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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1247068 |
審判番号 | 不服2010-5444 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-11 |
確定日 | 2011-11-17 |
事件の表示 | 特願2000-78455号「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月28日出願公開、特開2001-267281号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年3月21日の出願であって、平成21年12月7日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年12月15日)、これに対し、平成22年3月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。 そして、当審にて平成23年5月18日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年7月19日付けで意見書と共に手続補正書が提出された。 第2 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明は、平成23年7月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「シリコンからなる半導体基板の表面にシリコン酸化膜を形成する工程と、 前記シリコン酸化膜上にレジストパターンを形成する工程と、 前記レジストパターンをマスクに用いて前記シリコン酸化膜をウェットエッチングして、部分的に前記半導体基板表面を露出する工程と、 前記ウェットエッチング後、前記半導体基板を乾燥する工程とを備え、 前記乾燥工程の前に酸化性の液を用いて前記レジストパターンを除去することで前記半導体基板の露出部分が酸化されることを特徴とする半導体装置の製造方法。」 第3 引用例 1.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平10-12589号公報(以下「引用例1」という。)には、「半導体装置の素子分離方法」に関して、その従来技術として図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下、同様。) ア.段落【0003】、【0004】 「図6は従来の半導体装置の素子分離の手順を示す工程図である。図6において、101はシリコン基板、102は酸化膜(102a(当審注:図6(a-2)の符号「102a」は引き出し部を誤っている。)はウエットエッチング後の酸化膜)、103はフォトレジスト(レジストマスク)、104はチャネルカット領域、105は緩衝用酸化膜、106はシリコン窒化膜(106aはシリコン窒化膜のマスク)、107はロコス酸化膜、Aは活性領域、Bは素子分離領域をそれぞれ示す。 また、図6(a)は従来の半導体装置の素子分離の手順1を示す。シリコン基板101上に形成された酸化膜102に開口部を有する厚い酸化膜のレジストマスク103を形成する(図6(a-1))。レジストマスク103を用いて、ウエットエッチングにより酸化膜102の除去し、活性領域となる基板表面を露出させる(図6(a-2))。レジストマスク103を除去し、活性領域Aと素子分離領域Bを形成する。必要に応じて酸化膜102aの下側の素子分離領域にチャネルカット領域104となるチャネルストップのイオン注入を行う(図6(a-3))。」 イ.上記記載と図6を合わせ見ながら、半導体装置の素子分離の手順について検討すると、図6(a-1)の工程の前に、シリコン基板101上に形成された酸化膜102を形成する工程があり、その後に酸化膜102に開口部を有する厚い酸化膜のレジストマスク103を形成する工程があることは明らかである。 上記記載事項、図示内容及び認定事項を総合して、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「シリコン基板101上に形成された酸化膜102を形成する工程と、 前記酸化膜102に開口部を有する厚い酸化膜のレジストマスク103を形成する工程と、 前記レジストマスク103を用いて、ウエットエッチングにより酸化膜102の除去し、活性領域となる基板表面を露出させる工程と、 ウエットエッチング後、レジストマスク103を除去し、活性領域Aと素子分離領域Bを形成する工程と を備える半導体装置の素子分離方法。」 2.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平10-256370号公報(以下「引用例2」という。)には、「絶縁膜のパターンニング方法」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.段落【0014】 「次いで、表面のフォトレジスト膜38を現像して、図1(c)に示すようにパターン付きレジスト膜42を形成するフォトレジスト膜現像工程を行う。次いで、パターン付きレジスト膜42をマスクにして第1SiO_(2)膜32をエッチング処理することにより、第1SiO_(2)膜32に図1(d)に示すようなパターンを形成する第1SiO_(2)膜パターン形成工程を行う。次いで、従来と同様にして、表面のパターン付きレジスト膜42及び裏面の裏面保護レジスト膜46を同時に湿式処理して溶解・除去するフォトレジスト膜除去工程を行う(図1(e)参照)。