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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1246885
審判番号 不服2010-27100  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-30 
確定日 2011-11-10 
事件の表示 特願2000- 12322「コンピュータ断層像撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月 3日出願公開、特開2000-271113〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年1月20日(優先権主張平成11年1月20日)を出願日とする出願であって、平成22年4月22日付けで最後の拒絶理由が通知されたが応答がなく、同年8月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けにて手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
さらに、平成23年4月13日付けで審尋がなされ、回答書が同年6月14日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 X線源に対して被検体を挟んで前記被検体への投影方向を周期的に変化させながら前記被検体の投影データを順次収集する投影データ収集手段と、
この投影データ収集手段により収集された投影データに基づいて、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段と、
前記部分画像データのうちの少なくとも複数に対して互いに異なる係数を乗算して不連続な重み付けを行う重み付け手段と、
前記重み付け手段で重み付けされた部分画像データを含む複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する断層像生成手段と、
前記重み付け手段による前記部分画像データに対する重み付けの係数を変更する重み付け変更手段と
を有することを特徴とするコンピュータ断層像撮影装置。」
から
「【請求項1】 X線源に対して被検体を挟んで前記被検体への投影方向を周期的に変化させながら前記被検体の投影データを順次収集する投影データ収集手段と、
この投影データ収集手段により収集されたファンビーム投影データをバックプロジェクションすることにより、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段と、
前記部分画像データのうちの少なくとも複数に対して互いに異なる係数を乗算して不連続な重み付けを行う重み付け手段と、
前記重み付け手段で重み付けされた部分画像データを含む複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する断層像生成手段と、
前記重み付け手段による前記部分画像データに対する重み付けの係数を変更する重み付け変更手段と
を有することを特徴とするコンピュータ断層像撮影装置。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「収集された投影データに基づいて、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段」を「収集されたファンビーム投影データをバックプロジェクションすることにより、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段」として、収集された投影データの種類を限定し、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する過程を限定した補正を含むものである。
したがって、本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。)
(1)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平8-24253号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「X線CT装置」について、図面とともに次の事項が記載されている。

(1-ア) 「【特許請求の範囲】【請求項1】 少なくともX線焦点を連続回転させて各角度方向のプロジェクションデータを360゜以上にわたって連続的に収集する手段と、複数プレーンのバックプロジェクション用のメモリ手段と、1枚の画像を再構成するのに必要なプロジェクションデータの角度範囲を複数に分割し、その分割された角度範囲のプロジェクションデータを上記複数プレーンのメモリ手段の各々に選択的にバックプロジェクションする手段と、各プレーンのメモリ手段の同一ピクセル同士を加算する加算手段とを備えることを特徴とするX線CT装置。」

