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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1245639
審判番号 不服2009-24728  
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-14 
確定日 2011-10-27 
事件の表示 特願2003-418669「印刷装置、コンピュータプログラム、印刷システム、及び、インク滴の吐出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月 7日出願公開、特開2005-178042〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年12月16日の出願であって、平成21年4月9日付け拒絶理由通知に対して、同年5月26日に手続補正がなされたが、同年9月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月14日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
その後、当審において、平成23年2月2日付けで拒絶理由を通知したところ、同年4月4日に手続補正がなされ、さらに、同年6月1日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年7月26日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成23年4月4日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。


「【請求項1】
媒体の搬送方向と交差する移動方向に移動する印刷ヘッドを少なくとも2つ備え、各前記印刷ヘッドは吐出部が搬送方向に沿って配置された第1の吐出部列と第2の吐出部列とを有し、前記第1の吐出部列と前記第2の吐出部列は前記吐出部が前記媒体にインクを吐出することによりドットを形成可能な吐出部列であり、
互いに異なる前記印刷ヘッドに各々設けられた前記吐出部列のうち、一方の印刷ヘッドに設けられた吐出部列の前記搬送方向の下流側に位置する下流側吐出部と、他方の印刷ヘッドに設けられた吐出部列の上流側に位置する上流側吐出部とが、前記移動方向に並ぶ第1の吐出部列の組からなる吐出部並設部分と第2の吐出部列の組からなる吐出部並設部分とを有するように、各前記印刷ヘッドが配置されており、
前記印刷ヘッドが前記移動方向に移動する際に、
前記吐出部並設部分は、前記上流側吐出部及び前記下流側吐出部のうち実際にインク滴を吐出する吐出部を適宜変更する複数の吐出方法にて、インク滴を吐出可能な印刷装置において、
前記吐出部並設部分におけるインク滴の吐出方法を、前記第1の吐出部列の組と前記第2の吐出部列の組とで異なる吐出方法に設定可能であり、
前記吐出部並設部分におけるインク滴の吐出方法は、該吐出部並設部分の並設された吐出部の数に基づいて設定され、前記第1の吐出部列の組における吐出部並設部分の吐出部の数と、前記第2の吐出部列の組における吐出部並設部分の吐出部の数とは、異なる数に設定して記憶可能であることを特徴とする印刷装置。」(下線は審決で付した。以下同じ。)

第3 引用文献に記載の事項
1 当審拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-210942号公報(以下「引用文献1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】 2次元直交座標の互いに直交する2軸をX軸およびY軸としたときに、前記Y軸方向に同時にMドット分(Mは3以上の整数)が印刷可能で、かつ、印刷対象物に対する前記X軸方向への相対的走査により前記X軸方向に延びるドットラインを前記Y軸方向にM個並べて印刷可能な印刷ヘッドを、N個(Nは2以上の整数)備えることにより、前記N個の印刷ヘッドを用いて前記印刷対象物に対する印刷を行う印刷装置であって、前記N個のうちの少なくとも2個の印刷ヘッドは、それぞれが印刷を担当可能なMドットラインのうちのLドットライン分(LはL<Mとなる自然数)が互いにオーバラップするように配置されたことを特徴とする印刷装置。
・・・(略)・・・
【請求項4】 前記Lドットライン分の前記X軸方向に並ぶ各ドットを、前記2個の印刷ヘッドが択一的に担当することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】 前記2個の印刷ヘッドは、前記X軸方向に並ぶ各ドットを、所定の順番に従って担当することを特徴とする、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】 前記2個の印刷ヘッドは、各ドットラインの前記X軸方向に並ぶ各ドットを、交互に担当することを特徴とする、請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】 前記Lは複数であり、
前記2個の印刷ヘッドは、前記Lドットライン分の前記X軸方向に並ぶ各ドットについて、千鳥で担当することを特徴とする、請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】 前記2個の印刷ヘッドは、前記X軸方向に並ぶ各ドットを、ランダムな順序で担当することを特徴とする、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項9】 前記2個の印刷ヘッドは、それぞれが印刷を担当するMドットラインを表現する印刷データに従って印刷し、
各印刷ヘッドに対応する印刷データには、各ドットをその印刷ヘッドが担当するか否かの情報が反映されていることを特徴とする、請求項4ないし8のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項10】 前記Lドットライン分のX軸方向に並ぶ各ドットに対する前記2個の印刷ヘッドの担当の振り分けをパターン化した振り分けパターンを決定する振り分けパターン決定手段と、
前記振り分けパターンに基づいて、前記2個の印刷ヘッドのうちの第1印刷ヘッドが担当するMドットラインを表現する第1印刷データを記憶する第1印刷データ記憶手段と、
前記振り分けパターンに基づいて、前記2個の印刷ヘッドのうちの第2印刷ヘッドが担当するMドットラインを表現する第2印刷データを記憶する第2印刷データ記憶手段と、を備えたことを特徴とする、請求項9に記載の印刷装置。」

