0.5mm以上にすれば、透明粘着層(C)の厚みによらず、「光学フィルタの厚さは透明粘着材の厚さと合わせて0.5mm以上」となることは明らかである。 よって、引用発明1において、相違点1に係る構成を得ることは、当業者であれば容易になし得ることである。 (2)相違点2について 透明な層間での屈折率差が大きいと、層間の界面で反射が生じるのは技術常識的な事項であるから、引用発明1で「透明粘着層(C)を介してディスプレイ表示部に貼合わせるため、表示部表面の基板ガラス反射が無くな」ることは、当然、「透明粘着層(C)」の屈折率と、「表示部表面の基板ガラス」の屈折率及び「ディスプレイ用フィルタ」の屈折率との差が十分に小さいことを意味するといえる。少なくとも、技術常識を踏まえて、そのような関係に設定することは、当業者であれば容易に想到することである。 また、屈折率の差の具体値をどの程度に設定するべきであるかは、界面における反射をどの程度抑えたいかに応じて当業者が適宜に決定し得ることである。なお、反射を抑制するために、屈折率の差を0.2以下とする点も格別のものではない。例えば、特開平11-292575号公報(下記「引用例3」)の段落【0150】に、屈折率差を「±0.15以下」にして反射を抑制する技術が開示されている。 さらに、引用発明1において、「透明粘着層(C)」の屈折率は、「表示部表面の基板ガラス」の材質及び「ディスプレイ用フィルタ」の材質に応じて当業者が適宜に決定し得る事項に過ぎない。なお、上記摘記事項(1o)、(1p)によれば、引用例1には、屈折率1.51の粘着材が使用できることも示されているから、「透明粘着層(C)」の屈折率を「1.4?1.6」の範囲にすることも格別のものではない。 (3)本願発明の作用効果 本願発明が奏する作用効果は、引用発明1から当業者が予測できる範囲のものである。 (4)まとめ よって、本願発明は、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 6 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成22年5月26日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成21年10月13日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 フラットディスプレイパネルと、前記フラットディスプレイパネルの表示側の基板の表面に透明粘着剤によって貼り付けられ、赤外線吸収および色調補正層と電磁波遮断層とが積層されて形成された光学フィルタとを備えたフラットディスプレイ装置において、 前記透明粘着材の屈折率と、前記基板の屈折率または前記光学フィルタの屈折率との差が、0.2以下であることを特徴とするフラットディスプレイ装置。」 2 引用例 2-1 引用例2 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、特開2000-156182号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の技術的事項の記載がある。 (2a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はPDP(プラズマディスプレイパネル)のフィルタ装置に係り、PDPより漏洩する電磁波の遮蔽、赤外線の吸収、外光の反射防止および発光色の補正等をPDPに貼着したフィルム層で行うものに関する。 【0002】 【従来の技術】映像表示装置に用いるPDPは、管内に封入したキセノンガスの分子を放電によって励起し、紫外領域から近赤外領域にわたる波長範囲の線スペクトルを発生させ、このうちの紫外線で管内に塗布した蛍光体を励起し、可視領域の光を発生するが、近赤外領域の線スペクトルの一部は表面ガラスを通って管外に放出される。また、PDPの駆動に伴って電磁波が発生し、僅かではあるが外部に漏洩する。さらに、表示面が平面であるため外光が差し込んだ場合に広い範囲で反射した光が目に入り、映像のコントラストが低下して画面が見にくくなり、また、青色を発光する蛍光体が青色以外に僅かではあるが赤色を発光する特性を有しており、青色に表示されるべき部分が紫がかった色になる。これらの対策として、PDPの前面に光学フィルタを設け、赤外線の放出抑止、電磁波の漏洩防止、外光の反射防止および色調の補正を行い、同時に、PDPのガラス面の保護とガラス割れ時の飛散防止とを行う。このように、光学フィルタに機械的機能を持たせる必要性のため、光学フィルタ本来の役割である外光の反射防止、コントラストの改善および色調の補正等の機能を充分に果たすことが難しく、コスト高の要因にもなり、また、光学フィルタとPDPとの間に数mmの隙間ができるため、光学フィルタとPDPとで外光が二重に反射されるという問題もあった。」 (2b)「【0012】 【発明の実施の形態】発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。図1は本発明によるPDPのフィルタ装置の一実施例の要部断面図である。図において、1はPDP、2は光学フィルム、3はPDPのガラス面の保護およびガラス割れ時の飛散防止のための強化ガラス等で形成した光学フィルタ板である。光学フィルム2の4は電磁波遮蔽層、5は赤外線吸収層、6は反射防止層(アンチグレア=AGおよびアンチリフレクション=AR)、光学フィルタ板3の両面の8は反射防止層(AR)である。 【0013】電磁遮蔽層4は、銅をニッケルで覆ったCu-Ni材(導電性に優れ、酸化されにくい)を用いた金属メッシュで、光の透過を妨げないように、導体幅40μmで1インチ当たりのメッシュ密度90本とし、PDP1の画素の配列(縦横)と重なって干渉縞(モアレ)が生じないようにするためバイアス角度15°乃至20°(斜めに交差)とし、PET製またはPMMA(アクリル系樹脂)製等の透明基材に熱プレスし、黒化処理を施して金属の光沢で映像視聴が妨げられないようにする。あるいは、PETまたはアクリル系樹脂等の透明基材上に形成した金属膜を、導体幅20μm以下、1インチ当たり100 本のメッシュ密度で、この場合はバイアス角度8°乃至45°とし、エッチング加工により形成する。 【0014】赤外線吸収層5は、視感平均透過率は75%乃至80%が得られ、波長850nm 以上に対する透過率が10%以下となるように赤外線吸収色素(顔料)を設定し、電磁波遮蔽層4にコーティングして形成する。これは、電磁波遮蔽層4のメッシュの光透過率が約75%であり、波長850nm 以上の透過率が合計で7%以下になるようにするためである。そして、この赤外線吸収層5の色調をCIEの色度図上の座標x=0.301 、y=0.311 に調色し、PDP1からの赤色成分を吸収し、色調補正を行うようにする。この調色は、上記赤外線吸収色素に更に他の色素を使用し、上記座標値の色調にすることを意味する。 【0015】反射防止層6は、入射光の拡散(アンチグレア)のためフィルムの表面をヘイズ(曇り度)5%乃至8.6 %、中心線平均粗度0.1 μm乃至0.2 μm、10点平均粗度1.0 μm乃至1.6 μm、凹凸間隔70μm乃至85μm等に形成し(CRT又は液晶等の表示素子で実施されている技術)、同時に、入射光の反射を抑える(アンチリフレクタ)ため屈折率の異なる材料の膜を複数枚重ねて蒸着またはコーティングし、入射光を複雑に屈折させて前方に戻りにくくし、反射率が1%以下になるようにする。あるいは、赤外線吸収層5の表面をこのように加工してもよい。そして、これら電磁遮蔽層4、赤外線吸収層5および反射防止層6からなる光学フィルム2(厚さ約200 μm)を再剥離可能型粘着剤を用いた粘着層7でPDP1に貼着する。これは、光学フィルタ2を貼着し直す場合に引き剥がしが容易で、かつ、PDPの表面に粘着剤が残らないようにするためである。光学フィルム2の貼着には、例えば、加圧荷重0.5Kg/cm自乗?6Kg/cm自乗を可変できるシリンダを有する貼合機を用い、加圧荷重1Kg/cm自乗乃至2Kg/cm自乗(貼合機のローラにかかる線圧が最大80Kg/58.5cm 以下)に設定して行う。」 (2c)図1 〔引用例2に記載された発明〕 これらの記載事項からして、引用例2には、 「PDP1(プラズマディスプレイパネル)と、再剥離可能型粘着剤を用いた粘着層7でPDP1の表面に貼着され、電磁波遮蔽層4、赤外線吸収層5、反射防止層6(アンチグレア=AGおよびアンチリフレクション=AR)とが積層された光学フィルム2と、を備えた映像表示装置であって、 赤外線吸収層5の色調をCIEの色度図上の座標x=0.301 、y=0.311 に調色し、PDP1からの赤色成分を吸収し、色調補正を行うものであり、この調色は、赤外線吸収色素に更に他の色素を使用し、上記座標値の色調にするものである映像表示装置。」 の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 2-2 引用例3 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、特開平11-292575号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の技術的事項の記載がある。 (3a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は電磁波シールド性光透過窓材に係り、特に、良好な電磁波シールド性を備え、かつ光透過性で、PDP(プラズマディスプレーパネル)の前面フィルタ等として有用な電磁波シールド性光透過窓材に関する。」 (3b)「【0150】ところで、導電性複合メッシュ13の透明繊維の屈折率が接着用中間膜の屈折率と異なると、透明繊維と接着用中間膜との間で反射が生じ、画像が乱れることから、透明繊維の屈折率は接着用中間膜の透明接着剤の屈折率に対して±0.15以下、特に±0.05以下の差で、屈折率がほぼ同等のものを用いるのが好ましい。」 3 本願発明と引用発明2との対比 本願発明と引用発明2とを対比する。 <対応関係A> 引用発明2の「PDP1(プラズマディスプレイパネル)」、「電磁波遮蔽層4」、「光学フィルム2」及び「映像表示装置」は、それぞれ本願発明の「フラットディスプレイパネル」、「電磁波遮断層」、「光学フィルタ」及び「フラットディスプレイ装置」に相当する。 <対応関係B> 引用発明2の「PDP1の表面」は、プラズマディスプレイパネルは表示側の基板と背面側の基板とで構成されるという技術常識を踏まえると、本願発明の「フラットディスプレイパネルの表示側の基板の表面」に相当する。 <対応関係C> 引用発明2の「再剥離可能型粘着剤」は、技術常識からして、不透明であると不適当な部材であるから、本願発明の「透明粘着剤」に相当する。 <対応関係D> 引用発明2の「PDP1からの赤色成分を吸収し、色調補正を行う」機能を有する「赤外線吸収層5」は、本願発明の「赤外線吸収および色調補正層」に相当する。 以上の対応関係からして、本願発明と引用発明2とは、 「フラットディスプレイパネルと、前記フラットディスプレイパネルの表示側の基板の表面に透明粘着剤によって貼り付けられ、赤外線吸収および色調補正層と電磁波遮断層とが積層されて形成された光学フィルタとを備えたフラットディスプレイ装置」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 本願発明は「透明粘着材の屈折率と、基板の屈折率または光学フィルタの屈折率との差が、0.2以下である」としているのに対して、引用発明2は当該構成を有さない点。 4 検討・判断 (1)上記相違点について検討する。 透明な層間での反射は、層間の屈折率差が小さいほど、抑制されることは技術常識的な事項であり、かつ、フラットディスプレイの技術分野において、基板表面側での無駄な反射を抑えることは周知課題であるから、引用発明2において、再剥離可能型粘着剤を用いた粘着層7の屈折率と、PDP1の表示側の基板の屈折率及び光学フィルム2の屈折率との差を十分に小さくすることは、当業者であれば容易に想到することである。 そして、引用例3に、PDP(プラズマディスプレーパネル)の前面フィルタ等として有用な電磁波シールド性光透過窓材で、透明な材質間での屈折率差を「±0.15以下」にして反射を抑制する技術が開示されており、屈折率差を当該範囲にすれば、反射が十分に抑えられることが認識できるから、引用発明2において、屈折率差の当該範囲を採用することは、当業者であれば容易になし得ることである。 なお、そもそも、屈折率の差の具体値をどの程度に設定するべきであるかは、界面における反射をどの程度抑えたいかに応じて当業者が適宜に決定し得ることであるから、屈折率差を0.2以下とすることは、格別のものではない。 (2)本願発明の作用効果 本願発明が奏する作用効果は、引用発明2及び引用例3に記載の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 (3)まとめ よって、本願発明は、当業者が引用発明2及び引用例3に記載の技術に基いて容易に発明をすることができたものである。 なお、特許請求の範囲の請求項1の記載から明らかなように、光学フィルタが保護シートとして機能することや、基板に直貼りする光学フィルタ以外に保護板や前面板は設けないこと等は、発明特定事項として記載されていないから、本願発明の構成要件とは認められない。仮に、それらの事項が本願発明に含意されていたとしても、保護板や前面板を除去し、ディスプレイパネル上に光学フィルタを直貼りすることは、上記引用例1やその先行技術(上記摘記事項(1a)参照)等に示されているように、周知の技術であるから、本願発明は、引用発明2、引用例3に記載の技術及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-04 |
結審通知日 | 2011-08-09 |
審決日 | 2011-08-23 |
出願番号 | 特願2003-356388(P2003-356388) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 横井 巨人 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
橋本 直明 北川 清伸 |
発明の名称 | フラットディスプレイ装置 |
代理人 | 特許業務法人 エビス国際特許事務所 |