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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1250441
審判番号 不服2010-24832  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-04 
確定日 2012-01-12 
事件の表示 特願2009-197394「入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日出願公開、特開2011- 48696〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成21年8月27日の出願であり、平成22年7月26日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年11月4日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成22年11月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「タッチ入力を検出するタッチセンサと、
前記タッチセンサに装着された圧電素子と、
前記圧電素子の出力に基づいて前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出して、該押圧荷重が触感を呈示する基準を満たすか否かを判定する荷重検出部と、
前記荷重検出部が前記基準を満たすと判定した際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記圧電素子を駆動する圧電素子駆動部と、を備え、
前記荷重検出部は、前記圧電素子駆動部により前記圧電素子が駆動された後、所定時間経過するまで前記押圧荷重の検出を再開しない、
ことを特徴とする入力装置。」

第2 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-212725号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、たとえばFA(ファクトリーオートメーション)機器、自動販売機、自動券売機、現金自動出納機、家庭電化製品、医療用の操作機器、情報機器、携帯情報端末、ゲーム機などに用いられる情報表示装置および操作入力装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】操作入力機能を有する情報表示装置のひとつとして、ディスプレイ上にタッチパネルを配置したものが広く使用されている。タッチパネルは極めて薄型であり、また、スイッチとして使用できる領域の選択の自由度が高いという利点を有する。
【0003】ところが、その反面で、タッチパネルはその押し込みストロークがほぼゼロであるために操作入力を行ったという感触(操作感)に欠けており、操作者としても実際に操作入力が装置側で受け付けられたかどうかについて不安感を持つ場合が多い。
【0004】このような事情に対応して、操作入力が実際に受け付けられた際には操作箇所の表示色を変化させたりフラッシュさせるなどの視覚的反応や、電子音を発生するなどの聴覚的反応を生じさせるような工夫もなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しなしながら、視覚的反応を利用した装置では、操作者の指に隠れて表示色の変化が見にくくなるという問題がある。また、表示色の変化が微妙である場合には、弱視などの視覚障害者には認識が困難である。
【0006】また、聴覚的反応を利用した装置では、周囲の騒音に紛れて電子音を聞き逃す場合もある。これを防止するには電子音を大きくすることもできるが、そのようにすると、たとえば複数の自動券売機を配列してあるような場所では、どの自動券売機からの電子音であるかがわからなくなる。さらに、携帯電話のような場合には電子音を過大にすると周辺の迷惑になる。また、聴覚障害者には電子音による反応を聞き取ることができない。
【0007】以上はタッチパネルを使用した装置の場合について説明したが、これらの課題は、タッチパネルを使用した情報表示装置に限らず、操作部が実質的な押し込みストロークを持たないような情報表示装置に共通の課題となっている。
【0008】
【発明の目的】この発明は上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、操作部が実質的な押し込みストロークを持たなくても確実な操作感を与えることができる情報表示装置を提供することを第1の目的とする。」(段落【0001】?【0008】)

(イ)「【0014】
【発明の基本的原理】上記の第1の目的に対応して、この発明では、操作入力に対する装置側からの応答として、操作面の振動や微少変位などの力学的反応を利用する。たとえば、圧電素子(すなわち圧電振動子ないしはピエゾ素子)などを利用することによって操作面を振動させ、それによって操作者に確実な操作感を与えることができる。
【0015】ところで、操作入力機能を有する情報表示装置の基本的要請として、操作面への操作入力を検知することが必要である。したがって、操作面に振動などの力学的反応を生じさせるように構成した装置においては、操作入力を検知する機能と、力学的反応を生成する機能との双方を持たせなければならない。
【0016】ここにおいて、この発明の発明者は、圧電素子などが、力学的作用と電気信号とを双方向で変換可能な機能手段(以下、「双方向機能手段」)であることに着目する。すなわち、このような双方向機能手段においては、電気信号を印加すれば振動などの力学的反応を生じる一方、この双方向機能手段に押圧力を加えると電圧などの電気的反応を生じる。
【0017】そこで、このような双方向機能手段の特性を積極的に利用して、操作検知機能と力学的反応発生機能とをひとつ(ないしは1組)の双方向機能手段によって兼用的に実現させることが、この発明の基本原理である。
【0018】ずなわち、この発明では双方向機能手段の諸機能のうち、「力学的圧力から電圧(または電流)への変換機能」によって操作入力の検知が行われ、「電圧(または電流)から力学的反応への変換機能」によって、操作面への力学的反応を生じさせる。
【0019】これによって、部品点数を増やすことなく、確実な操作感を与えることができる。」(段落【0014】?【0019】)