(2)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、印刷ヘッドPH(1)、PH(2)を、実際に図示のように配置しようとした場合、図示の距離dの精度が問題となる。同じ印刷ヘッドの各ノズル間、例えばノズルJ11とJ12との間は、位置精度10μm程度以下に製造できるが、印刷ヘッドPH(1)の端のノズルJ1Aと印刷ヘッドPH(2)の端のノズルJ21との間(距離d)を、位置精度10μm程度以下に配置することは実質不可能である。また、仮に一時的にはできたとしても、印刷ヘッド自体の温度変化等により誤差が生じる。そして、ノズル間の精度が悪い場合、例えばノズルJ1Aによって描かれるドットラインL1Aと、ノズルJ21によるドットラインL21との間が、他のドットライン間と異なって、空白のラインが見えたりして、画質として違和感が生じる。すなわち、ノズル間位置精度により、印刷品質が低下してしまう。
【0005】そこで、本発明は、マルチヘッドを採用して印刷の高速化を図りつつ、印刷品質を維持あるいは向上できる印刷装置を提供することを目的とする。」

(3)「【0007】この印刷装置では、それぞれY軸方向にMドットあるいはMドットライン分の印刷が可能な印刷ヘッドをN個用いて、いわゆるマルチヘッドを採用しているので、基本的には、印刷の高速化が図れる。この場合、N個のうちの少なくとも2個の印刷ヘッドは、それぞれが担当可能なMドットラインのうちのLドットライン分(LはL<Mとなる自然数)が互いにオーバラップするように配置されているので、この2個のみによる担当は、2×M-Lドットラインとなり、Lドットライン分だけ高速化は低減する(1回の走査で印刷可能なドットライン数が減少する)が、その反面、オーバラップして担当することにより、2個の印刷ヘッドの担当間に空白のラインが見えるなどの画質の低下は防止できる。すなわち、印刷品質の問題となるLドットライン分については、2個の印刷ヘッドによってオーバラップして担当できるので、実質上不可能な位置精度を要することなく、印刷品質を維持あるいは向上できる。したがって、マルチヘッドを採用して印刷の高速化を図りつつ、印刷品質を維持あるいは向上できる。」

(4)「【0040】次に、図1ないし図3に示すように、画像印刷装置1では、(図示右側に)リール状で供給(装着)されるテープTを印刷対象物とし、ペーパーフィード(PF)モータMPFにより駆動されるPFローラ11によって、印刷のための作業エリアとなる吸着ユニット12にテープTを繰り出し、ヘッドユニット6に搭載された(詳細は図外の)印刷ヘッド群(インクジェットヘッド群)PHによりテープTに所望の印刷を行い、印刷済み部分は随時(図示左側に)送り出される。吸着ユニット12は、印刷中には、図外のファンによってテープTを所定の印刷位置に保持するようになっている。テープTには、通常の紙テープのように、裏面に接着面がないタイプのものと、裏面に接着面が形成され剥離紙によって覆われたタイプのものがある。なお、図3に示すように、以下の説明においては、テープTの長手方向をX軸方向または主走査方向、それに直交する方向をY軸方向または副走査方向とする。
【0041】ヘッドユニット6は、主走査ユニット13上に搭載されたキャリッジCRと、そのキャリッジCRに着脱自在に装着された6色(黒(K)、黄(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC))用のインクカートリッジINKと、キャリッジCRの下部にテープTに対向可能なように搭載された印刷ヘッド群PHとを備えている。ここで、主走査ユニット13は、副走査キャリッジモータMCRYによって吸着ユニット12の上部で副走査方向(Y軸方向)に移動自在に駆動される。また、キャリッジCRは主走査キャリッジモータMCRXによって主走査方向(X軸方向)に移動自在に駆動されるので、これにより、ヘッドユニット6(の印刷ヘッド群PH)は、吸着ユニット12の上部(すなわち印刷のための作業エリアの上部)に移動自在となっている。」

(5)【0051】なお、この他、3ヘッド×6の18ヘッド構成や3ヘッド×3の9ヘッド構成のように、仕様変更等に応じて制御ブロックの数を変更しても良い。また、この場合、例えば1個のヘッド制御ブロックを1基板(ヘッド制御基板)によって構成することにより、基板の挿脱(着脱)のみで、構成変更(仕様変更)をできるようにしても良い。
【0052】ところで、画像印刷装置1では、印刷ヘッド群PHとして、図6(b)で上述のように、印刷ヘッド群PH(1)?PH(4)を備えている。さらに細かく言えば、印刷ヘッド群PH(1)?PH(4)は、6色の各色について、それぞれY軸方向に(M=)180ノズルから成るノズル列を有している。すなわち、単一色(例えばシアン(C))についてみても、それぞれY軸方向にMドット(Mは3以上の整数:上述の例ではM=180)あるいは(M=)180ドットライン分の印刷が可能な印刷ヘッド(ここでは単一色対応のノズル列を有するもので良い)をN個(図示では4個)用いて、いわゆるマルチヘッドを採用している。」

