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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1247031
審判番号 不服2008-25170  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-01 
確定日 2011-11-18 
事件の表示 特願2005-316398「加硫合成樹脂ペレット製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月17日出願公開、特開2007-119677〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年10月31日の出願であって、平成20年2月12日付けで拒絶理由が通知され、同年4月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月1日に拒絶査定不服審判が請求され、同年10月28日に手続補正書が提出され、同年12月9日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年12月25日付けで前置報告がなされ、当審において平成23年5月16日付けで審尋がなされたが、何ら応答はされなかったものである。

第2.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成20年10月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「タイヤ等の加硫合成ゴム材による30?100メッシュ篩下微粒子の30下?10重量%と、熱可塑性合成樹脂成形材を破砕してなる3?5mm篩下凹凸形状粗粒子の70上?90重量%とを撹拌混合して100重量%となし、同混合物を加熱して上記粗粒子のみに塑性を付与し、ゲル化した塑性状態において該混合物を加圧して線状に押出し、これを冷却して粒状に成形することを特徴とするペレット製造法。」

第3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由とされた、平成20年2月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由は、次のとおりである。

「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-3
・引用文献等 1、または、1-2
・備考 引用例1に記載された「溶融」は、塑性の付与とも解される。樹脂成形体の製造に供される樹脂をペレット状とすることは、本出願前における一般技術である。本願発明は、引用例1に記載された発明に該一般技術を適用したものに過ぎない。
また、引用例2(【0030】の「軟化」、【0033】)には、合成樹脂廃材に塑性を付与する状態として他の材料と混合することが記載されている。引用例1に記載された発明において、溶融状態まで加熱せずに、引用例2に記載された発明のように塑性を付与する状態として、ペレットを製造してみることに、困難性は見いだせない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平3-60295号公報
2.特開2005-29625号公報」

そして、平成20年8月28日付け拒絶査定の備考には、以下のとおり記載されている。

「拒絶理由通知において提示した引用例1は、出願人が意見書において認識されるように、特公平3-60295号公報の誤記である。
引用例2には、熱可塑性樹脂材料のペレット化の手法として、軟化・押出成形を行うことが記載されているのである。(添加材料についてまで云々しているのではない。)
引用例1に記載された発明は、本願発明のような塑性を付与するような加熱ではなく、更に高温と考えられる溶融加熱を行っているのであるが、これを、引用例2に記載される程度、すなわち軟化する程度(これは、拒絶理由通知において示したとおり、塑性を付与する程度と解される)に加熱して、引用例2に記載される発明と同様にペレット化してみるような工程を適用してみることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。」

第4.合議体の判断
1.引用文献の記載事項
平成20年2月12日付け拒絶理由通知書の引用文献一覧に記載されている引用文献1の文献番号「特開平3-60295号公報」は、「特公平3-60295号公報」の明らかな誤記であり、請求人も平成20年4月11日付け意見書において、この誤記を認識した上で「特公平3-60295号公報」を基に意見を述べているので、以下、「特公平3-60295号公報」を上記拒絶理由通知書における引用文献1として取り扱うこととする。

(1)引用文献1:特公平3-60295号公報
a.「タイヤ等のゴム材による30?100メツシユ篩下微粒子の30下?10重量%と、成形ポリエチレン又はポリプロピレン材を破砕してなる3?5mm篩下凹凸形状粗粒子の70上?90重量%とを混合して100重量%となし、同混合物を加熱して上記粗粒子のみ溶融し、加圧して射出しこれを成形することを特徴とする人工黒檀製造法。」(特許請求の範囲の請求項1)

b.「射出成形機のノズルは先端部温度が135?130℃、中部で123?120℃及び後部で105?100℃であつてこの温度では上記粗粒子のみ溶融し、ゴムで微粒子は溶融せず均等に溶融部内に懸架又は架橋する。」(第2頁第4欄第8行?同第12行)

c.「

」(第2頁第4欄第24行?同第41行)