(ウ)「【0040】
【発明の実施の形態】<1. 第1実施形態>
<1-1. 装置の概要> 図1は、この発明の第1実施形態の情報表示装置100を組み込んだシステム例としての、現金自動出納機(ATM)1の斜視図である。この現金自動出納機1は筐体2の前面に、現金出納部3と、カードおよび通帳挿入部4とを備えている。また、情報入出力部5が配置されており、情報表示装置100はこの情報入出力部5に使用されている。
【0041】図2は、情報表示装置100の外観図である。図1で示した利用例では情報表示装置100は主面を略上方に向けて配置してあるが、図2においてはこの情報表示装置100を立てて図示している。
【0042】図2において、この情報表示装置100は略箱状のハウジング101を備えており、このハウジング101に収容された部分は、操作者側に面した表示操作部DPと、その裏側の制御回路部CTとに大別されている。
【0043】ハウジング101の主面MSには略矩形の操作面11が露出している。この操作面11は透明または半透明であり、操作面11を介して情報表示面21(図3参照)の表示内容を目視することができる。また、固定の押しボタンスイッチ102も主面MS上に配置しておくことができる。
【0044】図3は、図2のIII-III断面のうち表示操作部DPに相当する部分を示す一部省略断面図である。また、図4は図3のIV方向から見た透視平面図である。図3において、この表示操作部DPは窓41を有するケース40内に液晶表示パネル20を収容しており、この液晶表示パネル20の主面が情報表示面21となっている。
【0045】図4に示すように、液晶表示パネル20の四隅にそれぞれ隣接して、4個の圧電素子E1?E4が配置されている。圧電素子E1?E4は、力学的作用と電気信号とを双方向で変換可能な双方向機能手段30の要素としての単位機能手段である。これらの圧電素子E1?E4は図3のケース40の底面に固定されており、それらの頂部によって透明または半透明の操作パネル10の四隅付近が支持されている。この操作パネル10はたとえばガラス板、アクリル板などであり、略矩形の平面形状を有している。」(段落【0040】?【0045】)