(6)「【0067】なお、これらの担当の仕方としては、Lが複数の場合、(L=)複数ドットライン分について、X軸方向に並ぶ各ドットを交互に担当し、例えば図10(a)に示すように、千鳥で担当して、Lドッライン分(図示ではL=4)をオーバラップして担当できる。また、同図(b)に示すように、いわば乱数発生に基づくディザ処理のパターンのように、X軸方向に並ぶ各ドットを、2個の印刷ヘッドにランダムな順序で担当させても良い。この場合、Lドッライン分(図示ではL=4)の各ドットについて不規則にオーバラップして担当でき、2個の印刷ヘッドの担当の繋ぎ目が規則的な模様となるのを防止でき、さらに印刷品質を向上できる。」

(7)「【0071】すなわち、上記の例の場合、画像データD12の部分がLドットライン分(オーバラップ分)となる。そこで、画像印刷装置1では、Lドットライン分のX軸方向に並ぶ各ドットに対する2個の印刷ヘッド(例えば印刷ヘッドPH(1)、PH(2):図7?図9参照)の担当の振り分けをパターン化した振り分けパターンを決定する。この決定(すなわち担当)の仕方は、前述のように規則的でも良いし、ランダムでも良い(図10参照)。また、所定の制御プログラムに従って例えば乱数発生等により使用直前に決定しても良いし、予め振り分けパターンとして用意しておいても良い。」

(8)図面より、以下のことが看取される。
ア 図6より、大きな「印刷ヘッド群PH」は、小さな4個の印刷ヘッド群PH(1)ないしPH(4)を備えていること。

イ 図3より、印刷対象物である「テープT」は、ペーパーフィード(P F)モータMPFにより駆動されるPFローラ11によって、テープTの 長手方向であるX軸方向に繰り出されること。

ウ 図6より、小さな4個の印刷ヘッド群PH(1)ないしPH(4)は、それぞれ、ノズルがY軸方向に沿って配置された、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄(Y)、黒(K)、ライトシアン(LC)及びライトマゼンタ(LM)の合計6色のノズル列(6列)を有すること(以下シアン(C)のノズル列を「第1のノズル列」、他の色のノズル列を「第2のノズル列」という。)。

エ 図7ないし9より、一方の印刷ヘッドPH(1)の「第1のノズル列」の図面下側(以下「Y軸方向下側」という。)に位置するノズルと他方の印刷ヘッドPH(2)の「第1のノズル列」の図面上側(以下「Y軸方向上側」という。)に位置するノズルが、お互いにオーバーラップするように配置されていること。

オ 上記エより、印刷ヘッドPH(1)の「第1のノズル列のY軸方向下側に位置するノズル」と印刷ヘッドPH(2)の「第1のノズル列のY軸方向上側に位置するノズル」とが一組みとなってオーバーラップしたLドットライン分を担当すること(以下、このオーバーラップした領域を「第1のノズル列の組からなるオーバーラップ領域」という。)。

カ 上記オの関係は、「第2のノズル列」においても、同様であること(以下、このオーバーラップした領域を「第2のノズル列の組からなるオーバーラップ領域」という。)。

(9)上記(8)より、上記(1)の請求項1における「印刷ヘッド」とは、図6に示された「6色のノズル列(6列)」を有する小さな4個の印刷ヘッド群PH(1)ないしPH(4)を意味することになる。

(10)上記記載から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「2次元直交座標の互いに直交する2軸をX軸およびY軸としたときに、
印刷対象物をX軸方向に繰り出し、
Y軸方向に同時にMドット分(Mは3以上の整数)が印刷可能で、かつ、印刷対象物に対するX軸方向への相対的走査によりX軸方向に延びるドットラインをY軸方向にM個並べて印刷可能な印刷ヘッド群PH(1)ないしPH(4)を備え(以下、それぞれを「印刷ヘッド」という。)、4個の印刷ヘッドを用いて印刷対象物に対する印刷を行う印刷装置であって、
各印刷ヘッドは、
ノズルがY軸方向に沿って配置された第1のノズル列と第2のノズル列とを有し、
かつ、一方の印刷ヘッドのノズル列におけるY軸方向下側に位置するノズルと他方の印刷ヘッドのノズル列におけるY軸方向上側に位置するノズルとが、X軸方向に並ぶ第1のノズルの組からなるオーバーラップ領域と第2のノズル列の組からなるオーバーラップ領域とを有するように、それぞれが印刷を担当可能なMドットラインのうちのLドットライン分(LはL<Mとなる自然数)が互いにオーバラップするように配置されたものであり、
2個の印刷ヘッドは、それぞれが印刷を担当するMドットラインを表現する印刷データに従って印刷し、
各印刷ヘッドに対応する印刷データには、各ドットをその印刷ヘッドが担当するか否かの情報が反映されており、
Lドットライン分のX軸方向に並ぶ各ドットに対する2個の印刷ヘッドの担当の振り分けをパターン化した振り分けパターンを決定する振り分けパターン決定手段と、
振り分けパターンに基づいて、2個の印刷ヘッドのうちの第1印刷ヘッドが担当するMドットラインを表現する第1印刷データを記憶する第1印刷データ記憶手段と、
振り分けパターンに基づいて、2個の印刷ヘッドのうちの第2印刷ヘッドが担当するMドットラインを表現する第2印刷データを記憶する第2印刷データ記憶手段と、を備え、
振り分けパターンの決定(すなわち担当)の仕方は、
ランダムでも良いし、
所定の制御プログラムに従って例えば乱数発生等により使用直前に決定しても良く、
印刷品質の問題となるLドットライン分について、2個の印刷ヘッドによってオーバラップして担当することにより、印刷品質を維持あるいは向上できる、印刷装置。」