(1-イ) 「【0009】
【実施例】以下、この発明の好ましい一実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。図1はこの発明をローテイション/ローテイション型X線CT装置に適用した一実施例を示すものである。この図1において、X線管1とX線検出器2とが対向配置されており、その間に被検体21が配置できるようになっていて、X線管1とX線検出器2とが一体となって図示しない回転機構により被検体21の周囲に回転させられるようになっている。
【0010】被検体21を透過したX線はX線検出器2に入射し、透過X線強度を表わす信号が得られる。これにより被検体21におけるX線吸収を示すデータが得られる。X線検出器2は扇型に形成されていて、多数の検出エレメントが円弧方向に並べられている。そこで、X線検出器2から得られるデータは、X線管1から扇形に放出されたX線によるX線吸収を示すプロファイルデータということになる。
【0011】このプロファイルデータは、プロジェクションデータ作成装置3に送られてバックプロジェクションのためのプロジェクションデータに変換される。X線管1とX線検出器2とが基準位置(0゜の角度)から回転していくとき、各角度ごとのプロジェクションデータが順次得られるので、これがバックプロジェクタ4によって、セレクタ5により指定されたメモリ6、7、8、9のいずれかにバックプロジェクションされる。4つのメモリ6、7、8、9は、バックプロジェクション用のメモリであって、それぞれ1プレーンずつとなっている。つまり、4つのメモリ6、7、8、9の各々は、再構成画像が256×256のマトリクスで表わされるピクセルを有するものであれば、そのピクセルに対応した256×256のアドレスを有している。
【0012】ここでは、X線管1とX線検出器2とが連続回転するとき、図示のようにその0゜?90゜の角度範囲を範囲A、90゜?180゜の角度範囲を範囲B、180゜?270゜の角度範囲を範囲C、270゜?360゜の角度範囲を範囲Dとする。連続回転に伴いプロジェクションデータが、図2に示すように、1回転目の範囲A、B、C、D、2回転目の範囲A、B、C、D、…、と順次得られる。セレクタ5は、範囲Aのプロジェクションデータが得られているときは、メモリ6を指定して、このメモリ6に範囲Aのプロジェクションデータのバックプロジェクションがなされるようにし、範囲B、C、Dではメモリ7、8、9をそれぞれ指定し、それらに範囲B、C、Dの各々のプロジェクションデータのバックプロジェクションがなされるようにしている。
【0013】こうして1回転目が終了したときは、メモリ6、7、8、9の各々に90゜ずつのプロジェクションデータがバックプロジェクションされ、全体では360゜のプロジェクションデータのバックプロジェクションがなされた状態となるので、これら6、7、8、9の各々の対応するピクセルを加算器10で加算すれば、0゜?360゜の360゜分のプロジェクションデータによる第1の画像#1が得られたことになる(図2参照)。これは、バックプロジェクションという処理が、投影線上のピクセルにプロジェクションデータを加算していくものであることによる。
【0014】つぎに、1回転目が終了し、それに続く1/4回転目に入ると、メモリ6の初期化が行なわれた後、このメモリ6に範囲Aでのプロジェクションデータがバックプロジェクションされる。最初から数えて1(1/4)回転が終了した時点で、加算器10によりメモリ6、7、8、9の同一ピクセル同士を加算すれば、図2に示すように、90゜?450゜の360゜分のプロジェクションデータによる第2の画像#2が得られたことになる。」

上記(1-ア)?(1-イ)の記載と図1?3を参照すると、上記刊行物1には、 次の発明が記載されていると認められる。
「X線管1とX線検出器2とが対向配置されており、その間に被検体21が配置できるようになっていて、X線管1とX線検出器2とが一体となって、回転機構により被検体21の周囲に回転させられるようになっていてX線管1から扇形に放出されたX線によるX線吸収を示すプロファイルデータである各角度方向のプロジェクションデータを360゜以上にわたって連続的に収集する手段と、複数プレーンのバックプロジェクション用のメモリ手段と、1枚の画像を再構成するのに必要なプロジェクションデータの角度範囲を複数に分割し、その分割された角度範囲のプロジェクションデータを上記複数プレーンのメモリ手段の各々に選択的にバックプロジェクションする手段と、各プレーンのメモリ手段の同一ピクセル同士を加算する加算手段とを備えることを特徴とするX線CT装置。」(以下、「引用発明」という。)

(2)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-9589号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「X線CT装置及び画像再構成方法」について図面とともに次の事項が記載されている。
(2-ア) 「【特許請求の範囲】・・・
【請求項8】 所定範囲の投影角の再構成画像を所定角度づつ順次ずらして連続的な再構成画像を得るX線CT装置であって、該X線CT装置は、
ファンビーム計測データを平行ビームに変換して得られた平行ビーム投影データのうち、所定の投影角に相当するm個の分割再構成画像を得る手段と、
前記m個の分割再構成画像に重みを付与する重み付け手段と、
前記重み付けされたm個の分割再構成画像を加算して1枚の画像を再構成する合成手段と、
前記再構成された画像を表示する手段とをX線CT装置であって、前記合成手段は前記投影角をα゜づつずらして得られた前記分割再構成画像から連続的な再構成画像を得る手段を含むX線CT装置。
【請求項9】 請求項8のX線CT装置に於いて、前記重み付け手段は、所定の分割再構成画像に対しては重み係数を変えて重みを付与する手段を含むX線CT装置。」