(エ)「【0091】<1-6. 操作力の判定>一方、図7において、操作力Fを示す操作力信号SFは操作力判定部54へ与えられる。この操作力判定部54には、操作力区分記憶部55から、図11の操作力区分F0?F4を規定する複数の閾値Fh1?Fh4が入力される。これらの閾値Fh1?Fh4の情報も、後述する情報処理部60から、その時点での表示内容に応じてロードされている。また、ここでの例では4つの操作力区分F0?F4が規定されているが、その時点での表示内容に応じて力の区分数を変化させることもできる。
【0092】さらに、領域判定部52からの領域判定信号SRもまた領域区分記憶部55に入力されている。そして、その時点での操作位置Pが属する領域(以下、「操作中領域R」)がいずれであるかに応じて閾値Fh1?Fh4の値を変更可能になっている。したがって、たとえば、操作領域R1?R6については閾値Fh1?Fh4の値を小さくし、操作領域R7については閾値Fh1?Fh4の値を大きくすることができる。これらの対応関係は図7の情報処理部60中にあらかじめテーブル形式で記憶しておくが、これらの閾値の具体的変更方法については後述する。
【0093】ただし、いずれの場合でも、閾値Fh1?Fh4のうちの最小閾値Fh1は、それより小さい操作力Fでの押圧はメニューの選択操作とはみなさないための閾値であり、なぞり操作を可能とするためのものである。すなわち、なぞり操作のばあいに単に指をそれぞれ操作面11上で移動させているときにはほとんど操作力は加わっていないため、最小閾値Fh1によって操作力を弁別することによりなぞり中の誤動作を防止可能である。最小閾値Fh1はこのような意味を有しているため、この最小閾値Fh1については操作領域や表示内容にかかわらずに一定値としておくことが好ましい。
【0094】最小閾値Fh1以上の範囲の4つの操作力区分F1?F4を「有効操作力区分」と呼ぶとき、操作力判定部54は、その中の比較判定部54a(図12)において、操作力信号SFで指示されているその時点での操作力Fを操作力閾値Fh1?Fh4をそれぞれ比較し、その時点での操作力Fが有効操作力区分F1?F4のいずれにあるかを判定する。たとえば、
【0095】
【数19】Fh1 ≦ F < Fh2
であれば、有効操作力区分F1での押圧と判定し、
【0096】
【数20】Fh4 ≦ F
であれば、有効操作力区分F4での押圧と判定する。
【0097】また、操作力Fが操作力区分F1?F4のいずれにもないとき、換言すれば、
【0098】
【数21】F<Fh1
であるときには、操作力区分F0での押圧(「実質的な押圧操作はない」)と判定する。
【0099】そして、有効操作力区分F1?F4については、その時点での操作力Fがそれらの区分に属するときに活性化するような信号を生成する。有効操作力区分F1?F4のいずれからの信号も非活性であるときには、操作力Fが最小閾値Fh1より小さいことを意味する。
【0100】これらの有効操作力区分F1?F4の判定部54aからの各信号は論理和回路54bに与えられ、それらの論理和信号としての操作有効信号FCが生成される。したがって、その時点での操作力Fが最小判定閾値Fh1以上であって、それによって操作者が実質的に操作面11を押圧操作していると判定されるときには、この操作有効信号FCが活性化することになる。逆に言えば、操作者が全く操作面11を押圧していない場合や、操作面11に触れてはいるがまだ最終的な選択操作を行っていない場合(なぞり操作中の場合など)には、この操作有効信号FCは非活性レベルのままである。
【0101】また、有効操作力区分F1?F4の各判定部からの信号は操作力判定信号FBとして図7の駆動モード選択部72に出力される。これは、操作力Fがどの区分にあるかによって、圧電素子E1?E4による操作面11の駆動モードを選択させるための情報として使用される。
【0102】ところで、図7に示すように、領域判定部52からの領域判定信号SRもまた操作力区分記憶部55に入力されている。これは、既述したように操作中領域Rに応じて閾値Fh1?Fh4の値を変更可能とするためである。具体的には、その時点で表示されている画面に応じて閾値Fh1?Fh4の複数の組が情報処理部60から操作力区分記憶55に入力されて記憶されており、その中から1組の閾値を領域区分信号Rに応じて選択する。このため、このように操作中領域R(ないしはその時点での操作位置)ごとに操作力Fの閾値を変更する場合には、操作力判定部54での操作力判定を領域判定部52から領域判定信号SRが生成されてから行うようにする。これは、たとえば図12の比較判定部54aの動作タイミングを領域判定部52の動作時間より微少時間だけ遅延させるか、あるいはこの比較判定部54aの前に遅延回路を挿入することによって達成可能である。」(段落【0091】?【0102】)

(オ)「【0113】ところで、図13のテーブル72aには、操作力Fが最小閾値Fh1以下である場合について駆動モードを指定している列がない。これは、そのような場合には操作面11を駆動させず、それゆえに駆動モードを選択を行う必要がないことに起因する。
【0114】このような構成により、操作力判定信号FBが活性であるときには、テーブル72aの対応箇所で指定されている駆動モードのパラメータ信号Vが図7の圧電素子駆動部75に出力されるが、操作力判定信号FBが非活性であるときには、何らの駆動モードの情報も圧電素子駆動部75に出力されない。このため、最小閾値Fh1以上の操作力Fが操作面11に加わったときのみ、操作面11が振動または微少変位するようになる。
【0115】なお、非操作領域R0について操作力Fの大きさかかわらず「振動なし」と設定しているときには、最小閾値Fh1以上の操作力Fが操作面11に加わってもそれが非操作領域R0であれば振動などは起こらない。
【0116】また、図13および図14の例では各種の振動モードも、それからの選択規則もテーブル形式で準備されているが、操作領域判定信号SRと操作力判定信号FBとを2つの入力変数とした関数としてこの選択規則を保持しておいてもよい。
【0117】ところで、これらの駆動モード選択動作において、最小閾値Fh1以上の操作力Fが操作面11に加わったときのみ圧電素子E1?E4を駆動させるには、他の構成をとることもできる。すなわち、図7および図13に破線74で示したように、論理積回路57の出力である論理積信号Gを、図13の駆動モード選択部72内に追加して設けたゲート回路72bにゲート制御信号として入力させる。このゲート回路72bは、テーブル72aからの選択出力の駆動モード記憶部73への伝達または、駆動モード記憶部73への駆動モードのパラメータ信号Vの伝達を制御するものである。すなわち、操作力Fが最小閾値Fh1より小さければ論理積信号Gは必ず非活性であるから、これを用いて駆動モードの伝達を禁止することができる。このような変形は、テーブル72aが領域判定信号SRに関してのみ規定されており、操作力Fの大きさによっては駆動モードを変化させないような装置として構成した場合に特に有効である。
【0118】すなわち、このような場合には、操作力Fはそれが最小閾値Fh1より大きいかどうかだけが問題であり、それ以上の範囲でどの操作力区間F1?F4に属しているかは判定する必要はない。このため、図7の操作力判定部54では操作力判定信号FBを生成する必要がなく、この操作力判定部54から駆動モード選択部72への操作力判定信号FBの伝達も省略できる。このため、このような場合に、操作力Fが最小閾値Fh1より大きいときだけ操作面11の振動の発生を許容させるには、追加のゲート回路72bを使用して、論理積回路57の出力である論理積信号Gを利用する実益が高くなるのである。
【0119】さらに、図13のテーブル72aは、液晶表示パネル20に表示する画面ごとに書き換える方が好ましい。すなわち、液晶表示パネル20に表示している内容が切り替わったときには、その新たな表示内容中の操作領域ごとに、また操作力Fが属する操作力区間ごとに、選択する駆動モードを変更することにより、操作面11の各種の駆動モードを多彩に利用することができる。たとえば、「お引き出し」のメニュー項目を選択して引き出し金額の入力画面に変更したときには、操作領域はテンキーを模した領域になるが、それらででは押下するごとに、たとえば、図14(f)のようなワンショット変位を与えるようにしてもよい。このようなワンショット変位の場合はいわゆるクリック感を操作者に与えることができる。」(段落【0113】?【0119】)

