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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1250643
審判番号 不服2010-22209  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-01 
確定日 2012-01-19 
事件の表示 特願2000- 97881「コンテンツ提供装置、コンテンツ提供方法及びプログラム格納媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月12日出願公開、特開2001-282723〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
出願日 平成12年3月30日
拒絶理由(起案日) 平成21年11月16日
意見書及び手続補正書 平成22年1月12日
拒絶理由(最後)(起案日) 平成22年3月30日
意見書及び手続補正書 平成22年6月7日
拒絶査定(起案日) 平成22年6月23日
補正却下の決定(起案日) 平成22年6月23日
同謄本送達 平成22年7月1日
審判請求 平成22年10月1日
手続補正書 平成22年10月1日
前置報告書(作成日) 平成23年3月18日
審尋(起案日) 平成23年4月22日
回答書 平成23年6月17日

2.平成22年10月1日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年10月1日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
平成22年10月1日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)の特許請求の範囲についてする補正の内容は次のとおりである。なお、平成22年6月7日付の手続補正は却下されたので、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項7は平成22年1月12日付の手続補正により補正されたものである。
(本件補正後の特許請求の範囲補正部分には下線を付した。)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人ユーザのユーザ端末からコンテンツを受信する受信手段と、
上記個人ユーザにより定められたユーザID及びパスワード情報を有するユーザ情報をデータベースに登録する登録手段と、
上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末からコンテンツ提供要求を受信したときに、上記ユーザID及び上記パスワードに基づいて、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断する判断手段と、
上記判断手段によって一致すると判断された場合に、上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末から上記コンテンツを上記受信手段を介して受信し、上記ユーザIDごとに記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段と、
上記記憶領域に格納された上記コンテンツをクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供するコンテンツ提供手段と
を具えるコンテンツ提供装置。
【請求項2】
上記記憶手段は、複数のユーザの夫々に割り当てられた専用の記憶領域を有し、当該記憶領域に格納された複数種類のコンテンツを記憶し、
上記コンテンツ提供装置は、
上記複数種類のコンテンツを任意の時間帯枠毎に1種類づつ提供するように設定された提供スケジュールを格納する提供スケジュールデータベースと、
上記クライアントが上記ネットワークを介して上記コンテンツ提供手段に上記要求を行った要求時刻に基づいて上記提供スケジュールの上記時間帯枠を認識し、当該認識した時間帯枠で提供予定の上記コンテンツを上記コンテンツ提供手段を介して提供させる制御手段と
を具える請求項1に記載のコンテンツ提供装置。
【請求項3】
上記複数のユーザの夫々に確保された上記専用の記憶領域は、上記複数のユーザの夫々に割り当てられたURL(UniformResourceLocator)に対応している
請求項2に記載のコンテンツ提供装置。
【請求項4】
上記コンテンツ提供手段は、上記コンテンツを提供中に上記時間帯枠を過ぎても最後まで提供し続ける
請求項3に記載のコンテンツ提供装置。
【請求項5】
個人ユーザにより定められたユーザID及びパスワード情報をユーザ情報として登録手段によりデータベースに登録する登録ステップと、
上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末からコンテンツ提供要求を受信したときに、上記ユーザID及び上記パスワードに基づいて、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断手段によって判断する判断ステップと、
上記判断ステップで一致すると判断された場合に、上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末から上記コンテンツを受信手段を介して受信し、上記ユーザIDごとに記憶手段によって記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶ステップと、
上記記憶領域に格納された上記コンテンツをコンテンツ提供手段によりクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供するコンテンツ提供ステップと
を有するコンテンツ提供方法。
【請求項6】
コンピュータに対し、
個人ユーザにより定められたユーザID及びパスワード情報をユーザ情報としてデータベースに登録する登録ステップと、
上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末からコンテンツ提供要求を受信したときに、上記ユーザID及び上記パスワードに基づいて、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断する判断ステップと、
上記判断ステップで一致すると判断された場合に、上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末から上記コンテンツを受信し、上記ユーザIDごとに記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶ステップと、
上記記憶領域に格納された上記コンテンツをクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供するコンテンツ提供ステップと
を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能なプログラム格納媒体。」