(2-イ) 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ほぼ同一断面を連続的に計測する際に、アーチファクトの軽減された断層像を高速で得るのに好適なX線CT装置及び画像再構成方法に関する。」

(2-ウ) 「【0013】本発明は、連続的にまたは継続的に撮影を実施した場合において、高速に連続的な画像を再構成することを可能とすると共にアーチファクトの低減を可能にするX線CT装置と画像再構成方法を提供することを目的とする。」

(2-エ) 「【0027】(4)、図3(b)、図9(b)は端部の不連続性の軽減を一層はかった例を示す。図9(b)は図3(b)の分割再構成画像に対する重みの変化を示す。この例では、メモリ10は8個(#1?#8)、及び重み係数W1?W8の乗算器13も8個用意する。(a)、先ず第1再構成画像r1を得る際には、W1=1/4、W7=3/4、W2=1/2、W8=1/2、W3?W6は1に設定する。この場合はg1とg7、g2とg8がそれぞれ対向関係にある。そして0°?30°の画像g1を#1、30°?60°の画像g2を#2、…、180°?210°の画像g7を#7へ、210°?240°の画像g8を#8へ、格納する。そして、乗算器13を介して読み出し加算することで画像r1を得る。
(b)、第2再構成画像r2を得る際には、W1=W3=1/2、W2=1/4、W8=3/4、W4?W7は1に設定する。この場合は、g2とg8、g3とg9がそれぞれ対向関係にある。そして、240°?270°の画像g9を#1へ格納し、加算し、画像r2を得る。以下同様に、r3、r4、…を得る。互いに対向関係にある分割画像データに対する重みの例としては、和が1となる条件を満たしながら、様々な配分が考えられるがリアルタイム性が重視される場合は最新のデータに対しての重みをより大きい値にする方が望ましい。」

(3)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平9-47449号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「X線CT装置」について図面とともに次の事項が記載されている。
(3-ア) 「【0005】また、シングルスキャンのX線CT装置では、1回転している間に被検体(胃や心臓)が動いてしまうのでの画像を再構成したときにオーバーラップ部分が完全には重ならず、筋雲状のアーチファクトと呼ばれるノイズが発生することがある。また、図10に示すように、投影データの内、開始部分と終了部分を重複させ、その部分を重み付けしスムージングさせることによって、アーチファクトが軽減することが知られている。」

3 対比・判断
ア 補正発明と引用発明とを対比すると、その構造・機能からみて、引用発明の「X線管1」は、補正発明の「X線源」に相当することは明らかである。

イ 引用発明の「X線管1とX線検出器2とが対向配置されており、その間に被検体21が配置できるようになっていて、X線管1とX線検出器2とが一体となって、回転機構により被検体21の周囲に回転させられるようになっていてX線管1から扇形に放出されたX線によるX線吸収を示すプロファイルデータである各角度方向のプロジェクションデータを360゜以上にわたって連続的に収集する手段」は、補正発明の「X線源に対して被検体を挟んで前記被検体への投影方向を周期的に変化させながら前記被検体の投影データを順次収集する投影データ収集手段」に相当する。

ウ 引用発明の「X線CT装置」は、「X線管1とX線検出器2とが一体となって、回転機構により被検体21の周囲に回転させられるようになってい」るのであるから、補正発明の「X線源に対して被検体を挟んで前記被検体への投影方向を周期的に変化させながら前記被検体の投影データを順次収集する投影データ収集手段」を有する「コンピュータ断層像撮影装置」に相当する。

エ 引用発明の「各角度方向のプロジェクションデータ」は、「X線管1から扇形に放出されたX線によるX線吸収を示すプロファイルデータである」から、補正発明の「ファンビーム投影データ」に相当し、引用発明の「1枚の画像を再構成するのに必要なプロジェクションデータの角度範囲を複数に分割し、その分割された角度範囲」は、補正発明の「予め設定された所定範囲」に相当し、引用発明の「各プレーンのメモリ手段」に記憶されるデータが補正発明の「部分画像データ」に相当するから、引用発明の「その分割された角度範囲のプロジェクションデータを上記複数プレーンのメモリ手段の各々に選択的にバックプロジェクションする手段」は、補正発明の「ファンビーム投影データをバックプロジェクションすることにより、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段」に相当する。