(カ)「【0121】<1-9. 駆動制御>図7において、駆動モード選択部72から出力された駆動モードのパラメータ信号Vは圧電素子駆動部75に与えられる。圧電素子駆動部75は高周波発振回路76を有しており、パラメータ信号Vで指定されたモードの高周波を圧電素子E1?E4へと送出する。これによって、圧電素子E1?E4は、指定された振幅およびタイミングで振動または微少変位する。
【0122】この力学的反応は図3の操作パネル10に伝播され、それによって操作面11が振動または微少変位する。そして操作面11に接触している操作者によってこの振動が知覚され、自己の操作入力が正常に受け付けられたことを認識する。
【0123】ところで、図7において圧電素子E1?E4は演算部51と圧電素子駆動部75との双方に所定の配線で接続されている。したがって、圧電素子駆動部75から高周波が出力されるとその高周波は演算部51へも伝達される。圧電素子E1?E4への操作力によって発生した電圧とこの高周波とを分離するために、たとえば図8の信号変換部51aの中に低域フィルタを設けておくことができる。そのようにすれば、振動の高周波はこの低域フィルタでカットされ、操作力による直流成分のみを取り出して操作位置Pや操作力Fの演算に使用することができる。また、操作力Fについての最小閾値Fh1を圧電素子E1?E4の駆動信号の振幅よりも大きくしておくことによって、そのような信号の干渉を防止することもできる。
【0124】操作者の操作入力に応答して画面が切り替わるような情報表示の場合には、たとえば所定の時間だけ操作パネル10を振動させた後に振動を停止させる。これは、図7の情報処理部60から駆動モード選択部74への信号伝達経路を利用して、駆動モードのパラメータ信号Vを強制的に非活性レベルにすることによって達成可能である。また、演算部51と圧電素子駆動部75とを一体化し、圧電素子E1?E4からの信号の取り込みと、圧電素子E1?E4への高周波の送出とを、スイッチング回路を用いて時間的に切り換えても良い。さらに、図14(d),(e)のような短時間の振動モードを選択してもよい。」(段落【0121】?【0124】)