(2)引用文献2:特開2005-29625号公報
d.「茶の出し殻粉末とポリオレフィン系樹脂とマレイン酸又は無水マレイン酸変性ポリオレフィンの混合物を、120?190℃において、せん断応力を加えながら十分に混和したのち、110℃以下に降温し、ペレット化することを特徴とする押出成形用複合体成形材料の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項4)

e.「ブレンド処理においては、最初に茶の出し殻粉末は微粉末化され、さらに減容化する。この際、粉砕の摩擦熱によって温度上昇が起こるが、必要に応じ粉砕装置を外部から加熱熱媒体や蒸気などにより加熱し、120?190℃の範囲の温度でせん断応力を加えながらブレンドする。この際、ポリオレフィン系樹脂は可塑化し、軟化又は溶融する。複合化完了までの時間は、その際の温度や機械的エネルギーの量により左右されるが、通常は20?120分間程度である。
このようにして得た複合体を、110℃以下までかきまぜながら冷却すれば、顆粒ないしペレットにすることができるので、そのまま成形に供しうる。この際の顆粒ないしペレットのサイズは撹拌翼の形状、回転数、冷却条件などにより制御可能である。」(段落[0030])

2.引用文献1に記載された発明の認定
引用文献1には、摘記事項a.の記載からみて、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「タイヤ等のゴム材による30?100メツシユ篩下微粒子の30下?10重量%と、成形ポリエチレン又はポリプロピレン材を破砕してなる3?5mm篩下凹凸形状粗粒子の70上?90重量%とを混合して100重量%となし、同混合物を加熱して上記粗粒子のみ溶融し、加圧して射出しこれを成形する人工黒檀製造法。」

3.対比・判断
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「タイヤ等のゴム材」、「成形ポリエチレン又はポリプロピレン材」は、本願発明の「タイヤ等の加硫合成ゴム材」、「熱可塑性合成樹脂成形材」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者は、「タイヤ等の加硫合成ゴム材による30?100メッシュ篩下微粒子の30下?10重量%と、熱可塑性合成樹脂成形材を破砕してなる3?5mm篩下凹凸形状粗粒子の70上?90重量%とを撹拌混合して100重量%とな」す点で一致し、次の相違点1の点で一見相違し、相違点2の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、「混合物を加熱して上記粗粒子のみに塑性を付与し、ゲル化した塑性状態」にするのに対して、引用発明は、「混合物を加熱して上記粗粒子のみ溶融」する点。

(相違点2)
本願発明は、「加圧して線状に押出し、これを冷却して粒状に成形する…ペレット製造法」であるのに対して、引用発明は、「加圧して射出しこれを成形する人工黒檀製造法」である点。

(2)相違点1についての検討
両発明の出発原料についてみると、引用発明の混合物と本願発明の混合物は、上記第4.3.(1)のところで検討したように、物質として同一のものである。
また、引用発明の混合物は、射出成型機で加熱されるものであり(摘記事項b.)、本願発明の混合物は、ペレタイザーで加熱されるものであるが(段落[0013])、その加熱条件について、引用文献1には「射出成形機のノズルは先端部温度が135?130℃、中部で123?120℃及び後部で105?100℃であつてこの温度では上記粗粒子のみ溶融し」(摘記事項b.)との記載があり、かかる加熱条件は、本願明細書に記載されている「PPでは170℃、PE(高密度)では110?120℃」(段落[0013])という加熱条件と重複一致する。
さらに、引用文献1の摘記事項c.には、加熱成形して得られた生成物の衝撃試験結果が記載されているが、これと全く同じ衝撃試験結果が、本願明細書の段落[0018]の【表1】にも開示されているから、引用発明の生成物と本願発明の生成物は、物質として同一のものである。
そうすると、両発明において、1)出発原料としての混合物は、物質として同一のものであり、2)混合物を加熱する際の加熱条件は、重複一致しており、3)加熱成形して得られた生成物は、物質として同一のものであるから、出発原料としての混合物を加熱して得られる中間体も、物理化学的に同様の状態のものであると考えるのが妥当である。
したがって、混合物を加熱することによって、「粗粒子のみに塑性を付与し、ゲル化した塑性状態」にするか、「粗粒子のみ溶融」するかは、表現上の差異にすぎないから、相違点1は、実質的な相違点ではない。