オ 引用発明の「加算手段」は、「各プレーンのメモリ手段の同一ピクセル同士を加算する」のであるから、補正発明の「前記重み付け手段で重み付けされた部分画像データを含む複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する断層像生成手段」とは、「複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する断層像生成手段」である点で共通する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「X線源に対して被検体を挟んで前記被検体への投影方向を周期的に変化させながら前記被検体の投影データを順次収集する投影データ収集手段と、
この投影データ収集手段により収集されたファンビーム投影データをバックプロジェクションすることにより、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段と、
複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する断層像生成手段と、
を有するコンピュータ断層像撮影装置。」
である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
断層像を生成するために、補正発明では、前記部分画像データのうちの少なくとも複数に対して互いに異なる係数を乗算して不連続な重み付けを行う重み付け手段と
前記重み付け手段による前記部分画像データに対する重み付けの係数を変更する重み付け変更手段とを有し
前記重み付け手段で重み付けされた部分画像データを含む複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成するのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

(1)相違点1についての検討
刊行物2の記載事項である上記(2-ウ)には「本発明は、連続的にまたは継続的に撮影を実施した場合において、高速に連続的な画像を再構成することを可能とすると共にアーチファクトの低減を可能にするX線CT装置と画像再構成方法を提供することを目的とする。」と記載されており、同じく上記(2-エ)には「図3(b)、図9(b)は端部の不連続性の軽減を一層はかった例を示す。図9(b)は図3(b)の分割再構成画像に対する重みの変化を示す。・・・重み係数W1?W8の乗算器13も8個用意する。(a)、先ず第1再構成画像r1を得る際には、W1=1/4、W7=3/4、W2=1/2、W8=1/2、W3?W6は1に設定する。・・・b)、第2再構成画像r2を得る際には、W1=W3=1/2、W2=1/4、W8=3/4、W4?W7は1に設定する。」と「部分画像データのうちの少なくとも複数に対して互いに異なる係数を乗算して不連続な重み付けを行う」点が記載されており、同じく上記(2-ア)には、「【請求項8】 ・・・m個の分割再構成画像に重みを付与する重み付け手段と、前記重み付けされたm個の分割再構成画像を加算して1枚の画像を再構成する合成手段と、・・・を含むX線CT装置。
【請求項9】 請求項8のX線CT装置に於いて、前記重み付け手段は、所定の分割再構成画像に対しては重み係数を変えて重みを付与する手段を含むX線CT装置。」と「重み付け手段による前記部分画像データに対する重み付けの係数を変更する重み付け変更手段」と「重み付け手段で重み付けされた部分画像データを含む複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する」が記載されており、結局「部分画像データのうちの少なくとも複数に対して互いに異なる係数を乗算して不連続な重み付けを行う重み付け手段と
前記重み付け手段による前記部分画像データに対する重み付けの係数を変更する重み付け変更手段とを有し
前記重み付け手段で重み付けされた部分画像データを含む複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する」構成は、刊行物2に記載されている。
そして引用発明と刊行物2に記載の事項は部分画像データを用いて高速に連続的に画像を再構成するという同じ目的のものである。
また、重み付けによりアーチファクトを軽減させることは、例えば、上記(3-ア)に「投影データの内、開始部分と終了部分を重複させ、その部分を重み付けしスムージングさせることによって、アーチファクトが軽減することが知られている。」と記載されているように、周知の技術課題であり、引用発明も当然に同様の課題を有しているといえる。
してみると、引用発明において,上記刊行物2に記載の事項を採用して、相違点1に記載の補正発明のごとく構成とすることは当業者が容易に想到するものといえる。