(キ)「【0132】<2. 第2実施形態>図15はこの発明の第2実施形態である情報表示装置の表示操作部DPに相当する部分を示す一部省略断面図であり、図3の構造と置換して使用される。この第2実施形態の情報の利用態様例および外観は、図1および図2と同様である。
【0133】図15において、この第2実施形態の表示操作部DPは操作者による操作位置の特定をタッチパネル10Tによって行う。このタッチパネル10Tは、たとえば抵抗膜式のものであり、透明基板上にXY面内でM行N列の直行マトリクス状に配置された透明電極を有している。それらの各交点がスイッチ部となっており、マトリクスの各セルを単位としてXY方向の操作位置信号を出力する。
【0134】このタッチパネル10Tは、抵抗膜式のものに限らず、(1) 発光素子からデータ光が受光素子に入射するのを指などで遮断または減衰させてその操作位置を検出する光電式のタッチパネル、(2) 超音波発振素子から出た超音波が受振素子に入るのを指などで遮断または減衰させてその操作位置を検出する超音波式のタッチパネル、(3) 静電容量の変化によって指などが触れた位置を検出する静電容量式のタッチパネル、などであってもよい。【0135】タッチパネル支持板42はタッチパネル10Tの補強のためのものであり、図示例のようにタッチパネル10Tに対応する部分をくり抜いて枠体形状にする場合には不透明部材であってもよい。枠体形状にせずに平板状にする場合には透明または半透明部材で形成することが好ましい。また、タッチパネル10T自身が押し込み操作によっても変形しない程度の強度を有している場合には、このタッチパネル支持板42を設けなくてもよい。
【0136】図15の表示操作部DPの残余の構成は図3のものと同様であるが、この図15の表示操作部DPでは操作位置の検出はタッチパネル10Tが行い、圧電素子E1?E4は操作面11への操作力の検出と、操作面11への力学的駆動との目的で使用される。
【0137】図16は、図15の表示操作部DPを利用する場合の制御回路部CTの構成図であり、図7と同様にハード回路として記載されているが、それらの機能はソフト的に実現することもできる。この図16の制御回路部CTの多くの要素は図7の場合と同じ構成と機能を有しており、以下では図16と図7とを比較しつつ図7と異なる部分について説明する。
【0138】図16において、タッチパネル10Tの操作位置が操作位置特定部51Tで特定される。ただし、タッチパネル10TがM行N列のマトリクス配列であることから、この操作位置を示す操作位置信号SPはタッチパネル10Tの各セルのサイズを単位とした値となる。
【0139】この操作位置信号SPが操作領域R1?R7のいずれに相当するかは領域判定部52によって判定されるが、この領域判定部52の構成と動作は図7のものと基本的に同一である。
【0140】一方、圧電素子E1?E4のそれぞれの端子電圧ek(k=1?4)は演算部51Fに並列的に与えられるが、この演算部51Fは図8の構成から位置演算部51bを省略したものに相当する。すなわち、この第2実施形態における操作位置の特定はタッチパネル10Tを使用して行うため、圧電素子E1?E4の出力電圧からはトータルな操作力Fだけを演算すればよい。
【0141】演算部51Fの出力である操作力信号SFは操作力判定部54に出力されて、その操作力Fがいずれの操作力区分F0?F4(図11)のうちのいずれに属するかが判定される。
【0142】以後の構成および動作は第1実施形態と同様である。この第2実施形態では第1実施形態の装置における利点のほか、操作位置の検出における誤差が特に少ないという利点がある。すなわち、圧電素子E1?E4の端子電圧ek(k=1?4)によって操作位置を特定する場合は、既述したように操作パネル10の自重などの影響がある。操作領域R1?R7のそれぞれを比較的大きくとっている場合には、この誤差はほとんど問題にならないが、操作領域のそれぞれの面積を特に小さくしたい場合にはより正確な操作位置検出が求められる。このような場合は第2実施形態のようにタッチパネル10Tを使用することが好ましい。
【0143】また、タッチパネル10Tを利用すると、端子電圧ek(k=1?4)からの位置演算が不要になるため、操作領域の特定を高速で行うことができるという利点もある。」(段落【0132】?【0143】)

以上の記載によれば、この引用例には以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「表示操作部DPでの操作位置の検出を行うタッチパネル10Tと、
前記タッチパネル10Tの四隅付近と結合されている圧電素子E1?E4と、
前記圧電素子E1?E4の出力電圧から前記タッチパネル10Tの操作面11へのトータルな操作力Fを演算する演算部51Fと、
前記演算部51Fの出力である操作力Fを操作力閾値Fh1?Fh4と比較し、操作力Fが操作力区分F0?F4のうちいずれかに属するかを判定する操作力判定部54と、
操作力Fが操作力閾値Fh1以上(操作力区分F1?F4)と判定されると、パラメータ信号Vにより前記圧電素子E1?E4を駆動する圧電素子駆動部75と、を備え、
前記圧電素子E1?E4が指定された振幅およびタイミングで振動または微少変位し、それによって前記タッチパネル10Tの操作面11が振動または微少変位することで、操作面11に接触している操作者にクリック感などの操作感を与える、
ことを特徴とする操作入力装置。」