2 当審拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第02/062581号(以下「引用文献2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(1)「背景技術
複数の記録ヘッドをノズルの配列方向と略同一方向に、ヘッド間に重複領域を有するように配置することにより、一度の走査で複数行の画像形成を同時に行える高速な画像形成装置が従来より知られている。さらにこのような構成の画像形成装置に対する改善方法も種々提案されている。例えば、特開平5-57965号公報は、ヘッドの重複領域における濃度むらをなくした画像形成装置を開示している。
しかしながら、上記した特開平5-57965号公報を含む従来技術では、高精度なヘッドの位置合わせが必要になってしまうという問題があった。
この発明の目的は、おおまかなヘッドの位置合わせのみでヘッドの重複領域での濃度むらをなくすことができる画像形成装置を提供することにある。」(第1頁第5ないし18行)

(2)「発明を実施するための最良の形態
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明が適用されるインクジェットプリンタの複数の記録ヘッドからなる記録ヘッドユニットの概略を示す図である。図1に示すように、基盤1には、複数の記録ヘッド2-1、2-2、…、2-nが、印字用インクを吐出するノズル(記録素子)(2-1では2-11,2-12,…2-1(m-1),2-1m)の配列方向と略同一方向に、ヘッド間に所定の重複領域3A,3Bを有するように配置されて1つの記録ヘッドユニットを構成している。4は記録幅である。このような構成の記録ヘッドユニットによれば、記録媒体に少なくとも1回の走査で1ページの記録を行うようになっている。
図2は、本実施形態で用いられるテストチャートの印字について説明するための図である。本実施形態では、各記録ヘッド2-1、2-2、…、2-nにより4回の印字を行ってそれぞれテストチャート5-1,5-2,5-nを作成する。各テストチャート5-1,5-2,5-nを読み取って解析を行うことにより、各記録ヘッド2-1、2-2、…、2-nの配置角度と重複領域3A、3Bの幅を検出することができる。検出された配置角度と重複領域幅とは補正データとして記憶しておき、各記録ヘッド2-1、2-2、…、2-nを用いた実際の印刷時において、配置角度データに応じて複数の記録ヘッド2-1、2-2、…、2-nの各ノズルの吐出タイミングを補正するとともに、重複領域幅に応じて記録ヘッド2-1、2-2、…、2-nに入力される画像データを分配する。
図3は本実施形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。実際の印字処理に先立って、テストチャートデータ14に基いて記録ヘッド2-1、2-2、…、2-nを駆動して図2で説明したようなテストチャートを作成する。作成されたテストチャートはスキャナー等のテストチャート読み取り部19により読み取られた後、配置角度・重複領域検出部20において記録ヘッド2-1、2-2、…、2-nの配置角度と重複領域幅が検出される。検出された配置角度と重複領域幅とは補正データとして補正データ記憶部17に記憶される。」(第3頁第12行ないし第4頁第23行)

(3)「図5A?5Cは画像データ分配部15における画像分配処理について説明するための図である。一部のノズルが重複して配置された記録ヘッド2-1,2-2によりそのまま印字を行った場合には図5Aに示すように、重複したノズルからのインクの吐出により重複領域3Aにおいて重複した印字がなされてしまう。そこでこのような重複印字を避けるために、重複領域3Aでは図5Bに示すように記録ヘッド2-1、2-2を交互に駆動して補完印字がなされるように画像データを分配する。しかし、画像データが自然画である場合には重複領域3Aがきれいに印字されるが、線画であると判断された場合には補完印字を行うと印字の形態が一直線とはならない(千鳥状)ので線画としてきれいに印字されない(図5B)。
そこで重複領域3Aにおいて画像データが線画である場合には記録ヘッド2-1、2-2の一方のノズルのみが駆動されるように画像データを分配することにより、補完印字にならないようにする。図5Cは重複領域3Aでは記録ヘッド2-2のみを駆動して印字した例を示している。このようにすれば重複領域3Aにおいてきれいな線画が印刷できる。
図6は本実施形態の画像形成装置をカラー印刷が可能な高速記録装置に適用した例を示す図である。100-1,100-2は紙送り回転ローラである。101はヘッド固定装置であり、シアン(C)用の記録ヘッド102-1,102-2,102-3、マゼンタ(M)用の記録ヘッド103-1,103-2,103-3、イエロー(Y)用の記録ヘッド、ブラック(K)用の記録ヘッド104-1,104-2,104-3がそれぞれヘッド間に重複領域を有するように配置されている。
上記した実施形態によれば、予め印字したテストパターンから複数の記録ヘッドそれぞれの配置角度と重複領域の幅を検出し、実際の印刷においては検出された重複領域の幅に基づいて入力画像データを分配するとともに、検出された配置角度に基づいて各ノズルの吐出タイミングを補正するようにしたので、おおまかなヘッドの位置合わせのみでヘッドの重複領域での濃度むらをなくすことができる。」(第6頁第15行ないし第7頁第24行)