湿式処理に用いる処理液は、主に硫酸と過酸化水素水とを混合したものである。」 3.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平11-16866号公報(以下「引用例3」という。)には、「シリコンの洗浄方法」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.段落【0001】 「【発明の属する技術分野】本発明は、半導体の中でもシリコンを利用する分野においてシリコン表面の湿式の洗浄あるいはエッチング後にシリコンを乾燥させる工程において、残留する水跡いわゆるウォータマークの減少させるシリコンの洗浄方法および洗浄装置に関する。」 イ.段落【0022】 「【発明が解決しようとする課題】すなわち、本発明はウォータマークの発生を防ぐために、ウォータマーク発生の3つの条件(シリコン、酸素、水)のうち、シリコンを揃えない方法において、ケミカル酸化膜のような複雑な工程を用いずまた、制御されていない自然酸化膜を利用することはなく、むしろ、その後の工程や素子特性を考え、自然酸化膜は除去してしまう。その自然酸化膜の存在しないシリコンの表面に、洗浄あるいはエッチング後の純水リンス中又はリンス後に、簡易な方法によって純水中において制御された酸化膜を作製し、乾燥時にウォータマークの発生を防止する洗浄方法を提供することを目的とする。 ウ.段落【0024】 「本明細書で開示する他の発明は、表面に自然酸化膜が存在するシリコンを有する基板を湿式のエッチングにて当該自然酸化膜の除去を行った後に、シリコン表面を純水にてリンスし、当該リンス中又はリンス後にシリコン表面に10?30Åの酸化膜を乾燥前に形成した後に、シリコン表面を乾燥させることを特徴とするシリコンの洗浄方法である。」 エ.段落【0026】 「上記シリコンの洗浄方法において、前記10?30Åの酸化膜の形成を純水に酸化剤を添加した純水を用いて湿式で行うことが好ましい。また、前記酸化剤を添加した純水は、純水を電気分解して得るオゾンを純水に添加したもの、又は酸素に紫外線を照射して得るオゾンを純水に添加したものあるいは純水に5?20体積%の過酸化水素を添加したものであることが好ましい。」 上記記載事項を総合すると、引用例3には、次の事項(以下「引用例3記載事項」という。)が記載されている。 「ウォータマークの発生を防止するために、シリコン表面の湿式のエッチング後、シリコン表面を酸化剤を添加した純水を用いてリンスし、当該リンス中にシリコン表面に酸化膜を乾燥前に形成した後に、シリコン表面を乾燥させるシリコンの洗浄方法。」 4.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特表平9-501017号公報(以下「引用例4」という。)には、「半導体ウェーハを流体中で処理する方法および装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.6ページ3?11行 「発明の分野 本発明は、半導体製造に関する。さらに特に、本発明は、ウェーハ製造の湿式エッチング/洗浄段階中に、ウェーハから有機物質を除去する、優れた方法に関する。本発明はまた、この方法を実施するための装置および、半導体製造中に流体中でウェーハを処理することを含む他の方法に関する。 発明の背景 半導体を製造するにあたり、いくつかの加工段階には、ウェーハと流体とが接触することが必要である。このような加工段階の例には、エッチング、フォトレジストストリッピングおよび拡散前洗浄(prediffusion cleaning)が含まれる。」 イ.7ページ2?7行 「半導体製造の若干の流体接触段階は、ウェーハ表面からの有機物質および不純物の除去を含む。例えば、集積回路の製造において、フォトレジスト被膜をケイ素ウェーハ上に、製造工程の一部として焼き付けるのが一般的である。フォトレジストまたは有機物質のこの被膜は、加工後に除去しなければならない。 一般的に、湿式フォトレジストストリップ工程は、過酸化水素またはオゾンのいずれかの酸化剤を添加した硫酸の溶液により実施する。」 5.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平11-165136号公報(以下「引用例5」という。)には、「レジスト除去方法およびレジスト除去装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.【特許請求の範囲】 「【請求項1】 レジストを形成した基板のレジスト形成面を洗浄水で洗浄し、レジストを除去するにあたり、 前記洗浄水としてオゾン水を用い、 基板をその面方向に回転させつつ、前記洗浄液を該基板のレジスト形成面に供給することを特徴とするレジスト除去方法。」 イ.段落【0001】 「【発明の属する技術分野】本発明は、半導体デバイス製造や液晶パネル製造等において、リソグラフィおよびエッチングによって各種のパターンニングを行うため、あるいはイオン注入を行うために用いたレジストを基板から剥離し、これを除去するためのレジスト除去方法およびレジスト除去装置に関する。」 ウ.段落【0004】 「このような背景のもとに近年では、超純水にオゾンガスを溶解してなるオゾン水を用い、これにウエハを浸して該ウエハ表面の有機物を除去する技術が開発され、一部に実施されている。ここで、前記オゾン水は、酸素ガスから放電法で製造したオゾンガスや、純水を電気分解することで製造したオゾンガスを超純水に溶解したものであり、供給コストが低く、また、自然に酸素に分解するため排液コストも非常に低く、環境にも優しい薬液である。