第3 対 比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「表示操作部DPでの操作位置の検出を行うタッチパネル10T」は、本願発明の「タッチ入力を検出するタッチセンサ」に相当する。
(2)引用発明の「前記タッチパネル10Tの四隅付近と結合されている圧電素子E1?E4」は、本願発明の「前記タッチセンサに装着された圧電素子」に相当する。
(3)引用発明は、「圧電素子E1?E4が指定された振幅およびタイミングで振動または微少変位し、それによって前記タッチパネル10Tの操作面11が振動または微少変位することで、操作面11に接触している操作者にクリック感などの操作感を与える」ものであり、その点は、本願発明の「タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示する」点と対応する。
(4)引用発明の「前記タッチパネル10Tの操作面11へのトータルな操作力F」は、本願発明の「前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧加重」に相当するといえ、引用発明の「操作力閾値Fh1」は、本願発明の「押圧加重が触感を呈示する基準」に相当するといえる。
(5)引用発明の「前記圧電素子E1?E4の出力電圧から前記タッチパネル10Tの操作面11へのトータルな操作力Fを演算する演算部51F」及び「前記演算部51Fの出力である操作力Fを操作力閾値Fh1?Fh4と比較し、操作力Fが操作力区分F0?F4のうちいずれかに属するかを判定する操作力判定部54」は、本願発明の「前記圧電素子の出力に基づいて前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出して、該押圧荷重が触感を呈示する基準を満たすか否かを判定する荷重検出部」に相当するといえる。
(6)引用発明の「操作力Fが操作力閾値Fh1以上(操作力区分F1?F4)と判定されると、パラメータ信号Vにより前記圧電素子E1?E4を駆動する圧電素子駆動部75」は、本願発明の「前記荷重検出部が前記基準を満たすと判定した際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記圧電素子を駆動する圧電素子駆動部」に相当するといえる。
(7)引用発明の「操作入力装置」は、本願発明の「入力装置」に相当する。

したがって、本願発明の用語を用いて表現すると両者は、
「タッチ入力を検出するタッチセンサと、
前記タッチセンサに装着された圧電素子と、
前記圧電素子の出力に基づいて前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出して、該押圧荷重が触感を呈示する基準を満たすか否かを判定する荷重検出部と、
前記荷重検出部が前記基準を満たすと判定した際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記圧電素子を駆動する圧電素子駆動部と、を備え、
ることを特徴とする入力装置。」
で一致するものであり、次の点で相違している。

(相違点)
本願発明は、「前記荷重検出部は、前記圧電素子駆動部により前記圧電素子が駆動された後、所定時間経過するまで前記押圧荷重の検出を再開しない」のに対して、引用発明は、このような構成は明記されていない点。

第4 当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例には、「演算部51と圧電素子駆動部75とを一体化し、圧電素子E1?E4からの信号の取り込みと、圧電素子E1?E4への高周波の送出とを、スイッチング回路を用いて時間的に切り換えても良い。」(記載事項(カ)、段落【0124】)と記載されており、演算部51は、圧電素子駆動部75により前記圧電素子が駆動された後、前記操作力F(本願発明の「押圧加重」に相当する。)の検出を時間的に切り換えて再開することが示されている。
そして、圧電式荷重センサにおいて、無負荷状態で出力をゼロにするために、圧電エレメントの残留電荷を放電させることは、本願出願前周知の技術(例えば、特開平4-346041号公報、段落【0002】【従来の技術】の記載参照)である。
したがって、上記周知技術を考慮すれば、引用発明において、圧電素子の残留電荷が放電される時間を考慮し、演算部51(本願発明の「加重検出部」に相当する。)が、圧電素子駆動部75により前記圧電素子が駆動された後、所定時間経過するまで前記操作力F(本願発明の「押圧加重」に相当する。)の検出を再開しないようにすることは当業者であれば容易になし得ることである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から、当業者であれ
ば予想できる範囲内のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-09 
結審通知日 2011-11-15 
審決日 2011-11-29 
出願番号 特願2009-197394(P2009-197394)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 朝子  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 鈴木 重幸
安久 司郎
発明の名称 入力装置  
代理人 大倉 昭人  
代理人 杉村 憲司  

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