(本件補正前)
「【請求項1】
個人ユーザのユーザ端末からコンテンツを受信する受信手段と、
上記個人ユーザのユーザ情報をデータベースに登録する登録手段と、
上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末からコンテンツ提供要求を受信したときに、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断する判断手段と、
上記判断手段によって一致すると判断された場合に、上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末から上記コンテンツを上記受信手段を介して受信し、記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段と、
上記記憶領域に格納された上記コンテンツをクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供するコンテンツ提供手段と
を具えるコンテンツ提供装置。
【請求項2】
上記記憶手段は、複数のユーザの夫々に割り当てられた専用の記憶領域を有し、当該記憶領域に格納された複数種類のコンテンツを記憶し、
上記コンテンツ提供装置は、
上記複数種類のコンテンツを任意の時間帯枠毎に1種類づつ提供するように設定された提供スケジュールを格納する提供スケジュールデータベースと、
上記クライアントが上記ネットワークを介して上記コンテンツ提供手段に上記要求を行った要求時刻に基づいて上記提供スケジュールの上記時間帯枠を認識し、当該認識した時間帯枠で提供予定の上記コンテンツを上記コンテンツ提供手段を介して提供させる制御手段と
を具える請求項1に記載のコンテンツ提供装置。
【請求項3】
上記複数のユーザの夫々に確保された上記専用の記憶領域は、上記複数のユーザの夫々に割り当てられたURL(UniformResourceLocator)に対応している
請求項2に記載のコンテンツ提供装置。
【請求項4】
上記コンテンツ提供手段は、上記コンテンツを提供中に上記時間帯枠を過ぎても最後まで提供し続ける
請求項3に記載のコンテンツ提供装置。
【請求項5】
上記ユーザ情報は、上記個人ユーザによって定められたユーザID及びパスワード情報を有し、
上記判断手段は、上記コンテンツの提供を希望する上記ユーザ端末からの上記コンテンツ提供要求を受信したときに、上記ユーザID及び上記パスワードに基づいて、当該ユーザ端末の上記ユーザ情報が上記登録手段に登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断する
請求項1に記載のコンテンツ提供装置。
【請求項6】
個人ユーザのユーザ情報を登録手段によりデータベースに登録する登録ステップと、
上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末からコンテンツ提供要求を受信したときに、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断手段によって判断する判断ステップと、
上記判断ステップで一致すると判断された場合に、上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末から上記コンテンツを受信手段を介して受信し、記憶手段によって記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶ステップと、
上記記憶領域に格納された上記コンテンツをコンテンツ提供手段によりクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供するコンテンツ提供ステップと
を有するコンテンツ提供方法。
【請求項7】(補正請求項1に対応するプログラム格納媒体Claimを作成して下さい)
コンピュータに対し、
個人ユーザのユーザ情報をデータベースに登録する登録ステップと、
上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末からコンテンツ提供要求を受信したときに、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断する判断ステップと、
上記判断ステップで一致すると判断された場合に、上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末から上記コンテンツを受信し、記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶ステップと、
上記記憶領域に格納された上記コンテンツをクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供するコンテンツ提供ステップと
を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能なプログラム格納媒体。」

(2)本件補正における新規事項追加についての判断
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)に記載した事項(【0035】【0051】【0049】【0108】【0118】【0326】段落、図8)の範囲内においてされたものであると認められる。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