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その機能又は作用からみて、引用発明の「シリコン基板101上に形成された酸化膜102を形成する工程」は、本願発明の「シリコンからなる半導体基板の表面にシリコン酸化膜を形成する工程」に相当し、以下同様に、 「前記酸化膜102に開口部を有する厚い酸化膜のレジストマスク103を形成する工程」は、「前記シリコン酸化膜上にレジストパターンを形成する工程」に、 「前記レジストマスク103を用いて、ウエットエッチングにより酸化膜102の除去し、活性領域となる基板表面を露出させる工程」は、「前記レジストパターンをマスクに用いて前記シリコン酸化膜をウェットエッチングして、部分的に前記半導体基板表面を露出する工程」に、それぞれ、相当する。 また、後者の「半導体装置の素子分離方法」は半導体装置の製造工程の一工程であるから、前者の「半導体装置の製造方法」に相当する。 そして、後者の「ウエットエッチング後、レジストマスク103を除去し、活性領域Aと素子分離領域Bを形成する工程」は、ウエットエッチング後、レジストマスク103を除去する」工程であるから、前者の「前記ウェットエッチング後、前記半導体基板を乾燥する工程とを備え、前記乾燥工程の前に酸化性の液を用いて前記レジストパターンを除去することで前記半導体基板の露出部分が酸化されること」と「前記ウェットエッチング後、前記レジストパターンを除去すること」で共通する。 そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「シリコンからなる半導体基板の表面にシリコン酸化膜を形成する工程と、 前記シリコン酸化膜上にレジストパターンを形成する工程と、 前記レジストパターンをマスクに用いて前記シリコン酸化膜をウェットエッチングして、部分的に前記半導体基板表面を露出する工程とを備え、 前記ウェットエッチング後、前記レジストパターンを除去する半導体装置の製造方法。」 [相違点] ウェットエッチング後のレジストパターンの除去について、本願発明では、「ウェットエッチング後、前記半導体基板を乾燥する工程とを備え、前記乾燥工程の前に酸化性の液を用いて前記レジストパターンを除去することで前記半導体基板の露出部分が酸化される」ものであるのに対して、引用発明では、レジストマスク103を除去するものであるが、その工程が明らかでない点。 第5 当審の判断 [相違点について] レジストパターンの除去を湿式処理で行うことは周知(引用例2,4,5参照。)であり、湿式処理後に乾燥工程は必要な工程であるから、引用発明においてウェットエッチング後、レジストパターンの除去を湿式処理を選択することにより、半導体基板を乾燥する工程を備えるものとすることは、当業者が容易に成し得たことである。 そして、乾燥工程においてウォータマークの発生を防止するために、乾燥前にシリコン表面に酸化膜を形成することが引用例3に記載されており(引用例3記載事項参照。)、その方法は、シリコン表面に酸化膜を形成するためにリンス液として純水を用いて、純水に酸化剤を添加することにより行うものである。ところで、酸化剤を用いることで酸化膜は形成されるものであるから、普通に用いられるレジストパターンの除去に用いられる液(硫酸と過酸化水素水とを混合したもの(引用例2参照。)、過酸化水素またはオゾンのいずれかの酸化剤を添加した硫酸の溶液(引用例4参照。)、超純水にオゾンガスを溶解してなるオゾン水(引用例5参照。))に酸化剤が含まれていることからみて、これらの液を用いることにより同様の作用(酸化膜の形成)を奏するものと認められる。 してみると、レジストパターンの除去として湿式処理を選択することにより、半導体基板の露出部分が酸化されるものであるから、上記相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことといわざるをえない。 なお、本願発明は、酸化性の液を用いてレジストパターンを除去することで半導体基板の露出部分が酸化されると特定されているだけであって、ウォータマークの発生を防止するために必要な条件(酸化性の液、濃度等)がなんら特定されていない。 そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明、引用例3記載事項、周知の事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。 したがって、本願発明は、引用発明、引用例3記載の事項、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例3記載事項、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-09-14 |
結審通知日 | 2011-09-20 |
審決日 | 2011-10-03 |
出願番号 | 特願2000-78455(P2000-78455) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷井 雅昭 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
青木 良憲 長崎 洋一 |
発明の名称 | 半導体装置の製造方法 |
代理人 | 酒井 將行 |
代理人 | 仲村 義平 |
代理人 | 荒川 伸夫 |
代理人 | 森田 俊雄 |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 佐々木 眞人 |
代理人 | 堀井 豊 |