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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1247483 |
審判番号 | 不服2009-2072 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-27 |
確定日 | 2011-11-24 |
事件の表示 | 特願2007-205037「デジタル放送受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月27日出願公開、特開2007-336586〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成19年8月7日の特許出願であって、特願2003-278500号(平成15年7月23日出願 優先権主張:平成14年11月14日)の分割出願として出願されたものであり、平成20年6月26日付けで拒絶理由が通知され、同年9月1日付けで手続補正書が提出され、同年9月24日付けで拒絶理由が通知され、同年12月1日付けで手続補正書が提出され、同年12月22日付けで拒絶査定され、これに対して平成21年1月27日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年2月4日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.平成21年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年2月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に係る発明 平成21年2月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、本件補正前の平成20年12月1日付け手続補正書により補正された請求項1の内容を、 「 【請求項1】 デジタル放送における受信感度パラメータを検出する手段と、 検出された前記受信感度パラメータに基づいてデジタル放送の受信感度を算出する手段と、を有し、 受信したデジタル放送を表示する放送表示と、放送の受信感度を表示する受信感度表示と、を区分けして示す放送・受信感度表示画面において、前記受信感度表示を、受信不可となるレベルを含め3段階以上でレベル表示することを特徴とするデジタル放送受信機能を有する携帯端末装置。」 から、 「 【請求項1】 デジタル放送における受信感度パラメータを検出する手段と、 検出された前記受信感度パラメータに基づいてデジタル放送の受信感度を算出する手段と、を有し、 受信したデジタル放送を表示する放送表示と、放送の受信感度を表示する受信感度表示と、を区分けして示す放送・受信感度表示画面において、前記受信感度表示を、受信不可となるレベルと、複数の受信可能となるレベルとでレベル表示することを特徴とするデジタル放送受信機能を有する携帯端末装置。」 に、変更する補正を含むものである。 上記補正は、補正前の請求項1における「受信感度表示」の態様を、「受信不可となるレベルを含め3段階以上でレベル表示する」ものから、「受信不可となるレベルと、複数の受信可能となるレベルとでレベル表示する」ものに限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-115654号公報(以下、「引用例1」という)には、下記の事項が記載されている。 (あ)「【0015】 【発明の実施の形態】本発明によるデジタル放送受信装置の1実施形態を添付図を用い説明する。図1は、本発明の1実施形態のデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図であり、図1の装置構成をその動作とともに以下に説明する。アンテナ102で衛星からのデジタル衛星放送信号が受信される。アンテナ102で受信された放送信号は受信機(IRD)1031のチューナ部1に供給される。チューナ部1では受信信号の中から所定のチャンネルの信号が選択され、その信号が復調回路2に供給される。 【0016】復調回路2で受信信号から信号のビットストリームが復調され、誤り訂正部3に供給される。誤り訂正部3で選局されたチャンネルのトランスポートストリームのエラーが検出、訂正される。誤り訂正部3の出力がトランスポートDEMUX4に供給される。トランスポートDEMUX4は誤り訂正部3から出力されるビットストリームを受け、パケット列に分離し、パケット毎に所望のデータであるかどうかを判断し、MPEGデコーダ5に供給する。 【0017】MPEGデコーダ5はMPEG方式により圧縮されたMPEGビデオ信号およびMPEGオーディオ信号をデコードするものである。入力されるMPEG方式に従うビデオデータがMPEGデコーダ5によりデコードされ、得られるコンポーネントビデオ信号をビデオエンコーダ6に供給する。ビデオエンコーダ6でコンポーネントビデオ信号から例えばNTSC方式のコンポジットビデオ信号が生成され、モニタ104に出力される。入力されるMPEG方式に従うオーディオデータがMPEGデコーダ5によりデコードされ、得られるデジタルオーディオ信号を音声DAC(Digital/AnalogConverter:デジタル/アナログ変換器)7に供給する。音声DAC7でデジタルオーディオ信号がアナログオーディオ信号に変換され、音声出力される。 【0018】CPU8は、装置全体の動作を制御し管理するが、ここではCPU8により管理される各種の装置の動作状態などをOSD機能により画面上に表示できるようにしている。すなわち、CPU8の出力に基づき、OSD表示部9からOSD表示信号が生成される。このOSD表示信号がビデオエンコーダ6に供給され、この信号がビデオエンコーダ6で受信したビデオ信号にOSD表示のために重畳される。