(3)本件補正における補正の目的についての判断
本件補正後の請求項1の、補正前の請求項1の「個人ユーザのユーザ情報」を補正後の「個人ユーザにより定められたユーザID及びパスワード情報を有するユーザ情報」とする補正は、ユーザ情報に限定を加え、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの(限定的減縮)であり、また、補正前の請求項1の「判断する判断手段」に対して「上記ユーザID及び上記パスワードに基づいて、」を加える補正は、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの(限定的減縮)であり、また、補正前の「記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段」に「ユーザIDごとに」を加える補正は、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの(限定的減縮)であるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的としたものにあたる。
本件補正後の請求項5、請求項6についても本件補正後の請求項1と同様の補正がされているが、いずれも、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの(限定的減縮)であり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められる。
また、補正前の請求項5を削除する補正は、請求項の削除を目的とするものに該当する。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合する。

(4)独立特許要件についての判断
本件補正後の前記請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(4.1)引用刊行物
(4.1.1)引用文献1
原審の拒絶の理由に引用された、本願出願前頒布された刊行物である、伊庭 四郎著,"なんじゃ、それ?探検隊File.No.26",月刊CYBIZ SOHO コンピューティング,(株)サイビズ,2000年1月1日,第5巻 第1号,p.67-72(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の記載がある。
ア.「クライアントソフト
無料
インターネット放送を受信し、ストリーミング再生するためのプレーヤソフト。受信する動画データの種類に応じて…(中略)…通常は動画を受信しようとした際、必要なプレーヤーが組み込まれていなければダウンロード…(中略)…
サーバーソフト
価格=使用条件による
パソコン上にキャプチャした動画を、ストリーミングで配信できるファイル形式に変換する機能。インターネット上で、動画を配信する機能などを備えたソフトウェア。動画の配信を専門業者に委託する場合には必要ない。」(第68頁右上の図関連説明参照)
イ.「●インターネット放送を実際に始めるには
…(中略)…以下に代表的なインターネット放送局向けのレンタルサーバーサービスにおける基本料金と、便利な情報サイトを紹介しよう。…(中略)…レンタルサーバーサービスに限らず、ライブ放送に必要な機材のレンタルやコンサルティング業務なども行っている。…(中略)…レンタルサーバーの提供やコンテンツ作成を、極めて低価格で行っている。…(中略)…一般的なプロバイダだが、会員向けにインターネット放送局を個人で開局するためのサービスを提供している。」(69頁1行?右上の図関連説明参照)
ウ.「試しにちょっと見てみたところ…(中略)…インターネット放送局のホームページにアクセスすればすぐに動画が表示されるし…(中略)…生放送だって可能なのだ。…(中略)…「インターネット放送では“ストリーミング”という技術を利用して、動画の配信を行っているんです」…(中略)…「ストリーミングで動画を配信する場合、ダウンロードしながら同時に再生も行われるんですよ。・・・」(69頁左欄13行?右欄4行)
エ.「ストリーミングを利用して動画を再生したり送信したりするためには、ナニが必要なの?…(中略)…最低限の設備として動画を撮影するためのビデオカメラとそれをパソコンに取り込むためのビデオキャプチャツール、それにサーバソフトとインターネットに接続するための通信手段さえあれば、ストリーミングを利用してインターネット放送局の番組ができちゃうというワケなのだ。」(70頁中欄8行?右欄11行)
オ.「ライブ型
文字どおり、撮影した動画をリアルタイムでサーバへアップロードしながら放送していく方式。…(中略)…
オンデマンド型
ユーザーからの要求に応じて随時動画を配信する、いわばビデオレンタル店のようなシステム。速報性を必要としないコンテンツの配布に利用されている。ライブ型と比較してハードウェアや通信回線への要求性能は低く、コストの安い点が特徴。同時に発生するアクセス数も少ない。」(第71頁右上の図関連説明参照)