(4)図6より、記録ヘッドが傾斜した状態で取り付けられた画像形成装置が、看取される。

(5)上記記載から、引用文献2には次の技術事項が記載されていると認められる。

ア 複数の記録ヘッドをノズルの配列方向と略同一方向に、ヘッド間に重複領域を有するように配置することにより、一度の走査で複数行の画像形成を同時に行える高速な画像形成装置が従来より知られていること。

イ 上記アのような画像形成装置においては、高精度なヘッドの位置合わせが必要であること。

ウ おおまかな記録ヘッドの位置合わせのみの場合、記録ヘッドが傾斜した状態で取り付けられること。

エ おおまかな記録ヘッドの位置合わせを行った場合でも、各記録ヘッドにより印字したテストパターンから複数の記録ヘッドそれぞれの配置角度と重複領域幅を検出し、実際の印刷においては検出された重複領域幅に基づいて入力画像データを分配するとともに、検出された配置角度に基づいて各ノズルの吐出タイミングを補正することで、各記録ヘッドの重複領域での濃度むらをなくすことができること。

第4 対比・判断
1 本願発明と引用発明1との対比
(1)引用発明1の「印刷対象物」は本願発明の「媒体」に相当し、同様に、
「繰り出し」は「搬送」に、
「『印刷対象物』を繰り出す『X軸方向』」は「媒体の搬送方向」に、
「『相対的走査』する『X軸方向』」は「移動方向」に、
「印刷ヘッド」は「印刷ヘッド」に、
「ドット」は「ドット」に、
「ノズル」は「吐出部」に、
「ノズル列」は「吐出部列」に、
「オーバーラップ領域」は「吐出部並設部分」に、
「印刷装置」は「印刷装置」に、それぞれ、相当する。

(2)また、上記(1)より、引用発明1の「第1のノズルの組からなるオーバーラップ領域」は本願発明の「第1の吐出部列の組からなる吐出部並設部分」に相当し、同様に、
「第2のノズル列の組からなるオーバーラップ領域」は「第2の吐出部列の組からなる吐出部並設部分」に、相当する。

(3)引用発明1の「2次元直交座標の互いに直交する2軸をX軸およびY軸としたときに、
印刷対象物をX軸方向に繰り出し、
Y軸方向に同時にMドット分(Mは3以上の整数)が印刷可能で、かつ、印刷対象物に対するX軸方向への相対的走査によりX軸方向に延びるドットラインをY軸方向にM個並べて印刷可能な印刷ヘッド群PH(1)ないしPH(4)を備え(以下、それぞれを「印刷ヘッド」という。)、4個の印刷ヘッドを用いて印刷対象物に対する印刷を行う印刷装置であって、
各印刷ヘッドは、
ノズルがY軸方向に沿って配置された第1のノズル列と第2のノズル列とを有し」と、
本願発明の「媒体の搬送方向と交差する移動方向に移動する印刷ヘッドを少なくとも2つ備え、各前記印刷ヘッドは吐出部が搬送方向に沿って配置された第1の吐出部列と第2の吐出部列とを有し、前記第1の吐出部列と前記第2の吐出部列は前記吐出部が前記媒体にインクを吐出することによりドットを形成可能な吐出部列であり」とは、
「媒体に対して移動する印刷ヘッドを少なくとも2つ備え、各前記印刷ヘッドは吐出部が印刷ヘッドの移動方向と交差する方向に沿って配置された第1の吐出部列と第2の吐出部列とを有し、前記第1の吐出部列と前記第2の吐出部列は前記吐出部が前記媒体にインクを吐出することによりドットを形成可能な吐出部列であり」という点で共通する。