(3)相違点2についての検討
引用文献2の摘記事項d.?e.には、樹脂を加熱成形することによるペレット製造法が記載されており、引用発明において、樹脂のペレット化を行うことは、使用目的に応じ、当業者が適宜なし得ることである。
また、ペレット化の工程として「加圧して線状に押出し、これを冷却して粒状に成形する」ことは、樹脂加工の技術分野においてごく一般的なものであるから、この点にも格別の創意を見出すことはできない。
なお、上記したとおり、引用文献1の摘記事項c.には、本願明細書の段落[0018]の表1と全く同じ衝撃試験結果が記載されていることからみて、ペレット化することにより格別顕著な効果が奏されるとも認められない。

(4)まとめ
よって、本願発明は、引用文献1?2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5.審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書(平成20年12月9日提出の手続補正書(方式)により補正)において、次のような主張をしている。

主張1:
「引用例1の例えば第2ページ左欄第18?23行目には、ゴムの微粒子が溶融粗粒子内に認められ、ゴム微粒子が黒い溶融粗粒子内に架橋しているところが認められ、ゴム微粒子は溶融粗粒子と一体的な複合体を形成する旨記載されており、このような記載から、当業者は、ゴム微粒子の架橋のために溶融状態まで加熱することが必要だと考えるのが自然であります。
そして、タイヤ等の加硫合成ゴム材を混ぜることは何ら具体的に記載も示唆もされておらず、しかもタイヤ等の加硫合成ゴム材とは全く異なる茶の出し殻粉末を混ぜている引用例2を当業者が参照しましても、前記のような記載がある引用例1の発明において、溶融状態まで加熱せずに、軟化する程度の加熱にしようという動機は、当業者に容易に与えられたものではありません。
また、前述のように、本願発明は、ゲル化した塑性状態に加熱していますので、加熱量を節減することができます。」

主張2:
「ゲル化した塑性状態において混合物を加圧して線状に押出すことの記載もない引用例2を当業者が参照しましても、引用例1の発明において、ゲル化した塑性状態において混合物を加圧して線状に押出そうとする動機も、当業者に容易に与えられたものではありません。
また、前述のように、本願発明は、ゲル化した塑性状態において混合物を加圧して線状に押出し、これを冷却して粒状に成形していますので、粒状成形ペレット加工と射出成形加工とを分離し得てペレットを流通させることができます。」

審判請求人の主張1?2について検討する。

審判請求人の主張1は、引用発明と本願発明が、混合物を加熱する際の温度条件において、溶融するほどの高いレベルの加熱であるか、軟化する程度の低いレベルの加熱であるかの点で異なっていることを主張するものであるが、上記第4.3.(2)のところで検討したように、加熱する際の温度条件については、引用発明と本願発明の間に実質的な差異はないと考えるのが妥当である。
また、審判請求人の主張2は、「引用例1の発明において、ゲル化した塑性状態において混合物を加圧して線状に押出そうとする動機」がないことについて主張するものであるが、加圧して線状に押出すという工程は、樹脂加工の技術分野においてごく一般的なものであるから、かかる動機付けを得ることが格別困難であるとはいえないし、「粒状成形ペレット加工と射出成形加工とを分離し得てペレットを流通させることができ」る点についても、ペレット化によってもたらされる自明の効果にすぎない。
したがって、審判請求人の上記主張はいずれも採用できない。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明についての原査定の拒絶の理由は妥当なものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-21 
結審通知日 2011-09-22 
審決日 2011-10-07 
出願番号 特願2005-316398(P2005-316398)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大熊 幸治  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 近藤 政克
田口 昌浩
発明の名称 加硫合成樹脂ペレット製造法  
代理人 有吉 修一朗  

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