(ア)エ.にはインターネット放送局の設備としてビデオカメラ、通信手段、サーバソフトなどを有するパソコンが記載されている。
ア.の動画の配信を専門業者に委託する場合にはサーバーソフトは必要ない、イ.のレンタルサーバーサービス、会員向けにインターネット放送局を個人で開局するためのサービスを提供するプロバイダ、オ.の撮影した動画をリアルタイムでサーバへアップロード、との記載から、会員のパソコンを備えたインターネット放送局がレンタルサーバーサービスを提供するサーバと接続され、会員のインターネット放送局で撮影した動画をリアルタイム(リアルタイムに加えてオンデマンドに対してもアップロードできることは自明)でインターネットを介してレンタルサーバーサービスを提供するサーバへアップロードすることが示されている。
(イ)サーバが前記動画を受信する受信手段を有することは、前記通信手段、アップロード、及び通信の送受信の技術常識を加味すれば読み取れる。
(ウ)前記会員向けにインターネット放送局を個人で開局するためのサービスを提供するプロバイダ、レンタルサーバーサービスを提供するサーバ、イ.の基本料金との記載から、プロバイダないしサーバには会員を管理する際の常套手段である会員情報をデータベースに登録する登録手段を備えることが認められる。
(エ)前記動画の配信を専門業者に委託、イ.のインターネット放送局向けのレンタルサーバーサービスにおける基本料金と便利な情報サイト、前記撮影した動画をリアルタイムでサーバへアップロードとの記載と、商習慣の常識をふまえると、動画のアップロードの前に、レンタルサーバーサービスを受けるためにインターネット放送局からの動画の配信サービス要求をサーバが受信することが認められる。会員であるかないか、レンタルサーバーサービスを受けることができる会員であるかどうかがチェック(判断)されることも通常のサービス提供側の手順のうちであり、記載されているに等しい事項である。
(オ)前記撮影した動画をリアルタイムでサーバへアップロード、オ.のユーザーからの要求に応じて随時動画を配信するオンデマンド型、いわばビデオレンタル店のようなシステム、コンテンツの配布、ハードウェア(通常、記憶媒体、記憶手段が含まれる。)、ウ.のインターネット放送局のホームページにアクセスすればすぐに動画が表示される、生放送だって可能、から、通常、記憶媒体の所定の記憶領域にコンテンツ(動画のデータ)が記憶された記憶媒体を所定の領域(場所)に蓄積しているビデオレンタル店のようなサーバが想定でき、この点を加味すると、前記サーバへアップロードされた動画(コンテンツ)は、ユーザからの要求に応じて随時動画を配信することができるように記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段を備えることが認められる。
(カ)ア.のクライアントソフト、インターネット放送を受信しストリーミング再生する、ウ.の(クライアントが)試しにちょっと見てみたところインターネット放送局のホームページにアクセスすればすぐに動画が表示される、オ.のオンデマンド型、ユーザからの要求に応じて随時動画を配信する、との記載から、前記記憶領域に格納された動画をクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供する動画提供手段が読み取れる。

(ア)ないし(カ)をふまえると、引用文献1には、インターネット放送を実現する次の発明(以下「引用文献1発明」という。)が示されている。

会員の動画を撮影するためのビデオカメラとインターネットに接続するための通信手段とを備えたパソコン(インターネット放送局)から動画を受信する受信手段と、
上記会員により定められた会員情報をデータベースに登録する登録手段と、
上記動画の提供を希望する上記インターネット放送局から動画提供要求を受信したときに、当該インターネット放送局の会員情報が上記データベースに登録されている上記会員の会員情報と一致するか否かを判断する判断手段と、
上記判断手段によって一致すると判断された場合に、上記動画の提供を希望するインターネット放送局から上記動画を上記受信手段を介して受信し、記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段と、
上記記憶領域に格納された上記動画をクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供する動画提供手段と
を具えるレンタルサーバサービス提供サーバ。