(5)また、引用発明1の「一方の印刷ヘッドのノズル列におけるY軸方向下側に位置するノズルと他方の印刷ヘッドのノズル列におけるY軸方向上側に位置するノズルとが、X軸方向に並ぶ第1のノズルの組からなるオーバーラップ領域と第2のノズル列の組からなるオーバーラップ領域とを有するように、それぞれが印刷を担当可能なMドットラインのうちのLドットライン分(LはL<Mとなる自然数)が互いにオーバラップするように配置されたものであり」と
本願発明の「互いに異なる前記印刷ヘッドに各々設けられた前記吐出部列のうち、一方の印刷ヘッドに設けられた吐出部列の前記搬送方向の下流側に位置する下流側吐出部と、他方の印刷ヘッドに設けられた吐出部列の上流側に位置する上流側吐出部とが、前記移動方向に並ぶ第1の吐出部列の組からなる吐出部並設部分と第2の吐出部列の組からなる吐出部並設部分とを有するように、各前記印刷ヘッドが配置されており」とは、
「互いに異なる前記印刷ヘッドに各々設けられた前記吐出部列のうち、一方の印刷ヘッドに設けられた吐出部列の印刷ヘッドの移動方向と交差する方向の一方側に位置する吐出部と、他方の印刷ヘッドに設けられた吐出部列の他方側に位置する吐出部とが、前記移動方向に並ぶ第1の吐出部列の組からなる吐出部並設部分と第2の吐出部列の組からなる吐出部並設部分とを有するように、各前記印刷ヘッドが配置されており」という点で共通する。

(6)引用発明1では「振り分けパターンの決定(すなわち担当)の仕方」は、ランダムでも良いし、所定の制御プログラムに従って例えば乱数発生等により使用直前に決定しても良いことから、オーバーラップ領域におけるノズル列のうち実際にインク滴を吐出するノズルが種々に変更されることになるので、「振り分けパターン決定手段」により、少なくとも2つの異なる吐出方法によりインク滴が吐出されるようになることは当業者にとって明らかである。
してみれば、本願発明と引用発明1とは「印刷ヘッドが前記移動方向に移動する際に、吐出部並設部分のうち実際にインク滴を吐出する吐出部を適宜変更する複数の吐出方法にて、インク滴を吐出可能な印刷装置」で一致する。

(7)してみると、本願発明と引用発明1とは以下の点で一致する。
<一致点>
「媒体に対して移動する印刷ヘッドを少なくとも2つ備え、各前記印刷ヘッドは吐出部が印刷ヘッドの移動方向と交差する方向に沿って配置された第1の吐出部列と第2の吐出部列とを有し、前記第1の吐出部列と前記第2の吐出部列は前記吐出部が前記媒体にインクを吐出することによりドットを形成可能な吐出部列であり
互いに異なる前記印刷ヘッドに各々設けられた前記吐出部列のうち、一方の印刷ヘッドに設けられた吐出部列の印刷ヘッドの移動方向と交差する方向の一方側に位置する吐出部と、他方の印刷ヘッドに設けられた吐出部列の他方側に位置する吐出部とが、前記移動方向に並ぶ第1の吐出部列の組からなる吐出部並設部分と第2の吐出部列の組からなる吐出部並設部分とを有するように、各前記印刷ヘッドが配置されており、
前記印刷ヘッドが前記移動方向に移動する際に、吐出部並設部分のうち実際にインク滴を吐出する吐出部を適宜変更する複数の吐出方法にて、インク滴を吐出可能な印刷装置。」

(8)一方で、本願発明と引用発明1とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
印刷ヘッドが移動する移動方向に関し
本願発明が「媒体の搬送方向と交差する方向」であるのに対して、引用発明1では「媒体(印刷対象物)の搬送(繰り出し)方向」である点。

<相違点2>
吐出部が配置される方向に関し
本願発明では「媒体の搬送方向」であるのに対して、引用発明1では、そのような方向に配置されていない点。

<相違点3>
一方側に位置する吐出部と他方側に位置する吐出部に関し
本願発明では「吐出部列の前記搬送方向の下流側に位置する下流側吐出部と、他方の印刷ヘッドに設けられた吐出部列の上流側に位置する上流側吐出部」と特定されるものであるのに対して、引用発明1では、そのような位置関係のものではない点。

<相違点4>
複数の吐出方法に関し
本願発明が「前記吐出部並設部分におけるインク滴の吐出方法を、前記第1の吐出部列の組と前記第2の吐出部列の組とで異なる吐出方法に設定可能であり、
前記吐出部並設部分におけるインク滴の吐出方法は、該吐出部並設部分の並設された吐出部の数に基づいて設定され、前記第1の吐出部列の組における吐出部並設部分の吐出部の数と、前記第2の吐出部列の組における吐出部並設部分の吐出部の数とは、異なる数に設定して記憶可能である」と特定されるのに対して、引用発明1ではそのような設定ができるか否か明確でない点。

2 判断
(1)上記<相違点1>ないし<相違点3>について検討する。
ア 「吐出部(ノズル)を媒体の搬送方向に沿って配置し、媒体の搬送方向と交差する移動方向に移動する印刷ヘッド」は、本願出願前に周知である(例えば、特開2003-341037号公報の図1ないし4、特開2003-320653号公報の図3、特開2002-19097号公報の図1、
特開2001-232772号公報の図7、特開2000-141714号公報の図7、国際公開第03/089246号の図6及び7を参照。以下「周知技術」という。)。