この発明が適用されたIRDでは受信レベルをユーザに知らせるための手段を備える。この手段は、降雨による減衰を受けやすいデジタル衛星放送の12GHz帯のような高い周波数の電波が豪雨の時に受信レベルが低くなり受信不能になると、モニタ104では黒い画面だけが表示され、ユーザに故障が起きたと誤認されることがあるが、この誤認を解き、状況を知らせるために備えられる。 【0019】実施化手段として、この発明の適用されたIRDでは、受信レベルの変化を監視し、監視結果の受信レベルを示し受信状態が悪化していることをユーザに知らせることにより、ユーザは受信レベルが悪化したことが原因で映像が出なくなったことを理解することができる。受信レベルについては、1手段として、選局された受信信号の復調後のトランスポートストリームのエラーが検出、訂正される誤り訂正部3でのエラー検出の頻度からそれを知ることができる。受信レベルが良好の時には、誤り訂正部3でエラーが検出されないか、または訂正可能な程度のエラーである。受信レベルが悪くなると、誤り訂正部3では訂正が不可能になる程のエラーが起きる。 【0020】受信レベルの変化を誤り訂正において検出されるエラーの頻度から求める処理フローを図2を用いて次に説明する。なお、このシステムにおいては、1枚の画像を構成するのに必要なビットストリームは複数のパケットに分割されて送られてくるものとする。まず、この処理フローの開始時に、エラー数を初期化しておき(ステップS11)、各パケットでのエラーをエラー数カウント部10で数える(ステップS12)。ある一定の時間が経過した時、またはある一定の量のデータを受信したかを判断し(ステップS13)、受信したと判断した時に、これまでにエラー数カウント部10で計数したエラー数からユーザに知らせる受信レベルへの変換を行うレベル変換部11で受信レベルの変換を行う(ステップS14)。変換された受信レベルをCPU8に送り、CPU8は受け取ったデータを基に表示方法を選び、選んだ表示方法に従う形式でOSD表示部9にOSD表示信号を出力する(ステップS15)。 【0021】次に、上記した受信レベルの表示に際し、表示の仕方に条件を付す、すなわち受信状態或いは受信レベルを常に表示するのではなく、受信レベルが悪化した時にのみ表示を行うようにした本発明の実施形態を説明する。」 (い)「【0023】また、上記した各実施形態に示されたように、本発明によるデジタル放送受信装置においては、エラー数に基づく受信レベルの報知を行うとしているが、報知に用いる実施化手段として、受信レベルの報知を数値で知らせることが出来る。これは、例えば1?100という数値をOSD表示で行うという手段により実現することが出来る。また、他の方法による報知手段として、受信レベルに比例したバーグラフを用いてOSD表示を行うこともできる。」 (う)上記(あ)には、「受信レベルの変化を監視し、監視結果の受信レベルを示し受信状態が悪化していることをユーザに知らせる」ための「受信レベル」は、「誤り訂正部3でのエラー検出の頻度」から知ることができ、具体的な構成として、復調された受信信号のエラーを検出する誤り訂正部3と、エラー数カウント部10で計数した前記エラーの数を受信レベルに変換するレベル変換部11を有することが記載されている。 (え)受信レベルをモニタ104にOSD表示させるために、上記(あ)には、前記受信レベルを入力したCPU8は、OSD表示部9にOSD表示信号を生成させてビデオエンコーダ6においてOSD表示信号とビデオ信号と重畳することが記載されている。 上記(あ)乃至(え)及び関連図面の記載から、引用例1には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「復調された受信信号のエラーを検出する誤り訂正部と、 前記エラーを計数するエラー数カウント部と、 計数された前記エラーの数を受信レベルに変換するレベル変換部と、を有し、 ビデオ信号に重畳されてモニタに表示される受信レベルが、受信レベルに比例したバーグラフを用いて表示されるデジタル放送受信装置。」 (3)対比 (3-1)本件補正発明と引用発明との対応関係について (ア)本件補正発明を引用する【請求項5】には、「受信感度パラメータ」が受信電力や誤り率等を含むことが記載されていることからも明らかなように、引用発明の「復調された受信信号のエラー」、「誤り訂正部」は、本件補正発明の「デジタル放送における受信感度パラメータ」、「検出する手段」に相当する。 (イ)引用発明の「エラー数カウント部」及び「レベル変換部」は、検出されたエラーから受信レベルを算出するために用いられ、また、引用発明の「受信レベル」は本件補正発明の「受信感度」の1つと言い得るものであるから、引用発明の「前記エラーを計数するエラー数カウント部と、計数された前記エラーの数を受信レベルに変換するレベル変換部」は、本件補正発明の「検出された前記受信感度パラメータに基づいてデジタル放送の受信感度を算出する手段」に相当する。 (ウ)引用発明では、受信レベルは受信したデジタル放送であるビデオ信号と重畳され、バーグラフを用いて表示されるので、本件補正発明と引用発明とは、「受信したデジタル放送を表示する放送表示と、放送の受信感度を表示する受信感度表示がされる放送・受信感度表示画面において、前記受信感度表示を、複数のレベルでレベル表示するデジタル放送受信機」の点で、共通している。 (3-2)本件補正発明と引用発明の一致点について 上記の対応関係から、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致する。 「デジタル放送における受信感度パラメータを検出する手段と、 検出された前記受信感度パラメータに基づいてデジタル放送の受信感度を算出する手段と、を有し、 受信したデジタル放送を表示する放送表示と、放送の受信感度を表示する受信感度表示がされる放送・受信感度表示画面において、前記受信感度表示を、複数のレベルでレベル表示するデジタル放送受信機。」 (3-3)本件補正発明と引用発明の相違点について 本件補正発明と引用発明は、下記の点で相違する。 (相違点1) 「放送・受信感度表示画面」において、本件補正発明は、「受信したデジタル放送を表示する放送表示と、放送の受信感度を表示する受信感度表示と、を区分けして示す」構成であるのに対し、引用発明では区分けして示す構成とはなっていない点。 (相違点2) 「受信感度表示」において、本件補正発明では、「受信不可となるレベルと、複数の受信可能となるレベルとでレベル表示する」としているのに対し、引用発明では、バーグラフがどのような範囲を表示するかは定かではない点。 (相違点3) 本件補正発明は、「デジタル放送受信機能を有する携帯端末装置」であるのに対し、引用発明は携帯端末装置ではない点。 (4)当審の判断 (4-1)相違点1、3について 携帯端末装置において、デジタル放送を受信する構成は、例えば、特開平11-175205号公報(特に段落【0040】)、特開2000-115003号公報(特に段落【0001】)、特開2001-145039号公報(特に段落【0026】乃至【0031】)に記載されているように、本願の優先権主張日前に周知技術である。 同様に、携帯端末装置において、アンテナピクト表示のように受信状態等の情報を表示する範囲を、表示画面内で他の情報の表示範囲とは分けて表示することも、例えば、特開2001-257748号公報(特に【図2】(a))、特開2000-278747号公報(特に【図2】)、特開平11-281961号公報(特に【図1】)に記載されているように、本願の優先権主張日前に周知技術である。 してみると、引用発明に上記周知技術を適用し、引用発明のデジタル放送受信装置を携帯端末装置として構成し、引用発明の受信レベルを表示する範囲をビデオ信号が表示される範囲とは分けて表示させることで、上記相違点1及び3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (4-2)相違点2について 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-185598号公報には、受信状況を判断するために、受信感度の測定結果を、受信不可となるレベルの「受信不可」と、複数の受信可能となるレベルの「受信良好」及び「受信不安定」とにレベル表示することが段落【0034】に記載されている。また、同様に、特開平11-266412号公報の段落【0028】乃至【0029】、図11には、テレビの画面に表示される衛星放送のアンテナレベルを、「受信できない範囲」、「ほぼ受信できない範囲」、「受信が安定してない範囲」、「ほぼ受信できる範囲」、「安定して受信可能な範囲」の領域を有するバーグラフに表示することが記載され、特開平3-217188号公報の第3図には、「無信号入力時」、「弱電界受信時」、「強電界受信時」をそれぞれ異なる色で複数ステップに表示することが記載されていることから、受信感度の表示において、「受信不可となるレベルと、複数の受信可能となるレベルとでレベル表示する」ことは、周知技術にすぎない。 してみると、引用発明のバーグラフを用いた受信レベルの表示を、「受信不可となるレベル」と「複数の受信可能となるレベル」とでレベル表示させて、相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (4-3)本件補正発明の作用効果について また、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 (5)むすび よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成21年2月4日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成20年12月1日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 デジタル放送における受信感度パラメータを検出する手段と、 検出された前記受信感度パラメータに基づいてデジタル放送の受信感度を算出する手段と、を有し、 受信したデジタル放送を表示する放送表示と、放送の受信感度を表示する受信感度表示と、を区分けして示す放送・受信感度表示画面において、前記受信感度表示を、受信不可となるレベルを含め3段階以上でレベル表示することを特徴とするデジタル放送受信機能を有する携帯端末装置。」 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記2.で検討した本件補正発明における「受信感度表示」の態様について、「受信不可となるレベルと、複数の受信可能となるレベルとでレベル表示する」ものから、上位概念の「受信不可となるレベルを含め3段階以上でレベル表示する」ものに拡張したものである。 そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本件補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-09-20 |
結審通知日 | 2011-09-27 |
審決日 | 2011-10-11 |
出願番号 | 特願2007-205037(P2007-205037) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石田 昌敏 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
甲斐 哲雄 飯田 清司 |
発明の名称 | デジタル放送受信装置 |
代理人 | 関谷 三男 |
代理人 | 今村 健一 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 渡辺 敏章 |