(4.2)対比
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)と引用文献1発明とを対比する。
A.引用文献1発明の「会員」は、プロバイダやレンタルサーバサービス提供サーバからみれば「個人ユーザ」である。「動画」は「コンテンツ」に含まれる。引用文献1発明の「会員の動画を撮影するためのビデオカメラとインターネットに接続するための通信手段とを備えたパソコン(インターネット放送局)から動画を受信する受信手段」と本件補正発明の「個人ユーザのユーザ端末からコンテンツを受信する受信手段」と実質的な差異はない。
B.引用文献1発明の「上記会員により定められた会員情報をデータベースに登録する登録手段」は、ユーザID及びパスワード情報を有するとまではいえないまでも、本件補正発明の「上記個人ユーザにより定められたユーザID及びパスワード情報を有するユーザ情報をデータベースに登録する登録手段」も上位概念では、「上記個人ユーザにより定められたユーザ情報をデータベースに登録する登録手段」であるから、この点で共通する。
C.引用文献1発明の「上記動画の提供を希望する上記インターネット放送局から動画提供要求を受信したときに、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記会員の会員情報と一致するか否かを判断する判断手段」は、ユーザID及びパスワードに基づいて、判断をするとまではいえないまでも、本件補正発明の「上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末からコンテンツ提供要求を受信したときに、上記ユーザID及び上記パスワードに基づいて、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断する判断手段」も上位概念では「上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末からコンテンツ提供要求を受信したときに、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断する判断手段」であるから、この点で共通する。
D.引用文献1発明の「上記判断手段によって一致すると判断された場合に、上記動画の提供を希望するインターネット放送局から上記動画を上記受信手段を介して受信し、記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段」は、当該所定の記憶領域に記憶する記憶手段が、上記会員IDごとに記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段とまではいえないまでも、本件補正発明の「上記判断手段によって一致すると判断された場合に、上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末から上記コンテンツを上記受信手段を介して受信し、上記ユーザIDごとに記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段」も、上位概念では、「上記判断手段によって一致すると判断された場合に、上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末から上記コンテンツを上記受信手段を介して受信し、記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段」であるから、この点で共通する。
E.引用文献1発明の「上記記憶領域に格納された上記動画をクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供する動画提供手段」は本件補正発明の「上記記憶領域に格納された上記コンテンツをクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供するコンテンツ提供手段」に相当する。
F.引用文献1発明の「レンタルサーバサービス提供サーバ」は本件補正発明の「コンテンツ提供装置」に相当する。

以上の対比によれば、引用文献1発明と本件補正発明とは、次の事項を有する発明である点で一致し、そして、次の点で相違する。
〈一致点〉
個人ユーザのユーザ端末からコンテンツを受信する受信手段と、
上記個人ユーザにより定められたユーザ情報をデータベースに登録する登録手段と、
上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末からコンテンツ提供要求を受信したときに、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断する判断手段と、
上記判断手段によって一致すると判断された場合に、上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末から上記コンテンツを上記受信手段を介して受信し、記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段と、
上記記憶領域に格納された上記コンテンツをクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供するコンテンツ提供手段と
を具えるコンテンツ提供装置。

〈相違点1〉
ユーザ情報が、本件補正発明は、「ユーザID及びパスワード情報を有する」ユーザ情報であるのに対し、引用文献1発明の会員情報は会員ID及びパスワードを有するか不明である点。
〈相違点2〉ユーザ端末のユーザ情報がデータベースに登録されている個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断するのが、本件補正発明は、上記ユーザID及び上記パスワードに基づいて、前記判断するのに対し、引用文献1発明は、そのような会員IDおよびパスワードに基づくか不明である点。
〈相違点3〉記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段が、本件補正発明は「ユーザIDごとに」記憶する記憶手段であるのに対し、引用文献1発明は、そのようなIDごとに記憶する記憶手段であるか不明である点。