イ してみれば、引用発明1において、媒体(印刷対象物)を吐出部(ノズル)の配置された方向に沿って搬送するとともに、媒体の搬送方向と交差する方向に印刷ヘッドを移動させることは、当業者が上記周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

ウ 上記イのようにした引用発明1の「印刷ヘッドが移動する移動方向」は媒体の搬送方向と交差する方向となり、
また「吐出部が配置される方向」は媒体の搬送方向となり、
さらに「一方側に位置する吐出部と他方側に位置する吐出部」は吐出部列の搬送方向の下流側に位置する下流側吐出部と、他方の印刷ヘッドに設けられた吐出部列の上流側に位置する上流側吐出部となる。

エ 以上のことから、引用発明1において、上記<相違点1>ないし<相違点3>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

(2)上記<相違点4>について検討する。
ア 引用文献2には、以下の技術事項が記載されている。
(ア)複数の記録ヘッドをノズルの配列方向と略同一方向に、ヘッド間に重複領域を有するように配置することにより、一度の走査で複数行の画像形成を同時に行える高速な画像形成装置が従来より知られていること。

(イ)上記(ア)のような画像形成装置においては、高精度なヘッドの位置合わせが必要であること。

(ウ)おおまかな記録ヘッドの位置合わせのみの場合、記録ヘッドが傾斜した状態で取り付けられること。

(エ)おおまかな記録ヘッドの位置合わせを行った場合でも、各記録ヘッドにより印字したテストパターンから複数の記録ヘッドそれぞれの配置角度と重複領域幅を検出し、実際の印刷においては検出された重複領域幅に基づいて入力画像データを分配するとともに、検出された配置角度に基づいて各ノズルの吐出タイミングを補正することで、各記録ヘッドの重複領域での濃度むらをなくすことができること。

イ 引用発明1と上記アの技術事項とは、印刷ヘッド間に重複領域を有するように配置された印刷装置における印刷品質を維持あるいは向上させる技術に関するものであるという点で共通している。
してみれば、引用発明1においても、おおまかな印刷ヘッドの位置合わせのみを行うことは、充分に動機付けがあるといえる。

ウ ところで、引用発明1の「振り分けパターン決定手段」が「Lドットライン分のX軸方向に並ぶ各ドットに対する2個の印刷ヘッドの担当の振り分けをパターン化した振り分けパターンを決定する」ものであり、しかも「第1印刷データ記憶手段」と「第2印刷データ記憶手段」が振り分けパターンに基づいて振り分けられたMドットラインを表現するそれぞれの印刷データを記憶するものであるから、
「Lドットライン分」の「L」の数を幾つにするか、少なくとも使用直前に予め設定して記憶させておかなければならないことは、当業者にとって明らかである。
そして、おおまかな印刷ヘッドの位置合わせのみを行って印刷ヘッドが傾斜した状態で取り付けられた場合、
各テストパターンを印字する際に予め設定して記憶させた「L」の数と、実際の各吐出部並設部分(オーバーラップ領域)に対応する吐出部(ノズル)の数との間に齟齬の生じる可能性のあることは当業者にとって明らかであり、各テストパターンを印字する際に予め設定して記憶させた「L」の数を、印字した各テストパターンの重複領域幅に基づいて印刷データが分配されることで濃度むらの生じることのない数に再設定することは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

エ 上記ウより、おおまかな印刷ヘッドの位置合わせのみにより印刷ヘッドが傾斜した状態で取り付けられた引用発明1においては、
各吐出部並設部分(オーバーラップ領域)の吐出部(ノズル)の数である「L」の数は、印字した各テストパターンの重複領域幅に基づいて印刷データが分配されることで濃度むらの生じることのない数に設定して記憶されることになり、しかも「振り分けパターン決定手段」により、少なくとも2つの異なる吐出方法によりインク滴が吐出されることから、
第1の吐出部列の組からなる吐出部並設部分(第1のノズルの組からなるオーバーラップ領域)におけるインク滴の吐出方法と、
第2の吐出部列の組からなる吐出部並設部分(第2のノズル列の組からなるオーバーラップ領域)におけるインク滴の吐出方法とは、結果として、同じ吐出方法にはならない。

オ 上記イないしエからして、引用発明1の「複数の吐出方法」は、
吐出部並設部分(オーバーラップ領域)におけるインク滴の吐出方法を、第1の吐出部列の組と第2の吐出部列の組とで異なる吐出方法に設定可能であり、
吐出部並設部分(オーバーラップ領域)におけるインク滴の吐出方法は、該吐出部並設部分の並設された吐出部(ノズル)の数に基づいて設定され、第1の吐出部列の組における吐出部並設部分(オーバーラップ領域)の吐出部(ノズル)の数と、第2の吐出部列の組における吐出部並設部分(オーバーラップ領域)の吐出部(ノズル)の数とは、異なる数に設定して記憶可能であることになる。