(2)そして、補正発明の作用効果は、引用発明および刊行物2に記載の事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(3)したがって、補正発明は、引用発明および刊行物2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成21年11月10日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「【請求項1】 X線源に対して被検体を挟んで前記被検体への投影方向を周期的に変化させながら前記被検体の投影データを順次収集する投影データ収集手段と、
この投影データ収集手段により収集された投影データに基づいて、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段と、
前記部分画像データのうちの少なくとも複数に対して互いに異なる係数を乗算して不連続な重み付けを行う重み付け手段と、
前記重み付け手段で重み付けされた部分画像データを含む複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する断層像生成手段と、
前記重み付け手段による前記部分画像データに対する重み付けの係数を変更する重み付け変更手段と
を有することを特徴とするコンピュータ断層像撮影装置。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
本願優先日前に頒布された刊行物1、2およびその記載事項は、上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、補正発明の「収集されたファンビーム投影データをバックプロジェクションすることにより、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段」から「収集された投影データに基づいて、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段」と収集された投影データの種類の限定を省き、
さらに予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する過程に関する限定を省いたものに相当する。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含む補正発明が、上記「第2 3」において検討したとおり、引用発明および刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明および刊行物2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

なお,請求人は,平成23年4月13日付け回答書において、「・・・一方で、本願発明は、ファンビームの投影データから部分画像を生成し、かつ、フル再構成法により断層像の生成を行いますが、引用文献3は、ファンビームを平行ビームに変換しこのデータから部分画像を生成し、かつ、ハーフ再構成法により断層像の生成を行う点、相違します。 審査官殿は、引用文献1に記載の発明と引用文献3に記載発明の組み合わせから、進歩性を否定されています。
しかし、引用文献3においてはその記載の全てにおいて、ファンビームを平行ビームに変換することが前提となっております。ファンビームを平行ビームに変換するためには、実際には複数時点で取得されたファンビームのデータから互いに平行なビームを抜き出して組み合わせなければなりません。つまり、各投影データは時間的な広がりを持ったデータであり、本願発明のように重み付けをつけなければデータ取得時間差がシビアにアーチファクトに影響するというものではありません。
したがって、平行ビームにおいての画像再構成しか記載されない引用文献3の技術をファンビームでの画像再構成に適応する動機付けがありません。」と主張している。
そこで検討するに、引用文献3(刊行物2)は、引用発明同様に部分画像を用いて断層像を生成するものであり、さらに、「部分画像に対し重み付けを行う重み付け手段、及びこの重み付け係数を変更する重み付け変更手段を備え」て各部分画像に重み付けをして加算し、断層像を生成するものである。
そして、引用文献3の「部分画像に対し重み付けを行う重み付け手段、及びこの重み付け係数を変更する重み付け変更手段を備え」て各部分画像に重み付けをして加算し、断層像を生成する工程には、部分画像の作成工程は含まれないのであるから、引用文献3に記載の技術事項である部分画像から断層像を作成する工程は、部分画像の作成工程とは独立した技術思想である。
したがって、引用文献3が、その記載の全てにおいて、部分画像の作成工程として、ファンビームを平行ビームに変換することが記載されていたとしても、独立した技術思想である「部分画像に対し重み付けを行う重み付け手段、及びこの重み付け係数を変更する重み付け変更手段を備え」て各部分画像に重み付けをして加算し、断層像を生成する工程」を用いる技術思想は、部分画像の作成工程として「ファンビームを平行ビームに変換する」工程を有するか否かに関わらずに適用できるものである。
そして、アーチファクトを抑制することは一般的な技術課題であり、画像を良くするために当然に考慮する技術事項であるから、引用文献1においてもアーチファクト抑制という点で当然、動機付けがある。
したがって、アーチファクトを抑制するための構成は、ハーフ再構成法のものであろうが、フル再構成法のものであろうが、同じアーチファクトを抑制するための構成として引用発明に適用できることは当然である。

よって、前記請求人の主張は採用できない。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-09 
結審通知日 2011-09-13 
審決日 2011-09-28 
出願番号 特願2000-12322(P2000-12322)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 孝徳  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 石川 太郎
信田 昌男
発明の名称 コンピュータ断層像撮影装置  
代理人 堀口 浩  

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