(4.3)当審判断
〈相違点1〉認証に関し、ユーザ情報が、「ユーザID及びパスワード情報を有する」ユーザ情報であるものは本願出願前周知の技術である。例えば、特開平11-66168号公報【0016】【0021】【0048】段落には、契約者認証、契約者データベース23には、ユーザID、パスワードなどが格納される旨、予め付与されたパスワード及びユーザIDにより認証を受け、と記載されており、ユーザ情報(契約者データ)が、ユーザID及びパスワード情報を有する、ユーザ情報であるものは本願出願前周知の技術である。
引用文献1発明において、認証のために、ユーザ情報が、ユーザID及びパスワード情報を有するユーザ情報であることは格別なことではなく、前記周知の技術を参酌して当業者が適宜になし得ることである。
〈相違点2〉について
ユーザ端末のユーザ情報がデータベースに登録されている個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断するのが、ユーザID及びパスワードに基づいて、判断することは、例えば、前記特開平11-66168号公報に、前記予め付与されたパスワード及びユーザIDにより認証(認証の判断がされることは自明)を受け、と記載されているように、本願出願前周知の技術である。
引用文献1発明において、ユーザ端末のユーザ情報がデータベースに登録されている個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断するのが、上記ユーザID及び上記パスワードに基づいて、前記判断すると成すことは、前記周知の技術を参酌することにより当業者が適宜になし得ることである。
〈相違点3〉について
引用文献1のイ.のレンタルサーバサービス、レンタルサーバの提供には、記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段の使用が含まれていると解される。また、ユーザ毎(ユーザとユーザIDとが対応しているのでユーザID毎といえる。)の記憶部の保存領域に記憶する記憶部は、例えば、特開平11-25040号公報【0006】段落に、「端末においては、そのファイル、データの保存をサーバ上に行う。各ユーザは自分のファイル保存領域をサーバ上に割り当てられていて、端末にログインすることにより、そのファイルへのアクセス権を得ることになる。」と記載され、図1には記憶部、ユーザの保存領域が示されているように、本願出願前周知の技術である。
引用文献1発明において、記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段が、ユーザIDごとに記憶する記憶手段であると成すことは、前記周知の技術を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。

そして、本件補正発明の構成により奏する効果も、引用文献1、周知の技術から当然予測される範囲内のもので、格別顕著なものとは認められない。

(4.4)小括
以上のように、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、本件補正は同法第159条1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

3.本願請求項1に係る発明について
(1)平成22年10月1日付の手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成22年1月12日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。(再掲する。)
【 請求項1】
個人ユーザのユーザ端末からコンテンツを受信する受信手段と、
上記個人ユーザのユーザ情報をデータベースに登録する登録手段と、
上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末からコンテンツ提供要求を受信したときに、当該ユーザ端末のユーザ情報が上記データベースに登録されている上記個人ユーザのユーザ情報と一致するか否かを判断する判断手段と、
上記判断手段によって一致すると判断された場合に、上記コンテンツの提供を希望するユーザ端末から上記コンテンツを上記受信手段を介して受信し、記憶媒体の所定の記憶領域に記憶する記憶手段と、
上記記憶領域に格納された上記コンテンツをクライアントの要求に応じて読み出した後ネットワークを介して提供するコンテンツ提供手段と
を具えるコンテンツ提供装置。

(2)引用刊行物
原審の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である、前記引用文献1には、それぞれ、前記(4.1)で摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願請求項1に係る発明は、前記(4.2)で検討した本件補正発明における発明特定事項である、上記個人ユーザ「により定められたユーザID及びパスワード情報を有する」ユーザ情報、「上記ユーザID及び上記パスワードに基づいて、」「上記ユーザIDごとに」なる構成を省いたものである。
そうすると、本願請求項1に係る発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記(4.2.3)乃至(4.2.4)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願請求項1に係る発明により奏する効果も、引用文献1に記載された発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲内のものにすぎない。

(4)むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-21 
結審通知日 2011-11-22 
審決日 2011-12-05 
出願番号 特願2000-97881(P2000-97881)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 俊範漆原 孝治  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 田中 秀人
殿川 雅也
発明の名称 コンテンツ提供装置、コンテンツ提供方法及びプログラム格納媒体  
代理人 田辺 恵基  

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