カ 次に、上記相違点2における「異なる数に設定して記憶可能」の技術的意義について検討する。

(ア)本願明細書には、インク滴の吐出方法の設定に関連して、以下の事項が記載されている。
「【0092】
===各ノズル並設部分におけるインク滴の吐出方法の設定===
ノズル並設部分におけるインク滴の吐出方法の例として、5つのインク滴の吐出方法について説明したが、ノズル並設部分に形成されているすべてのノズルが理想的に形成及び配置され、理想的にインク滴が吐出された場合には、上記第5吐出方法にて印刷するとより良好な画像を印刷することが可能である。しかしながら、個々のノズルによるインク滴の吐出特性や精度誤差等により、各々の印刷ヘッドから理想的にインク滴が吐出されず、良好な画像を印刷できない場合がある。また、例えば、印刷ヘッドが傾いた状態にて取り付けられると、前述したように隣接する2つの印刷ヘッド間において、各色のインクを吐出するノズル列毎にノズル並設部分が有するノズル数が異なる場合がある。この場合には、ノズル並設部分の一方のノズル列からは、本来インクを吐出すべきノズルではないノズルから吐出されたインクにてラスタが形成されるため、色ズレ等が生じ、良好な画像を印刷することができない畏れがある。
【0093】
このため、より良好な画像を印刷するために、各インク色の単色画像を形成する際に、各ノズル列のノズル並設部分においていずれの吐出方法にて印刷すべきかは、実際に印刷した画像を用いて判定する。すなわち、各ノズル並設部分にて実際に画像を印刷し、各々のノズル並設部分にて良好な画像が印刷された吐出方法を選択し、その吐出方法を当該ノズル並設部分にて印刷するインク滴の吐出方法としてノズル列毎に設定しておく。
・・・・(略)・・・
【0099】
本実施形態のプリンタ20によれば、搬送方向に隣接する印刷ヘッド28に設けられたノズル列でなるノズル並設部分ごとにインク滴の吐出方法をノズル列毎に設定可能なので、ノズル並設部分が有する上流側ノズル及び下流側ノズルの状態に応じてインク滴の吐出方法を設定することが可能である。すなわち、異なる印刷ヘッドにて印刷する各々の領域の境界部分を、一方の印刷ヘッドが有する上流側ノズルと他方の印刷ヘッドが有する下流側ノズルとのうち、インク滴を吐出させるノズルを適宜変更して印刷することが可能である。このため、異なる2つの印刷ヘッドにて印刷される印刷領域の境界部分に、上流側ノズル及び下流側ノズルのインク滴の吐出特性やインク滴の吐出精度誤差等による白スジ、黒スジや、ドットによるざらつきが発生しにくいので、画質の低下を抑えることが可能である。
【0100】
また、ノズル並設部分の並設されたノズルの数に応じたインク滴の吐出方法を設定して、良好な画像を印刷することが可能である。特に、ノズル並設部分は、異なる印刷ヘッド28に設けられているため、各々の印刷ヘッド28の取り付け等に、誤差により並設されたノズルの数がノズル列毎に相違しても、ノズル並設部分の並設されたノズルの数に応じて設定されたインク滴の吐出方法にて良好な画像を印刷することが可能である。
【0101】
さらに、各ノズル並設部分によりインク滴の各吐出方法にて実際に印刷したパターンに基づいて、各ノズル並設部分のインク滴の吐出方法が設定されるので、印刷したパターンに基づいて最も適したインク滴の吐出方法を各ノズル並設部分の吐出方法として設定することが可能である。このため、より良好な画像を印刷することが可能である。」

(イ)上記記載からして、本願発明のインク滴の吐出方法の設定は、吐出部の数の大小に基づいて一定の規則に従って特定の吐出方法に設定するというものではなく、実際に印刷したパターンの中から最も適していると人が判断したものに設定するというものであり、その設定を行った結果、吐出部並設部分の吐出部の数が異なる数として記憶されただけで、吐出部の数の大小と吐出方法との間に一定の規則性があるわけではない。

(ウ)したがって、上記相違点2における「異なる数に設定して記憶可能」には、格別の技術的意義は認められない。

キ 以上のことから、 引用発明1において、上記<相違点4>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易になし得たことである。

(3)また、本願発明の奏する効果も、当業者が引用発明1、引用文献2に記載の技術事項及び周知技術から予測し得る範囲内のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-29 
結審通知日 2011-08-30 
審決日 2011-09-13 
出願番号 特願2003-418669(P2003-418669)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島▲崎▼ 純一  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 桐畑 幸▲廣▼
星野 浩一
発明の名称 印刷装置、コンピュータプログラム、印刷システム、及び、インク滴の吐出方法  
代理人 一色国際特許業務法人  

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